abcd1234さんの「もしも明日が晴れならば」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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綺麗な物語。感じ入ることができたのであれば、それは美しい物語であったということだろうし、違和感を覚えたのであれば、それは綺麗過ぎた物語であったということだろう。
 事実に対する人間の反応までの過程とは、(あくまでおよそ一般的に)次のようなものと考えられる。

 1.事実との遭遇
 2.事実の把握(認識)
 3.事実と前後関係の理解
 4.事実に対する反応(受容or拒絶or保留)

 この過程が反応までの流れとなるのだが、これはあくまで客観的な部分についてのみである。反応に至るまでの過程においてもっとも重要と思われる要素はそこに出てこない。

 もっとも重要と思われる要素とは、理解した後、どう反応するかについての最終決定、すなわち「覚悟」である。そして、この物語の主軸に置いたテーマは「覚悟」なのではないかと思った。

 良く知らない人と一緒に暮らす覚悟。
 ずっと近くにいた人に告白する覚悟。
 お互いの気持ちを確認した上で、付き合っていく覚悟。
 愛し合う者同士が触れ合って、一線を越える覚悟。
 この先ずっと共に歩む覚悟。
 生に対応する、不可避な別れの覚悟。
 それでも生きてゆく覚悟。

 この物語の本編がスタートするまでで、既にこれだけの覚悟が現れている。そのうえで、幽霊となった明穂が登場して、再び避けられない別れへの覚悟を求められることになり、その別れへ向かう過程を描いたのが本作であるとすれば、覚悟を求められるのが何もこの作品に限ったものでなく、また特別なことでないとはいえ、やはり「覚悟」をメインに据えた物語と捉えたのだろう、と思うのである。

 その覚悟を物語上求められているのは、誰なのか。もちろん、主人公とヒロインである。ただ、視点切り替えがある中、一番多くの場面で目線を共にするのが主人公である以上、もっとも覚悟を求められているのは、やはり主人公であるといって良いであろう。

 ところが、その主人公は、求められているにもかかわらず、一向に覚悟を示してくれない。いや、もしかしたら実際はそれなりに示しているのかもしれない。だが、それがなかなかこちらには伝わってこないのだ。

 伝わってこない原因が何なのか。私は、主人公の心理描写に問題があると感じられた。全ての描写に問題があったわけではない。むしろ、葛藤の部分については丁寧に綴られているとすら思った。しかし、肝心の覚悟を決める箇所となると、とたんに描写が脆くなる。主人公の内面、すなわち覚悟を見せるべき場面になると、外的要因、具体的にはヒロイン達の行動描写に完全にシフトするのだ。そして、ヒロインに押されるような形で覚悟を決める。これでは、葛藤を乗り越えた先の覚悟、というにはさすがに程遠いと言わざるを得ない。もちろん、主人公の置かれている状況を考慮すれば、なかなか覚悟を決められないこともわからないでもないのだが、「覚悟」をメインに据えているのであれば、決めるとこは主体的に決めて欲しい、と思ってしまう私は、あるいは多くのことを求めすぎているのであろうか。

 また、プレイヤーと主人公との持ち合わせている情報量の著しい相違も、「覚悟」をうまく見せられない要因となっている。というのは、ヒロイン達の視点も織り交ぜて、登場人物全員の状況を丁寧に描写しているため、プレイヤーは豊富な情報を手にすることができ、その結果現状の把握が容易となる(長所でもあるのだが)。ところが、主人公はその性格(鈍感さ)も手伝って、あまり状況を把握していない場面が多い。そのため、主人公が覚悟を決めたとしても、プレイヤーとしては今更な感があり、スムーズに感じ入ることを阻害される。さらに、その情報量の相違は、主人公の視点を通して作品に触れるプレイヤーに乖離感をも与えてしまう。そして、徹頭徹尾丁寧な描写のため、乖離感を補うようなサプライズもない。

 なぜ、このような描写になってしまったのか。それは綺麗な物語を作ろうとしたからではないだろうか。ここでいう綺麗とは、純粋とか高潔とかそのようなニュアンスに近い。人間が本来持っているような汚さをまるで見せないような(あるいは汚さを見せたとしても最終的には綺麗さを強調するために用意した)ストーリーと登場人物で、この作品を構成したのである(もっとも何かを美化しているということはない)。だが、その結果としてできた物語は、綺麗さを超えた、綺麗過ぎる物語になってしまった。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」であって、綺麗過ぎる物語は、感じ入るに難しい。何より、綺麗過ぎる物語に、テーマである「覚悟」は似つかわしくないのであって、そこにもまた違和感が生ずる。

 なので、以上のように感じた私がもっとも違和感のなかった締め括りは、文化祭の終わりと同時に明穂が成仏するというシナリオであった。事実を厳しく叩きつけられたシナリオであり、それゆえに綺麗過ぎなかったからである。委員長との絡みは蛇足であったが(もちろんそういう終わりを用意しようとした意図は理解しているつもりである)。

 以上より、私にとって、本作は綺麗過ぎる物語であったため、うまく「覚悟」を汲んであげることはできなかった。ただそれでも、明穂の願ったもの(それぞれのシナリオで違うが)が何であったのか、そしてそれを慮れないほどに、私も無感ではいられなかった。だから晴れることを願う。『もしも明日が晴れならば』少なくとも雲一枚分くらいは、天国の明穂と主人公達とを隔てるものが減るに違いないから。
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