まつさんの新着コメント
まつ
エロゲならではの空気感を堪能したい。
絵と音と文章、それに演出でどっぷり浸からせてくれるのがエロゲ(ビジュアルノベル)の魅力と思っております。
映画でも漫画でも小説でもない、私が特別このジャンルを愛好している理由です。
採点は個人の満足度に依るところが大きく、非常に主観的なものです。
また、内容の善し悪し以上に好悪が多分に入ってたりします。たとえ荒削りであろうとも、少しでも琴線に触れる要素があれば高評価になりがちです(逆も然り)。
初期頃にやった作品は、強い思い出補正がかかってるかも。
なお、言動が意味もなく不快なキャラ(理不尽暴力系ヒロインetc)、展開に納得いかない…など気にいらない要素は容赦なく減点対象としてます。
点数について:
相対的な序列感をより明瞭にしたいという意向から1点刻み。それゆえ、1点には重みを設けてます。適宜、調整も。
プレイ時間について:
計測ソフトを使用してるので正確なはず。基本的にボイスはあまり飛ばさず、じっくりプレイしてます。参考になれば。
【指標】
90~:マイベスト。
80~:とても良い。十分に堪能できた。
75~:良い。満足できた。
70~:まずまず。普通に楽しめた。
65~:もう一歩。楽しめなくはなかったが、物足りなかったり不満点が目立つ。
60~:いまひとつ。あまり楽しめなかった。
~59:悪い。あまりに質が低かった or つまらなかった or 肌に合わなかった。
- X :
- matsu520_sub
新着コメント
アオナツラインの悪い部分を煮出したような香子√のこと → 長文感想(1825)(ネタバレ注意)
豪華声優陣の織り成す賑やかな作品でした。配役には目を通さずにプレイを始めたのもあり、声優当てとか楽しかったです。キャラは皆よく立っていて特徴を掴みやすいのが、登場人物覚えるの苦手な私にはありがたかったり。しかし一方で、捨てキャラを作らず誰も彼もを活躍させようとした功罪が、場面やエピソードを継ぎ接ぎしてパッチワークみたいになってしまったシナリオにあるかも。読んでてあっちこっちへと気が散らされてしまった。また、せっかく国単位でルート設計してあるのだから、判で押したように同じ結末を辿るのではなく、もっと差別化しても面白かったような。ともあれ、キャラそれぞれの持ち味を生かした采配は見事。何の強みもない私からすると一芸に秀でることってとても眩しく見えます。その中でもエビータの持ち“味”は頭一つ二つ抜けてる。彼女の料理にかける情熱は種族や国境の壁すら超えます。すごいぞエビメシ。
グロテスクな人間讃歌。乳首をビンビンに勃起させ肥大したクリトリスをいじくり回し愛液と腸液を撒き散らしながらも毅然と戦い続ける魔法少女たちの勇姿に刮目せよ。 → 長文感想(5458)(ネタバレ注意)
淡々としつつもどこかユーモラスな会話劇とか独りよがりなモノローグなどは、新島節炸裂と言った具合に大いに楽しませてもらいました。新島氏の独特のリズム感あるテキスト、私は好きです。でもそれだけなんですよね。個別√だけでは話が見えてこないし、肝心のグランド√にしたって設定語りの面が強すぎて目が滑ります。機械的にプロットをなぞるだけの血が通っていないシナリオ。情感というものが決定的に欠けていたように思います。さておき、本作において救いがあるとすれば、とりあえず“新島作品”をやっている気分になれたマイエンジェル唯々菜たん√でしょうか。『ナツユメナギサ』や『はつゆきさくら』とかの過去作品群が頭を過ぎるのはご愛嬌ですが、センチメンタリズムを誘う幻想的なファンタジーとして雰囲気だけなら浸れました。押しが弱っちくて流され放題だけどそれが満更ではなさそうで幸せそうにしている唯々菜たん、マジ天使。
「変わってゆく幼馴染の関係性」と「輝きを失いつつある夜空」が、思い出を軸として絶妙に重なり合うことで、感傷的ながらもロマン溢れるものに仕上がっていた印象です。スターライト計画は、昔の夜空だけでなく三人の関係性をも取り戻すものとして実に効果的でした。一方で、主人公をめぐる三角関係の描写は、互いの忖度や遠慮による譲り合いがどうにもしんどかった。わけても、沙夜の諸々の行動は、周囲の迷惑を顧みない身勝手で自分本位なものと映ってしまい、私にはちょっといただけなかったです。さておき、露天風呂のシーンは大変素晴らしかった。行儀よくちょこんと縮こまっている沙夜の隣で、まるで実家の風呂にでも浸かっているかのようにでーんと鎮座しているひかり。対照的な二人がバランスよく収まってる。童心にかえったかのように無邪気に見せ合いっこなんかしてるの見ると、大人になるってやっぱ罪なことだなぁと思ってしまうのでした。
フィレンツェを舞台にした人情物語。群像劇らしく視点の切り替わりに最初こそ戸惑うものの、そのときどきで感情移入するのに最適な人物が設定されているので、すんなりと溶け込めました。彼らの営為を活写することに注力し、各々の口から信念やら哲学やらあるいは感傷やらを語らせているうち、愛着はあとからついて来た。ひとりひとりをくどくどと掘り下げていくことはしない、それこそミケランジェロ広場からフィレンツェの町を一望するがごとく、俯瞰した立ち位置でもって人間関係の網目が可視化されてくると、世間の狭さをシンクロニシティとかセレンディピティといった胡乱な言葉でもって形容したくなる。それぞれの物語はわずかに交差しながらも決して重なり合うことはなく、どこまでもニヒルにほくそ笑んでおりました。余談ですが、本作の線が細くコケティッシュな少女たちを見るにつけ、ナボコフ先生の言う“ニンフェット”が頭をよぎります。
チャーハンの味だけは、忘れなかった。
たまたま広告が目に止まり、この手のジャンルにしては可愛い絵だなあと思ってさっそく公式ホームページを閲覧し、サンプルボイスを聴いているとすっかり買う気にさせられてしまった。特に悠香のボイスが良い。七色ほたるさんの甘い声質がどストライクだったのもあるけど、絡みつくような粘度の高いチュパ演技は、吐息とじゅる音の配分が絶妙だった。マイサンなんかビンビンに臨戦態勢だし、こりゃもう買うしかない。というわけで本能に従って購入を即断したわけだけど、結果的に言えば良い買い物をしたと思う。まぁNTRゲーとして読むなら、堕ちる過程が超特急で結果だけを見せられている感じのお粗末なストーリーなのだが、少なくとも悠香のHシーンは期待していたお口シチュも多くて満足だった。残念ながら卑語は喋ってくれなかったけど。また、純愛ゲーとして楽しみたかったと思ってしまうくらいには、悠香に萌えられたのは僥倖でした。
力作だとは思うが、やや手ぬるい。マーケティングを過剰に意識するあまり、それがかえって自らの首を絞めることにもなっていたような。 → 長文感想(5813)(ネタバレ注意)
とにかく騒がしかった。お調子ものたちが息つく暇も無しに次々と漫才を繰り出しながら話を転がしてゆく、ある意味単細胞なシナリオ。学級崩壊など意にも介さないくらい悪ノリが過ぎるヤツらばっかなのだけど、遠巻きに眺めている分には楽しそうだから良いかなって思っちゃいます。いや、間違ってもあの輪の中に混ざって行きたくはないけれど。その一方で、個別ルートでは湿っぽい展開へ。食べ過ぎたスナック菓子の後には喉の潤いが欲しくなるように、そのギアチェンジはお見事。序盤の暑苦しいテンションとは裏腹に、雨上がりの景色のように清爽な読了感でした。ワンワンしっぽ振りながら纏わり付いてくる脳天気な結未と、“モノ”としての義務感とばかりに付き従おうとする健気な姫子は殊に印象的。始終笑みを絶やさずにいてくれるのを尊ばずにはいられないし、些細な幸せに満腹感を得られてしまえば、もっと欲張って良いんだよって言ってあげたくなる。
ありふれたテーマを捻りなくストレートに描くし、Kanonあたりを下敷きにしているのもあって新味には乏しいです。何より、梗にCLANNADの杏が重なってしまい、回れ右したくなった。この手の傲慢女は私にとって癌そのものでして。あの屋上の場面で、裕貴の振り上げた拳がそのまま叩きつけられていれば多少なり溜飲は下がったかもしれないのに。それでもなお本作に高得点を付けたのは、ひとえに由衣の存在ゆえ。近すぎず遠すぎず肩の力が抜けた距離感、打てば響くやり取り、生活感に溢れた日常シーン、どれもが兄妹という関係を裏打ちしている。こっそり寝室に忍び込んでタオルケット掛け直していくのとか好きです。たまにの料理の失敗だってご愛嬌。涼森さんの演技も、台詞のテンポや抑揚など、役柄を完璧に自家薬籠中のものとしている感じが素晴らしい。不幸の迫るシナリオは好みじゃないけど、最後は良い意味で気が抜けてしまい笑顔になれました。
女の浅ましさを、ある種の男性目線から語ったような作品として映りました。「ヒステリックな女ほど、ウザい存在は無い」とか「ちづなは文句も言わず、ただ黙ってオレに従うのだ」あたりのテキストには、私の胸中をも言い当てられたような心地がしてギクッとさせられました。ところが、とあるENDでクルッと手のひら返されたのには呆気に取られつつも笑ってしまった。女なんて口では大層なことを言っていても、実際に身の危険が迫ればまぁこんなもんだよねっていう。身から出た錆をニヒルに見つめる客観視が痛ましい。
Moi!私情ですが、『こころナビ』という作品をきっかけにフィンランドという国に勝手な親しみを抱いていたので、レナに対しても思いがけず親近感が湧いてしまった。異文化交流を会話の軸にしたお話は興味深く読むことが出来たし、彼女の口から語られる屈託のない郷土愛を聴いていると、遠い異国の地にこちらまで想いを馳せてしまう。普段馴染みのないものへの関心を促してくれる機会はありがたかったりします。桐t…沢澤さんの怪しい言葉遣いやイントネーションも良かった。これが同じ日本人ならひっぱたいてやりたい類のものだけれど。わけても「セックチュ」はツボ。しゃっくりの仕組みのように、思わずその言葉が飛び出してきたみたいな発作めいた発声には耳が可笑しかった。ちなみに茉子√は高く評価しています。本作ではゆいいつシナリオを調味料にヒロインの魅力を引き出すことに成功してたような。“キャラゲー”やるなら、これが正解。
レン君と美弥香さんの例の場面でパンツまで下ろして待機してたのに何たる仕打ち!!!鼻先にぶら下げられた人参を唐突に見失った馬のような気分を味わってしまったことを、恥ずかしながら、ここに正直に告白しておきます。いや、私だけじゃないはずと信じたい……。チベットの悲劇再びですね。
響の存在が私の目を釘づけておいてくれたので、円香にいくらアプローチを掛けられても全く心が動かなかった。主にエロゲでは複数のヒロインを順繰りに攻略していくことになるけれど、好みのヒロインとそうでないヒロインとでのいかんともしがたいモチベーションの差は誰しもが実感あるはず。樹くんもまた、建前上では円香とつき合いながらも常に心は響に向いていて、怖いくらいに私の感情と一致をみることに。カタチから入る恋愛(攻略)には、ある種の割り切りを必要とする場合もあります。気が乗らない相手だけど、身体はえっちぃからHシーンではオカズにして使っちゃおうとか、そのくらいの余裕が出てきて初めて、バイアスのかかってるうちは見えてこなかった思わぬ魅力が覗けてきたりする。印象の上書きが迫られます。我ながらゲーム脳極まってる感じであれですが、「心」と「身体」の不一致が、いくらかメタ視点とも絡まってきたりして面白かったです。
風莉さんのおしっこ → 長文感想(17322)(ネタバレ注意)
ゆっ、ゆるすもんかぁっ、こんなっ、こんなせかいっ!!こわしてやるぅっ、何もかも全部ぅっ、ぶち壊してやるぅぅぅぅっ!! → 長文感想(10118)(ネタバレ注意)
あまりにロマンチシズムの色濃い作品。もちろん“お伽話”に徹底するならばそれで良いと思う。ところが本作では、皮肉にもSF要素によって作り物めいた嘘臭さが際立ってしまっている。発想は面白いが、さすがに無理があるかと。また、主人公のモノローグも鬱陶しい。内省に内省を重ねていくテキストは別に構わないが、では何が鬱陶しいのかって、そのモノローグを借りて逐一同意や共感を求めてくるような作者の暑苦しい語り口である。極めつけは、物語への没入感の薄さ。設定や構成は非凡なので、おそらく書き手の腐心は第一に設計図にあったのだろう。その為、まるでそうインプットされてるみたいに設計者の指示通りに都合よくキャラが動いてるように見えてしまい、物語に流れる情感とかいったものが希薄なのだ。「ぼくのかんがえたさいきょうのせってい」を自慢されても、「ふーん」としか。“りんね”の貧乳体型とゆかりんボイスはご馳走様。
テーマはたぶん「決別」。此処ではない何処かを見つめていて、ふとした拍子にすっと消え失せてしまいそうな危うさが、まざまざと離別を予感させたりする。と同時に、そこへと引き寄せられたかのように立ち現れる怪奇現象は見事な舞台装置となっており、作中ではそれを解明しようなどと野暮ったい視線を向けることなく、ピンぼけ写真みたいにして、あえて謎めかしたままにしてしまう。その“ぼかし”は、例えば日和と主人公との関係性にも効いていて、仮に彼らの間に横たわる蟠りなどが赤裸々に語られてしまったなら、この神秘的な雰囲気は途端に損なわれてしまいそうで。妄想や想像で補完したがりな人向け。また、取っ付きにくいヒロインが多数を占めるなかで、桜庭兄妹の冗談半分に憎まれ口叩き合ってる光景は、なんかもう見てて微笑ましくなっちゃうから、最初のうちは物語への橋渡し役として実にありがたかったです。仲睦まじさがダダ漏れてる。
強敵シンボルに接触し、出会い頭に無慈悲な一撃を振るわれる度に興が削がれていく。触らぬ神なら祟りも無いけど、起こるべくして起こる接触事故が困り者。ぎりぎり倒せるくらいの調整がなされてるならまだしも、その進度では全く歯が立たなかったりもするので、いかに奴らを躱していくかに労を要するゲームとなる。その一方で、ボス戦はオートボタン一つで勝ててしまうことも。どうにもバランスがよろしくないです。また、RPGとしては世界観の奥行きや拡がりに乏しいのもあり、お話の行方にはまるで身が入らなかった。その上、エロとゲーム性の融合と言うほど双方が密接に絡み合ってるふうでも無く、むしろ各々が独立してた印象。とはいえ、エロ単体ではそれなりに満足。M&M氏の描くニカッと口角をあげたトロ顔などは、ドスケベな身体にあってもどこか上品で、見惚れちゃいます。おしっkじゃなかった潮吹き時のSEも良質でした……!
五つ子とはその実、橋の下から一人ずつ拾ってきたんじゃね?ってくらい不揃いな姉妹たちには敢えてツッコむまいけど、主人公とは義理の関係程度にしといた方が据わりよかったと思う(華麗にタイトルスルー)。それで不都合あるようにも見えないし、あそこまで気兼ねなく近親恋愛が成立してしまうと……いや、頭じゃなく股間で語った方が有意義ですね。エロ関係では、特にタッグを組んでの一風変わったシチュエーションにはお世話になりました。その反動か、個別√ではシナリオの流れとも一緒くたとなった“ふつう”のシチュばかりで物足りなかったけど。また、Hシーンでのお漏らし率100%を記録せんばかりの音琴ちゃんだったけど、私は属性としての「おしっこ」よりもシチュとしてのそれが見たかった。これじゃ、おしっこのバーゲンセールじゃないか。ハーレムHでもひとり尿を発射して美味しいとこを持ってく姿勢にはなんかもう天晴です。
話の方向性は悪くないけど、転がし方には難あり。状況展開が稚拙かつ内心への踏み込みも不十分なため、どうしたって浅い読感になってしまう。すると、理屈ばかりが先行してしまい、感情面で追いきれないのです。とりわけ、あい√は、テーマを押し通すあまり牽強付会とも思えるし、強引に辻褄合わせにかかる終盤などは完全に蚊帳の外。ひとり、演劇でも眺めてるような居心地です。演出や映像美がいくら一級品でも、そこに胡座をかいてるだけでは良い作品とは成り得ません。とはいえ、風香のキャラは良かった。お手玉にされたいとか思ってしまった時点で私の完敗。ゾクゾクくる。無遠慮で図々しい物言いも、あれだけ堂々と居直られてしまうと反駁するのも馬鹿らしくなるし、何よりくすはらボイスが上手いことクッションとなって嫌味も無かった。やけに馴れ馴れしげで、ふっと距離を詰めにくる風香の声音は、事実以上の説得力すら与えてたような。
表現の限界を突き詰めるがごとく苛烈なグロ描写が売りだけど、シナリオも決して力負けしてない。酸鼻な光景を肴にハレルヤな勢いの醜悪で倒錯的なカリカチュアは、人類史などのモチーフによってもよく支えられてたように見えます。私がこの手の作品をプレイする動機の一つとして、まだ見ぬモノへの好奇があるのですが、その点では大いに満たされました。もっとも、これだけバラエティに富んだシチュが溢れていながら、一番実用足り得たのがキャロルとの純愛エッチというのは我ながら情けない話ですけど。あるいは、剥き出しの獣欲ばかりが闊歩して輪姦る舞台であるがゆえ、そこから対比的に生ずる“綺麗なもの”に特別興奮できたのかも。それはそのまま本作の描くテーマにも通ずるけど、惜しむらくは彼らの信念とか理想といったものに寄り添いきれなかったとこで。短い尺にあれこれ詰め込みすぎたのか、いかんせん散漫としたプレイ感でした。
完結編としては申し分ない出来。1作目からこつこつ積み上げられてきた伏線の数々を綺麗に花咲かせる綿密なプロットには舌巻きました。シリーズを通して事実関係の齟齬や矛盾は取り立てて見当たらず、キャラ達にはきちんと提示された材料の中から解決の糸口を探らせているので、後出しによるインフレなどは抑えられていたような。読み手を関心を良く惹きつけていた端整なシナリオです。なれども、痛し痒しなのがモー子との恋愛描写。とりわけ彼女は主人公の良きパートナーとして描かれてただけに、当初の啀み合いから阿吽の呼吸にまで進展していく経緯を、事件のみならずイチャラブベースからも活写して欲しかった。それこそ彼女一人に的を絞った構成がなされていたら、お話としてもより引き締まったのではと想像すると一片の物足りなさがあります。なんでも色事と結びつければいいってものでもないけど、エロゲで出す意義ってそこにあると思ってしまうので。
SFとしてなら、未来世界の実態なども含めて結構おざなり。けど、過去と未来とでの価値観のズレが、やがて“SEX”へと焦点を当てにいく筋書きは巧い。牧歌的な田舎の空気や夏の開放感などは、性行為を嫌味なく溶け込ませるに打って付けだし、青姦から喚起されるはまさに動物的な本能。「子作り」が強く意識される。なかでもアリカ√は、性行為というものを男女の営みとして如才なく落とし込んでいたシナリオ。すっぽりと抜けた穴(性知識)をチンコで埋めていき、愛情でもってコーティングもばっちり。エロゲの文法にも忠実です。一方で、同じく性に未熟な“いろは”は、やにわに手練手管を発揮してくるから、上手く飲み込めないまま付き合う羽目に。無垢な娘みたいにしか見てなかったので戸惑いました。ところで、表情や仕草をころころ切り替えていく演出技法はすっかりクロシェットのお家芸だけど、私には百面相みたいで些か忙しなかったりします(小声)
ツルゲーネフちゃん可愛いと思えたなら、主人公がちょっと突飛なことやっててもすらすら入っていける内容。「本編」での彼女は神秘的で良いのだけど、「初恋」で人となりを明かしておいてくれたのは有り難い。おかげで「よろしく」では内心を謎解きみたいに想像する楽しみに繋がったし、再度「本編」に戻ってニマニマするも一興です。ロマネスクな内面は文学少女みたいで、外面とのギャップも映えた。あるいは、ツンとデレのバランスの妙はそういう下地があってこそ輝いたのかも。『初恋』のジナイーダにもこのくらい可愛げがあったなら…とか野暮なことも思ってしまった。また、宮崎美月さんの演技も抜群に嵌っていて、作者様が「これしかない!」と述懐してたように、素直になりきれず小生意気な態度をとっちゃう彼女を見事に表現してました。ついでに、NG集の「にゃーにゃー」は本編の内容が丸ごと吹き飛んでしまうくらいの破壊力。表情筋も溶けた。
ルイリーのちょこんとした佇まいが愛くるしかっただけに、彼女と過ごす時間をもっと味わいたかったのが本音。機能的なまでの復讐劇とのトレードオフにおいて、そうした“日常”はオミットされてしまった印象を持ちます。それゆえ、「あにさま、ぜんぜんルイリとあそんでくれない」と彼女がブーたれちゃうのも致し方無くて、けど一方で、そのふくれっ面が無性に愛らしく思えると、妹のご機嫌取りするタオローとは何やら近づけた気がする。それに伴い、ルイリーの発する辿々しい言葉とか、兄さま然としたタオローの語調とか、リメイクにあたって実装されたボイスにはつくづくほだされました。少ない“日常”を噛み締めることにも繋がったかも。また、アクションシーンにたっぷりまぶせられた外連味は、ときに復讐鬼としての兄さまをも浮き彫りにしてしまうから、結末を想えば想うほどにただ哀しくなる。非18禁だけど、思いの外エロかったのは僥倖でした。
一見すれば最低ヤローな主人公ですが、事が発覚するまでズルズルいってしまう状況には卑近感。振り返ってみたときの遣る瀬なさもセットで。親友の方もヘタレには違いないからあまり同情できなかったりはします。また、テキストに描写を丸投げせずにCG演出とも一体となった構成は、程よく遊びが設けられており、そこにプレイヤーの抱く色んな感情までもを乗っけてしまえるために物語はなお感傷を帯びてゆく。目の眩むようなキラキラした青春模様は私にとってのファンタジーですけど、本作のくすんだ空模様に似た息苦しさはどこか身近で、思いがけず学生生活を追体験してる気にもなれちゃいました。一年間って長いようであっという間なとことか、現実における時間感覚にも似てて余計に。合間合間のミニゲームやら調教パートは別段シナリオの流れに一切干渉しないので、そこで自分勝手に妄想を組み立てられれば美味しかっただろうけど、案の定作業感のが勝ち。
キャラやシナリオ、CG、音楽に演出、どれを取っても高水準で極めて総合力の高い作品。FCという架空スポーツを通じた個々の身の丈に合わせた物語はテーマに過不足無かったです。そのFCについても、各人の相性や作戦の如何によって多彩な勝利パターンが味わえるところに、画一的な試合運びにならないよう創意工夫を凝らした跡が伺えます。競技としての伸び代が示されたのも、貪欲に空を求め続け、“楽しむ”ことを決して忘れなかった明日香の姿勢と一体で好し。追い風を受けてどこまでも無邪気に飛翔してしまえるのが彼女です。主人公との関係性に着目したとき、明日香がそうやってぐいぐい手を引いていくのだとすれば、みさきは一緒に二人三脚をやる。天才肌なれど地に足は着けてるから共感はしやすく、泥臭くも向かい風にぶつかっていく姿には胸が打たれました。もっとも、気分屋な彼女にはいつ転んでやしまわないかとハラハラしっぱなしでもあったけど。
毒入り砂糖菓子みたいな作品。メルヘンとは一見そぐわないような性行為とか冒涜的に映るけど、その実、オトナによって都合よく改変なり隠蔽なりされた欺瞞を看破しているとも取れる。「めでたしめでたし」に向けた痛烈な皮肉も込み。職員の姿などは、顔とか服装とかボイスとか人物を識別しやすい部分が全てオミットされてる分、一挙手一投足が余計フックに引っかかってくるようで、立ち絵のポーズには目を引かれました。それはコドモの目から見たオトナの図にも似るのかもなんて思うと興味深くもあり。そんなふうに雰囲気に酔ってるうちは良かったのだけど、いざ舞台裏へとスポットが当てられると、私の中で“キャラクター”は“他人”へと途端に変質してしまい、その遠さは徒となってしまった。興味の持てないドキュメンタリー番組でも見てるような感覚。そういう意図を持ってお話が組まれていたのだとしても、私は賑やかさの中に取り残されていたかったです。
馬鹿ゲー?電波ゲー?哲学ゲー?青春ゲー?残念、魔法少女ものでした(大嘘)という感じに、まさにごった煮。言動とか少し人並み外れてるけど一応は地に足の着いたお話かと思いきや、唐突に顔芸始めてみたり、エスカルゴ斉藤が実は黒崎さんで「なんでやねんwww」とか「『うっかり八兵衛』しつけーよwww」とかツッコミ入れながらゲラゲラ笑ってると、いつしか足は地上から宙へと飛んでました。ついでに頭のおネジも飛んでました。徹夜明けの変なテンションにも似てる。洗練されきってないからこその勢いは、やりたいことを野放図にやってみる制作陣の熱い魂が感じられます。素人感溢れるボイスも、何かと雑多な本作には妙に溶け込んでた。わけても、開口一番の監督ボイスにはお茶吹きました。不協和音を奏でまくってる具材を纏めて包み込んじゃう収拾の付け方はカレー粉みたいな強引さだけど、そうしたB級感こそ愛すべき作品。
[ネタバレ?(Y1:N0)]15分程度で読み終わるフリゲ。豪華にもフルボイス仕様(登場人物2人しかいないけど)。社会不適合者の主人公が虚勢張ってる姿とか、ちょっと居た堪れない。それこそ、人によっては傷口を抉られてしまいそう。親が死んだら自殺する予定だとか言っときながら自殺する勇気なんてありはしないと自己決着してる部分などは、それなりに身につまされたりしました。こういう人間に「頑張れ」は禁句。惨めな自分を浮き彫りにされて、余計に追い詰められてしまう。しかも、親経由で近況がバラされるってそれ最悪の仕打ちじゃないですかああああ……悪夢にも等しい。そんなふうに、彼の気遣いは神経を逆撫でするものでしかなかったかもしれないけど、そういう友人がいることの幸せって大概後になってから気付くもの。とはいえ、非生産的な繰り言ばかりでは「だから何?」って話なので、もう一歩踏み込んだ何かが見てみたかったところ。
読後は胸にしこりを残していく。過ぎ去った日々を回顧するような語り口とノスタルジックなBGMは、自ずと感傷を誘ってきます。15分程度で読了できる長さも、追想に耽るには程良い加減。ふと、BUMP OF CHICKENの『車輪の唄』とか頭を過ぎってきたけど、淡々とした進行、それでいて情感たっぷりのフレーズだとか近しいものを感じます。何気ない仕草や台詞などの断片から、情景がいくらでも頭の中に浮かんでくる。単なる友情とも、かといって恋愛とも違う曖昧な関係は、けど肉体関係がきっとお互いを特別なヒトにしてた。当時の甘かったキャンディは歳を重ねた今となってはほろ苦いのだけど、あのときベッドの上で交わした他愛無い口約束のように、いつしかそれも記憶の底に沈んでいってしまうんだろうか。。
ダイジェスト気味な構成に加え、Hシーン数だけは豊富なので、感触としては回想シーンを順繰りに見ていくに近かったです。もっとも、「幸せ」を求めてキラキラ自己啓発っぽいことを地で行かれても、それはそれで息苦しさを覚えちゃっただろうけど、だからと言ってエロ三昧なのはちょっと卑俗。しかも、大ボリュームのHシーンと銘打たれている割には、各シーンの尺は短いし捻りも無いので食い足らない。エロゲを生かすなら、行為中の語らいとか充実させて欲しかった。CGクオリティの高さがせめてもの救いかも。また、アリアの掘り下げが不十分なため、入れ込みづらくもある。当り障りのない表面的な会話ばかりなのも親密感に乏しい。結果として、彼らにとっての幸せを担保するに足る描写がどうにも浅くて、付け焼き刃にそれを語ってみせたところで上滑りです。それこそ実態のない“星霊”のようにふわふわとしたまま、胸打たれるとこまではいきませんでした。
テックジャイアン2007年4月号付録。プレイ時間は1時間強。ヒロイン全員分の立ち絵は刷新されてるし、新規書き下ろしCGも4枚見られるので、これだけでも大いに価値あるのでは。こころナビウイルスが大暴れして、ヒロインにエロい悪戯しちゃうお話。ノリとしては、本編の勇太郎くんエロ全開モードに近いかも。ヒロイン全員が登場するけど、中でも小春とアイノは優遇されてて、悪戯でなくちゃんとエッチ出来ます。裸見られても大して気に掛けないどころか、近親相姦について講釈を垂れちゃう凛子さんは相変わらずの淡白さ加減。オマケとしては、なかなかに楽しませてもらえました。
随分と疎外感を味わってしまった。まず、エンパシーという特異な設定に実感が付いていかなかったのが痛手。人の感情というのはそう単純ではないと考えるので、そうやって断定してしまうことにはやや抵抗があります。或いは、それを生かして感情に晒される痛みなどをもっと踏み込んで描いておいたなら、相対的に、頑なに心を閉ざそうとする永遠の心情にも理解を示せる余地が出来たやも。だって、彼女の再三に渡る繰り言はハリネズミのジレンマみたいに触れ合いを恐れていたけれど、それって具体性が希薄で説得力に欠けてたから。ややもすると、悲劇のヒロインを気取った自分語りのように酷く胡乱にも見えます。共感材料が足りてない。総じて、描きたいテーマばかりが先走ってしまい、何やら浮ついた物語になってしまった印象です。約束された勝利のヒロインになるはずだった彼女はしかし、序章の馴れ合いくらいがピークでした。あのくらいの可愛げで丁度良い。
毒にも薬にもならないお話とか言うとマイナスイメージだけど、本作ではそれをプラスに捉えたい。あれやこれやと気を回さずにキャラ萌えに傾倒できる膳立てが整ってるので、自ずと溶け込み易かったです。ヒロインたちもまず口当たりのよい台詞だけを並べていくからストレスが無い。けど、瀬里香√などはシリアス配分多めで足並み外れてた感もやや。らくらく「嫁探し」システムは、一足飛びでヒロインと合体できるご都合設定と思いきや意外にも説得性ある仕上がりになってたりして、妙に感心するところもある。神様バンザイ。なべて、美穂乃姉は聖母のようだし、妹の希里乃はCVと合わさって最強だったし、上質な萌えエロはご馳走になりました。ところで、いかにも「抜いて下さい」って肉欲ギラギラなエロには及び腰になっちゃう私は、こういう甘さや癒やしで柔らかく包んでくれた方が具合良かったりします。でも、捗りすぎてチンチンひりひりさせたのはヤバい。
[ネタバレ?(Y1:N0)]スピカがうんこマンの肩を借りて、涙を零すとこが好き。「アリガト」がしばらく頭から離れなくなるくらい、彼女のやりきれない本音は胸に刺さってきた。初回スピカ√は、セカイ系ボーイミーツガールのお手本のような作劇で、本作の導入部として一際鮮やかな滑り出し。『アイノコトバ』が流れ始める頃には、感動映画よろしく観客の心をすっかり鷲掴みにしてたように見えます。もちろん、あれで終わっても悲恋シナリオとして完成されすぎてるのだけど、ハッピーエンドを目指すべく彼は走らねばならんのですよね。だからというか、初っ端スピカに入れ込んでしまったプレイヤーほど、以降のお話は感情が乗ってかないし、セカイに対しても関心を持てずじまいなのが痛いです。なまじメタフィクションとしても良く出来すぎているだけに一度ギミックが明かされてしまうと、垂れ流しのテレビ番組でも見てるような遠さからお話を読んでしまい、いまいちノリきれず……。
言っちゃ悪いが、ノリが小学生レベル。「がっこいこ~!」から始まる仲良し小好しな登校風景が、それを如実に物語ってる気がする。青臭いと言えば聞こえは良いものの、感情論を振りかざしながら近視眼的な行動を重ねていく彼らの姿には正直辟易。不変の友情というのは確かに美しいものだけれど、本作においてのそれは、輪をかけて過去回想から念押しされることも手伝って、盲信のような気持ち悪さが勝ってしまうのです。キャラについても総じて入れ込みにくく、とりわけお子ちゃますぎる美花にはウンザリ。気に入らなければ癇癪起こして、何様ですかアナタ。他にも、お花に頭が飛んでそうな永久ちゃんとか、口より先に手が出てしまいがちな穂とか、相性悪すぎた、というよりは今の時流にはそぐわないだけかも。一応は「めでたし、めでたし」やってるお話も、蓮見の件とか私には見過ごせないものの方が多すぎでした。貧乳娘揃い踏みなのはちょっと癒やし。
所謂“ループもの”なのだけど、ループから抜け出そうという意識は頭の隅に一旦追いやっておいて、ループセカイを好き放題楽しみ尽くすべく楽観的なノリが売り。深みには欠けるけど自由度は結構高くて、ループが出来たらやってみたいあんな事やこんな事を寄り道感覚で実現させてくれるのが嬉しいです。わけても宝くじENDなどは慌てふためく両親の反応とか実に見応えありました。また、やり直しが効くという前提に立ってのヒロインとの接し方なんかは本作ならではのユニークなとこ。ご都合的な展開にもきちんと理由付けがなされているあたりはしてやられました。ところで、ヒロインとして問題がありそうな祈理だけれど、私は嫌いになりきれなかったです。私の原体験(幼馴染)と妙にダブるんですよ。今となっては懐かしい思い出なので、彼女のかつての蛮行も理解ある眼差しで見られたのが良かったのかも。作中での扱いの悪さも、かえって憐憫を誘います。
(GiveUp) 何度リトライしても同じ箇所で強制終了するので断念。音量調整が出来ないのにBGMとボイスのバランスが悪かったり(BGM音量デカすぎぃ!)、立ち絵も輪郭線がすごく目立っていたり、つくりは非常に粗いものの、和風テイストな世界観を形成する各々の素材は悪くなさそうな。その一つ「櫻」には雅を感じます。夢を媒介に前世と現代が絡まっていくと、たいして面白みもなくトントン拍子で進んでいくシナリオにも惹きつけられたりも。それだけに、「千年の時によって紡がれた恋物語」の結末を見届けられなかったのは、幾ばくかの心残りを懐いてしまいました。
全編を通してユーザーへの過剰な配慮が伺えてしまい、少しばかし興が冷めてしまった作品。何でもそつなくこなしてしまう主人公は確かに格好が良いし、そりゃ周囲から持ち上げられるのも女の子から惚れられるのも至極当然。だからというか、その感情は極めてオートマティックに向けられていたような。ストレスになりそうな要素を敢えて排除してるようで、何だか気を遣われているみたい。可愛らしく、愛情を一心に差し出してくれるヒロインたちも、媚びへつらってるような痛々しい笑顔に見えてしまう。俺TUEEEと相まって、どうにも接待的でした。制作陣の考える「今時のニーズ」がそのまま反映されてたような気がします。現に大多数の支持を得ているわけで、それは慧眼であったと言わざるを得ないのだけど。さておき、聖良だけは主人公と対等な関係が意識されており、それなりに満足出来ました。なまこちゃんを抱いてる彼女の素顔はとても愛おしいもの。
なぞなぞ。推理というよりはむしろ閃き。要した時間15分。回答を直接テキスト入力するタイプで、ミスする度にヒントが1つずつ解禁されていくのだけど、4つ目であっさり解けました。ていうか、悔しい。もっと粘ってみても良かったかも。ちなみに、1周目はライターの思うツボ、まんまとミスリードに引っ掛かってしまいノーマルエンドでしたが、予め誤答を想定しておいた上でエンドが用意されてるのは面白い。注意として、ラストヒントはもう答えそのものなので、出来れば4つ目までを見て解いてみたい。
色んな意味で衝撃を受けた作品だけど、なかでも一番驚いたのは「力士シール」が実在するということ。その事実を知った瞬間、より一層生々しさが増すと共に、私もこのゲームの檻に囚われてしまったように錯覚しました。フィクションとノンフィクションが奇妙な具合に融合を果たしてるのが本当に気味悪いです。
星奏は憎めない子になりましたが、私はストレートに好意をぶつけてくれる彩音を好きでいます。また、星奏√を通して新島氏が伝えたかったものとは…… → 長文感想(18013)(ネタバレ注意)
先に村正から入ったのだけど、やはりこの方は文章が上手い。お硬い文体ながら、小粋な冗句を交えた独特の言い回しが取っ付きにくさを柔らげてるふうに思います。とりわけ戦闘シーンは、淡々と状況説明に終止し無駄なお喋りも挟まないことから派手さはないが、しかし、緊張感を伴った剣戟の妙が感じられました。知らずのうちにこちらまで体感時間を引き伸ばされていたような。“静”と“動”のメリハリがきいてる。戦闘の趨勢を理詰めで記述していくテキストも、付け焼き刃でない確かな知識があってこそでしょう。また、男二人の因縁にのみ焦点を当て、そこに他人の介入は不要とでも言わんばかりに、女であれ容赦なく切り捨てていく異色な作風は人を選びそうだけど、そういう冷徹さには却って好感を持ちました。ブレない芯が良かった。お話の短さもあって、散花のごとき刹那の“美”を感じた作品。
「あなたは今までの人生で妹に欲情したことはありますか?」とりわけ実妹持ちには深く突き刺さってきそうな作品。くだけた台詞回しが生む感情の機微が巧み。生々しく精緻な心理描写に胸を痛めつつも、ぐいぐい引き込まれてしまう筆致には感服してしまいます。兄妹それぞれの感情の揺れ動きにはとても共感出来ました。また、「兄」視点と「妹」視点で交互に綴られていくお話進行は、その両者の対比が面白くもあり。心を掻き乱されていく兄貴と、普段通りの態度で接してくる妹と。彼が暗い情念に呑まれる原因は妹だったけれど、それを救ってくれたのもまた妹の存在で。誰よりも近い“他人”だからこそ誰よりも遠くて、その手は決して届かなかったけれど、変わらぬ妹の姿と「お兄ちゃん」としての在るべき形に、憑き物が落ちたようなすっきりとした読後感を味わえました。兄妹モノとしての一つの回答かも。フリゲなので是非やって貰いたい作品です。
ゲームに負けて悔しさを露わにするuni先輩だとか、本来ゲームというものに馴染みの薄かった真姫が「いいこと……みっけ…」と自分なりの楽しみ方を発見していくだとか、真剣にゲームに向き合い、全力で楽しむ彼らの放つ瑞々しい空気感が味。ゲームへの向き合い方に多様性を持たせながら、それを取っ掛かりにしたお話作りが素敵です。キャラクターの表現度も高く、二次元ヒロインながら「生身の女の子」としての肌触りがあったのは感心したり。そこに確かな体温を感じた。シナリオ根幹に絡むお話は、そもそものご都合的な設定と相まってやや説明不足感が否めず、急転直下な展開も含めてその温度差から少し入れ込みづらいかも。しかし、過程においてはエロゲとしてはぴったり嵌っている印象。あくまでゲームを楽しむことに主眼を置き、ご褒美えっちを挟みつつシリアスになりきらないよう僅かなゆとりを残しており、よくシナリオと寄り添ってました。
なにぶん前世紀のエロゲではあるし、絵の酷さ(酷いものだと素人がペイントソフトを使って落書きしたレベル)については百万歩くらい譲ったとしても、支離滅裂な展開のオンパレードに目眩がしてくる。いったい何がやりたかったのか伝わってこない本作は、そもそも作品と呼べるかすら怪しいところ。主人公はとある風俗店で働いてるらしき女性で、物語はそんな店に通う男性客との行為から始まるのだけれど、お客様をイかせた次の瞬間に店が崩壊していたり、その客もコンクリに飲まれて潰れた蛙みたいな有様を晒してたりする。そして、その間わずかワンクリック。ただ画面が切り替わるのみで文章表現の一切を放棄しているのは、呆れを通り越して感心してしまう程。おまけに、何事も無かったかのように次の場面へと進んでいく様は最高にシュール。世紀末すぎる。読み手の理解を拒む、上質な糞ゲーの類として受け止めました。
キャラクターの作りこみの巧さは健在。なかでも、アルファには良くほだされました。ちなみに、『こころナビ』をプレイしていると本作における見通しがだいぶ良くなるのは確かですが、キャラを堪能する限りにおいては別に必須じゃないです……です! → 長文感想(9226)(ネタバレ注意)