asteryukariさんの「ナルキッソス -ゼロ-」の感想

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ナルキッソスの始まりのお話でありながら、一つの物語としてプレイヤーに強烈な一撃を浴びせてくる。油断した、こんなにも胸に響く話を用意してくるだなんて...感謝。
ナルキッソスシリーズのまとめ役と、あとがきにて片岡ともさんも仰っていたが、正にその通りで、それもしっかりとした一つの物語を描きながら、語られていく。正直、こんなにもしっかりとしたお話が見られるとは思っていなかった。どうやって七階が出来たのか、それだけが語られるだけだと思っていた私としては動揺を隠せなかった。

一人の少年と一人の少女の出会いと別れのエピソード。今までのナルキッソスシリーズの登場人物たちと違い、未だ冷めた生き方をしていない、純粋に未来への想いを馳せている分、後半の反動が凄まじかった。

そう、この作品のヒロインであるところの日下陽子という女の子、内気で人付き合いが苦手なのに、段々と元気になっていき、世話焼きになっていくという子であった。そんな眩しい女の子だったからこそ、悲壮感が何倍にも膨れ上がったし、読んでいて辛いものがあった。また、これは私情だが、声優さんが好みの方だったため、それもあり、私の涙腺への刺激が止まらなかった。

序盤から二人でふざけ合った日々、過ごした時間の積み重ねというものを丁寧に描いていくことで、いつも一緒にいることが当たり前だという事を、物語として以上にプレイヤーに対して強く訴える。これがあったからこそ、こんなにも涙を流せたのだと思う。「マグマに100回くらい焼かれて、ピラニアにも50回くらい食べられて...」こういった文でさえ、今は見るともう...。本当に何気ない日常だからこそ、これほどまでに胸に深く、深く突き刺さっていく...。

ずっと一緒に過ごしてきて、これからもずっと一緒だと思っていたのに、それは叶わないと悟った。何をやったわけでもないのに感じる罪悪感。何かを失ったわけでもないのに感じる喪失感。彼女の気持ちを考えると辛くて仕方ない。

しかし悲しさだけが残るわけではなかった。陽子と博史、この二人の最後のやり取りは、儚くもほのかな温かみというものをしっかり持っていた。今まで決して口にすることが無かった、できなかった言葉を交わし終わりを迎える。ここにきてそういうのを持ってくるとは...陽子以上にともさんが策士だったわけだ。いや、もう素晴らしかった。

生きた証を残し、誰かに託せるなら、自分の人生は無ではなかったことになる。そしてそれが伝わり続ける限り、自分は生き続ける。あのルールにはそんな意味が込められていたのだと、ナルキッソスのゼロ、言わば始まりとしてこれ以上にない素晴らしい出来だった。




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