75点 アメイジング・グレイス -What color is your attribute?- (きゃべつそふと)
閉鎖された芸術都市でのクリスマスを描く伏線ゲー/構成ゲー。非常に良く出来た物語構造を持つ作品であり、プロットの出来の良さだけで見るなら文句なしに2018年度のNo.1はこの作品で決まりだと言いたくなるほどのレベルである。しかし、プレイして素直に面白かったかと言われると正直難しい。物語構造をこれでもかと作り込んだ一方、キャラクター性の作り込みは非常に弱い。終盤までは「可愛い」を記号化したかのようなテンプレートな萌えキャラ発言が目立ち、彼/彼女達の「想い」や「必死さ」がサッパリ描かれないし、伏線処理のために不自然な行動が必要となる場面が多くキャラが盤面の駒となってしまっていた。ノベルゲーの美学としてどこを重視するかという好みの問題ではあるが、「物語構造」「考察」といった要素よりもキャラ達の紡ぐ「ドラマ」を優先する読み手には評価しづらい一作だったように思う。
71点 宿星のガールフレンド -the destiny star of girlfriend- (mirai)
魔法少女バトル×イチャラブキャラゲーもの。ヒロインの夕里の傲岸不遜じゃじゃ馬娘なのにチョロ可愛いというキャラメイクの上手さが際立った一作だった。一方でストーリーラインとなる魔法少女関連の設定はかなりおざなりな印象を受けた。捻りのないインスタントな魔法少女モノの世界観にまったく掘り下げのない敵陣営、とイチャラブのスパイスとして機能させるとしてももう少し作り込みが必要だったように思える。良くも悪くも連作としての積み上げというよりはヒロインの魅力だけで成り立っている作品なので、2作目以降はいかにヒロインを可愛く描けるかが鍵になりそう。イチャラブロープラものとしては十分楽しめたが、ふと振り返って物語全体を見直すと評価の難しい一作だった。
76点 マクナ=グラムラとフェアリー・ベル(非18禁) (ALICE IN DISSONANCE(同人))
超豪華演出付きの映画的に見る絵本。ALICE IN DISSONANCEの凄まじい演出力に、アイロニーたっぷりの大人向け童話があわさり不思議な魅力のある一作に仕上がっていた。内容的にはライアーソフトとかに近い感じだろうか。2時間と少しのボリュームに明らかに過剰なスチル量をつぎ込み、音楽も手を変え品を変え常に物語の変化を感じとれる作品となっている。シナリオも「大人への成長」というこのジャンルでは使い古されたテーマながら丁寧に描こうとしているのが伝わり、短編作品ながら何度も涙してしまった。「シネマチック」を売りにするこのブランドらしい動的な絵本作品だったと思う。
新着コメント
今までのファボってテキストの冗長さばかりが目立ち、TRUE√以外は物語にも光るものが見つけられないブランドだったと思う。今作はと言えば、いつもの5割増しくらいには更にテキストが冗長で、正直「しつこい」って何度も思わされた。けれども、物語には全編光るものが感じられたと思う。ピンク髪ヒロインはシナリオが酷過ぎるという呪縛からも解き放たれ、初めから終わりまでほぼ隙がなかった。テーマとしてはいつもの「家族愛」なのだけど、今作は冷たく厳しい現実を生き抜くための優しい思想としての「家族愛」が描かれており、血縁関係や家族という存在そのものの大切さをプッシュする訳ではないので非常に共感しやすい内容だったのではないかと思う。全編通して一本筋の通ったテーマに沿って物語が作られており、更には伏線処理等物語のギミックにもこだわりが感じられ、幻想的な演出周りとも相まって非常に素晴らしい世界観を描けていた一作だった。
閉鎖された芸術都市でのクリスマスを描く伏線ゲー/構成ゲー。非常に良く出来た物語構造を持つ作品であり、プロットの出来の良さだけで見るなら文句なしに2018年度のNo.1はこの作品で決まりだと言いたくなるほどのレベルである。しかし、プレイして素直に面白かったかと言われると正直難しい。物語構造をこれでもかと作り込んだ一方、キャラクター性の作り込みは非常に弱い。終盤までは「可愛い」を記号化したかのようなテンプレートな萌えキャラ発言が目立ち、彼/彼女達の「想い」や「必死さ」がサッパリ描かれないし、伏線処理のために不自然な行動が必要となる場面が多くキャラが盤面の駒となってしまっていた。ノベルゲーの美学としてどこを重視するかという好みの問題ではあるが、「物語構造」「考察」といった要素よりもキャラ達の紡ぐ「ドラマ」を優先する読み手には評価しづらい一作だったように思う。
声優部活モノ。ストーリーラインだけ抜き出せば無難オブ無難で悪く言えば面白みのない内容だったけども、「つまらなかった」という感想で終わる作品ではないと思う。範乃秋晴さんの描く感情描写の丁寧さやギャグの軽快さを下地に、声優さん達の熱演が輝いてしっかりとオリジナリティを感じる内容に仕上がっていた。特に桜川真央さんと秋野花さんは元から演技の幅が広い事もあって、こういう作品にはピッタリな人選だったと思う。コロコロ変わる声音につられて楽しいひと時を過ごすことが出来た。少なくとも、元からお二方のファンだという人にはオススメしても良いんじゃないかなと思えた一作だった。
空を舞う球技「テレプシコーラ」に青春の全てを賭けた少年少女達を描いた物語。文章のみで盤面を描こうとした単純な演出力不足により試合展開が分かりづらい、競技の背景が「魔法」というフワッとした存在に支えられているためか戦術や駆け引きも希薄でパッとしない、「個別」ルートはオマケレベルのものでしかないし、物語全体の構成も起承転結があまり効いてないなど無視できない欠点は数多く見受けられる内容だったとは思う。しかし、競技に賭ける少年少女達の『想いの丈』を描くことに関しては本当に素晴らしい内容だった。劣悪な環境、不幸な境遇がキャラの想いの強さを補強し、主人公チームはもちろん敵チームキャラまで試合に賭ける想いがじっくりと描かれるため、非常に読み応えのある内容だったと思う。スポーツの華々しさよりも泥臭さを重視して描き続けた先に、「テレプシコーラは楽しい」と言い切るキャラの姿の尊さが印象的な一作だった。
狂った童話の世界を渡り歩くダークメルヘンファンタジー第2弾。前作から良く出来ていたゲームバランス、狂気の演出、退廃的な世界観作りが更にパワーアップして作られており、非常に満足できた一作となった。特にRPGとしての難易度調整は、理不尽レベルに難しい1周目序盤、強化済みのステで楽々進める2週目以降と高難易度とユーザーフレンドリィを上手く両立させた良調整だった。前作から続く狂気的かつ謎多い世界設定に一応の決着がつけられており、前作ファンなら納得の非常に高いクオリティの同人作品だったと思う。続き物という事もあり若干敷居が高いが、これを機に狂気的な童話の世界に是非迷い込んでみて欲しい。RPGとしてのシステム性と物語性が上手く融合しており、夢中で楽しめた一作となった。
いつものファンタジーから離れ初の現代RPGモノとなった本作だがほぼ文句なしに面白かった。戦闘バランスや耐性パズル等はいつも以上に丁寧に考えられていたし、物語・H方面共に過去作以上のボリュームで非常に楽しませてもらえた。恒例の過去作を知っているとニヤッとできるサークルファンサービスも充実の内容。戦闘高速化ができない等細かな不満点はあれど、内容的には上手い具合にバランスがとれていたと思う。いつもの開放的過ぎる貞操観念が、現代モノという事もあり多少生々しく人を選びそうではあるが、総じて良作といって良いプレイしがいのある作品だった。
人魚伝説をモチーフにした伝奇モノ、コズミックホラー。テキストが上手な作品で、昔風な言い回しも違和感なく頭に入ってきて非常に読みやすかった。加えて雰囲気作りも申し分なく、人知の及ばない異界の化け物の不気味さや、それに対する畏敬の想いが伝わって良かったと思う。欠点は、台詞まわし、文章の区切り方、Emoteの三点。「ツンデレ」等の属性キャラ作りを意識しすぎるあまり登場人物達の会話のキャッチボールが成り立っていないシーンが散見されること、文章をぶつ切りに区切り過ぎて必要以上にクリックしないといけないのでテンポが悪いこと、別に萌えゲー的な作りではないのに胸をEmoteでゴリゴリ動かしたりなどジャンルとミスマッチを感じる演出が多かったこと、の三点が気になった。物語の構成だけでなくキャラの感情面をより重視した作品であればより高い評価を得られただろうにと惜しさを感じる一作だった。
紺野アスタ氏の描く青々とした青春劇と、成長とともに移り変わる幼馴染たちの微妙な関係性が非常に魅力的な一作だった。「天体観測」という一見地味な要素をメインに据えながらも、要所要所で話に大きく緩急がつけられており、天文素人の私にも話のスケール感が大きく伝わってきた点も良かった。天文イベントにメインの尺を使うひかり√、幼馴染たちだからこそ遠慮しあうもどかしい恋模様に尺を使う沙夜√と対照的な作りとなっている今作だが、個人的には天文の壮大さと比較して恋模様への苦悩が小さく感じられ、沙夜√は素直に楽しむことができなかった。正直言って沙夜ちゃんの悩みに共感できず、「こいつ面倒くさい性格だな…」とか思ってしまったあたりに敗因があったように思う。個人的には全√天文メインで突き進んで欲しかったという思いはあれど、幼馴染2人の√は総じて完成度が高く、紺野アスタ氏の確かな実力が感じられた一作だった。
引きこもりの三十路同人ライターと被災地から疎開した中学生少女の生活を描く日常系の作品。テキストが凄まじく上手で、文学的な言葉遣いと現代的な一人称の文章が見事に調和しており、郷愁感漂う風景や美味しそうなご飯、揺れ動く感情の描写などすべてが輝いて見えた。「情緒豊かな」という言葉がまさに似合う上品なテキストを味わうことが出来たと思う。一方で物語展開は結構雑で、唐突に始まる後半の恋愛展開は人を選びそう。尺が短い事と物語のテーマとも無関係な展開だという事もあり、とりあえずの山場としてシーンが挿入されているように感じられあまり印象がよろしくなかった。良いところと悪いところがハッキリ別れてしまった作品だとは思うが、それでもこのテキストを味わうためだけにプレイする価値はあると感じる。情緒的なテキストがとにかく魅力的な一作だった。
ウォーターフェニックスのライターR氏と「レイジングループ」で有名なamphibian氏のコラボ作品となる今作。災厄に支配される世界で、ひたすらに幸せを求めて足掻き続ける2人の少年少女の姿が胸を打つ物語だった。生物を認識できないという突飛なSF世界観の下、メインの登場キャラはたった2人という構成でフルプライスに近い分量を描き切ったのは凄い事だと思う。愛と依存や自殺といった重苦しいテーマを扱った本作だが、その長い物語の果てで彼等が出した答えには確かな重みが感じられた。不満点としては主に物語構成面。無駄のない綺麗なループ構造を作り上げた本作だが、あまりに繰り返しの構図が多すぎて冗長に感じられてしまった。中盤以降の話運びが想像しやすく、物語構造が綺麗すぎる弊害も出ていたようにも思う。ラストシーンが非常に魅力的だった事もあり中盤以降がもっと読みやすければなぁと惜しさも感じた一作だった。
最近流行りの異世界転生。多くの主人公たちは女を屈服させ、自覚の有無は置いといても、 酷く醜いその欲望をとても自分勝手に満足させて満たされてしまう。その「ひたすらに甘い堕落」の先に「救い」はあるのか?そういったことを描こうとした作品に思えた。多くのテーマ重視の作品はそんな身勝手な欲望を否定するショッキングな展開に走りがちだが、本作は貪欲で身勝手な感情を、ひたすらに俗的な幸福を求めるその姿に肯定的であったと思う。むしろ現実で死んだ目をして日々を過ごす人たちへ、卑俗で幸福な「愛」を求めることへの「許し」を与えたいといったような応援メッセージが私には感じられた。ほの暗い感情をとても穏やかに綴り続ける夜のひつじらしい一作だった。
「Winter Polaris」「Sweeper Swimmer」の2編からなる中短編程度の物語。謎の奇病により人類が滅びた世界で、それでも死ぬことのない「不死者」たちの物語を描いた作品。あらすじからはSF要素が強めの作品に思えたが、実際は終わりのない人生を歩む不死者たちが「生きる意味」や「夢」を追い求める姿を描くヒューマンドラマとしての要素が強く、SF要素はスパイス程度といったテイストだった。ライターの片岡さんの描く淡々としながらも情緒的なテキストが魅力的で、テーマだけでなくキャラ達の想いの強さが印象に残った。「Sweeper Swimmer」についてはあらすじが単調でより物語に起伏が欲しいと感じる場面も多かったが、総じて満足感の高い一作となった。
「死にたい」と口にするだけで自殺が出来る、尊厳死が保障された社会で繰り広げられる4つの短編物語集。「自殺は悪か?」というメインテーマに対し、「死ぬなって言うのはエゴだけど、でもやっぱり死んで欲しくない」と感情論的な解答を示している作品だと思うのだが、残念ながらこの主張に読者を巻き込むだけのパワーが感じられなかった。各短編の物語が完全に独立状態で群像劇としての物語同士の絡みが見られないこと、「腕章」等背景設定が語られないまま勢いで通そうとした設定が多いこと、重要人物なはずのキャラの描写があまりに薄いこと、など主に構成面での不備が目立ってしまっていたと思う。「命の価値を問う」と謳いながらも凄く簡単に人の命が散っていく展開もあまり好みではなかった。絵や音楽はハイクオリティなサークルさんだと思うので、割けるリソースに見合った物語展開が欲しかったかなと感じた一作だった。
心情描写を徹底的に廃し、淡々とした事実と台詞だけで構成された独特のテキストで語られるSM調悲劇ノベル。登場人物みな腹に一物抱えた難儀な性格のキャラばかりであり、 あえて描かれない彼/彼女らの心情を想像しながら読み進めるのは中々難しいが、それ故に先の読めない面白さを味わえたし、キャラへの強い思い入れが出来た。SMという「苦痛」なくては生きている実感を感じることが出来ない、ある意味精神的に狂ってしまった人物たちが迫力をもって描写されていた。エロゲで戯曲のようなテキスト運びをする作品はかなり珍しいが、個人的には十分アリだと思う。全てを描き切らないからこそ、キャラ描写の深みや退廃的な世界観に魅せられる独特な魅力ある一作であった。
里を追放されたダークエルフちゃんと世界を旅する純愛系エロRPG作品。プレイ時間にして6時間程度の中編作品ながら物語の起承転結が上手くまとめられており、退屈なく進行できるコンパクトな良作RPGだった。2人PT制という事で戦闘面での戦略性などは望めないだろうなと思ってプレイしてみると、敏捷値の調整や耐性パズルに各種バフと意外と頭を使わせられる内容だった事も好印象。ボリュームからして物語・ゲーム性ともに本格的なRPGという訳ではないが、お手軽に楽しめるライトなRPG作品としては十分に楽しめた一作だった。
魔法少女バトル×イチャラブキャラゲーもの。ヒロインの夕里の傲岸不遜じゃじゃ馬娘なのにチョロ可愛いというキャラメイクの上手さが際立った一作だった。一方でストーリーラインとなる魔法少女関連の設定はかなりおざなりな印象を受けた。捻りのないインスタントな魔法少女モノの世界観にまったく掘り下げのない敵陣営、とイチャラブのスパイスとして機能させるとしてももう少し作り込みが必要だったように思える。良くも悪くも連作としての積み上げというよりはヒロインの魅力だけで成り立っている作品なので、2作目以降はいかにヒロインを可愛く描けるかが鍵になりそう。イチャラブロープラものとしては十分楽しめたが、ふと振り返って物語全体を見直すと評価の難しい一作だった。
同人サークル「はとのす式製作所」が贈る商業作品1作目。ドスケベセックス蔓延る孤島を舞台にオシャレなジャズBGMが鳴り響き、数々の下品な「パワーワード」が乱舞、さらに特殊エログッズを武器にスパイばりの戦闘が行われるというなんともハチャメチャな一作であった。勢いだけのギャグで成り立っている作品かと思いきや、一癖も二癖もある魅力的なキャラクター、「マイノリティへの蔑視」という一本筋の通ったテーマを軸にしたストーリー構成とギャグ以外の要素も高水準。良くも悪くもトチ狂ったノリで進行する作品なので好みが別れそうな作品ではあるが、思わず勢いに飲まれてしまいそうになるだけのパワーを秘めた本当に力強い一作だった。
この作品を初めてプレイした8年前の私の感想は正直なところ、「何が言いたいのか良く分からんけど、とにかく凄い事だけは分かる」というなんとも言えないものだった。後継作「サクラノ詩」を通じて作品全体テーマへの理解を深めて再読した今回でもやはり全てを理解するのは難しいが、それでも見えてくるものは当時と大分違ったように思う。相変わらず電波と哲学の境目が分かりづらく読みにくさの残る本作ではあるが、出来るだけ簡潔に本作テーマについて書き残せればと思う。 → 長文感想(13500)(ネタバレ注意)
(一応)文芸部で美少女3人と仲良く語り合うノベルゲーム。とある事情からもはや感想らしきもの書くだけでネタバレになってしまいそうだが、この作品はなんの前知識もなしにただ展開に翻弄された方が楽しめるタイプの作品なので、少しでも興味がある方はとりあえずやってみると良いと思う。同人らしからぬ演出力とテーマ性が見事に組み合わさった非凡な作品だった。内容的にキャラに愛着があった方が楽しめる作品だと思うのだが、翻訳の影響もあり台詞がやけに無機質で刺々しいのが玉に瑕だと感じた。
煩わしい事を忘れてただただ夢中になり駆け抜けた夏、忘れた頃にふと振り返ると輝かしい時間が過去にあって、そんな一夏に感じるノスタルジックな想いを形にした作品だった。全編一定程度のクオリティを保った安定感のある作品ではあるが、伏線等の処理よりもただ「泣かせるシチュエーション」に注力した作品なので、この作品を楽しめるかはいかにこの夏の雰囲気に浸れるかに依ると思う。いわゆる「雰囲気ゲー」としては完成度の高い作品だとは思うのだが、麻枝さんの言う「本当に泣ける作品」をサマポケが形に出来たかは正直微妙なところだと感じた。キャラの造形が今一歩だったり既視感漂う物語構成もそうなのだが、全ての根本としてキャラクター達の信念や心の叫びといったものが希薄で、読者を否応なしに巻き込むだけの力が足りなかったように思う。 → 長文感想(2980)(ネタバレ注意)(1)
[ネタバレ?(Y1:N0)]ビジュアルノベルとして最低限のイロハは備わっているし酷評するような作品ではないのだけど、どうにも特徴に欠ける作品だった。人形課や公安といった組織の実情や人体売買を取り扱う闇組織サイドに詳細な描写がないせいで、サスペンスとして見るにはどうしても現実感・緊迫感に欠けるし、一方で事件を通して特定のキャラに焦点をあてたヒューマンドラマを描けたかと言うとそうでもないと思う。共通パートでは事件を扱い、個別√はキャラゲーのようなキャラ固有の当たり障りのない物語で〆るという物語構成も相まって統一性に欠けるという印象が強かった。読者にどの要素で勝負をかけたいのかが伝わってこない非常に中身の「ふわっ」とした作品になってしまっていたと思う。サスペンスとして評価するならやはり背景設定の詰め方はもう二声ぐらい欲しいし、共通→個別→最終章という流れにも一貫性を持たせた物語構成で楽しませて欲しかった。
とにかく手堅い優秀なSRPG作品。絶妙に調整された武器の耐久値や軍資金、攻め・待ち・陣取りと戦略性に富んだマップ、数多くの登場人物達それぞれの想いを丁寧に描写する物語とSRPGに求められる要素が綺麗に揃っていた。 一方でインパクトのある展開など尖った魅力は少なめ。チマチマとしたリソース管理が本質となるSRPG要素を楽しめるかどうかが評価を分ける作品なので、SRPGのゲーム性の面白さを既に知っている層向けの作品なのかもしれない。やりこみも含めれば1マスを争う戦略性を楽しめるSRPGの優秀作という印象だった。
プレイ時間にして約一時間程度のボリューム。基本的にはvol.1と同じで、短いしコスパ面も厳しいがギャグの勢いは良かった。レイナ編の序盤とか凄く笑わせてもらいました。今回は抜きゲーを題材にしたギャグを多めに散らしておりその影響を受けたのか、何故かエロシーンの台詞が「ひぎぃ系」でやたらハード。この絵柄と作風でやってもギャグにしか見えないと思う。もしかしたらギャグなのかもしれないけども。なにはともあれ笑えるし元気を貰えた一作だった。
罪状、独身。判決、死刑。18歳までに結婚できなかった者は処刑される国で繰り広げられる8つの短編物語集。物語構成が非常に上手い作品で、一つ一つの短編がただ独立したお話で終わらずに後半で一気に再構成されていく様が魅力的な作品だった。ただ、肝心の主軸となる一つ一つの短編の出来が個人的には微妙に感じた。独身処刑の社会制度を現実的に描くというよりは、極端な制度に翻弄されるカップルのヒューマンドラマストーリーを描く小話が多いのだが、プレイ時間にして1時間半程度の小話で急造した人間関係に感情移入するのは結構難しい事だと思う。感動狙いのビターエンドもかなり後味が悪い読後感として残ってしまった。ひとつひとつの短編をより時間をかけて説得的に描ければ、作品全体のまとめとなる最終話も更に良くなっただろうにと思うと非常に惜しい気持ちになる連作集だった。
8つの花束になぞらえた物語を追う短編集。この作品の根底に流れるのは根の深い自己否定感なのだと感じている。苦や辛を味わわざるを得なくて、何もかも上手くいかないと嫌になる自分がいて、それでも世界はこんなに優しくて綺麗なんだよという優しいメッセージが響く作品だった。物語構成も巧みで各短編には密接に繋がり合いがあり、その間で受け継がれる想いが「永遠」という作品テーマに見事に昇華されている。残酷な悲劇をこれでもかと優しく描いてくれる、本当に気持ちの良い涙をたくさん流せた一作だった。
辛くて痛くて苦しくて、それでも幸せに向けて生きる「人間」の姿を描くテーマ重視の思考実験型SFノベルゲーム。人類は絶滅しまともな意味での「人間」など一人もいない滅んだ世界を舞台にする事で、逆説的に「人間の生」を強く描き出すという手法が上手く機能していた。なお本作は完全にテーマ重視の作風であり、人類絶滅後という物語舞台もテーマを描く思考実験場として設定されている節が強い。「戦争」「神様」など思わせぶりな設定が語られるが、SF要素に関しての詳細な説明等は一切ないのでそういった楽しみ方をするには不向きな作品である。5時間程度の短めの作品ながら物語にはキチンと起伏がついており、読んでいて素直に楽しかったと同時にキャラに感情移入する事が出来た。共に人生の旅路を行き、苦しみの中で逝き、幸せに向けて生きるという前向きなメッセージが心を打つ一作だったと思う。
心の奥底に「寂しさ」を抱えた者同士が惹かれ合う純愛系ノベルゲーム。 ダークな雰囲気の作品という印象をプレイ前は受けたが、実際の中身は結構明るめ。 闇、鬱的な描写はあまりなく昨今のイチャラブ系ロープラを少し暗くしてみましたぐらいのテイストである。 歪な出会い方をした男女が結ばれるまでを丁寧に描いている事は評価できるが、 逆に言えば本作はその描写だけでほぼ全ての尺を使ってしまっており内容の薄さを強く感じた。 「空虚な心」「孤独」「家族」といった主題を前面に出すなら展開上もテキスト上もより深堀りした描写が欲しかったとも思う。 決してクオリティの低い作品ではないが、どちらかというとキャラゲーよりの楽しみ方が適していると感じた一作だった。
プロ棋士である父親を亡くし燻っていた少年が、夏の出会いを通し熱い想いを取り戻し、再び将棋へと向き合うまでの物語。本作は「夢」をテーマに作られた作品であり、そして夢の輝かしさだけでなく、その彼方に存在する絶望までも妥協なく描こうとした作品である。 やはり3時間程度のボリュームの作品であることから「夢の重み」を描くには少々物足りなさも感じたが、短編作品としては十分すぎる程作者の伝えたい「想い」が伝わってきた作品でもあった。是非一切の前情報なく輝かしい夏の日々を、そしてその先の「夏の日の後日談」を体験してほしい。短いプレイ時間ながらプレイ後には重みのある読後感が残る素晴らしい作品だったと思う。
フリゲRPG製作者はきか氏のエロ同人RPG第二弾にして、前作「SEQUEL blight」の続編となる今作。アホ可愛い魅力的なキャラクター、RPGとしてのバランスにこだわった歯応えのある戦闘要素、徹底的に意識されたユーザーフレンドリイなシステム面といった前作の良点はそのままに、新たな舞台で主人公+ヒロインズの活躍を堪能する事が出来た。シナリオのスケール感や戦闘要素の自由度といった点では正直前作の方が面白かったようにも思うが、単体の一作品として間違いなく楽しめたし、安定感のあるまさに「遊べる一作」だったと思う。 → 長文感想(1898)
大長編SF大河ロマンファンタジーSRPG。シリーズ総計で80時間近くのプレイボリュームというかなりの長丁場な作品だが、その長いプレイ時間で得たキャラへの愛着が感動となって帰ってくる素晴らしい構成の最終作だったと思う。ゲームとしてはSRPG要素はオマケ程度だったが、魅力的にキャラクターを描き切った一つの群像劇作品としては非常にSRPGらしい作品だった。魅力的に仲間キャラを描き切った一方で、このシリーズの最大の弱点は敵キャラの描写にあったように思う。然したる信念もなく身に余る力や立場に振り回されるような敵キャラばかりで、敵としての強大さが圧倒的に不足していた。また、SF パートのスケールが余りにも大きすぎて、説得性というか納得感に欠ける描写の存在も無視できない。長い長い物語だからこそ読者を冷めさせないこだわりがあと少し感じられればと惜しい気持ちにもなった一作だった。
小さな農村の長から始まり、やがては一国を率いる皇となった男の生き様を描く戦記物SRPG作品。内政チート系や成り上がり系作品の典型的な面白さを十分に表現している事に加え、その充実したADVパートからキャラ一人一人の魅力も十分に描けており一つの群像劇としても非常に感情移入できる作品に仕上がっていた。一方で、SRPGパートについては単純に褒められる内容ではなかったように思う。協撃や必殺技システムが強すぎる事に加え、「雑魚敵は待ち受け、強敵は囲んで倒す」の戦法が安定し過ぎてSRPG特有の詰将棋のような戦略性は感じられなかった。デフォルトの難易度では何も考えずに突っ込んでも勝てるバランスなのでもう少し戦略性に幅が欲しかったとも思う。とは言えストーリーの魅力に牽引され退屈を感じた瞬間はほぼなかった。キャラの魅力を押し出し群像劇作品としてプレイヤーを楽しませる、非常にSRPGらしい一作だったと思う。
フリゲRPG製作者蒼木ことり氏(ラハシリーズの人って言った方が分かりやすいかも)による短編「新本格」ミステリ作品。嵐の館、周囲と隔絶した状況での殺人という定番かつ王道のクローズドサークル作品だが、作者なりの工夫が短い中に多く詰め込まれておりキチンとオリジナリティを感じ取れる内容となっていた。犯人当てについてはヴィジュアルノベルならではの方法が用いられていることに加え、「証拠物が何なのか?」というそもそもから推理しなくてはならないので多少ロジックが弱いと感じた(とは言え確かに筋は通っていたけど)。フリーゲームながら美麗なOP動画がついていたり演出も手の込んでいたりとクオリティも高い。3時間程度のボリューム故どうしても内容的にライトなミステリに落ち着いてしまってはいるが、ある種の思考ミニゲームとしては十分楽しめた一作となった。
ロジック重視の考察ゲー、サスペンスゲーでありエンタメ性の高い作品でありながら、物語全体を通して一貫した主張のなされるメッセージ性にもこだわった一作。深海における生物が眼を退化させ、地上の生物が眼を進化させたように、「最善」は状況環境によって姿を変える。なれば、未曾有の大災害・大事故の中で、それでも最善を目指し生き残ろうと「選択」を続けた彼らを非難する声にはどれ程の意味があるのだろうか?悲惨な「結果」だけを声高に叫ぶ声は、彼らの「選択」を無視しているのではないか?『進化論』になぞらえた批判的なメッセージングが新鮮かつ印象的だった。不満点としては、緊迫した状況下における日常会話が作品雰囲気にミスマッチしていたこと、閉塞空間で動きの少ない展開が長々と続く一方動的な展開は尺が短いため作品全体が小さく纏まってしまったこと等。構成の出来も良く隙のない物語だがプレイ中に感じる冗長さが気になる一作だった。
ADV制作同人サークルLoser/sによる初のRPG作品となる今作。お手軽なエロを挟む同人エロRPGのお約束を守りながらも、短編としては異例の壮大なストーリー展開に驚かされた一作だった。ノウハウのないRPGジャンルへの挑戦ということで心配もあったが、RPGらしからぬ戦闘システムを取り入れる事により他サークルのそれとは一味違うツクールRPG作品となっている。欠点もない訳ではないし悪く言えばチープな作りではあるが、3時間程度の短編PPG作品としては満足のいく一作となった。 → 長文感想(1069)
10周年ということでこの機に初アサプロをプレイ。素直に面白かったです。 HOOK系列としてはSMEEほどクレイジーなギャグでもなくHOOKほど普通の萌えゲーでもない、程よいギャグバランスのアサプロと差別化が図られている点が好印象。 余談的な感想ですが、こういう作風だと好みのヒロイン像とかより家の雰囲気を気にする自分がいてどこか新鮮な思いでした。ヒロイン毎というより家単位でパートが分かれているのもあって、読んでいて居心地の良いお家のヒロイン√を優先的に選んでしまう自分に気づいて、こういう√毎の差別化も面白いなと。自宅のような安心感の新妻家がお気に入り。二次元的な見方というより物件探し的なやけに現実的な目線で見てしまったのもあってクレイジーな世計家とゴミ部屋の荒波家はちょっと√に入りづらかったです(苦笑)。程よいギャグとヒロイン毎の家族模様が魅力的な一作でした。
頭のネジが外れた奇人変人、クズ達が織り成すなぜか魅力的な短編集作品。どうしようもない不幸を抱える登場人物達が無理やりにも前を向き、自棄になってでも突き進み、不器用にも愛を語る姿が非常に魅力的で彼等の事が大好きになってしまった。テキストも共感を誘う文学的、情緒的な書きぶりで感じ入るものがある。収録されている3作はそれぞれかなり趣の異なる作品だが、登場人物たちのキャラクター性故か不思議と統一感を感じる仕上がりとなっている。物語の展開やキャラ設定などは相変わらず突飛で無理やりな感じも漂うのだけど、それらを覆い隠すほどキャラクターの魅力とテキストに魅せられた作品だった。傍から見れば明らかにクズでしかない男主人公達も、妙に人間くさくも可愛らしいヒロイン達も、終わってみればすべてのキャラに愛着を感じてしまうところがこの作品の妙なのだと思う。物語を牽引する活き活きとしたキャラクターが魅力的な一作だった。
心理学+サスペンス+キャラ萌えと様々な要素を短編につぎ込んでいる作品。 キャラ設定に現実味のない設定を採用し、更にサスペンスも心理学も文学もと各要素を盛り込み過ぎた印象を受けた。各要素に力が入りきらずそれぞれの展開が余りに軽い。 メインの心理学もそれ単体では引用の意味が感じられず、主人公の設定の味付け程度にしか機能していなかったように思える。 しかし一方でキャラ萌え要素は本物。トラ子の純朴な可愛らしさと娼婦としての(ほんの少しの)生々しさが絶妙にマッチしており非常に魅力的なキャラクターに仕上がっていた。 少々評価が難しいが、あくまでイチャラブゲー、トラ子ゲーとして観るならハイスペックな一作だった思う。
ハイクオリティなグラフィックとアニメーションが手軽に楽しめる動画作品。 内容は前置き+2シーンだけで10分もあれば終わるが、 ボイス付きの高品質作品で手っ取り早くエロを楽しむというコンセプトは悪くないと思う。 システム面も視覚的に操作が分かりやすく、オートモードも完備と親切設計。800円という値段設定はやや強気なような気もするが、コスパ的にも一定程度の満足度は得られた一作だった。
「物語の迷宮」へようこそ。キャラ個別√制を採用しながらもそれぞれの物語が複雑に絡み合い、最終的に一つの壮大な物語を紡ぎだす構成は見事。 シナリオ面では古くささなど微塵も感じさせず、現代でも十分に通用するクオリティの作品と言って良いだろう。一方でシステム面は現代水準ではかなり劣悪な部類。 テキストも現代ノベルゲーマーの感覚では決して高水準とは言えない。本作を十分に楽しむためには、本作は「リメイク」ではなくレトロゲームの「復刻版」に近いものであること、 そして「ノベルゲーム」ではなく正しく「アドベンチャーゲーム」であることの2点を覚悟したうえでプレイする必要があると思う。 → 長文感想(3057)(ネタバレ注意)
確かに短い(1キャラ1時間かからない程度のボリューム)が、短い以外は特段の不満点もなくSMEE流のギャグと萌えを楽しむことが出来た。 本編同様テキストの質も高いところで維持されており、FDとしては前作ファンを十分楽しませる事の出来る内容だったと思う。 ネックはやはりボリュームで、プレイ時間1H=1,200円程度(平均的なフルプライスで大体1H=400円くらい)と考えるとやはりコストパフォーマンスは悪い。 他に目立った悪い点もなくコスパ面さえ改善できればFDとしては更に高い評価を得られただろうと考えると、ちょっと勿体ない売り方をした一作だったと思う。このボリュームならヒロイン5人1本にまとめても良かったかな。
キャラゲーは嗜む程度でその方面を専門にしておられる諸兄には経験も敵う筈のない私の感想ではあるけども、こと単発物ロープライスのキャラゲー特化型という条件下ならこのライターさんが今一番実力があるように感じる。ロープラ作品はシナリオの出来は捨てて可愛いキャラとのイチャラブに終始するものが多いが、結局短い尺のなかでキャラの魅力を引き出し切れずただの「エロシーンの連続状態」で終わってしまうものがあまりにも多い。その中で本作は日常の何気ない会話からヒロインの個性というか愛嬌を魅力的に描くことに成功しており、ちゃんと「キャラゲー」として成立していると感じた。テンプレから一歩踏み出したヒロイン独自の魅力を短い尺でちゃんと作り上げている。一作品ならまぐれもあるが前作に引き続きこれだけのモノが書けるならライターの実力と判断してしまっても良いと思う。これからもご贔屓にしたくなるヒロインの魅力あふれる一作だった。
超豪華演出付きの映画的に見る絵本。ALICE IN DISSONANCEの凄まじい演出力に、アイロニーたっぷりの大人向け童話があわさり不思議な魅力のある一作に仕上がっていた。内容的にはライアーソフトとかに近い感じだろうか。2時間と少しのボリュームに明らかに過剰なスチル量をつぎ込み、音楽も手を変え品を変え常に物語の変化を感じとれる作品となっている。シナリオも「大人への成長」というこのジャンルでは使い古されたテーマながら丁寧に描こうとしているのが伝わり、短編作品ながら何度も涙してしまった。「シネマチック」を売りにするこのブランドらしい動的な絵本作品だったと思う。
原作の進度にビジュアルノベル版が追いついたようなのでここらで一気にプレイ。読みやすくも細部まで丁寧に描写するテキストや登場キャラの人間味溢れる魅力といった原作の良点をさらに活かす方向でビジュアルノベル化がされており、この作品のゲーム化としては理想的な形なんじゃないかと思う。ADV形式を避けたおかげで文章に集中できるし、立ち絵やCG、音楽等も手抜きなく場面の臨場感を盛り上げるのに一役買っていた。エロシーン含め全編面白く、細かく話に山が作られているため一気に読み進めることが出来た。原作未完の小説のノベル化ということで手が出しづらいと思っている方も多いかもしれないが、今回のvol.3で話は大きく一区切りという形になるのでこの機に手を出すのも悪くないんじゃないかな。原作の魅力を活かすノベライズのお手本的な一作だった。
12名の男女が死の運命を回避するため、各々の《氏名》《死因》《未練》を探りあうデスゲーム作品。 あらすじから権謀術数飛び交う頭脳戦系の作品と予想していたが、デスゲーム作品特有の駆け引きや緊迫感はかなりひかえめ。 むしろ死にゆく己の運命と残された時間にいかにして向き合うべきかといったヒューマンドラマ要素がメインのノベルだった。 それなりに多いキャラ各々に焦点があたるが一つ一つのエピソードが短く、ヒューマンドラマ作品としては描写不足と言わざるを得ない。エピソードのメインとなるキャラがころころ入れ替わり感情移入しづらく感じた。 シナリオ以外の音楽、CGといった他要素にかなり力を入れている事が伝わるがゆえに、突き抜けた要素が一つでもあればと惜しい気持ちになる一作だった。
ミステリを得意とする海原望氏による3作目のミステリ作品となる今作。 前作は物理的に犯行が実行可能かを主題にする昔ながらのミステリ作品、所謂「本格派」の流れを汲む作風だったが、今作は加害者や被害者の属性に主眼を置いたプロファイリング系のミステリ作品に作風を移している。純粋な意味でロジック系の「推理モノ」ではないので注意。 ボリューム不足に加えプロファイリング系ジャンルの弱点(あくまで統計的な分析に止まり説得性に欠けることがある、大衆から犯人を割り出すため犯人がぽっと出になりやすい等) がそのまま目立ってしまい全体的にカタルシスに欠ける内容だったが、作り自体は丁寧で無難に楽しめた一作となった。
伝奇×ホラー×SF×サスペンス。あとはちょっとミステリも。短めのボリュームながらプロットや世界観、伏線の作り込み、種明かしの意外性の演出には気が遣われており、ライトな伝奇モノを楽しむには良い作品かもしれません。しかし短いボリュームに余りに壮大な設定群を詰め込んだせいで風呂敷の拡げ方とたたみ方は結構雑な印象を受けました。時間をかけて見せ方を変えればまた違ったのでしょうが、正直なんか話が薄っぺらくなっちゃった感が強かったです。設定と世界観はすごく良く出来ていたので惜しい気持ちになる一作でした。 → 長文感想(2423)(ネタバレ注意)
普通のキャラゲーといった感じで可もなく不可もなくという印象。特徴的なキャラ付けが多かったけど、 バックグラウンドとなるエピソードもないので特に思い入れの強くなったキャラも出来ず。 ハーレムものっていうシチュエーションだけが先行していたイメージが強かったので、もう少しキャラ作りにも力を入れられれば また違う作品も出てくるのかなと。キャラゲーにしてもちょっと薄味な一作でした。
ようやく終わった…。本当にとんでもないボリュームの作品だが、周回必須で少なくとも2周はしないと第2部に辿り着けないゲームデザインなので、やっぱランスが好きなユーザーじゃないと厳しいと思う。ゲームバランスも勝てるか勝てないかの間を彷徨う絶妙なバランスなので、めんどくさい人にはめんどくさいと思う。手放しで褒められるかは分からんけど私は本当に楽しませてもらいました。願わくば第3部パッチとか欲しいけど、取り敢えずランスはここで終わりとのことなので、感謝の感想を残して終わりたいと思います。ありがとう、ランス。
2012年に公開されたフリーゲーム「魔法少女」のフルリメイク作品。某フリゲ批評サイトで90点越えなど元から評価の高い本作だが、大きな弱点であったSRPGツクール95の不親切なシステム性やレトロなグラフィック感は完全に解消され、現代のゲーマーにも遊びやすい一作に見事に生まれ変わっていた。かなりの長編作品だが難易度はほどほどで間口も広いだろう。本作の最大の特徴であるシビアかつリアルな魔法少女戦記、そして群像劇を織りなす多くのキャラ達の魅力が生まれ変わった豪華演出により一層輝いていた。ストーリ―も勿論良いのだけど、やっぱりこの作品の一番の褒め言葉は「キャラが魅力的」なのだと思う。少女達の絶望や苦悩にともに一喜一憂し、気づけばのめり込まされる一作だった。 → 長文感想(1155)(ネタバレ注意)
マンネリ感もない訳ではないし、いつも通りの内容と言えばそうなのだけど、作中の言葉を借りるならコレはもうこのサークルの「文化」なのだと思う。 虚無的な寂しさや遣る瀬無さを抱える人達への優しい「許し」を描くというコンセプトは変わらずとも、過去作とは異なる言葉遊びが印象に残る良テキストの作品だった。一言で言えば、 どこにも居場所がなく誰の一番にもなれない自分が嫌になるような「寂しい夜」にぴったりの一作。ヒロインが増えた分いつもより雰囲気が明るめなのでロリータシリーズ入門にも良い作品かもしれない。