peacefulさんの「マブラヴ」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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79マブラヴ
超王道ラブコメの裏に隠された燃え……その真価の片鱗を垣間見た気がします
(Windows7対応版をプレイ)

『進撃の巨人』の作者・諌山創氏も影響を受けたマブラヴシリーズの原点。
前作の関係上アージュ作品を敬遠していた私ですが、オルタの評価と知人の勧めにより一念発起して本作をプレイ!
不安に駆られながらも蓋を開ければ、2003年当時発売とは思えない想像以上の出来の高さに驚かされました。
今まで避けていた自分を恥じたい気持ちに駆られながらも、既に心は続編である『オルタネイティヴ』に傾いています。

さて本編の感想に関しては【EXTRA編】と【UNLIMITED編】に分けて記載し、
『君が望む永遠』(ネタバレ含みます)と交えながら、好悪含めて述べさせていただきます。
そのためネタバレを嫌う方はご注意下さい。










【EXTRA編】

「主人公が大好きで隣に住むドジで明るい幼馴染」
「朝起きると隣で寝ていた財閥次期当主の美少女」
「眼鏡で真面目すぎる委員長」
「外見が幼い猫耳マスコット少女」
「無口でミステリアスな不思議系女子」

このヒロインの特徴だけでも、超王道ドタバタハイテンションラブコメの様相が伝わってくるようです。
幼馴染やクラスメイトとずっと続いていく関係だと思っていた矢先に起こった在り得ない日常の数々。
友情・努力・勝利の三ヵ条のラクロスや三角関係のお約束といった青春群青劇。
そしてそれを彩る変人・奇人勢揃い。(キャラ付けがしっかりと為されている模様)
荒唐無稽でいかにもバカっぽいシナリオだけど、ここまで貫き通すとある意味清々しい気がしてきます。
ヒロイン達の悩みや揺れ動く恋心、そして見せ場の盛り上がり感も良く描かれており、
「ある意味その後のラブコメにおける基準点となる作品に仕上がっているのでは?」と考えてしまう程でした。

また『マブラヴ』は『君が望む永遠』の間接的続編にあたる為、双方における対比や共通項においても興味深い点が幾つか挙げられます。
注目すべきは、何と言ってもメインヒロインである純夏の交通事故をギャグで済ましている点ですね。
「いい加減そのネタやめろ!」と思いながらも、前作との区分別け(悲劇と喜劇)がしっかりとなされている印象を受けます。

そして主人公はどちらもノンフィクションな現実味溢れる情緒激しい若者を採用している点。
鈍感・優柔不断・デリカシーの無さがデフォな、年不相応にバカっぽい熱い男がライター陣の好みらしいですね。
とりわけ今作の主人公である白銀武は、何となく事故が起きる前の鳴海貴之に似ているのが私の見解です。
可愛い幼馴染に常日頃から暴力を振るう白銀に嫌悪感を覚えますが、傍から見ると愉快な奴で、
不器用ながらも立ち直りの速さと、決める時は決める男という面に関しては好感が持てました。
それと三歳の頃の約束なんて普通覚えていないので、彼に罪はありません(笑)。

他にも三角関係の構図や親友と呼べる男友達がいない等、差別化が為されている一方で、
共通キャラである“涼宮茜”の存在感が少々大きすぎた印象を私に与えました。
出来ればサブではなく隠しヒロイン枠で登場してくれたなら、世界観に大幅な改革(繋がりの強化)をもたらし、
その後の展開に想像を膨らませる等の楽しみが生まれるだろうと推察できます。
それに個人的見解ですが、鳴滝より白銀の方が、彼女にはより幸福な未来が約束されたかもしれませんしね……。

しかしながら、必ずしも前述した様な良い面ばかりが目立つ作品ではありません。
むしろ“彩峰と榊”の個別√では、問題点とも云える食い合わせの悪さを私に感じさせました。
(まるで今まで食べていたジャンクフードから、いきなり精進料理に変えられたような違和感)
今までのラブコメ路線とは毛色の違う全体的に重い恋愛劇。
シリアスへの切り替わりが極端な上、辛い過去話で話を盛り上げようとするあざとすぎる演出はあまり褒められたものではないかと……。
それに、前作と同様に鬱や泣き要素といった暗く陰鬱な物語(不倫やイジメ)に結び付けようとすると、
それまでの好評な喜劇全体のイメージを損ねてしまっているようでなりません。
またこの影響か、物事をスマートにやれない主人公とヒロイン(榊と彩峰)に苛立ちを覚え、スッキリしない読後感に苛まれることになりました。
これらが超王道ラブコメというコンセプトに果たして沿う物語かどうか、疑問を挟む余地が十分にあると愚考します。


【UNLIMITED編】

まさかの燃えゲーのような展開。
(俯瞰で見ると、この『マブラヴ』という作品は闇鍋の様相を呈している)

平和な日常を謳歌する平凡な一学生が、突然戦争(地球外生命体の侵略)状態の世界に放り込まれたらという、
曰く異世界召喚ものでありながら、戦術機というロボットSFを前面に押し出している辺り、ライター陣の趣味全開な感じが伝わってきます。
そして濃密な物語を表現する為に深く考えられた世界観や設定の数々に加え、
当時のエロゲーでは恐らく最高峰のプログラム技術やアニメーション携えることに成功したのは好感触。

その一方で主人公である白銀武に関しては、致し方無い面もあるが、普通の男子学生よりバカ過ぎて逆に笑えませんでした。
能天気で思慮が無く、直情的で直ぐに調子に乗るムード&トラブルメーカーなのはEXTRA編と同様。
しかも今回はその上臆病で情けなく文句ばっかで、一々プレイヤーの神経を逆なでしてくる始末。
(むしろ通常ロボットアニメにおける主人公の悪友ポジションに近い)
EXTRA編での学園ラブコメなら許容できますが、戦時下の軍国主義でこの主人公の性格は正直序盤においてキツイものがありました。

ですがこの性格がカンフル剤となって、ヒロイン達の仲を深めるばかりか、
現代との思想・価値観・常識の比較化がなされ、物語に奥行を生じさせています。
また彼は欠点だらけの人間ですが、それは成長の余地が十分に残されている事と同義です。
良い意味で偏見が無くて、順応性が高い白銀武が、
それぞれの戦時下いる人達の思いや価値観に触れて成長する姿には、思わず目を見張るものがありました。
当初狂った世界を否定し、無様で見っとも無くとも生きる事に足掻こうとした彼が、
最後には愛する人を守るために命を懸けて戦う覚悟を我々に見せてくれたのがその証左です。
それに約2か月の間ですが、そこに吊り橋効果が働いたり、物好きが多かろうと、
戦友(ヒロイン)皆に愛されているのは、少なからず男としての魅力があるためでしょうね。
そうした理由で良くも悪くも憎めない主人公なのだと思います。(個人的に嫌いではありません)
(ちなみにUNLIMITED編だけでも、主人公はフルボイス仕様が望ましかったのが私の本音)

総じて、これが後のマブラヴオルタシリーズの礎を作ったと思えば感慨深くなります。
ですが、各ヒロインのEND内容が一緒だと感動シーンもマンネリ化してくるのは、大きなマイナス点と云えるでしょう。
それにある意味BADENDともとれる結末は中々許容するのが難しいですね。
(他にもCSに移植されただけあって、エロシーンは全く使えない)
また、あくまでこの物語は未完であり、
「白銀の既視感・社霞の存在・オルタネイティヴ4・BETA」等の多くの謎を残したまま幕を閉じています。
そのため作品の質は良いのですが、80点以上の高得点は個人的に望めない評価になったのは偏に残念。
ですがその伏線が続編の布石として機能している辺り、やはり先に本作をプレイして正解だったみたいです。

う~ん。今から『オルタネイティブ』をプレイするのが楽しみになってきました(^_^)。
一応その長文感想も書くつもりなので、よければ引き続きご覧になって下さい。
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