「このゲームのプレイ時間が、100時間未満のコメントは信用できない」と思わせるほど、面白かったです。私の思うSF魂(SF作品なら、空想の世界描写を存分に見せてナンボでしょう)を存分にぶち込んで作品に昇華したスタッフ達に、幸あれ。この作品を隠れた名作扱いにしてはならない。じわじわ売れ続けて欲しいと、切に思います。
<はじめに>
私にとっては、近年稀に見る良作。RPGとしては『RanceVI ~ゼス崩壊~』以来の出来でした。そもそも、私はランスシリーズ以外のRPGなど殆どプレイしたことがないですし、RPGを語れるほどの知見も蘊蓄も全く無いので、アリスソフト作品としか比較できないのですが、ジャンルがRPGといっても、性質はぜんぜん違いますね。ある意味、正反対かもしれない。
ゲーム性から言えば、公式サイトに書かれているとおり、「モンスターを倒し、強力なレアアイテムと、獲得する経験値を得てキャラクターを強化し、より強力なモンスターを倒す事に重きがおかれたゲームジャンル(ハック&スラッシュ)」、正しく文字どおりこれに尽きます。実際、ゲーム性はこれだけです。普通だったら、途中で飽きちゃいますよね。私も発売前に、このゲームを買うかどうか判断するために、初めて公式サイトを見た時には、ハクスラ? 何のこっちゃ、みたいな。
そのため、購入の決め手は、当然、ハクスラではなく、ドラゴンズシャフト内の各エリア紹介写真4枚を見て、ビビビッと来たから、ただそれだけ。これは私の思うSF魂を実現してくれるかもしれないという淡い期待、そして気づいた時には特攻精神で、エイヤーでポチッとな。はっきり言って、ninetailなんてブランド、全く知らなかったですし、最近、特攻して玉砕(つまりフルコンプできずギブアップ)するパターンが多かったのですが、私のSFセンサーが、反応してしまったもので。
そして、一緒に購入していた『凍京NECRO』『働くオトナの恋愛事情』『妻みぐい3』を退けて、玉砕覚悟でやり始めたのが運の尽き、以来、フルコンプに二ヵ月半、まだまだハクスラとしてだけでもベリーハード以上への難易度変更で充分に遊べるとは思うのですが、続く『まいてつ』『あけいろ怪奇譚』とどんどん積みゲーに。まさか自分に積みゲー人生が訪れる日が来るなんて、夢にも思いませんでした。積みゲーって、借金と同じで、一度、溜まり出すと、ひたすら増えるだけってパターンになるのでしょうか? それでなくても、私のプレイスピードは、本当に遅いので、もう崩せないかも。
さて、気を取り直してレビューです。
<ハクスラを理解して実践しないと楽しめないゲームです>
プレイしてみて、これは久々の大正解、当たりくじを引いたと思いました。自分のSFセンサーの反応どおりの世界描写が、そこには在ったのです。ドラゴンズシャフト内の各エリアの造形描写をじっくりと見ているだけでも、本当に楽しいです。でも、通常プレイではエンカウント率が高いので、私の実力では、じっくり探索を楽しむことも、ままなりませんでした。カジュアルモードとか利用すれば、じっくり造形描写を楽しめるのですが、難易度ノーマルで始めた当初は、そんなこと考えている余裕もなかったですし。
こんなに面白いのに、ここでのコメントのデータ数は40件強。少なッ! 由々しき事態です。隠れた名作扱いにならない様に祈るだけですが、コメントのデータ数が少ないのは、何となく分かります。私も総プレイ時間が285時間とか記入していますが、ボス戦で何回も行き詰まってはリプレイしまくりでしたから、実際は、少なくとも300時間強はプレイしていたと思います。プレイ時間がこんなにかかっていては、コメント書く気力も時期も逸してしまうことでしょう。普通の社会人なら、一年間、これ一作で楽しめるボリュームがあると思いますから。
ところで、数少ない40数件のデータ登録での「点数、一言感想、総プレイ時間」の情報だけでも眺めれば、このゲームを楽しめた人と楽しめなかった人の理由が、明確に分かるので、面白いです。つまり、楽しめた人は、ハクスラの定義をきちんと理解して、実行した人。楽しめなかった人は、実行せずに、安易なモードに移行してぱっぱと終わらせたか、ボスを倒せず挫折した人。
勿論、楽しめなかった人が出たのは、以下に示すとおり、作り手側にも問題があります。
(1)UIの使い勝手が悪い
クエストに参加する前準備に、やたらと時間を要します。前準備を整えるための戦術を考えるのが楽しいって人も、中にはいるのでしょうけれど、普通の社会人は、日々プレイ時間をそんなには取れません。やってられるかって状態になってしまいます。具体的に、私が最大の問題だと思うのは、以下の点です。
クエストへの準備として、戦闘で取得したアイテムに対し「ショップ」「工房」「厨房」での処理を行えるのですが、アイテムは最終的には人に紐付けたいのに、各処理から人に直接アイテムを持っていくことができません。そのため、一旦、各処理を終わらせて、再度、各人の設定画面を開いてってことを延々と繰り返すことに。致命的な欠陥仕様といっても良いと思います。各処理単体で見れば、恐らく頑張って画面構成をまとめたとは思うのですが、いかんせん各処理間の連携がぜんぜんできていないのです。アリスソフトのRPGにおける至れり尽くせりUI仕様に慣れてしまっていた私には、青天の霹靂、本当にきつかったです。
唯一の救いは、「ショップ」と「工房」については、インベントリの「装備中」を使えば、既に人の所有しているアイテムを各処理に持ってくることができる点です。最初、それすら知らなくて、発狂しそうになりました。本当にチュートリアルには、何にも説明がないんですもの。
(2)チュートリアルの説明がへぼ過ぎる
余りにも、最低限のことしか書かれていないので、プレイし始めると、分からないことだらけ。私は、未だにステータス画面の「属性適正」「異常耐性」「付与効果」の見方すら分かっておりません。そもそも「付与効果」なんか、何の表示もないのですが……。また、「新要素・召喚獣を集めよう」などと謳っているのに、今の今まで何のこっちゃ状態でしたが、パーシィのスキルエディットでの登録のことだったのかよ。この感想を書くのに調べまくって、今、初めて知りました。
どうも、勝手に触って学べというスタイルみたいです。私など、戦闘時の装備スキルでの回復アーツにおける「GROUP」が何を意味していてどう有効にするのかを理解するのに、2日間もかかってしまいました。GROUPのスキルを選択しても、何も起きないので、何か前提条件をまだ満たしていないのだろうと思ったのです。暫くして、間違って戦闘メンバーをマウスでクリックしてしまって、やっとGROUPの意味と使用方法が分かりました。コマンド選択してから操作対象を選択って、いつの時代のUIだよみたいな。そもそも、チュートリアルのどこにも、GROUPという言葉の説明が無いのですから、分かるわけがない。
<ハクスラの実践とは何か>
では、上記の様な欠点がありながら、私がどうやって、楽しむに至ったのかの経緯を述べたいと思います。
1章までの戦闘は、ハクスラのことなど考えなくても、レベル上げだけで、ボス戦も何とか対処可能でした。ストーリーもそれなりに基本を押さえているので、飽きないで済みましたし。ところが、2章の最初のボス戦で、いきなりつまづきました。ぜんぜん勝てない。そこで考え至ったのが、
・各装備アイテムのソケットへの魔石設定
・スキルエディットでのスキル設定
の2点です。これにより、何とかボス戦突破の目処がつきました。これで、俄然、面白くなり始めました。UIのへぼさに目をつぶれば、けっこう夢中になれる仕様なのです。特に、「工房」や「厨房」を使っていろいろ工夫したりして、やっとボスを倒したときの達成感と安堵感。本当に充実していましたね。ここが、このゲームを面白いと思うか、思わないかの分岐点になる様に思います。
というより、メーカーがゲームジャンルはハック&スラッシュだと強調しているのですから、これに逆らった方針で臨んでも、単につまらなく感じるだけになってしまうことでしょう。
<周回プレイ要素について>
本作は、共通ルート後に魔法ルートと機械ルートに大きく分かれますが、私は1周目は魔法ルートでした。別に自分で意識してそうなったのではなく、適当に個人イベントを選択(というより選択できるところは片っ端に選択)していたら、結果的に魔法ルートになっただけなのですが。
その後、2周目に入り、流石に共通ルートを通常プレイするのは耐えられそうもなかったので、カジュアル(短期攻略)モードを利用しました。ただ、難易度を変更しなかったので、経験値は全くアップしないですし、ハクスラの楽しさも得られませんでした。そのため機械ルートに入った時点で、新たなダンジョン攻略を考慮して、難易度をノーマルからハードに変更すると共に、カジュアルモードから通常プレイに戻しました。これで、俄然、また面白くなり始めました。それで思ったのが、もし1周目がノーマルなら、2周目以降の共通ルートはカジュアルモードを利用したとしても、最初から難易度はハード以上に切り替えるべきだったという点です。
しかし、ハードでのボス戦は、本当に過酷でした。ネフィリム・パーシィなど、どう頑張っても、HPを五分の一しか削れなくて、ここだけノーマルに変更してしまったことを白状しなければなりません。いや、もう、その時点でのレベルでは、私には無理でした。ただ、その後は後悔と反省しか残らず、再度ハードに戻した上で、ひたすらレベル上げに勤しみながら、その後のボス戦に望むという日々。いや~、本当に苦しかったです(^^;)。厨房を活用しながら料理を設定したりとか、いろいろ手を尽くして、一つずつボス戦を突破していきました。
ところで、私の場合ですと、1周目ではイベントやシナリオの達成率は40%強、2周目でも73%程度でした。ということで、3周目以降に突入というパターンでした。ただ、後からHイベントや陵辱イベントなどは、extraからのシナリオ参照で選択できることを知り、愕然としましたけどネ!
ど素人の私が言うのもなんですが、周回プレイ要素を強化するのなら、マップ上の宝箱やボス戦の位置を、毎回ランダムにするとかにしたら、駄目なのでしょうか? そうすれば、毎回、新たな気持ちで、クエストに取り組めそうな気がします(勿論、最初からのマップ開放は無しで)。
<不具合について>
最初のうちは、本当に誤字脱字もなく、おぉ、エロゲーにしては稀に見る品質管理と思って感心していたのですが、「少し前までは潜り屋と揶揄されていた探索者達は、今やカルナスとメトロニアで独自のブームメントを巻き起こしているのである」あたりから、だんだんと誤字脱字や声優さんの読み間違い、また動作上の不具合が散見される様になりました。因みに、上記のはブームメントが変。恐らく、ライターは、ブームとムーブメントのどちらにしようか迷った挙句、ブームメントになってしまったと思われます。
現時点の最新修正パッチは1.04(追記:2016/07/29に1.05が出た)ですが、誤字脱字とかは全く直す気がないみたいですね。マップ上のヒーリングスポットの記載位置が、実際と違うのも何箇所かありました。例えば、アルカディアス城2Fの緑の水晶柱の位置が実際と違うとか(実際は部屋の左側なのに、地図は右側)。声優さんの読み間違いだと、例えばオイフェの「迷宮遺跡は、強大な力を手にできる」で「巨大な」と読んだり、夜桜の「ボクは自分で望んで、…」を「選んで」と読んだり。
ケイ「これ以上、あたしを汚さないでよぉ……っ!」などは、「けがす」なのか「よごす」なのか判断が難しいです。声優さんは「よごす」と読んでいたけれど、この後の文章が、「女性器も、口も、肛門も……ケイの身体の大事な部分が、次々と気色の悪い触手によって汚されていく。女性としての尊厳を根こそぎ破壊され、……」となっているので、個人的には「けがす」が適切な様な気が……。
戦闘時の動作上も、小ボスがぜんぜん動かないとか、おかしな動きが散見されましたが、まぁ、許容範囲内です。
<シナリオについて>
可もなく、不可もなくってところでしょうか。取り立てて目新しさはないのですが、最後までそつが無く書ききったところは評価できます。よくあるでしょ、土壇場になって「エーッ」みたいな展開。それがないだけでも、すばらしいです。それにしても、最近流行っているのですかね、「リセット」っていう世界再構築の概念。同じ時期に、アニメの「ノルン+ノネット」でも同じテーマを扱ってましたが。個人的には、もっと驚くような、他の人が考えもしないようなテーマを扱った作品が、出てこないかなと思います。きっと、横並び意識の強い日本では、その様な企画は通らないのでしょうけど、そうだとしたら、とても残念です。
ところで、よくシナリオとテキストを分けた評価を見るのですが、最初、理解できませんでした。この場合、テキストとは「文章」のことを指すみたいなのですが、「シナリオって文章込みじゃないの?」って。どうも、ゲーム業界では分業化が進んで、構成考える人と文章を書く人が分かれる場合があるかららしいです。それでも、やっぱり個人的には違和感が拭えないので、私が使う場合の言葉の定義を明確にしておくと、次のとおりです。
『シナリオ』
セリフまで含めた細かな全て、また実際に使用されるテキスト(小説・台本)そのもののこと。ストーリーもプロットもシナリオに含まれる。
『ストーリー』
物語の流れ。時系列に沿った事実の羅列のこと。「あらすじ」をそのまま最後まで書いたようなもの。
『プロット』
ストーリー中で起こった出来事の中でも重要な一部分、また因果関係を示す。作者が何をやりたかったのか、ということに関わってくる。
ちょっとSF的に考えると、文章だけ書く人(テキストライターというらしい)は、個性的な文章も求められないのだから、将来的にはコンピュータに取って代わられていると思います。
<エロシーンについて>
沢山あります。あるのですが、エロくはないです。文章もそう。陵辱シーンも多々ありますが、殆どソフトでハードじゃないです。ただ、私は陵辱シーンは好きじゃないので、ソフト傾向で助かりましたが……。
まぁ、私はエロに関する薀蓄は持ち合わせていないので、個人的に気になった文章を挙げるとするなら、次のとおりです。
・パーシィは目をいっぱいに見開き、自身の腹部を見つめる。膨らんだお腹は、精液と触手の質量そのものだ。
⇒「精液と触手の質量」って表現にはビビりました。「膨らんだお腹」と「質量」の関係がさっぱりで、どう解釈すればよいのか。そもそも質量とは、Wikiによると「物体の動かしにくさの度合いを表す量のこと」だと書いてあります。これと膨らむこととの因果関係が理解できないのですが、もしかすると「体積」と勘違いしたのでしょうか。
・子宮口と膣の窪み……ボルチオを刺激されたルフェイが、体中を痙攣させ、口角からヨダレを垂らしながら絶叫する。
⇒ボルチオ(ポルチオ:子宮頸部)。初めて書かれたのを見たかも。どうもルフェイは、子宮口をツンツンされる専任要員みたいです(というよりルフェイ担当ライターの好みなのでしょう)。どうせなら、古代中国から伝わるペニスを子宮内部へ挿入する方法であるウテルス(子宮)挿入まで発展させてくれたらと思ったのですが、別のシーンで書いてますね。
・熱く滾り、反り返った肉棒は、ルフェイの深部まで到達し、亀頭を子宮内にまで侵入させていた。蠢く内壁とは違い、つるんとした独特の感触がペニスの先端に伝わる。
⇒でもググったら、ウテルス・セックス(子宮挿入性交)など医学的に不可能で「ポルチオ性感」の勘違いだとか。個人的にウテルス・セックスなんて、結構面白いシチュエーションだと思っていて、もっとエロゲーで書いて欲しいなと思っていたので、ちょっとがっかり。飽くまで、妄想の産物だったのですね。
・絶頂の最中で、ペニスを食い締める膣内に牡液が溢れかえったのはその時だった。
⇒どのシーンだったか忘れましたが、「牡液」って表現が新鮮でした。なぜか牡液って字を見ていると、貝のカキを思い出してしまって、そのじゅくじゅくした汁の描写が頭に浮かんできたのですが、カキって、「牡蠣」と書くからなのね。自分の頭の中のリンク構造に呆れてしまいました(笑)。流石は表意文字、表音文字文化圏では有り得ない発想が出てしまいましたネ!
<BGMについて>
どれも好きです。私の感性に十分フィットしていました。
<その他、気になった点>
ロスターと夜桜が初めて会ったシーンで、「ハッとして顔を上げると、ニヤリと笑う夜桜と目が合った。」という記述があります。しかし、この記述の時点では、名前が夜桜だとは分かっていなくて、その後「ボクは夜桜」と紹介されるのです。なので、ここはミスかなと思いました。
また、「刮目」とか「ノブレス・オブリージュ」とかの流行り言葉、使わないで欲しいです。15年前だったら、絶対使ってなかったでしょって言いたいです。それより自分の言葉を考えて使ってよって思います。
シエラ「その解釈で、大きな間違いはありません。私はサーヴァントとして、マスターであるロスター様をお守りします」
⇒Fateの影響が、ここにも。
そういえば、最大の疑問を思い出しました。なぜ、白艶の「妾」は「わらわ」ではなく「わたし」と読ませたのか。どう考えても、白艶の言葉遣いからは「わらわ」と読ませるのが妥当でしょう。それが何故「わたし」なのか。「わたし」という読みが、白艶の会話文から浮きまくって違和感ありまくりで、本当に困りました。未だに理解できません。
<おわりに>
ハクスラを理解すれば、遊べるエロゲーとしては、申し分ない出来です。私にとっては、購入の決め手になったダンジョンでの世界描写が、十分満喫できただけでも、たいへん満足感を覚えました。期待していなかったのに十分に「遊べるエロゲー」だったことも驚きでした。ただしUIはちょっと残念な出来で、改善の余地があります。
私には、次回作もちょっと期待しちゃうぞという出来だったのですが、今回は10周年記念作品だとか。ということは、次回作はこれほどの大作は期待できないってことですかね。まぁ、こんなに時間を要するゲームは、ある意味、敬遠されてしまう要因にもなりかねないので、次回作は、今作以上に中身で勝負して欲しいですね。ハクスラだけではなく、もっとゲームとして遊べる要素も増やして取り入れて欲しいです。周回を楽しめる様にするためには、ランダムな要素(物の配置とかダンジョンなら経路自体を毎回合成して作成とか)も取り入れて、毎回新鮮な状態を保てるようにして欲しいです。
それから、チュートリアルは、もっと懇切丁寧にお願い致します。今のままじゃ、あまりにも不親切すぎます。一見さんお断り状態じゃ、敷居が高すぎます。
最後に、これからも異世界描写をもっと沢山見せてください。私のSFやファンタジーの評価は、これが基本ですから。