soulfeeler316さんの「D.C.P.C. ~ダ・カーポ プラスコミュニケーション~」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

人生で一番大事な日は二日ある。生まれた日と、なぜ生まれたかを分かった日だ。
シリーズ始まって17年が経過しようと言う今日、今更初代をプレイする20代なんて私だけでしょう。
『D.C.~ダ・カーポ~』が出た時なんて、小学校入学間もない、右も左も自分がどんなヤツかも理解出来ていなかった泣き虫小僧でした。
当然、当時出た美少女ゲームの内容等、知る由もない。
では何故ここにいるか、これも遂に出ました『D.C.アーカイブス SAKURA Edition』の仕業
ただ正直申せば、私は本作を買っていません、あくまで思い出すきっかけとなっただけ。
アニメ版だけはうろ覚えながら観た記憶があり、1はまあまあ良かったけど、2と3が自分の好みに合わなかった印象
そんな戦々恐々シリーズに3万円なんて大金、払える筈も無く……
従って、楽しかったと記憶している初代関連の重要作品だけ購入し、プレイし、批評を書こうと考えた次第です。

そんなこんなで始めた本作ですが、やってみると意外に面白い。
名前や意味だけ知っていたパロネタが新鮮に感じるから、不思議なモノです。
今は亡き2ちゃんねる用語や18禁ゲームネタ、某アニメゲームパロディが結構ありました、驚愕!
それだけが横行すると辟易するでしょうが、シナリオの流れは見誤っていません。
所々の使用で比重を置いていたので、個人的嫌悪感はあまり無かった印象
もし、上記が跋扈する作品を飽きる程プレイしていたなら、うんざりもしていたでしょう。
しかし運善哉、これまでそういった「キャラゲー」をプレイしてこなかった事に幸いと感じた一幕なのでした。

ただ、クリアして正直思ったのが、上手く描き切れていないシナリオは多いな……と。
摩訶不思議な光景や不可思議な現象に何の解説も出ないのは、説明過多な現行作品に慣れた身としては斬新でしたが、それでも加減はあると言うモノ
ルート毎に不明な点が続出し、それが解決されないまま終わる場合多数
こういうのって、ルート毎に感想書くスタイルの私からしたら、かなり評価しにくいゲームだったりします。
それが伏線として別ルートで解消される類の「上手く隠れた産物」ならまだしも、明らかにルート単体の評価へ影響を来す程の「違和感」として繋がっているから問題です。

「説明不足」
・音夢ルート……何故、最後に音夢は死ななかったのか? 音夢の挙動に矛盾あり。
・ことりルート……能力の範囲が不統一で分かりにくい。子供の頃に引き取られたきっかけ不明。何故桜は枯れた?
・さくらルート……音夢・ことりルートの疑問一部解消。さくらの姿が桜消滅しても変わらない理由不明
・萌ルート……純一を好きになった理由不明
・「枯れずの桜」が主人公の魔法や不思議な現象に関係している……それ以上の事は説明されない。

D.C.シナリオもやれば多くは解決しますが、やはり不十分な説明が多くあって、最終的には消化不良の極み(『D.C.~ダ・カーポ~公式ビジュアルファンブック』も買えば上記の一部は解決します)
リメイク商法によって、新たに生まれたヒロイン達のシナリオも、初代『D.C.~ダ・カーポ~』から無理に追加されたせいか、然して印象に残らず。
クマ娘と男装女子は可愛かったんだけどね、本当に必要な設定か?と疑問視する事は多かったように思うのです。
キャラクターの個性もしくはシナリオが作品全体の魅力へと繋がっているなら大歓迎ですが、本作は不要と思える無駄も多く感じた次第

「設定過多」
・和菓子を作り出す能力
・屋上で鍋を作る行為
・表裏モード
・眞子ルート

挙げれば限が無いでしょう。
ここまで書いた上で、私は「これがキャラゲーと言うモノかもしれない」と視点を改めた次第
キャラクターの個性をとにかく取り入れ、思いつきを矢継ぎ早に物語の中へ加える。
それがシナリオに上手く機能するかは特に考えず、魅力として昇華したなら無問題
それなら納得です、だとしたら価値観の相違、何も言う事は無い。
そもそもこれは本質としてキャラ萌えゲー
キャラクターの誰かしらを、多過ぎる設定や説明不足なシナリオでも気に入ったなら、大勝利と言えましょう。
声優変更も一部ありましたが、これはこれで悪くなかったし。
読了時の感慨最重要なシナリオ重視派は注意が必要、キャラに個性あれば問題無し派にはオススメのエロゲ
まあ、個人的にはヒロイン勢好きになれない方が多かったけどね、杉並と純一は良かったです。


パッケージ裏における紹介文
時として夢は甘く、切なく、もどかしい……
いつもどおりの日常がなんだかちょっとこそばゆい、学園恋愛アドベンチャー

「ちょっとのこそばゆさ」を堪能出来たなら、本作は良いゲームと言えるかもしれません。










と綴じて、批評を終える予定だったのですが、そんな徒労に待ったをかけられました。
唯一私の琴線に触れたシナリオ、天枷美春ルートを少し語りたいと思います。

彼女の物語には根強き賛美が多いです。
しかし、無慈悲な批判やおまけシナリオへの無関心によって構成されているのも、数多の感想により了解事項
その理由は「美春本人」ではなく「美春ロボット」との恋愛に終始しているから。
「本物の美春が可哀想」
「お見舞い行け」
「勝手に思い出を掘り返すな」
色々見ました。
ええ、その気持ちは否定しません。
ユーザーは「美春本人」と恋愛したかった、当然の理屈
要するに、音夢の価値観で物事を見ているのが、このシナリオに苦言を呈する方と言えます。
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「……怖かったの」
「あの歌を聴いていたら……何だか、我慢できないくらい怖くなっちゃって……」
「みんな、おめでとうって……美春、誕生日おめでとうって……」
「あの場にいたのは……本物の美春じゃないのに……」

「あそこにいたみんなが、あの子を美春だって思いこんでいた……」
「本物の美春が、どこでどうしているか、それすらも知らずに……」
「それで私、本当に怖くなって……」
「私の知っている美春が、いなくなっちゃうって……」

『D.C.~ダ・カーポ~』美春ルート 音夢
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ただ、そんな人達へ私が応えられる言葉は1つだけです。
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「……バカ」

『D.C.~ダ・カーポ~』美春ルート 純一
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本質を見誤らないで欲しい。
上記の発言ってのは、言い換えるなら「美春ロボット」の存在を認めないと言う事
そっちの方が、私からしたら遥かに残酷な視点のように感じます。
可哀想なのは「美春本人」じゃない、こんな状況になってしまった「両方の美春」なんです。
「美春ロボット」を糾弾するのは筋違い、こうなる事も踏まえた上で計画に賛同していたのは「美春本人」も同様ですから。
どっちかだけを哀れむ、いやそもそも、哀れむ行為自体が生きた存在である彼女達に失礼だと言えましょう。

お見舞い、純一も行きたかった筈、作中でも語っています。
しかし、そんな事をしてしまったら、どちらの正体も明るみになってしまうじゃないですか。
世話役である純一が「美春ロボット」を放ったらかしていたら、バレる可能性は必然的に高くなる。
お見舞い自体は禁止されていますし、仮に出来たとしても、毎回行っていたら怪しまれるのは必然
ロボットの存在がバレたら、結果的に意識不明な「美春本人」の事情も把握されます。
双方、好奇の目に晒される、それだけはどうしても避けなければいけなかった。
1人の美春が好きであり、もう1人の美春も好きになったからこそ、それだけはどうしても避けなければいけなかった。
彼は立派に役目を務め上げた、実に良いヤツだと私は思います。

そして、純一と一緒に埋めたタイムカプセルを「美春ロボット」が掘り起こす行為
これは「枯れずの桜」の魔法が齎した奇跡であり、「美春本人」の約束に対する想いが強かった証明とも言えます。
その行為を「酷い」と申す解釈は、些か表面的に考え過ぎている気がしてなりません。
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「掘り出す約束をしていた日が、今日……」

『D.C.~ダ・カーポ~』美春ルート 美春
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タイムカプセルを掘り起こす年月日は予め決まっていて、それは学校卒業の日だった。
しかし「美春本人」は意識不明で目を覚ませない。
これは、約束に対する想いが2人の間で形とならず終わる、充分過ぎる理由となるでしょう。
だから「美春ロボット」は現れた、橋渡し役として。
純一も忘れていた、その叶えられなかった想いを、彼女はイタコが如く、受け継いだのです。

そもそも『D.C.~ダ・カーポ~』と言う作品の根底にあるのは、自らの想いを他者及び他物に委ねると言う行為にあります。
「枯れずの桜」に自らの願いを告げるという根幹から見てもそうですが、隠しシナリオの2つも同様
頼子ルートは、鷺澤美咲が自らの初恋を、猫を媒介として届けた物語
そして美春ルートは、「美春本人」が叶えられなかった約束を、「美春ロボット」を媒介に届けさせた物語なんです。
だからこそ「美春ロボット」は、これから起こる自分の結末も全て理解した上で、箱を開けます。
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「約束の日に、美春が開けたいの。他の人が開けたら、願い事は叶わないんだもん」

「これが、美春の願いです……子供の頃から叶えたかった美春の夢です」
紙を広げると、そこにはクレヨンで書かれた、あまり綺麗とは言えない字で。
「『お兄ちゃんとずっと一緒でいられますように』」

『D.C.~ダ・カーポ~』美春ルート 美春
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同質であって同種でない彼女達
美春ルートは「美春ロボット」が「美春本人」の想いを引き継いだ結果、彼女が死ぬと言う物語

しかし、それでは「美春ロボット」「も」好きになった純一が報われない。
だから、彼女は言います。
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「美春の願いは叶いました」

「一緒ですよ。たとえ、美春がいなくなったとしても、先輩と美春はずっと一緒です」

「美春が先輩のことを覚えている限り、先輩が美春のことを覚えている限り、ずっと一緒です。そうじゃないですか?」

『D.C.~ダ・カーポ~』美春ルート 美春
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この言葉の意味が真に分かるのは最後
「美春本人」がいつもつけていた緑のバンダナ、ラストシーンで白くなっている事が分かります。
あれだけ「天枷美春」になりたかった彼女は、最後「美春本人」の中で生き続けていました。
「美春」自身にも『美春』がいる、最後の場面はその証明に他ならない。
記憶は受け継がれてなくとも、人格が異なっていても、思った通りの形じゃ無くたって……

『美春』は「美春」の中に生きていたんです。

上記を踏まえて「美春本人」が可哀想だと思う人はいるでしょう。
そんな方には、この言葉を送りたい。
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「思い出は誰かに作ってもらうものじゃないんです。思い出は自分で作るものなんです」

『D.C.~ダ・カーポ~』美春ルート 美春
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そう、思い出とは自分で作るモノ
未来ある彼女は、これから多くの思い出を彼と共に作れます。
だったら、一緒に埋めた「タイムカプセル」を、もう1度掘り起こしたって構わない筈
同一になった『美春本人』と、新しい思い出を作っていけば良い。
「思い出」とは、そうやって紡がれていくモノだと、私は思います。





【後記と言う名の戯言】
子供の頃、『青い鳥』と言う童話劇に魅力を感じていました。
幸福を探していたけれど、それは結果としてすぐ近くにあったんだよと言う説話
そんな幼少期を送った故か、主題が「死と生命の意味」にある、幸福を手に入れようとする物語に、私はとんと弱くなってしまった次第
美春ルートにだけ嵌ってしまったのも、恐らく必然の流れだったと言えましょう。

自分じゃない人の「思い出」を、自分のモノとして植えつける過程
それは客観的に見たら、苦悩と葛藤しか齎さない無駄な行為だったかもしれません。
しかし、彼女が真に幸福を「幸福」と実感する為には必要な道程でした。
自らの最も望んでいた記憶を見つける事、それが彼女にとってのレゾンデートルだったから。
『美春』が「美春」の「想い」を伝えた証明=「思い出」はこれから生き続ける。
『美春』の「思い出」は、これから「美春」と関わっていく中でも死にはしない。
1人の「想い」と1人の『思い出』
決して消えない、一心同体の幸福
美春ルートは最高のハッピーエンドでもあると、私は思うのです。

今日は彼女が旅立った日、自らを幸福と思えた日
そして、再び紡ぐ始まりの日
だから、涙を拭いてこの日を祝いましょう。
いずれ戻ってくる彼女達を出迎える為に。
生まれてくれて、ありがとう。
生きていてくれて、ありがとう。
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魂の揺るぎなき領域において愛するということは、他者の中の永遠なるものを愛することである。

モーリス・メーテルリンク
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