G-hunterさんの「何処へ行くの、あの日」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

あらゆる可能性を探る。それは現実世界でも仮想世界でも同様の現象であり、例えば昼ご飯をラーメンにした未来とカレーにした未来とでは異なる未来になります。もちろんエロゲーも同様に、選択されなかったヒロインの未来はそこで閉ざされてしまうのです。当然ながら時間と言う概念があるので、あらゆる可能性を探って自らの望む世界を構築するということは出来ないわけです。では、もしそのことが努力しだいで可能だったら…。作品全体が妹に支配されているといっても決して過言ではない、絵麻のための物語。まさに究極の妹ゲーです。EVER17が好きな人は絶対に気にいることでしょう。呉さんやムーンストーンの最高傑作と名高い作品
吐き気がするほどロマンチックだね!?














・ストーリー
あの日残してきた罪。キラキラと輝くもの

主人公・国見恭介は、一つの映像を抱き続けてきた。遠い過去の記憶
「俺は確かに、一人の少女をこの手にかけた……」
時間も場所も不確かで、それが誰だったのかすら分からない。しかし身体が覚えている
主の意志からは隔たった場所から、身体が一つの映像を映し出す
国見恭介は、一つの罪を抱き続けてきた

「ふふっ……お兄ちゃん……」
誰かが少女の手首をきつく掴み、汗に濡れた肌、荒い呼吸、重ねられた肌の色
恭介には、絵麻という妹が居た。頭も身体も覚えている
記憶は何処までも鮮明に、追体験の必要もなく、今日も同じ行為が繰り返される…
国見恭介は、もう一つ、罪を抱き続けてきた

高低差が激しく、自然に囲まれた森園町。森園町において、とある噂が、まことしやかに流れていた
“マージ”という名の薬、それが町に出回り、その薬はタイムトリップを可能にするという
恭介も“マージ”を手にする事になる。その時、恭介の脳裏に浮かんでいたのは、過去に犯した過ちの事だった
“マージ”によって、浮かび上がってくる過去。それはやがて、恭介を、彼を取り巻く少女達が抱える心の深みへと導いていく……




攻略時間は25時間。攻略順は一葉→桐李→青井さん→千尋→絵麻→TRUE。初めは一葉、桐李、青井さんしか攻略できません
呉さんやムーンストーンの最高傑作とも言われる名高いこの作品の魅力は一体どこにあるのでしょうか?
この作品に必要なものは、あらゆる可能性を考慮して組み立てる柔軟な思考にあります
極端な話、ある種の推理ゲームの感覚に近いのかもしれません
本当に些細な違和感が後々に大きな展開を引き起こすことがあるので、本当に注意してプレイする必要があります
例えば、千尋が転校してきたときに絵麻が最初に発した言葉は「どうして…」でした
この言葉は普段プレイしているとスルーしてしまいますが、重要な意味が込められています
これはほんの一例ですが、これと似たような些細な違和感が他にも数十か所あります
プレイヤーはまるで探偵のように、文字を舐めるように読まなければなりません
それゆえ頭を十二分に使わなければならないので、気軽にプレイした人にはオススメできません
考察し、この世界を読み解くことに真摯に向き合う人にはホントに素晴らしい作品です
ぜひとも挑戦し、十二分に悩んで下さい。きっと自分なりの答えがわかるはずです


以下、ネタバレ込みで


一葉、桐李、青井さんは上記のように端役です。本当のシナリオは千尋から始まり、絵麻編で開花します
しかし、だからといって3人のシナリオを蔑ろにはできません。物語のヒントがふんだんに詰まっております
順番にチェックしておきましょう。その前にマージの定義を


・マージ
マージは過去を覗き見て、追体験するクスリです
そして重要なのが「その過去において自力で実現できる『可能性』があるならば、過去を変えることができる」ことです
例えば、島は木に傷をつけることができますが、崖には傷が付けられませんでした。しかし、島本人には崖に傷をつけた記憶があります
これは幼少期の島には木に傷をつけることができましたが、高くて危険である崖には傷をつけることができなかったからです
傷をつける可能性がないので、実際の現実では崖の傷がなくなっているわけです
これに注意して物語を進めましょう


・一葉√
一葉と主人公が結ばれるルートです。……当たり前ですね
このルートで特筆すべきは、夢の内容と入れ替わりトリックです
私はてっきり恭介がマージで見ている夢と一葉の夢は同様だと思ってのですが、そうではなかった
文章を読んでいると、意図的にそう思わせてるところがあり、一筋縄ではいきませんね
また、双子トリックも秀逸だと思います。一体どこで変わるのか、その些細な変化に気づけませんでした

「恭介ちゃん、私の家知ってるの?」

この台詞でアレッ?と思うべきでした。本当の一葉ならば、主人公は家を知っていることがわかっているはずですから
結局、一葉は双葉であり、兄から性的暴行を受けていたのも一葉でした
しかしながら、なぜ双葉は一葉にならなければならなかったのでしょうか
私は兄から一葉を救うことができなかった贖罪かと思ってましたが、どうも弱いです
それはさておき、一葉改め双葉と主人公が付き合うところで虫喰いにあってENDという唐突な終わり方に
最初はポッカーンでしたが、徐々にわかっていきます

それと、共通ルートの時点ですが、島がマージを使って何をしようとしたのか。これに気づいたかどうか
島がマージを使った翌日に主人公との会話で「俺『は』ケガをしてないし……」と一瞬言うセリフがあります
それと島のお見舞いの場面で、母親が足を引きずっていたことを考慮すると…
島は昔に母親にケガをさせてしまい、それ以降母親の足が不自由になってしまったのをなんとか過去を変えたいと思っていることがわかります
いや~、これは気づきにくい。良い難易度です


・桐李√
マージに関する説明が多く語られるのがこのルートです
桐李の義父がマージを開発したりといった製作秘話の裏側で、やはり重要なことが隠されていました
それは桐李の兄である三木村さんのエピソードです
いわゆるマージで起きていた殺人(主人公の殺人とは違います)は三木村さんが起こしていたことがわかります
その理由は単純明快ながらも複雑な心境。婦警である母親・雪絵さんの気を引きたかったからです
自分が事件を起こすことで母親が捜査してくれる。つまり、カマってもらえるという母性の欠如からの犯行でした
そのためにマージを使っていた三木村さんでしたが、主人公が「自殺をすれば雪絵さんの心に永遠に残る」とアドバイスされるとあっさり自殺
その結果、雪絵さんの心に残ることに成功したわけですが……
この自殺は後々に『すっごく』重要になってくるのは、もはやプレイした方ならわかると思います
言ってしまえば、この方法は絵麻が自殺して主人公の心を縛る世界のまんまの思考だからです

さて、このルートは恭介が起きなくなり1年もの時間が経ってから目覚めて、その後桐李と会って終わります
当然ながら、このルートも描かれてないだけで、すぐに一葉√と同様に虫喰いが起きているはずです
1年間も虫喰いが起きなかったのに、なぜ目覚めてから直後に虫喰いが起きるのか
バラしてしまうならば、この物語は全部絵麻の思いで出来ているからです
つまり、絵麻は桐李と主人公が付き合った後でも、主人公が目覚めれば自分を選んでくれるだろうと思っていたわけです
しかし本当はそうではなく、主人公は絵麻ではなく桐李を選んでしまいます
絵麻がルートのラストで桐李に対して発するあの怒りの声は、桐李に対する嫉妬とこの世界への絶望があったのではないでしょうか
そして、この桐李ルート世界への執着が無くなったために虫喰いが起こったのではないかと思います


・青井さん√
主人公の幼少期の友達であり、今は亡き智くん。そのお姉さんにあたる青井さんルートです
このルートは非常に悲しいルートです
少女を殺した記憶を持つ主人公。過去の弟の死は自分のせいだと思っている青井さん
その2人がやっと未来に向かって動き出す直前に起きてしまう発砲事件……
街中で発砲、流れ弾で青井さんが死にます。主人公はマージを使って過去に戻り、青井さんを突き飛ばして自分が代わりに死んでしまいます
これは男が女を突き飛ばすのは自力で可能だからです
今度は青井さんがマージに戻って主人公の代わりに死のうとするが、何度も失敗してします
なぜなら、女の力で自分を突き飛ばそうと思っている男を突き飛ばせるのが自力で可能な範囲外だからです
そのうち、青井さんは幸せな可能性と言うものを夢見るも、マージのせいで昏睡状態になってEND
結局主人公は死んでしまい、青井さんはマージのまま昏睡状態になってしまうという悲劇。そして虫喰い……


・千尋√
この物語の真相が明らかになってくる千尋√
千尋がアレの仲間であるということが明かされる場面が最も重要なのは間違いありません
主人公が殺した少女と言うのは千尋のことであることもわかります
では、千尋とは一体何なのかという部分の説明が薄い気がしました。アレは千尋に何をさせたかったのか
そして、虫食いされた後は記憶が残らないという重要な情報も無視できません
色々なジグソーパズルがパチパチと嵌められていく重要なルートです
千尋のおちゃらけたキャラクターと、その裏に隠された優しさが胸を打ちます
で、結局サンデーって何者?

ここまでの4つのルートはあり得た可能性でありますが、望まれた世界ではないために虫喰いされてしまいます
「この世界は思いで出来ているんだよ…」「ここは異常な世界だから…」
千尋がそう言った意味が、次の絵麻ルートで明かされます


・絵麻√&TRUE√
いわば大トリの大魔王のような存在である絵麻ルート。そうです、全ては彼女のための世界なのです
彼女はあらゆる可能性を模索し、主人公と絵麻の2人だけの世界を夢見ていました
しかし、どれもこれも思い通りに行かずに虫食いされていきます
彼女の努力、希望、願い。ある種のワガママで勝ち取った世界こそ、みんなで仲良くするTRUEルートだったのです
さて、ここで虫喰いのことを定義しておきます。虫喰いは絵麻の思いの強さにより比例し、絵麻の世界への思いがなくなるとアレや千尋によって消滅します
上記4人のシナリオが虫喰いされたのは、絵麻がこの世界を望まなかったからです
そして、未来だけでなく過去に対しても、この作品にはもう嫌と言うほど虫喰いが起きる世界が見えていたはずです
この作品には最低でも4つの世界が描かれていたはずです

①上記4人のシナリオで見れるルートであり、虫食いされてしまう世界
②絵麻の手術後に絵麻が自殺する世界。主人公は絵麻の事がずっと心に残ってしまう。三木村さんと雪絵さんの関係に似てる。「あなた」世界
③絵麻の手術が失敗してしまう世界。後に主人公が桐李と付き合うことになる。
④絵麻と千尋の会話があり、千尋がアレに勘当される。そしてみんなと仲良くやっていく世界。TRUE√

詳しい時系列は、ごん太様のレビューを参照してください。作中の文章の書き方でも違いがわかるはず
結局、主人公を独り占めしつつ絵麻が幸せになる世界は無く、なので絵麻は④の世界を守りきったわけです
絵麻はそれで満足だったのかもしれませんね
絵麻の願いと千尋の努力。それが結びついた結果、最高のハッピーエンドで終わりました

千尋の「絵麻ちゃんは本当の『本当』を見つけたんだね」というセリフを吟味するならば、本当の世界というのは③の世界ですね
絵麻は本来手術失敗で死んでしまうのですが、絵麻の望む思いの強さによって世界が手術が成功する世界へ強引のシフトさせたのです
アレというのは正しく進む世界以外を消す存在パラレルワールドを消す存在であり、絵麻はその本来消される世界を願いで守っていた
つまり、アレvs絵麻という図式によって世界が成り立つと考えられます。アレと絵麻は別個の存在であります
……私はそう思っていたのですが、そうではないという意見もあったので載せておきます。そしてこちらの方が説得力がありそうです
これが考察作品の魅力でしょう。↓は絵麻がアレや千尋を作り出したという意見です

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"アレ"がいた理由
主人公を"ヒーロー"にするための絵麻がもうけたものだと思っている。
そして主人公が能力を持ってたのも"ヒーロー"にするため
主人公が千尋を殺した記憶が残っていた理由は絵麻が主人公と絵麻の2人の世界のため残した記憶であった。

千尋がアレ側であった理由
主人公と一番くっつく可能性があったのが千尋であったから敵役とした。
そして絵麻が千尋のことを好きといった理由はそのことを含めて理解してくれたうえで千尋が敵役を引き受けてくれたから

千尋が再び現れた理由
千尋を殺した時点で虫食いの現象があり、殺した現象がなくなったんじゃないかと思う
そしてそのまま転校そして戻ってきたという理由
絵麻以外のヒロインすべてが導き役なんじゃなかろうか?
主人公じゃなく絵麻を導くための

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・総評
頭を使う作品であるのは間違いありません。しかしながら昨今では貴重である考察が面白いゲームです
深く深く掘り下げていくほど面白くなる。このような作品にどっぷり浸かってしまうと寝食を忘れてしまいます
絵麻の願いにより物語が支配される。そういった意味で、やはり究極で最強の妹ゲーをこの作品に贈りたいと思います
そして願わくば、ムーンストーンが再びこのような作品を書いてくれることを祈ってます



・一言感想の羅列
①妹と付き合うことに対して、物凄い忠告や嫌悪をしてくれる常識人がいるのが素晴らしいです。レッツ背徳♪なんて軽い関係ではないんです
②木之下くんは本当に可哀想なキャラだった。絵麻ルートの主人公ときたら……
③雪絵さんとミッキーのエロシーンはどこですか?
④最初見た時は、千尋がD.C.の音夢にしか見えませんでした
⑤私もサンデーに乗って散歩したい
⑥ただ1人彷徨う……

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