時代は変わっても人々の根底にあるモノは変わらない。受け継いでいく事の美しさと醜さを同時に描いた素敵な作品でした。
戦乱の世を舞台にした戦略SRPG。この手のジャンルの作品はさほどプレイしたことがないため、最初は不安も少々あったがゲーム開始一時間ほどで慣れた。駒を進めていき、出会った相手を倒していくその作りは一見すると地味に思えるかもしれない。しかしながら意外に考える部分が多く、また熱くなる瞬間もあったりする。特にボスを皆で囲み、連携して倒した際なんかは大きな喜びに包まれた。
ゲームの特性上「移動範囲」と「攻撃範囲」がかなり重要で、そういう意味でも魔道師達を好んでよく使用していた。魔法の命中率の高さもかなり美味しい。しかし、ただ魔道部隊を編成すればいいわけではなくて、ボスクラスの敵の中には魔法耐性が高いキャラクターもいたりする。そういった際に輝くのが斧や剣といった物理武器主体のキャラクターで、その辺のバランス調整が凄く良いなと。
なので使いやすいからといってスカイソードや魔道師ばかり育てていると苦労する場面も...。自分自身、一周目はそんな感じであった。一周目は本当に何も考えず、ただ目の前の敵を倒すこと、それからステージクリアを目指していたので育成に大きなムラが出来ていて、それが苦戦していた理由になるのかなと。ハルヴィン城防衛隊の皆様には大変お世話になった。(おじさん達が強すぎる…)
また、六章解禁のために必要なキャラクター達も何人も死なせてしまっていて、一周目で六章がタイトル画面に出てくることはなかった。その事実を目の当たりにした瞬間こそ軽くショックだったが、その後また0からきちんとやり直して本当に良かったなと今は思っている。
二周目は一周目とは違い、戦闘中のキャラクター同士の会話を拾う事に注力していた。勿論多くは小話程度のものだが、良いなぁと思える会話が豊富に仕込まれていて中盤に差し掛かる頃には義務感なんてものは一切なかった。
また、キャラクターをしっかりと見つめることにより愛着も湧いてきて、それが育成に大きく影響した。ステータスばかり気にするのではなく、自分の好きなキャラを好きなように育てる。それが楽しいのだと、そんな基本的な事に二周目でようやく気付いたのだ。
といった感じでゲーム面はかなり楽しませてもらった。欲を言えば魔法を使った範囲攻撃などで敵を一掃したり、もっと書物を増やして自由にスキルを組ませてほしかったりもしたが、内容としては充分良かった。
次にシナリオ面についてだが…これが良かったからこそこんなにも幸福を感じているのだろう。ストーリーは六章構成になっていて、はじめは二人の男女を主人公とした話が描かれ、その後その二人の子、それから孫の世代のお話へと紡がれていく。
こんな簡素な説明をしただけ感情の波が押し寄せてくるのだから凄い。その辺の作品では最後に盛り上がるであろう部分を最初から連続投入してきて、そのまま面白い話を継続させていく。こんなのずるいだろうとプレイ中何度も思ったし、何度も涙ぐんだ。
物語のメインとなる部分は二人目の主人公「ハルカ」を中心とした二~四章だが、それを後ろで支えていたのは一章なのだ。「クナタ」と「カタリ」の存在が後の人物達に大きな影響を与えていた。わかりやすいのがスポポンドで、二人に恩義を感じていたが故に常にハルカを優先した行動をとっていた。家族よりも自らの意志を貫こうとする本当に素敵なキャラクターだ。ちなみ私が一番好きなキャラクターでもある。
ただ、中には悪い意味で影響を受けた人物なんかもいて、それがレシウル。兄妹のように思っていた二人を殺され、怒り狂う彼がとってしまったあまりにも残酷な行動が後々厄介な亀裂を生んだ。ロマテア帝国皇帝は本当に厄介な人物しかいなくて、そりゃあ嫌悪感を抱く人も溢れかえるわなぁと。まあ、だから面白いのだが。
本作を語る上で外せないのはやはりデミライトだろう。疑心暗鬼になってしまい実の兄を殺させ、殺しを頼んだ親友とも言える相手をあっさりと裏切る。彼の行動だけみるとただの屑であるし、プレイ中を通して彼を好きになった瞬間は一切なかった。だが、キャラクターとしてはかなり人間味があって良かったなぁと。綺麗な死に方をしない点も高く評価している。
また、衝撃的だったのはメレオネの立ち位置で、周りから先生扱いされていることやハルカよりも十二歳上という点から良い脇役くらいのポジションで最後までいくのだろうなと思っていた。ところがどっこい、気付いたらメインヒロインになっていた。
恋なんて言葉でしか知らないような二人が普通にイチャイチャし始めた時の驚きといったらもう。メレオネは大好きなキャラクターだったのであまりにも自分好みの流れに歓喜した。六章にて明かされる初体験の事についてはちょっと笑ってしまったが。普段の格好といいえっちすぎる。
またハルカに振られた側のファテナもかなりお気に入りのキャラクターで、手が届かなくなっていく事で初めて恋心を自覚したというのが切ないながらも素敵だなと。六章にて彼を想い続ける姿には感服した。メレオネに冗談といってお願いした通り、もしカオルが自分の下に来たとしてもきっと彼女は変わらないだろう。
六章の話がちらほら出ているので六章について話していくと、まあ六章はここまでプレイしてきた者へのご褒美みたいな内容で嬉しい要素ばかりが詰め込まれていた。ハルカの子であるカオルと、それからデミライトの子であるエミット。この二人のシーンが多く存在したが、その一方で残された者たちのその後もちゃんと描かれていた。
わかってはいたがハルカと親交の深かったキャラクターが彼の死を受け止める場面は辛くて、スポポンドの吐露には涙を誘われそうになったりもした。でもそれではいけないのだと。
六章は終始メレオネが良いキャラ…というか良い母していた。家族と仲違いしていた彼女が家族を作り、我が子に愛を注いでいる。その光景が素敵で素敵で...まったく、この作品はどこまで素晴らしいのだと笑顔が止まらなかった。
また、個人的にキルの魅力がかなり増したなと。カオルとエミットへの台詞の一つ一つに優しさが込められており、殺人の道具だった頃の面影はもはやない。カオルの意見を真に受けてショックを受けている所なんかは平和そのもので、良い変わり方をしたなぁと。あんなにも頼もしい村長もいないだろう。
長い物語ではあったが、振り返ってみるとあっという間だったなと。そんな感情を抱いてしまうくらいには素敵な作品だった。グレイメルカという一つの歴史を追体験したようだ。出会いに感謝。