Immature_boyさんの「SWAN SONG」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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86SWAN SONG
選択肢の演出によってプレイヤーを挑発してくる制作者のスタンスを私は歓迎する。

<総評>

エロゲ界にとっては過去の人物となってしまった鬼才のライター・瀬戸口廉也氏による大作。
舞台は大地震に見舞われた日本、何もかもが崩壊した厳しく不条理な世界。
その理不尽な現実の中で、不条理に抗うことを諦めない者、絶望を受け入れてしまった者、
未来への希望を紡ぎ続ける者、理想と現実の狭間で葛藤する者、狂信的な理想追求に踊らされた者など、
様々な人間の関係や心情の変化を刻々と綴り切った作品。

奇跡とはおよそ無縁の残酷で厳しくも美しい本作は、他のエロゲでは代替不可能な唯一無二の作品であり、
18禁となるような性的描写・暴力描写が織り込まれた極限状態でのヒューマンドラマというのが
正しい定義だろう。加えて、素晴らしいBGMに彩られた本作の世界観は筆舌にし難い。印象深い名言も多い。
平和的な作品に飽きた方には気分転換という意味合いでもお奨めしたい。

また、最近では廉価版・DL版によって容易にプレイできる本作だが、今となってはなかなか手に
入らない初回版の店舗特典であるドラマCDも、機会があれば本編プレイ後に是非とも聞いてほしい。


<批判点>

本作だけではなく瀬戸口三部作全てに言えることだが、彼の強烈で独特な文体は、
1つのセンテンスが長くなる傾向にあるため、中身を追いかけるのに結構なパワーを消費する。
本作はそもそも重くて陰鬱な内容なので、それなりにエネルギーを使うことに加えてである。
私にとってはおそらくこのことが原因で、中だるみ感を抱くこととなり、2ヶ月ほどの
プレイ中断期間が生まれた。

また、作中ではMaricaさんの他作品の楽曲が3曲使われているが、どうせならMaricaさんによる
本作オリジナルの楽曲があっても良かったというのは、贅沢な要求だろうか。


<特筆インパクト>

さて本作には、私にとって強烈なインパクトをもたらしてくれた演出がある。それは1週目の最後の
選択肢、「ピンポーン! ワーワー!」と「ブッブー!」の二者択一のシーンである。

最初、この演出を見たときは「何じゃこれ、おちょくってんのか ( ゚д゚)ポカーン」ってな感じ
だったのだが、少し考えた後、背中に冷たいものが走る感覚に襲われた。

というのもこの選択シーン、比較的普通の平和な現実世界で暮らしている我々プレイヤーにとって、
あるいは、エロゲ作品を含む多くの平和な架空世界の登場人物にとって、当たり前だと感じるのは
「下」の選択肢のはずである。平和な環境下で普通の常識的な選択肢はまず間違いなく「下」であろう。

しかしながら、作中のこのシーンでは、司に同化したほとんどのプレイヤーが、「上」が正しいと
判断するのではないだろうか。そして直感的に、「下」の選択肢がBADENDに繋がると判断し、
まずはシーン回収のために「下」を先に選択するのではないだろうか。少なくとも私はそうだった。
そして選んだ直後に鳴る「ブッブー!」の効果音。あたかもクイズ番組で不正解の回答を選んで
しまったが如く、司とプレイヤーを嘲笑するかのような演出。反対に「上」を選択した後に訪れる
「ピンポーン! ワーワー!」な効果音は、大袈裟過ぎる程に、司とプレイヤーを祝福してくれる。
何れとも、滑稽極まりない。

ただし、このシーンにおける当該状況について、最も滑稽で馬鹿馬鹿しいと感じているのは、
他ならぬ作中での当事者たる司本人だろう。彼は本作の登場人物の中でも特に、
冷静かつ理性的な人物であるから、別次元から操作および観賞する我々プレイヤー以上に、
自分の置かれた状況に対して滑稽で馬鹿馬鹿しいといった感情を抱いていたに違いない。
しかしそれでもこの状況では「上」を選択しなければならない。
我々プレイヤーにとってはゲームを進行させるために。司にとっては生き残るために。

結論として、平和な世界では異常とされる選択が、異常な世界では正常とされる選択になると
いうことを、作中のこのシーンは特に強烈に訴えかけていると私は感じた。作中ではこれ以外にも、
クワガタの内面描写や脇役レイパーどもの行動描写によって、異常性が正当化される世界であることを
これでもかと言わんばかりに説明してくるが、プレイヤーに選択をここまで露骨に、挑発的に
突きつけてくるのはこのシーンのみである。

以上の演出は、人によって好悪が分かれるだろう。私はこうした挑発的な演出は好きである。
このような試みにおけるスタンスは、往年の名作RPG「ロマサガ」における「殺してでもうばいとる」を
何となく彷彿とさせる。いずれにしても、瀬戸口氏を筆頭とする制作者の心意気を賞賛したい。

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