残影の夜が明ける時

残影の夜が明ける時(ボーカル有り)

音楽得点分布

得点度数グラフ
10012
90~997
80~894
70~793
60~690
50~590
40~490
30~390
20~290
10~190
0~90

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コメント(新着順)

きれいに調ったボーカルは、ギターの雑音から人間味を引き出してくれる。

 KIYOボーカルの響かせかたには、ややポップスらしからぬ癖を感じます。喉の奥をひらいて歌うことで共鳴を深く取ってゆく、いわば声楽に近しい音質をふくんでおりまして。かつて音楽の授業で習ったような、あるいは、"うたのおねえさん" がするような喉のふるわしかた。これを真正面からふるって聴かせたらば「snowdrop」みたいな歌になるわけですね。巧い。

 ただ私個人の好みをいうと、そんな声素材をあどけないポップスへとぜいたくに使い、しっとり品よく飾ってくれた「Flyable Heart」などの曲づくりに、いっそう面白みを感じるんです。
 声楽っぽく深く響かせて良く飛ぶ声なものだから、"うたのおねえさん"っぽい穏やかに澄ました雰囲気をまとっています。おまけにエコーまで多用するので、歌ははるか頭の上にまでも響き、それから曲のぜんぶへと雲のようにかかってきて包み込んでいくみたい。
 すると、シンセがちんまり鳴ってみた音とか、なんとなく踊ってみたベースとかの、あどけない音色というのが映えてくる。のびのびとした暖かみをもって、ここで飛び回っているのがわかるんです。そうした素朴でくっきりした音たちを、きっちり響きながら見守っていくボーカルの顔つきは優しくて、ほんわかメルヘンを語り聞かせる歌ができあがってました。

 本作「残影の夜が明ける時」でもまた、KIYOボーカルのつける残響が曲のアウトラインをきっちり縁取っておくからこそ、そのなかで動く音は活き活きとしていくよう思えます。
 声楽寄りな発声を良くしてるということは、すなわち雑音が響きのなかにまるめられ、優美に収束されているわけでして。それだから、たとえば好対照なギターはとても際立ってきます。粗野にわめきちらすギターどもの生命力、ギザギザした音の成分へとむき出しになった個性というのがくっきり描かれるのです。がむしゃらに前へ進もうとするリフワークの荒削りなところが、きれいに調律されたコーラスのさなかに浮き上がってきて、魅力的なすがたをさらけ出してくれます。
 あるいは、JOHボーカルのすらりとブレない単刀直入さも引き出されてきます。よく音程をととのえて馴染みあわせたボーカル同士ではあるのだけど、余裕をみせて震わせていくKIYOボーカルとともにあると、JOHボーカルの硬くマイクを握りしめたふうな強さがなんとも魅力的にのぞけてきて。そうした意固地さが「逃げ出さないで」「うつむかないで」不屈にねがっていく曲の強さになっています。ひとつに声が重なったかと思えば、いつの間にやら背中合わせに歌っている、昼と夜みたいにつかず離れずのありかたをなすツインボーカルでした。

 水月陵は、曲のパーツとして自身の声(KIYOボーカル) を取り扱うのがうまいと思います。自身の喉にコントロールを利かせつつ、エフェクトも用いて自由に造形していくのは、曲を提供されて歌う専業ボーカリストの人にはなかなかできない強みと感じるところ。
 専業の人はそれが唯一の寄って立つところになるから、あたりまえだけど全身全霊で、そうそう個性を引っこめれるわけもないのだけど。まずコンポーザーとして全体への視点をたもちつつ、自身の曲へと提供されるKIYOボーカルというのは、ときには自然と一歩さがりつつ、曲のため響いてくれるふうに感じるのです。

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