Atoraさんの「ToHeart」の感想

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75ToHeart
もはやエロゲの歴史の1ページとなりつつあるこの作品には、いくつかの賞賛されるべき点とひとつの罪とをはらんでいる。賞賛されるべき点というのは、王道モノ(純愛系・自由恋愛系)と呼ばれる一ジャンルの基礎が作中に多く含まれているということ、そしてマルチシナリオで‘萌え’の原点を形作ったこと、etc....。しかし、その王道を起伏の無い路線へと導引したという点は……この作品の罪とも言える。流石に現時点でプレイすると粗さは否めないし最近台頭してきたエロゲーマー達には少々ウケがよくないとは思うが、懐古的な思考でこの作品を捉えてほしいと切に願う。
 古い、古すぎる!!もう10年近く経つのかと思いつつ感想を書いている次第。だが、古いからといって決して蔑ろにはできない。私はそういう作品だと思っている。10年も経てしまうと最近の良作には及びもつかないところも多々あるが、色あせた記憶の彼方にあっても、この作品には、後のエロゲの原点がいくつか含まれていることに変わりはない。

 そのひとつは王道と呼ばれる純愛系のシナリオの根幹を形作ったことであろう。ある観点から見れば、王道モノの作品群 (『月は東に日は西に~Operation Sanctuary』の前半~中盤や『_summer』など)は、本作から右にも左にもそれていないように感じる。というのも、この類の作品はシナリオの起伏が比較的緩やかであることに共通しているからである。
 さて、本作を見てみよう。すると、もうベタもベタ。画一化されたようなシナリオ筋にはいささか古さを感じてしまう。さすがに予定調和とまではいかないけれど、神岸あかりをはじめとして、多くのシナリオはやはりベタな展開・結末が待ち受けている。
 これは出来る限り日常を追求したことによる賜物で、純粋な対人関係を描こうとした意図があったのだろう。シナリオに突飛な展開が少ないのはここに起因する。近年、これをつまらない陳腐な芸風だと言う人が増えた。しかし、それはどうだろう?陳腐だからこそ、他の作品に影響を与えているのではないだろうか。
 これを逆説的に言うと、シナリオというのは起伏次第でどうにでもなるのだ。極端な例で言うと、『月は東に日は西に~Operation Sanctuary』の後半部のようにシナリオの外殻をぶっ飛ばすこともできるし、『_summer』のように静に始終させることもできる。はたまた『プリンセスうぃっちぃず』のようにファンタジーを混在させることもできるし、『TRUE BLUE』のように陵辱モノを含蓄させることもできる。要は、いくらでも変えようがある。即ち‘これら全て王道+αなのである。
 だから私は、比較的昔日に発売されたことと実際ストーリーがそんなに浮き沈みしないという主観に基づいて、本作を根幹と位置づけたい。懸案のしようはいくらでもあるが、現段階では上記の評価である。
 ただ、これに続いた同形態の作品群の中には「本当に何も起こらないなー」と思えるような作品 (主観例=『_summer』、『みずいろ』) があるのは確か。それがその作品のよさだと言われたら沈黙するしかないが、静に走るのではなくて動に走ってほしかったというのが本音である。ともあれ、学園モノを含む純粋な日常を描写したノベル形式のシナリオは、後発ブランドの作品の先駆となったというのは厳然たる事実である。それを鑑みると『To Heart』という作品はひとつの原型と言えるのではないだろうか。



 もうひとつこの作品に限ったことを言っておきたい。それは【マルチシナリオの是非】である。

 賛否両論(言うまでもなく賛論多数) あるシナリオだが、時期的に思案してこのキャラクターこそ‘萌え’が発達した黎明期で最も話題に上ったキャラクターではないかと思う。とりあえず、ドジで天然で言動が当時としてはありえなかったり (『Kanon』月宮あゆの「うぐぅ。」にもそれはそれは驚いた。)ロボットだったりと、この不思議なキャラに、えも言われぬむず痒さを覚えたプレイヤーは多かったのではないだろうか。
 これはエロゲとしての革新的な何かであり、それこそ現在‘萌え’として定着した‘何か’になっている。私はそれが即ち‘萌え’の端緒だと捉えているのだが…。いずれにせよ非常に重大な意義があったのは間違いない。

 シナリオそのものについて少し言及したい。結論から申し上げると、私はこのシナリオが好きだ。マルチのよさというのが全面に出ていて、プレイしていて非常にくすぐったい気持ちになった。と同時に、なぜか幸せな気持ちになったのである。これは個人的な見解なので、あまり気にしないでもらいたい。
 さて、概ね絶賛されているこのシナリオで、たった一つだけ興に入らない点があった。Hシーンの言動があまりに不可解ではなかろうか。無論Hシーンというのはセックスなのであるが、主人公(藤田浩之)がマルチを性対象として見るということは、生物として見るということである。つまり、マルチをロボットではなく人間として…いや、ひとりの女の子として待遇することに他ならない。
 ところが、この中でマルチが主人公に対し「ご主人様」と言っている。これが理解できない。主人公はかっこよく見えるのに、ヒロインであるはずのマルチ自身が、目線の位置を下げたままというのは何か引っかかる。結局のところ、マルチがロボットとして自分を評価しているとしか考えられない。主人公がこれで納得するかというのは、プレイヤーにとっても悩みどころである。展開はたしかによかったが、ここだけ唯一の疑問点となってしまった。私は、ライターがこのような愚を犯していることを批判できずにはいられない。(PS版ではこの描写がないので、もしプレイされる機会があればそちらのほうをお勧めする)。

 しかし、‘萌え’という衝動的な何かを生み出したこともあり、この一点に絞ってシナリオ自体を批判することはできなかった。他のシナリオも何かしら属性というものがあるので、学園モノにおけるテンプレートとしても優秀である。さながら見本市のようだ。



【会社のこと】
 『雫』、『痕』と猟奇的なものを連続して出したブランドがいきなりこのような作風になったため、当時のファンやコアな方たちからは戸惑いの視線を投げかけられたと思う。(『痕』でそれっぽいのは垣間見えていた気もしないわけではないが…)
 しかし、今考えるとなんてことはなくて、Leafが広域のユーザー獲得に乗り出したと考えるのが妥当な線だろう。この作品例外ではなく、2年後に家庭用としてPSに移植されることに相成ったわけである。たしかに、会社が露出方面を増やしていくにつれて市場拡大には繋がっていった。だが、逆に会社の色が希薄になっていきそうで怖い。


 かいつまんで書いたが、本作は色々と意味ある作品なのだ。上述したように、新たなスタンダードともとれるオーソドックスさを提唱しているのは意義深いことこの上ない。エロゲープレイヤーとしての個人的な切望だが、プレイした方はこういう黎明的な作品を生み出した時期を忘れないでほしい。新規プレイヤーの面々も含めて、記憶に残してほしい、語り継いでいってほしいそんな一作だと思うから。


 なお、同級生シリーズはTo Heartと5年の乖離があるので、相対的には評価できないと考えて引き合いに出していない。個人的に‘萌え’を感じなかったからというのもあるが。



【雑談】
 また主観が多数含まれてしまう内容に…。もう少し自分の感触を盛り込めばよかったのですがね。 毎回、批評というには堅苦しく典拠不足もあるかと思いますが、何か違うとかありましたら是非レスしていただきたいと考えています。不躾ですみませんです。

 これはPS版の話→プレイ当初、ボイスに圧倒された記憶があります。
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Atoraさんの「ToHeart」の感想へのレス

返事がおくれてごめんなさい。私の長文へのコメントありがとうございます。
ToHeartは、サブカルチャー論で、雑誌や新書にかなりの割合で取り上げられた作品ですから、
私の場合、私オリジナルの意見というよりは、雑誌あたりでの解説の影響が強いと思います。
また、「えぐみ」に関しては、私はAtoraさんのいうように、「雫」や「痕」の方を先に知っていましたから、困惑したのも大きかったですし、この時期少しエロゲから離れていて、「ホワイトアルバム」とほぼ同時期にやったため、私の中で評価が低くなった部分もあります。
Atoraさんの書くように、Leafは安定してできるはずなのに、「挑戦」して色々やるメーカーなので、私はわりと好感をもっているメーカーです。
くだらないことを書いていますが、お互いに永くエロゲを楽しめるといいですね。では、さようなら。
2009年01月12日21時46分27秒

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