キミノソラ/ボクノソラ
キミノソラ/ボクノソラ(ボーカル有り)
商品
画像 | 商品名 | カテゴリ |
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lightBOX The Great 15th Special Vocal Collection | ボーカルコレクション | |
light Vocal collection IV | ボーカルコレクション | |
GWAVE 2010 1st Grace | コンピレーション |
なによりかにより、リズム隊に遊びが多くて素敵。一手だけ多く叩き込んでくるドラムロールとか、ちょっとしたひらめきを見せるベースの進行とか、アクセントがよく利いている。けれども驚かせたり奇抜さへと走ったりはせず、余裕をもったまま曲の流れを完成させてもいて。ほどよく意表をついて、飽かせることない展開が耳に快適。
一方では、野放図なリズムで耳をぐいと引っぱったのがボーカル。
樋口秀樹の楽曲は、なんと言ったものか、しばしば言葉が過剰になっている。(「凪」などによく見られるように) そこで歌われる節回しを尊重して、放任すらしてしまう気風をもっていると感じる。本作においては、言葉がひとつ余分にはみ出てるゆえ、歌だけが音楽から浮き上がってゆくような感覚があって、これが面白いんだ。
「刻む・鼓動・終の・リズム」歌い出しのところでは曲の流れに乗って、すべらかにエンジンを回して上昇していったボーカルラインなのだけど、次の瞬間、エアポケットにでも入ったかのように呼吸を変える。「君の翼 "わぁぁ" 向かい風の中で "こそっ"」声を振りしぼって、メロディの制動は振りきり、リズムを崩してでも前に出ようとする。歌詞の音の数が曲に合わせてなくて、ドラムが拍をとる位置との呼吸も合わせなくて、無理やり言いきってやった感がすごい。それだけに、伝えたい言葉をフリースタイルで押し入れようとする意思が鮮やか。「たまあひのうた」では "回文" を歌にしていたものだけど、本作では楽曲におとなしく収まりきらぬ "字余り" をもって、一風変わった奔放さとかあどけなさを歌わせてしまう。
そしてサビがくる。はじめは英語の節回しがバキバキにつんのめってるふうで気になって仕方なかったのだけど、不思議と、その無骨な言葉の響きには惹かれもした。何度か聴くうち耳がなじんでいけば、このバランスを欠いたなりも乙なように思う。「Co!! コールフォーミー!」 前のめりで食い気味になったボーカルが、なりふり構わず呼びかけてく姿はいっそ爽快だ。
リズム隊とは対照的に余裕を欠いていればこそ、満足できずに欲する叫びが、未完成のなりの魅力が放たれていた。小さな頃に楽器を習いはじめたとき、音を外そうが弦が切れようがぜったいに手を止めたりせず、その一曲をまずは終いまで弾ききれと教わったことがあったけど、そんな心得をふと思い出してしまった。「手足が折れても 這いつくばっても」空へと飛びかかる勢いに惹きつけられる。