TsukimiyaYukitoさんの「Phantom INTEGRATION」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

 大きな感動や絶句する場面は少ないものの,恒常的に続く緊張感と先の見えない展開に一息つく場がなかなか見つかりませんでした.
(上記の一言だけで満足なのですが.ただただ物語を消費するのも勿体ないですので,少
しだけ感想を続けます.)


1. 作品全体について
1.1. 物語世界へ一気に引き込むテキストとシナリオ
 この作品の良さはひとえにテキストとシナリオにあります.ゲームを始めた瞬間から緊
張感に襲われ一気に引き込まれました.テキストは硬質ながらも焦燥や陰鬱など文芸的な
重さを強調しすぎないことで,作品をエンターテインメントに作り上げています.まさに
見せ場だけを繋いでいく構成により,淡々と簡潔に進む物語でありながら先の見えない展
開に一息つく場がなかなか見つかりませんでした.

 また,アメリカ西海岸の暗黒街におけるマフィアを題材にした世界観は,銃器の訓練や
暗殺の仕事がリアリティを感じる程に描かれていました.悲しみの負の連鎖も,安易な結
末を用意せず切なさの残るハッピーエンドを示してくれました.

 惜しむらくは,エレン・キャル・美緒のルートである3章に共通部分が大変多く,エン
ディング(エピローグ)を除き各ルート間でほとんど変化がないことでしょう.最後の戦
闘についても,主人公側が窮地を脱するための戦法がまったく同じであり,後のルートほ
ど面白みがなくなってしまいました.


1.2. 意志の力で敵を打ち破る主人公 (zwei)
 マフィアの連盟組織「インフェルノ」における最強の殺し屋「ファントム」が1人,吾
妻玲二が本作の主人公です.仕事を簡単にこなす彼には(不謹慎ながら)格好良さを感じ
ます.物語の後半ではヒロインを守れなかったことを嘆き,少し優しすぎる彼は精神的な
弱さを見せます.最後には自らの実力と意志で未来をつかみ取りました.


1.3. 綺麗な新規絵と優れたBGM
 キャルや美緒の笑顔など新規に追加されたと思われる一枚絵はとても素晴らしく,唯一
の萌えポイントでした.あまりにも高いその品質には,旧版の立ち絵やCGも描き直して欲
しくなるほどでした.

 音楽面ではBGMがシナリオの雰囲気をよく出しており,戦闘シーンを彩る「FIGHT」「SE
ARCH AND DESTROY」や重厚な「DESERTSCAPE」「CRIMINAL」,哀しい「REQUIEM」など,優
れた楽曲が豊富でした.

 本作は原盤が2000年発売ということもあり音声が収録されていません.シナリオ(テキ
スト)やBGMが大変素晴らしかったのでCharacter Voiceがなかったことが惜しまれます.


1.4. 銃器の演出が充実しています
 本作の大半を占める戦闘シーンでは,銃声やmuzzle flash(銃口炎)などのエフェクト
がとても充実しています.さらには,主人公がどの銃を使用するか選べ,プレイ後に銃の
解説まで読めるなど付いているなど銃器に関してはおかしな程充実していました.




2. シナリオや各ヒロインについて
 平穏に生きられる場所を失った亡霊(phantom)たちが人間としての拠所を取り戻すお
話でした.

 アメリカ西海岸を舞台にした前半部では,暗殺者としての技術を身につけていくプロロ
ーグやクロウディアたちの幾重にも複雑に重なった陰謀や駆引きなど大いに楽しむ事が出
来ました.

 後半の篠倉学園編では過去の罪に苛まれる主人公の死生観と,そんな彼を愛する3人の
ヒロインの戦いが描かれます.全て純愛でありながらその本質は,依存するエレン,憎悪
するキャル,恋慕の美緒と三者三様でした.どの結末も一抹の哀しさがあり良い余韻を伴
ったハッピーエンドでした.

 以下,各キャラクターたちの感想を少しだけ.


2.1. クロウディア・マッキェネン
 優れた美貌と豊満な体を武器に男性を手駒とするクロウディア.陰謀と裏切りを繰返し
インフェルノ幹部の地位に上り詰めた彼女は,まさに悪女です.物語冒頭から玲二に優し
さを見せつつも,冷酷に実の弟や恋人を切り捨てていく二面性が見られます.その心理は
なかなか理解できる物ではありませんでした.またまだ私はお子様のようです.

■リズィ・ガーランド
インフェルノの戦闘部隊指揮官にして,とても優しい良い人.ツヴァイやドライのことを
よく気遣ってくれました.特にドライについては,自身のミスが彼女を暗殺者へと歪ませ
るきっかけとなったので,ドライに撃たれるその時まで親身に接していました.


2.2. キャル・ディヴェンス (drei)
 インフェルノに破壊されたロフトで玲二を待ち続け「…うそつき」と呟く切ない場面が
印象的なキャル.最高に可愛かった2章での笑顔が,3章での憎悪を描くためだったと思う
と辛いものがあります.

 バッドエンドでは,復讐を果たしたキャルの虚無感や,その彼女を殺したエレンの孤独
感など,負の連鎖と復讐の不毛さが示されていました.


2.3. 藤枝 美緒
 玲二のファントム時代にほとんど関わっていないため,美緒にはあまり愛着が沸きませ
んでした.ただ,彼女が玲二の空を眺める姿に惹かれるエピソードなど恋愛のきっかけに
ついてはよく描かれていたと思います.キャルに軟禁されたときや,玲二と別れ1人日常
で生きるエピローグなどで,彼女の精神的強さが際立っていました.

■志賀 透
命を懸けて美緒の兄・大輔との約束を守り通した格好良い人です.


2.4. エレン (eins)
 基本的に無表情のエレン.ショッピングモールで恋人を演じたときの変わり様には,本
作にCVがないことを悔やみました.

 エレンという新しい名前をもらってからの心の成長がよく描かれていたと思います.学
園屋上でのサイスとの決別は名場面でした.自分の意志で初めて人を殺したエレンは,今
まで律してきたアインとしての拠所を全て失い,壮絶な虚無感に囚われてしまいます.し
かし,玲二の努力の甲斐あって何とか故郷の地モンゴルを探り当てることで,エレンとし
ての心の支えに気付くことができました.

■サイス=マスター
 本作で最高の悪人であり,負の連鎖の元凶であるサイス.常に陰謀を張り巡らす嫌な奴
ではありましたが,不快ではなくむしろ彼が登場する度に大いに楽しんでいました.

 少女を洗脳して兵器にすることが趣味という変態の彼.お得意であるはずの洗脳術も,
Zahlen Schwestern(ツァーレン シュベスタン:数の姉妹)を人数で劣るファントムたち
に殲滅されてしまう辺りその腕はあまり良くなさそうです.志賀の「あんたのファントム
は,最後に裏切るのがジンクスなのか?」という怒りのセリフには大爆笑しました.
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