傑作・・・まであと少し。 ただ、ライター・原画家共に一人、という中堅メーカーの作品としては、間違いなく最高峰の出来。 傑作だと言い切れないのは、複雑に張り巡らされた伏線と、その種明かしの方へとばかり力が入っていて、 『純粋に物語として面白いかどうか』という点については、本筋以外はあと一歩、という点。 しかし、本編のボリュームもさる事ながら、サブヒロインも(一応)攻略可能という、 ファンディスクの存在を蹴散らすようなサービス精神。 そして何より、「適度な距離感の、兄と妹の物語」というテーマを、 ここまで深く本筋に絡ませてきたのは、非常に良かった。 詳細は長文にて
OHPにある通り、「人が触れてはいけないもの=禁断のシンセミア」を求め、
手を伸ばした人間達の『業』について、見事なまでに書ききった、魂の作品。
「評判いいみたいだし、これからやってみようかな」というそこのあなたへのヒント
シンセミア(sinsemilla)とは、初回特典の冊子「Wissenschaft3」(以下、冊子)によると、
意味そのものは「種なし」であり、雄株を排除して、雌株のみで栽培した大麻を指すらしい
まぁ、シンセミアがどういったものなのか、についてはタイトル画面の英文でバレバレなワケだが
直訳すると、正に「禁断の存在」といった所だろう
また、『黄昏』という語句にも意味はあるのだが、どちらかというと重要なのはシンセミア
物語が開始した時点で、その麻薬はどこにある?
そして、その影響を「誰が」受けている?
あと一点
「竹取物語」において、かぐや姫は月へと帰る際、帝に不老不死の薬と天の羽衣(と文)を渡したとされている
しかし、帝は薬を使わず、天に最も近い、一番高い山の頂上にて焼いた
故にその山は「不死の山」、つまりは富士山と呼ばれるようになった、という描写がある
この構図とシンセミア=麻薬について考えてみれば、比較的序盤でもある程度の全貌は掴める
ただ、細部に関しては言われないと分からない事もあるので、全てを言われる前に解き明かそうと、ムリに頑張らない事
分かりやすい部分であれば、
・銀子の正体
・水難事故において、何があったか
・赤い石・青い石
・クマー!(もどき)
・「○学生」なんて言われるくらい、他のヒロインと比較して明らかに浮いている翔子だが、
この子がさくや・いろは並みに分別のある人間だと、そもそもシナリオが成り立たない
翔子が子供なのは必然である。それは何故か
についてくらいは、そこまで情報が出揃っていない段階でも、ある程度推測する事は出来る
また、少しだけ出てくる「人魚の肉を食べたら、不老不死になった」というお話は、
八尾比丘尼(やおびくに)伝承であり、それを題材としたのが「SIREN」(1の方。2はシュメール神話が題材)である
個人的に、SIRENは「良い意味での、最強の投げっぱなし」シナリオであると思う
PS2の作品だが、最近のゲームの謎解きはぬるいんだよ!という方は是非どうぞ
クリアした、もしくはプレイされる予定のない方は下へ
これからプレイされる方は、クリア後にまたお会いしましょう
さて
絶賛する声が多く、コメント執筆時における中央値も80点を越えている本作だが、
正直な所「面白い」と思うと同時に「勿体無いなぁ」という印象を受けた
「コンチェルトノート」で感じた、「ちょっとした気遣いで改善できる、残念な点」が、あまりにもそのままだからである
個人的には、本作のライターさんは「上手くやれば、化ける」と考えているライターさんの一人で、
この人単独で「リトルバスターズ」に勝るとも劣らないシナリオを、作り上げる事が出来る思っている
でも、体験版をプレイせず、情報も遮断して楽しみに待っていたら、
良い点も悪い点もあまりにも前作からそのままなので、ちょっと読んでいて冷めてしまいましたよ、と
全体の構図として見れば非常に良く出来ているのは確かだが、本筋以外のヒロインのルートが、基本的におざなりなのも相変わらず
ただ、全然面白くなかったとか言うつもりはなく、本作は良作である事に間違いは無い
コンチェルトノートが好きだった人には文句なしにオススメできるし、
シナリオの比重が「翔子とさくや、それ以外」になっている点を考えても、
万人向けの良作と言っていいだろう
前作にもあった気になった点というのは、以下の3つ
①恋人同士になり、結ばれるまでが急展開過ぎる
7月中旬に帰省して、夏祭りまでの期間で各ヒロインと仲良くなり、
夏祭りあたりで大きな出来事があって解決してエピローグ、という構成である以上仕方ないとは思うのだが、
さくや以外のヒロインに関しては、関係の発展があまりにも急過ぎる
テンプレートを設定してその通りに文章を書くというのは確かにラクだが、
結果として、さくや以外はどれも似通ったような・・・というより、ムリヤリ結ばれているような気がしなくもない
前作もそうだった
もうこれは、このライターさん的テンプレなのだろうか
②目立つ誤字・脱字
これは会社というよりスクリプト担当の責任なんだろうけど・・・ちょっと多すぎないかしらねw
少ない人数でやってると、確かに目が行き届かない部分があって当然だとは思うのだが、
表示される字幕と声優さんの声が違う、というのが非常に多かった
こういうのがあまりにも続くと、読んでいて冷めてくる
③おかしな言い回し
「~~だから。~~~~だから」のような、文章として見た際に非常に気になる、「妙な繰り返しの表現」が多い
また、日本語として明らかにおかしい言い回しもちらほら
声優さんはさすがにプロで、そのあたりの「ここの会話って、明らかにおかしいよね?」という台詞があっても、
きっちりと演じているはいるのだが・・・ヘンであるに変わりは無い
このおかしな言い回しの連発は、前作でも感じた事である
そういえば、まだ7月なのに8月であるかのような会話とか(今月帰る、みたいな)もあったような
チェックしている余裕もないのだろうか
さてここからは、皆さんお待ちかねのスーパーさくやタイ・・・・サブを除いた4人のヒロインのシナリオについてと、考察を
個人的にはシナリオの出来は
さくや+シンセミア>>翔子>>>いろは、銀子
というカンジ。
推奨プレイ順は、
最初に銀子ルートで彼女の正体を知った上で、次にいろはルートで行方不明になっているいろはの両親の所在を知る
続いて翔子ルートで赤い石、青い石についての真実を把握した上で最後にさくやルート、と
銀子>いろは>翔子>さくや、最後にシンセミア、とプレイするとしっくり来るとは思うが、
表裏の関係になっているルートみたいなのはないので、
基本的には、純粋に続きである、『さくや⇒シンセミア』以外は好きなようにプレイすればいいと思う
ただ、4人クリアしないと物語の全貌が見えて来ないのは確か
フローチャートを100%にする際、分岐条件が分かりづらいのは、
「銀子がセクハラするのが、さくやか、いろはか」くらいではないかと
そのシーンの少し前で、どの色の下着が気になるかの選択肢で分岐が決定
チャート100%達成で、おめでとうCGアリ
フラグメントが最後の方まで中々埋まらないが、気にせずとりあえず進めるべし
あとプロローグにおいて、朱音から就職難の話を聞いておかないと、
その話題についてさくやと話すシーンが見れず、朱音ルートにも入れない模様(就職難を知っている前提で話が進むから)
慌てて直したのか、フローチャートが強引にぐにゃぐにゃってなってるw
総プレイ時間は、ゆっくりやって40時間程
タイトル画面は、現実の時間帯によって背景が変わるほか、
さくや以外のヒロインを1人クリアするごとに、
さくや(中央に一人)⇒クリアした、さくや以外のヒロインの絵(さくやが若干ナナメになり、パッケージの絵柄に)
⇒Episodeシンセミア解放で、さくやが消える⇒オールクリアで、中央に手を繋いだ孝介+さくや、へと変化
◎銀子
お互いが両思いになる過程も正直ピンと来ないし、最後の方は展開に困ったのか、
「ずっと追っていた蛟(変換できてビックリだ)が、なんかいきなり10数年ぶりに出たヨ!」と言い出して、
実際に退治する場面もカットしていきなり終了
翔子ルートにおいてその場面はやっているため、被るのを避けたのだろうか
(戦闘シーンを全体的に控えめにしている事に関しては、ライターさんなりの考えがあるようだ。
詳しくは、OHPの御奈神村報を参照)
羽衣の成分は、川を通じて下流にまで広がってしまっているため、
あまりにも問題は山積みで、「日本国民大迷惑です」としか言いようがない・・・のだが
「これから少しずつやっていくしかないよねー。あははー」で逃げ。この悲しみをどうすりゃいいの
スッキリしないルートだった
そういえば、このライターさんは、「銀髪=特別な存在」というルールがあるのかね
ちなみに冊子によると、銀子は元いた世界においては、「世間知らずの一般人」だった
それが、天女(次女)にくっついて降りてきたら人間に襲われ、
傷を癒すために遠く離れた地において暫く住んだ後、
本編中で言っていた通り「姉そっくりの人」(実際には皆神家の長女)を見つけたらしい
そして、村が山童に人が襲われるような事件が頻発し、困っている村人の姿を見て、
姉を「無責任」と言った自分の言葉を思い出し、山童を駆逐する事をはじめたとの事
本編におけるバトル担当だが、元々規格外な方なので、
雷でどかーん!とか、斬ったり羽衣で包んでサクっとこうちゃんの息の根を止めたりと、まさに無敵
◎いろは
漢字で書くと、五郎八。間違ってもごろっぱと呼んではいけない
ごろっぱは人間ではなく、春日神社周辺に生息する、赤い瞳の箒を振り回す妖怪である
出番が多いんだけど、どうにも巫女服と豊かな胸以外は印象の薄いいろはちゃん
さくやルートでは、二人の関係を知っても、自分なりに考えた末に友情を貫く、イイ女だったのだが
ただ、春に目撃された「怪物」と、プロローグにおいて遭遇した「熊」は別の存在、という仕掛けは良くできていた
そういえば、フラグメントで怪物側?の視点において、一人称が「彼女」だったけど・・・・「彼」でないか?
本体はあくまで父親であり、付け足した腕が母親、みたいな話だったと思ったが
◎翔子
ある意味救いのない、救われないお話
銀子、いろはルートではほとんど話題に出なかった赤い石を突然出してきて、
青い石と関連付けて、シナリオに絡ませたのは非常に良かった
ただ、このルートにおいて小さい頃の誰か(実際にはさくや)も赤い石を集めていたという話題をちらっと見せていたが、
これは物語の根本である水難事故にも繋がってくるものなので、
もうちょっと早めに出した方が、伏線としては効果的だったかなぁと思った
まぁ何が言いたいかっていうと、翔子は髪を下ろした方がいいよねっていう
あと、寝ている時は髪を下ろしているのに、起き上がった瞬間編んであるのはアレかな
こう・・・スイッチ押すとコードが巻き取れる掃除機、みたいな仕組みなの?
ちなみに、翔子の見ている「自分が食べられる夢」とは、天女(長女)の記憶であり、
一緒に見るらしいという、浮いている青い石が良く分からなかったのだが、冊子によるとこれは、天に帰った時の記憶であるらしい
崖にあった赤い石を集め、全ての赤い石を取り込んだ上で、
『その力を制御できず、逃げるように村を離れる』のと、
『自分のものとし、上手く扱えるようになる』事を目指す点で、エンディングが分岐している
ちなみに、このルートにおける赤い石に取り込まれた翔子(適応している)と、
過去、およびシンセミアにおける赤い石に取り込まれたさくや(ヌエ化)の行動が違うのは、
本来の持ち主と同じ情報を持ち、自分の孝介への恋愛感情が他人の借り物である、
という事に気づいた際の心の隙間を付かれたさくやと、
元々さくやと比較して適性が劣る上に、時間をかけて赤い石に適応した翔子の違い
◎さくや
スーパーさくやターーーーーーーーーーイム!
本作において、心底「やられた!」と思ったのは、
フラグメントの天女(長女)の最期において、それまでずっとずっと引っ張ってきた、
「さくやと孝介が結ばれる事は、必然である」という、本作の根底に流れるテーマに気付いた瞬間である
皆神家に男は珍しいとか、背後の姿しか見せない村の青年とか、ヒントは最初からずっとあったのに
OHPで「適度な距離感の、兄と妹の物語を書きたいと思った」みたいなライターさんのコメントがあったが、
ただ単に両想いにして終わりではなく、その事を全体を貫くテーマとして設定し、、
終わり(=Episode シンセミア)間際で「実はこうなんです」とタネ明かししたのは、鳥肌が立つくらい良かった。焼チキン
誰もやった事のない、もしくは前例のあまりないキャラやシナリオのパターンというのは、
常に「それが受け入れられるかどうか?」という不安が付きまとう
それを、「俺はこういうキャラの物語を書きたいんだ!」で突っ走って、いや冷静に考えたのかもしれないけど、
ここまで複雑な物語の中に、きっちりと組み込んだのは本当に素晴らしいと思う
同様に、夏休みで帰省した大学生、という難しい設定の主人公にしたのも結構挑戦的だったように思う
このテのゲームの主人公は、なぜ「学園の2年」が大部分を占めるのか?、と考えた事はあるだろうか
それは、多くのユーザーに学園モノが無難で受ける上に、2年に設定すれば、
「年下、同い年、年上」の、最低でも3パターンの「同じ学校に通うヒロイン」を登場させる事が出来るから
また、時間がある程度自由になり、受ける授業なんかもまちまちだったりする大学生と違って、
同じ時間に起きて、いつも大体同じ時間に登下校し、始業式、文化祭、体育祭、終業式など、
自分で考える必要もなくイベントが目白押しであるため、ライターさんの負担もその分減る
そういった「学園の2年で、同居してる義理の妹がいて、朝は幼馴染が起こしにきてくれて」・・・みたいな
「業界のテンプレ」に捕らわれず、良く書ききったと思う
まぁ、前述の通り「自分なりのテンプレ」にはなってしまっているのだが
とりあえず、さくやはここ最近の、このテのゲームにおける「妹」としては最強の一角ではないだろうか
かたいです。とっても
◎シンセミア
蛇足だったという声もあるが、さくやシナリオの最後でも、孝介・さくやは水難事故の真相にたどり着いていないので、
きちんと過去を乗り越えるためにも必要ではないかなぁ、と思えなくはない
敢えてぼかしたままで、プレイヤーに真相を考えてもらう、というのもアリだとは思うが
まあ、「1年間距離を置け」と言われて、置いたはいいけど、今後どうするの?という問題もあるし
何よりシンセミアがないと髪を下ろした翔子の立ち絵をじっくりと鑑賞できないではないやなんでもない
まぁ、他のルートでは動物の大移動が発生しないのは何故?とか、
何故さくやに赤い石が?みないな部分は、冊子を読んでもまだよく分からず、
御奈神村報を読んでようやく理解出来るのだが
ただ、さくやの内に眠る天女の悪意が、
さくやの体を通じて発現する「人間にはどうしようもない悲劇」みたいなものが、良く書けていたし、
ある程度テンプレ通りの展開ではあるが、「王道は、やっぱり多くの人から支持されるから、王道なんだよなぁ」と、
いいカンジにギリギリに破れたワンピースを見ながら、しみじみと思ったラストであった
全てが終わって、タイトル画面の手をつないだ孝介とさくやの姿を見た時、
「自分にとっての特上の娯楽」を味わった際にいつも感じる、
高揚感とも、終わってしまって、もうこの娯楽を楽しめない寂寥感とも言える、上手く言葉に出来ないモノを感じた
ここからは私なりの考察を
明らかに勘違いしてる部分があっても、華麗にスルーしてね!
まず、昔々、何があったかをまとめると
天女(長女=さくや)降臨、村がこのままでは冬を越せない事を憂う
妹の天女(次女。亜麻色の髪、という表現があり、顔は皐月・翔子系)、
同じように村の様子を見るも、「自分には関係がない」と我関せず。天に帰る
この時点で村に名前はない。ただの開拓地である
※長女は、容姿だけなら20代に見えなくはないが、行動・言動などから考えて、
精神年齢が「人間で言うなら10代後半」くらいではないかと思えなくもない
⇒長女、村の様子を見かねて協力を申し出るも、相手にされず
⇒唯一話を聞いてくれた村の青年に、色々と伝授。それが上手く回り出すと、村人が話を聞いてくれるように
⇒長女、青年と結ばれて、子を授かる。村の開拓は安定
⇒次女、再び降臨。帰る必要性を長女に説く。長女は「もう少し待って欲しい」と懇願
⇒長女、子供がある程度大きくなったのを見て、天へと帰る事に
夫に『羽衣の破片』を渡し、不老不死の薬であると説明した上で、
「待っていてくれるなら使って欲しい。でも、使わなくても構わない」と言う
次女、姉の夫へ想いを寄せていた事もあり、自分の羽衣も分け与える
(=長女、次女、それぞれの遺伝子情報を持つ羽衣が、地上に存在していた事になる。ここ大事)
※赤い石に取り込まれた翔子の言う「ぬし様」とは、つまりは「ご主人様」、夫の事であると思われる
⇒長女、次女、天へ帰る。しかし、不老不死の薬の噂を聞きつけた領主が夫を襲撃
追い詰められた夫は、湖へ薬を撒いた後に殺される
子供は他の村人の手引きで脱出
村人、湖に群がる。 村は、「皆が神の村」=「皆神村」と呼ばれるように
しかし、湖に撒かれた薬では不老不死にはなれなかった
(しかし実際には他の影響があるのだが、この時点においては判明していない)
その後、村の名前は「衣山村」⇒「御奈神村」へと変化
⇒長女が天へ帰ってから長い年月の後、次女および三女(=銀子)、降臨
村(正確には春日神社において)で突然襲撃を受け、撤退
次女は天へ帰るが、三女は長女の残した羽衣についての責任を感じて、傷を癒した後に自らの意思で残る
⇒少し後、長女、地上へ戻れなかったが逃げ出し、村へと舞い戻る
しかし、「神の肉を食べれば不老不死になれる」と思い込んだ領主に監禁され、様々な部分を「食べられる」
(=前述の通り、この際の体験が、翔子の見る夢)
⇒天女の肉に不老不死の効用がないと知った領主は、湖の横穴の奥の奥に長女を幽閉(本編で山童を祀ったと言われている場所)
羽衣(=自身のものではなく代用品。後の赤い石)の機能により、
死にはしないが、そこから出る事も敵わず
⇒長い年月の後、村へと戻ってきた皆神の者により、長女は助け出される
長女、皆神の者に、自身の「核」を取り出し飲み込むよう指示
湖に体を浸し、体を再生して、村を覆う「仕掛け」を作った上で自ら死を選ぶ
(冊子によると、この時の女性が、皐月・翔子の家系「岩永家」の祖であるらしい。元は皆神の分家)
⇒天女を看取った女性が家へ戻り、
皆神家は代々長女に天女の名前「さくや」を付け、羽衣である青い石を受け継いでいく
⇒孝介・さくや、生まれる
こんな所か
以下は、本編の説明や冊子だけではやや分かりづらいであろう点について
◎青い石
元々は、天女の羽衣
羽衣は「不老不死の薬」ではなく、「様々な事が可能な神様の道具」と考えれば分かりやすい
不老不死は、正確にはそんな大層なものではなく、羽衣の機能の一つである生命維持
銀子は、山童は体が腐ってくるため水に弱いと言っていたが、水にあっさり流される時点で「不老不死」では全然ない
銀子が持ち、同時に代々皆神家に伝わっていた「羽衣」と、
プロローグで孝介が手に入れた、動物の体内で成分が結晶化した(もしくはさせた)青い石は違うモノ
過去の回想で、咲夜の持つ青い石は形を変える事が出来たが、孝介の持つ青い石が形を変えられないのはそのため
湖に撒かれた羽衣の破片が川や山を通じて広がり、周辺に生息する動物(人間を含む)は体内に大なり小なりその成分を宿している
ただし、体に入ったらすぐ機能するワケではなく、発現するタイミングには個体差がある模様
体内に「羽衣の成分」が蓄積し、機能が発現すると、
赤い石の命令を受けて「人間を苦しめる」ための行動を取る
プロローグでクマー!が翔子に固執していたのは、翔子の体内に宿る赤い石の命令を受けての行動
ロリコンクマー!なワケではない
他に分かりやすい例では
・共通ルートにおける、水中に引き込まれた孝介(翔子の嫉妬)
・翔子ルートにおける、苦しみ出した翔子を守るように集まってきた森の生き物(翔子が助けを求めた)
・さくやルートにおける、明らかに孝介・さくやを狙う動物達(これも嫉妬)
皆神家の「長女」は代々羽衣(を形状変化させたもの。普段は宝石の形をしているらしい)を受け継いでいる
何故長女なのかというと、妊娠中に体内で「この子が次のマスターですよ」という遺伝子登録をするから
登録しないと、羽衣の機能により、体内で子供は異物として排除されてしまうらしい
子を宿す事の出来ない男では、羽衣の継承は出来ない
故に、皆神家の長女はとても大事な役割を担っている
ちなみにシンセミアのラストで天に帰った羽衣は、銀子の言う通り、孝介とさくやの子供にしか使用する事は出来ない
また、長女の家系(=孝介一家)に生まれた子(そこの長女?)は、天女(長女=さくや)と瓜二つ
次女の家系(=皐月・翔子一家)に生まれた子は天女(次女)と瓜二つ
皆神家が女系家族なのは、羽衣の機能を不十分に継承しているため
本編中では分かりづらかったが、羽衣には「主登録・副登録」があり、
皆神家が継承している羽衣の「主登録」は、天女(長女)の夫
実際に継承している皆神家の長女は「副登録」であり、機能を十分に使えない事と、
使用方法がそもそも正しく伝わっていないため、身体維持に機能を回せないらしい
咲夜が孝介に宛てた手紙において、「うちは短命の人が多い」と言っていたが、
羽衣の機能を実際に活用していれば、銀子を見れば分かるようにそう簡単に死ぬ事はない
また、フラグメントおよび御奈神村報によれば、冒頭から度々言われていた「皆神家には男が生まれない」というのは、
羽衣の継承の出来ない男は、母親の体内において、排除されてしまう可能性が高かったから?のようである
ただし、全くいなかったワケではなく、多少は産まれていた模様
天女(長女)は死に際、どれだけ低い確率であっても夫の遺伝子が発現して、男の子が産まれてくる事を願った
ただ産まれるだけなら以前にもあったようだが、彼女の願いは、夫との再会
つまりは、皆神家に男が生まれ、同時にその人が存命である内に、
皆神(とその血縁)の者に赤い石を集めさせて、自らが成り代わる
そうしてついに産まれたのが、後の孝介であり、さくやである
◎赤い石
元は、天女(長女)が天から持ち出した、代用品の羽衣
幽閉された後、長女を生かすために「核」として機能していたが、長女が皆神の者に飲み込ませた
色は最初から赤だったワケではなく、長女が死んだ際の血が、湖に撒かれた破片と入り混じった結果
御奈神村報によると、羽衣を全てを取り出し、飲み込ませたのではなく、まだ天女の体内に羽衣は残っていた。
それが彼女が死亡した事により、体内から湖に流れ出た、という事らしい
後に、御奈神村中に広がっていたものをさくやが集め、赤い石に意識を取り込まれる
水難事故の際、さくやが一度死亡したため体外へと拡散
咲夜の葬式の際、いつまた集めたのかさくやが持っていたが、
つり橋の上から孝介が川に向かって投げ捨て、山へと散らばった
赤い石を身に宿す者は、青い石が体内に発現した個体への「命令者」としての機能を持つ
本編の中では、ほぼ翔子がその身に宿しているため、翔子の願望を叶えるような現象ばかりが起きていた
冊子を読まないと分かりづらいとは思うのだが、
山に散らばり、翔子が集めていた赤い石は、核から発せられる命令を受け、
それを周囲の山童に発信するためのアンテナのような役割らしい
つまり、全ての赤い石を集めきって取り込んでしまった場合、
アンテナがどこにもなくなってしまうため、核から命令を発する事が出来なくなる
そのため、「命令を発して、操る」のではなく、「取り込んで、自分の一部」とするようで、
そのなれの果てが、シンセミアのラストにおけるヌエ(=さくや)である
ちなみにシンセミアで銀子が言っていたように、山童になり「暴れたりする個体」と「腐りながらも生きている個体」はあるが、
その中間が存在しないのは、赤い石の機能が原因
体が腐り落ちて一部が失われると、他の動物の体を取り込む事で延命をはかる
◎飲み込むなどして、人間が青い石を体内に取り込むとどうなるか?
山童になる
バッドエンドの孝介のように、赤い石の命令を受け、人間を苦しませる行動を取る
天女の直系である皆神家の血筋であっても、体内に取り込んだ場合は他の人間と同様になるようだ
ただし、いろはの両親のような例もあるので、一概に「自我を失って終わり」とも言えない
◎水難事故の真相は
幼い頃のさくや、赤い石に取り込まれ、天女(長女)が目覚める。
村に人間がたくさんおり、繁栄している様子に、「人間は、間引かないとね」
⇒川が氾濫、村全体を押し流す程の規模に(=蛟)
⇒さくや、混乱し自ら水の中へ。孝介もそれを追い水の中へ。岩とかイロイロなものにぶつかって、「死んだ」模様
⇒咲夜、身を挺して止める(本編に直接の描写なし。流れをせきとめる「壁」のようなものを作った様子)
⇒咲夜の持っていた青い石、「起動・安定」機能をさくやへ、「終了」機能を孝介へ
二人が分割して青い石を所有するカタチに
⇒さくや、孝介、致命傷を負うも青い石の機能により治癒
⇒さくや、孝介、無事。咲夜は死亡
⇒銀子、駆けつける。二人の様子を見て、咲夜に関する記憶を操作
さくやを支配した赤い石は、さくや死亡と共に体外に排出されて山中に散らばり、
後に村へ来た翔子が発見。その後集めるようになる
翔子の体内にいいカンジに蓄積したあたりで春になり、怪物騒動。そして夏が来て、プロローグへ
◎総評
冒頭で少し触れたが、本作は名作「SIREN」に大きく影響を受けたではないか?と思えて仕方がない
「コンチェルトノート」では首都圏ではないにしろ、それなりに発展した町が舞台だったが、
本作は明らかに地方の村(近畿地方、という描写がある)が舞台であり、
青い石の「体内に成分が一定以上蓄積すると、機能が発現」みたいな設定も、
SIRENの屍人のそれと良く似ている(まぁ、化物系の他の作品にも同様の設定はたくさんあるのだが)
SIRENのテーマである、八尾比丘尼について触れているのも気になる
ちなみにSIRENは、「日本の寒村を舞台とした、ジャパニーズ・ホラー」という触れ込みである。
ただ、仮にオマージュだとしてもそれが悪いだの良いだのと言うつもりはなく、
前回レビューを書いた「処女はお姉さまに恋してる~二人のエルダー~」のように、
出発点は、何かの作品に触れて「俺もこんな物語を書きたい!」であったとしても、
ここまで自分なりのオリジナリティーを発揮していれば、
それはもうパクリではなく、立派にそのライターさんの作品であると思う
絵とシナリオに相変わらずクセはあるが、本作が万人向けの良作である事に間違いはない
また、本作の物語が始まる頃に合わせて、きっちりと納期を守って発売し、
「ゲーム内の時間と、現実の時間をリンクさせる」という事をやってのけたのは、
サブヒロインも攻略可能、というボリュームを考えるとスゴイと思う
平気で何度も何度も延期をするメーカーは見習って欲しいと思うよね。うん
延期の際によく使われる、『スタッフが納得できるクオリティに達していないために延期』、というのは聞こえは良いが、
「いつまでに完成させて、いつに発売」という納期(=お客さんとの約束)を守れなかった、という事に変わりはない
必死になって納期を守っている、別の業界の人からすると、甘えてるとしか言いようがないだろう
そういう意味で、相変わらずの優良メーカーである
ただ、そのためなのかどうか分からないが、おざなりにされている部分も相変わらずである
また、厳しい事を言うのであれば、『サブヒロインも攻略可能』というのは確かに大英断だが、
そう決めただけで結果(=お話として面白いかどうか)がついてきていない
次回に期待、かな
次回作では、大胆な変革みたいなものは求めないので、
最低でも大量の誤字・脱字と奇妙な言い回しを何とかして欲しいよねぇ、というのが正直な所
シナリオも絵も限界を超えて頑張っているのに、「最低限の、基本的な事すら出来ていない」という点が、
全体の価値を大きく下げてしまっている
何はともあれ次回作も期待しています
御奈神村報でちょこっと触れていたけど、学園モノらしいね
次は、適度な距離感の姉かしらw