焼き直しのゲームシステムだが過個数作に比べれば十分な出来
ヒット作が出ない出ない病を患って久しいソフトハウスキャラの新作。
■作品傾向タグ■
Dungeon Defence RPG
■作品構成■
ソフト起動後トップ画面を経由せずいきなりプロローグを見せてから始まるおなじみの展開。
4ヒロインの個別ルートが存在し、序盤の最速で確定?するエレオノーラのルートからは
フラグ折型で進行していく形となっている。
ゲームシステム自体は過去作である『その古城に勇者砲あり!』を一部ブラッシュアップして
再導入した形となっており目新しさは感じない。
ブラッシュアップされた点としてはユニットそれぞれに個性が出るようなスキルラインナップに
なったこと、ある程度育てたユニットを引退させてスキルを一つだけ別のユニットに継承できる
ようにしたことでカスタマイズ性、リプレイアビリティの向上を図った点が挙げられる。
また簡素ではあるがヒロイン毎に戦う敵が変わったりストーリーラインに申し訳程度でも
若干の変化があった点は素直に評価するべき点といえる。
■作品内容評価(良かった点)■
先にも述べたとおり、幾つかの部分で過去作と比べて改良されている部分があったので、
その点については十分評価できる。
特に、広くは無いが深堀が出来る引退・継承システムはリプレイアビリティを飛躍的に上昇させ、
戦術の幅も「大軍で押しつぶす」か「一騎当千で迎え撃つ」の2パターンが最終的に遊べたのは
非常に良かった点といえる。
サブキャラの魔物娘たちも結構な数が用意されており、キャラ設定のコンセプト通りの
プレイ内容やユニット性能になっていたりなど、こういう細かいが当たり前にやってほしい
という部分を作りこんできてくれたことは、やっとかと思うと同時に素直に嬉しかった。
■作品内容評価(悪かった点)■
ブランドとしては大分良くなってきたといえる反面、カテゴリーとしてみるとやはり未熟であると
言わざるを得ないのが現状。
シナリオ面で言えば特に力の強い魔族の主導者達による後継者争い、と銘を打った割には
全体的にこじんまりと戦況が進んでいった点は気になる。
その理由となっているのが主人公が参謀という立場の割りに何一つ奇策を展開しないこと、
モブたちが会話に参加してくる割には立ち絵が無いので大所帯感がまるで無いことが挙げられる。
特に前者は致命的で、新しい敵が領域全体に雷を落とそうが領地を液状スライム化現象させようが、
結局プリムティーネが頑張って炎樹城を操作しました、で終わってしまうので主人公である
参謀の出る幕がどこにも無いのである。
にも拘らず、「流石は我の参謀」「やっぱりファビオは頭がいいね!」となるので、
正直なんだこれ?と思わずにはいられない。
ゲームシステム面に関しては相変わらずダンジョン構築部分が要素として弱すぎる点が気になる。
特に分断系タイルがあるにも拘らずそれを使ったMaze組み作業が出来ないので得られる快感も一
定ラインを超えることが無く、デッキの自由構築が出来ないカードゲームをやらされているような
印象が非常に強い。
またハードモード突入への前提条件も妙に厳しく、新たに開放されるコンテンツや要素もないので
ゲーム作りの基本である「飴と鞭」を完全に無視した作りとなっている点も、
まだ理解出来ていないのか・・・と諦めにも似た悲しい感情が沸き起こる。
■総評■
散々だった勇者砲に手直しを加えて再販し、ある程度遊べるところまでもってきたという点では
評価できるが、同ジャンルで鎬を削る他社タイトルと比べるとまだまだ解決すべき課題が
山積しているということが如実に解る一作。
キャラの場合一度もヒット作が生まれていないわけでもないので、後は自社ブランドの何が
ユーザーにとって魅力的に映っているのかの理解と、時流のマーケティングだけ徹底すれば
そうそう変な作品が出来上がることは無いと思うのだが、何故だか毎回煮え切らない出来栄えの
作品ばかり出すという印象が根強く付いてしまうブランドになってしまった。
その原因はひとえに、作品に発生したマイナス要素を打ち消すための施策の引き出しが
少なすぎるのが問題なのだが、果たしてそれを補うためのスタッフの知識経験の吸収の機会が
無いのか、そもそもスタッフ自身にそのつもりがないのか・・・。
評価されているタイトルが何故評価されるのか、評価されなかった自社タイトルのどこにダメ出しが
されていたのか。耳が痛いし目も覆いたくなるだろうが、しっかりと優劣を見比べてクオリティの
向上に繋げていってもらいたい。