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Predawnvagabondさんのプラネット ドラゴンの長文感想

ユーザー
Predawnvagabond
ゲーム
プラネット ドラゴン
ブランド
ソフトハウスキャラ
得点
72
参照数
1413

一言コメント

ゆるい世界観に浸りながらまったり運送業を営むというスタイルなら楽しめる。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・まとめ

雑談や小会話の数が大幅に増加したので、ソフトハウスキャラ独特のゆるい雰囲気を存分に楽しむことが出来る作品だった。
ゲームパートの方は、ターン制限や資金繰りの悪化で破産みたいなことは一切ないので、難易度としては非常にヌルく、経営SLGとしてはイマイチかもしれないが、本作のゆるい世界観に浸りながら、マッタリと運送業を営むという考え方でプレイすると結構楽しめる。


・2チーム体制の功績

前作の「その古城に勇者砲あり!」は新生したチーム++というチームが製作をしており、内情は詳しくわからないものの、少なくともシナリオライターである内藤騎之介氏に関しては、ソフトハウスキャラの作品のライターとして毎作活躍しており、従来の作品スパンは10ヶ月程だったと思うのだが、1回お休みをしたので今作は少し持ち直したのではないかと個人的には少し期待していた。
というのも、10年以上ソフトハウスキャラの唯一のライターとして活躍しており、過去作と比較した場合、最近の作品のシナリオはイマイチというのが正直な感想だったので、一つの作品に対してより長い製作期間を得た(あるいは休養期間を得た)ことにより、昔の筆力が戻るのではないかと勝手に期待していたからである。
過去作に関しては、古い作品は記憶が曖昧になっている部分も多いので、比較してどうこうは言えないのだが、最近の数作と比べても本作のシナリオに関しては良くなっていたのではないかと感じた。

シナリオは、ソフトハウスキャラの醍醐味とも言えるゲームの合間に挟まれる雑談や小ネタは相当量増えており、最近は空気になり勝ちだったモブキャラもしっかりと登場するので、ソフトハウスキャラの独特の雰囲気が好きなら楽しめるのではないかと思う。
雑談の多さはゲームのテンポを悪くするレベル(褒め言葉)で多いので、シンプルでやりこみ要素の少ない本作でも一周目は最後まで楽しむことが出来た。
また、ある程度共通の世界観を持つファンタジーでもなく、細かい部分の説明は不要な現代モノでも無い、しっかりとした背景設定や世界観の説明が必須なSF作品だが、豊富な雑談や小会話でその辺りの説明がしっかりされているのも良かった。

登場人物は公式HPで紹介されている通り10人ほどだが、実際に主人公が駆る貨物船に常駐するのはルウとサクラ+コザクラくらいで、後はシャーリーが中盤以降に準レギュラー的なポジションにつくことになる。
他のキャラもストーリー中で一時的に乗船することはあるが、後は各々の居住する惑星に留まるため、大勢のキャラクターでワイワイと運送業を営むというのとは少し違い、乗船していないヒロインには運送業で近くに寄ったついでに立ち寄るみたいなノリになる。
そのため、小会話は主人公とルウとサクラの3人がメインとなるので、公式HPで紹介されているキャラクターでシャーリーよりも下にいるヒロインの登場回数はあまり多くなかった。

さして重要なことではないのだが、本作のタイトルにドラゴンをつけた意味は最後まで不明なままだった。
ソフトハウスキャラにとって”ドラゴン”という単語が特別な意味を持つというのは理解出来るが、本作にはドラゴン要素は全く無かった。
主人公の貨物船の名前は海亀号で、運営する会社名はウラシマ運送だし、別にドラゴンが登場するわけでもないのに、何故こんなタイトルにしたのだろうか。


・まったり運送業を営む分には楽しめるゲームバランス

運送業を営む本作だが、船は主人公が乗る海亀号一隻だけなので、経営SLGとは大分違った趣の作品で、どちらかというとフリーランスのトラック野郎SLGみたいな感じの作品だった。
全部で9つの恒星系とそれぞれの恒星系に5~8個くらいある惑星を行き来し、依頼された荷物を運んだり、自腹で貿易品を購入して別の惑星で売って儲けるという内容となっている。
貨物船を改造することも可能で、貨物室を増設して一度に運べる量を増やせるのは勿論、道中で遭遇する海賊と戦うための武器類、移動力をアップさせるエンジン、果ては客室を設置して副収入を得ることも出来る。
経済面で有効な設備を増設すれば収入は増えるが、反面、道中の戦闘で不利になってしまうので、如何にバランスの取れた宇宙船にするかが本作の面白い部分の一つとなる。
また、マップ上には海賊、商船、宇宙軍が存在し、海賊が隣接している惑星は貿易品が買えなくなったり、商船が隣接している場合は市場価格の上下が激しかったりと、商売に影響するランダム要素がある。
他にも惑星ごとに特定の商品を高く売ることが出来たり、惑星の要望に応えることによって経済レベルが上がり、一度に売ってくれる貿易品の量が増えたり、種類が増えたりする。

ゲームバランスに関しては、ヌルいというのが正直な感想で、宇宙船の維持費はかからないし、過去作みたいに一定期間内にいくら稼げというような長期目標も存在しない。
ターン制限に関しては、預かった荷物を制限ターン以内で届けるというのはあるが、厳しいと感じれば荷物を預からなければいいわけだし、ストーリー中で一定期間内に目標を達成しなければならないように見えるイベントも存在するが、実際にはターン制限は全く無いので、必要に応じてお金を稼いで船を改造することが出来る。
また、戦闘に敗北してもターン数だけを消費して一つ前の惑星に戻されるだけだし、荷物を制限ターン内に届けられなくても報酬が発生しないだけ(キャンセルすればキャンセル料は取られる)なので、プレイヤー側の意図しない資金の消費は一切発生しない。
つまり、資金面でも期限でも一切の縛りが存在しないので、自分のペースでのんびりと運送業を営むことが出来るようになっている。

個人的には今作から雑談や小会話が再び増えたので、それと合わせて考えると、このまったり感は嫌いではなかったが、そのせいでいくつかの要素が空気になってしまっていると感じた。
貿易品は特定の惑星で高く買ってもらえたり、海賊が隣接している時には売ってもらえなくなったりするので、先々のことを考えながら貿易品を購入することで少ないターン数で大きく設けることが出来るのだが、ターン制限が無いのだから、自分が購入した時よりも高い金額で買い取ってもらえるのなら、深く考えずに商売しても問題は生じない。
また、船の改造にしても、貨物室や戦闘関連の武器類とのバランスで無理をして貨物室を増やさずとも、道中の安全重視の構成の船にしても、惑星を行き来する回数が多少増えるかもしれないが、それ以外の問題は生じない。
そういった意味では、せっかくの要素を活かすために何らかのチャレンジ目標があっても面白いのではないかと思ったが、基本的には本作のゆるい世界観とゆるい難易度の組み合わせは悪くなかった。
ただ、ゲーム性という部分に関して言うならば、ヌルすぎて純粋なゲームとしては面白みに欠けていた。

問題だと感じた部分としては、船の改造の自由度の低さ、周回要素が実質無し、成長要素が無いことの3点だった。
改造は、パズルのようにブロックの集合体であるパーツを並べるのだが、必ず船頭脳と呼ばれるブロックに隣接するように設置する必要がある。
基本的にはパーツは長方形や正方形のものが多いのだが、中にはトリッキーな形状をしたものがあり、トリッキーな形状のパーツを装備するとなると、途端に改造の自由度が制限されてしまうので、最後まで使うことがないまま終わってしまったパーツも結構あった。
一応最大で10くらいのパーツを装備することが出来、その辺りに関しては丁度いいバランスで貨物室や武器類の構成に悩むことも多かったのだが、これなら普通にスロット制とかの方が良かったのではないかと感じた。
成長要素の欠如に関してはそのままの意味で、キャラクターや船のレベルは上がらないため、船の改造でのみ能力が変化するので、やり込みという点に関しては、プレイすればするほど能力が上がるわけでもなく、パーツの価格がどんどんインフレするとかも無かったので、能力の上限が割りと早い段階で訪れるのは残念だった。
レベルの概念がない本作では周回要素と言えるものも皆無で、周回特典として与えられるのは船頭脳が余分に1つと、初期の所持金が1000万から10000万になるという2点である。
船頭脳が増えるので、改造の自由度は多少上がるし、初期の所持金も10倍になるのでスタートダッシュが可能となり、二周目以降はサクサクと進められるが、シナリオを含めて二周目以降限定の何かがあるわけではないので、周回する意義はほとんど無いと感じた。


・中盤以降は使いづらくなるUI

多数の恒星系や惑星が登場する本作では、情報を閲覧するUIが非常に重要なのだが、残念ながら本作のUIは、惑星がどんどん増える中盤以降からは使いづらいと感じる事が多かった。
貿易品は全部で45品あるが、9種類に分類されている。
特定の貿易品を要求されるのは1回しかないが、特定の種類の貿易品が必要となることは頻繁にある。
ストーリー上では要求されることはないが、惑星の経済レベルを上げるために希望する種類の貿易品を輸送するとか、近隣で今持っている貿易品を高く買ってもらえる惑星が無いかどうかを調べたりするのに、情報を閲覧することが(プレイスタイル次第だが)頻繁にあった。
その割には情報画面は雑多で使いづらかったので、もう少しわかりやすくしてほしいと感じた。
ただ、上でも述べたように、そこまで効率を追求する必要もないので、UIの悪さのせいでちょっと損をしたとかがあっても、大きな問題は無かった。
他にも、ソート機能が存在しないのも地味に不便で、船のパーツ購入画面で、初期の頃から販売されている性能の低いパーツが先に表示されるので、購入画面を開くたびにスクロールダウンしないといけないとか、貿易品を売買する画面でも、自分の所持している貿易品を並び替えできないのは不便だった。
とはいえ、全てにおいて使いづらかったわけでもなく、例えば貿易品を販売する時に自分が購入した価格や、同じ恒星系内なら預かった荷物をどの惑星に持っていく必要があるのかが表示されたりするのは便利だった。


・CGのクオリティはやや下がった気も

CGの枚数は基本枚数が86枚、差分含めて全部で293枚で、標準的なフルプライスのボリュームとなっている。
クオリティの方も悪くはないが、ソフトハウスキャラの過去作と比べると、一部のCGではやや下がったように感じられ、特に顔の造形がおかしいと感じるものが数枚あった。
塗りに関しては、過去作の時点で頭打ちみたいな感じだったので、今作も質は高いが、過去作と比べて特に良くなったということは無かった。
下がったとはいえ、どちらかと言えば過去作のほうが良かったかなぁ?という程度なので、今作もCGの質はしっかりとしていた。


・Hシーンは中盤以降に集中

Hシーンの回数は、他のイベントと纏めてイベント回想に登録されているので数えるのが難しいが、HシーンのCG枚数は大体45枚くらいとなっている。
尺に関しては相変わらず短めで、オカズとしては使えないかもしれないが、内藤氏担当の作品としては「BunnyBlack3」の頃を思うと、底からは脱したと言えると思う。
序盤から終盤までバランスよくHシーンが存在した過去作と比べると、本作のHシーンは中盤以降に集中しており、最初の内は大幅にHシーンを削減したのかと考えていたのだが、回数そのものに関しては過去作と比べても減ったということは無いと思う。
シーン内容は特殊なものは殆ど無く、SF設定を活かしたプレイも特に無かった。
また、途中から和姦に変わる、所謂ほのぼのレイプも今作では存在しないが、SF版の夢落ちみたいなノリで数回だけハツユキのレイプシーンがある。


・コンフィグ面は特に変わらず

本作のコンフィグに関しては過去作から特に変わっていない。
ゲームの速度や確認ポップアップなどの設定をサクッと変更出来るのは素晴らしいが、文字の表示速度が5段階調節で、瞬間表示の次の表示速度がちょっと遅すぎるという問題は相変わらずだった。
また、ctrlを押すことにより、ゲーム速度を超速化することが可能で、シーンジャンプボタンも搭載されているので、二周目以降はサクサク進められるが、残念ながら、上でも述べた通り周回要素は皆無なので、活躍する機会は少ないかもしれない。