plutinonさんの「もしも明日が晴れならば」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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  全く難点のない作品などないとすれば、難点はあっても気にされないレベルに仕上げたものが良作足るのだろう。  



  雰囲気・キャラ重視の一般的な萌ゲーの水準からいけば本作はそこそこ高度にまとまっている方だろう。 基本はハートウォーミングな話で、時にシリアスで泣ける、更に脇を固めるサウンド・ビジュアル面も秀逸で局面での演出力にも長けるとなれば、この手の作品好きには堪らない出来に相違ない。
  そのためか、本作は概ね好評の様子。 ただし、名作とまではあまり謳われることがない背景からも、本作が幾つかの問題を抱えていることが分かる。 要は、それが気になるレベルのものか、あるいは気にするほどでもないか。 そこが評価の分かれ目になる。 私個人の独断と偏見により大別して、主な問題は二つ。 以下それらについて書き連ねてみる。




  ① 主人公の造形のお粗末さ

  この主人公はとにかく何を考えているのかが分からない。 基本は彼の一人称のはずだが、どうにも彼という人間が見えてこない。 基本的におとなしく消極的で、発言も少なければ、その心情描写も妙にはしょられていたり簡素すぎたりで、言動もどこか行き当たりばったり的なチグハグ感がある。 主人公に感情移入を求めるかどうかはさておき、物語の適切な把握のために最低限の彼の思考と行動原理ぐらいは示してほしい。 
  おそらく作者は彼に明確な人格を定めなかったのだろう。 こうした主人公無色化という手法はキャラゲー等では常套手段だが、果たして本作に当てはめてしまって良かったのか。 一般的なキャラゲーでは、主人公がヒロインに惹かれる理由をまともに描写しないことも多々あり、プレイする側もそれを分かってそもそも期待しないのがある種のお約束であるため、それが致命的な問題として指摘されることは少ない(ホントか…私もちょっと自信がないので反論がある方はどうぞ遠慮なく言ってくだされ)。 要するに、とりあえず恋仲になって、とにかくエッチして、そんで一応ハッピーエンドに収まればそれでいいわけで、この手法を用いる限り、結果重視過程は軽視な傾向に陥るのは避けられない、と。 一方の本作は、扱っている題材の関係上、そんな身も蓋もない展開では困るわけで、ある程度の納得できる心情描写はやはり必要なのである。
  ところが、当の主人公は上記のような体たらく。 一応女性陣が頑張ってくれているのでお話にならないということはないのだが、逆にそれが災いしてか、当事者のはずの主人公がまるで蚊帳の外のような扱いになりがちなのはいただけない。 件の千早の一件も然り。 本作有数の輝きを放つ(?)ヒロイン達によるド修羅場も然りである。 前者は明穂が許したからなし崩しという印象だが、仮にも彼女の恋人だったのであれば、もっと深い心の動きもあろうに、あったとしてもこの作品はそれを“はしょって”しまうからなぁ…。 後者においては正に蚊帳の外という表現がぴったり。 争点の中心人物にとって針の筵なのは分かるけど、もう少しリアクションがあっても…。 


  主人公の造形というのは、当然その作品の方向性を担うことになるので、もう少し丁寧に扱ってほしかったところ。 主人公の造形と作品の題材との乖離がもたらす不協和音。 気にしない方はホントに気にしないのだろうが、物語序盤から気に掛けてしまうと、後が辛い…。




  ② 終局的に逃げ道にしかならなかった「設定」

  本作に限った話ではないかもしれないが、無駄な設定が少々多すぎると感じた。 無駄と感じるのは、その設定に必然性がなく、単に個別ルートの“ヤマ”にするため以上の目的を見出せないからである。 この点は殊に千早・珠美の両名にあてはまる。 はっきり言って「物の怪」も「鬼斬り」も要らないのである。 だって明らかに扱いきれていないだから。 詰る所、欲しかったのは「幽霊」たる明穂の存在を認め、話し相手になり得る相手であり、つばさを除けば他はイロモノを持ち出すしかないという安直な理由に帰するのではないかと邪推できるのである。 確かに共通ルートの彼女らの掛け合いを見ていると一見奏功しているようにも見えるが、弱さを露呈したのは個別ルートに入ってから。 これは明穂についても当てはまるが、なんか明らかに「設定」が足を引っ張っている感があり、結局「設定」に寄ったお粗末な結末しか用意されていない。 そのためか、各エンドの軽重に随分落差があり、本作の主題も暈されてしまっているようにも思える。 イロモノ設定の多さが本作を「軽い」ものにしてしまっている中で、ただの嫉妬深い妹属性がついただけのヒロインのシナリオが一番良くまとまっているというのは、皮肉に感じるところである(実際まともに読めるのはこのシナリオだけ。 どのルートでも明穂の消滅は免れ得ないわけで、そこに一定の痛みを伴うのは必然である。 しかし、哀惜と希望との均衡がとれ、ほど良い読後感を残す妹ルート以外は、そこで生じるはずの痛みを別のものにすり替えられているため、充分な描写がなされていない。 結局これがボトルネックのようなもので、作品そのものの価値を貶めかねない問題となっているのである)。


  終盤のお粗末さに鑑みると、中盤のキャラ同士の掛け合いを本作の核と考えた方が存外楽しめるかもしれない。 もっとも、本作が企図していたのはきっと別のものだったのだろうなと思えるだけに、設定をもう少し有効活用する途を探して欲しかった。 


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