dovさんの「金色ラブリッチェ」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

真っ直ぐな正統派お姫様であるシルヴィ、口は悪くも懐いてくれる善良なミナ、年相応の愛らしさと隙がありつつ"大人"なエルの王室三人組が大好きになれました。反面、ともすればシリアスは内省的・受動的な方向に流れてしまい行動に繋がらなかったこと、理亜に「生きた」感じがしなかったことが残念です。
 理亜は言います。
>「オレを死ぬものだと思って見ないで。いまちゃんと生きてるオレだけ見てて」
 はい。この主張は腑に落ちます。避けられない死を使って感動を押し売りする物語って卑怯ですよね。また私自身がそういう(つまり、余命幾ばくも無い)状態に陥った時、周りから憐憫の眼差しを受けるのはつらいだろうとも想像します。
 だから私は生きている理亜の望みや心情を知りたいと思いました。彼女が「カッコつけ」たい部分に思いを馳せようとして――そして失望しました。
 彼女の言動は矛盾しています。
 例えば、「オレを死ぬものだと思って見ないで」と言いながら自身は身を引くつもりだった(つまり自分を死ぬものとして扱っていた)り、そもそもシルヴィや央路との再会さえ望んでいなかったフシがあります。マリアとしての仕事はマジメにやっているようでもありますが、反面かなり無茶な駄々をこねたりしていて、これも一貫性を感じません。また彼女は「シルヴィと央路のハッピーエンドを見届けたい」と望みながら、命に関わる血圧の変動を引き起こす喫煙行為( http://news.doctor-trust.co.jp/?p=139 )を繰り返していましたが、そんな重大なリスクを負う動機もいい加減なものでした。
 こうした彼女のいい加減な言動から、私は「作者の都合」以上の理由を見いだせませんでした。しかも理亜は作者の主張をよく代弁しているようにも見え、意地悪い評価をするなら、「操り人形である(生きていない)キャラ」に「ちゃんと生きてるオレだけ見て」と言わせたようでもあります。
 「ちゃんと生きてる」ならば、行動的であってほしいと私は望んでしまいます。本作の元ネタ( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%82%AEGOLD%E2%98%85STAR )や更にその元ネタであろう作品( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E6%9B%B4%E6%B4%A5%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%83%E3%83%84%E3%82%A2%E3%82%A4 )のようにです。しかし理亜は仕方がないにしても、本作の主人公である央路はあまり行動的といえず、すぐにウジウジ悩むところが私の好みではありませんでした。
 彼は恵まれているとは言わないまでも、生きていくうえでの問題がほぼ排除された状態にあります。理不尽な何かが降りかかっても、シルヴィが皇室特権で解決してしまうでしょう。そうした状況にありながら、央路は過去のことを中心にひたすらウジウジ悩み、ほぼ一切自分の為の行動をしません。玲奈ルートでは友人にアドバイスをする程度で、理亜やエルのルートでは彼女達の物語の傍観者となり、唯一シルヴィルートで外交官を目指したり社交ダンス部に入ったりするものの具体的な描写には欠けました。私は正直なところ、行動しない人間が「人生は金色」と言い出す様にはあまり共感できません。
 死にゆく理亜に笑顔で付き合う、というのは立派な心がけかもしれません。しかし、それに央路が拘泥してしまったことは「ちゃんと生きてるオレだけ見」ることではなかったと私は思います。死にゆく理亜に対する央路の態度は、つまるところ自分の人生を理亜中心にしてしまうことであって、理亜の両親がやろうとした(そして失敗した)ことと大差がありません。理亜を見守ることを第一とするのではなく、まず自分の人生を生きてこそ「ちゃんと生きてるオレだけ見」られるのではないでしょうか?


 ――ただ、以上に述べた私の感想は、あくまで好みの問題であるかもしれません。傷付いて癒しを求める央路の姿は多くのプレイヤーにとって等身大であるかもしれず、シルヴィの励ましや玲奈の母性がユーザーの需要であるならそれに応えるのは当然でしょう。「自分が求めているものと違った」というのはその1プレイヤーにとっては残念なことですが、作品そのものの価値を毀損するものではありません。
 また、ここまでシリアスについてあれこれ書いてきましたが、この作品は萌えゲーとしては素晴らしい域に達しています。特に共通部分はプレイしていて幸せを感じるほどでした。
 私がSAGA PLANETSの作品をプレイするのは『はつゆきさくら』以来ほぼ6年ぶりですが、その間に培われたであろう演出力の向上には驚くばかりです。背景は恐ろしく綺麗になり、ほんたにさん達の絵はより魅力を増しました。
 そんな贅沢な素材が丁寧に使われ、例えばシルヴィが手を取ってくれるシーンでは、立ち絵の細かい動きと効果音のおかげで、本当に手を取られたかのような錯覚を覚えたほどです。BGMも前に出てきて聴かせるというタイプではないものの、裏方に徹しつつ雰囲気をしっかり伝えるいい仕事でした。
 逆に変わらない良さというのもありますね。風音さんは相変わらずやさぐれ演技がお上手で、「チッ」て連呼してますがライターさん風音にそれ言わせたいだけなんじゃないかと(笑)。
 そして何よりも! 一言感想の初っぱなで述べた通り、キャラクターがとにかく可愛いんです。シルヴィは王道ながらもプレイヤーを恋に落とさせるだけの魅力がありました。やたら去勢したがる1年女子Cさんや3年女子Aさんなど、サブキャラにも印象的な子がいます。ルートのあるサブヒロインが茜ちゃんだけだと分かった時にはちょっとガッカリしましたが……いや茜ちゃんもエロ可愛いんですけど!……それだけミナや絢華に魅力を感じていたということでもあります。
 テキストも伏線を丁寧に解消しており、また文が荒れたりしない安定感があってハイレベルだったと思います。随所に子ネタが仕込まれていることも面白く、例えば偵察中の茜に好みのタイプを尋ねられた央路が「髪が長くて」「おっぱいの大きい」「痩せすぎよりは健康的な方が好き」「あと性格のキツくない子がいいな」と、理亜と真逆の特徴を答えたことにはくすっと笑えました。
 総じて、「萌えゲーとしては大好き。特に共通部分は最高」だけど「動きのないシリアスがイマイチ。そのせいで個別ルート後半の萌え描写が減ってしまったのが残念」という感じのゲームでした。設定部分にもう一ひねり主人公達の行動に繋がるような、ワクワクできるもの(何でもいいんです。何なら『はつゆきさくら』みたいに「復讐」するのでも)があれば化けたかもなー、という印象です。

P.S. お正月に起動するとキャラクターボイスがあるのは嬉しいサプライズでした。パソコンの設定日時を変えて試してみたところ、他にクリスマスやバレンタインデー、メインキャラクターの誕生日に同様の仕掛けがあるようです。

dovさんの「金色ラブリッチェ」の感想へのレス

dovさん、こんばんは。お久しぶりです。

レビュー拝読させていただきました。
そして驚きました。
ほぼ一緒のこと言ってるやん(笑)

おっしゃるとおり、キャラクターにあまり意志が感じ取れなかったというのが正直なところです。
>こうした彼女のいい加減な言動から、私は「作者の都合」以上の理由を見いだせませんでした。しかも理亜は作者の主張をよく代弁しているようにも見え、意地悪い評価をするなら、「操り人形である(生きていない)キャラ」に「ちゃんと生きてるオレだけ見て」と言わせたようでもあります。
ここは完全に同意です。
理亜というキャラはどこか達観したところがあるのですが、それらはすべてライターに代弁させられているからだと思いました。
そのくせ、やたらと退廃的な態度をとります。
生きようとしているのか、このまま死のうとしているのかよくわからない感じでした。

>央路は過去のことを中心にひたすらウジウジ悩み、ほぼ一切自分の為の行動をしません。玲奈ルートでは友人にアドバイスをする程度で、理亜やエルのルートでは彼女達の物語の傍観者となり、唯一シルヴィルートで外交官を目指したり社交ダンス部に入ったりするものの具体的な描写には欠けました。私は正直なところ、行動しない人間が「人生は金色」と言い出す様にはあまり共感できません。
そうですね、主人公は傍観者でした。
かっこつける、というのもなんだか理亜に言われるがまま、という感じで、己が意志を感じ取れませんでした。

ちなみに、dovさんのレビューを読んで一つ重大な発見をしました。
木更津キャッツアイが元ネタのひとつになっていると。
なるほど、だから野球部だったのですね。いまいち野球部設定にピンときていなかったので、かなり腑に落ちました。ありがとうございます。

>それだけミナや絢華に魅力を感じていたということでもあります。
ここもかなり共感します。ミナも絢華もかわいかった。むしろシルヴィよりもこの二人のほうが好きなくらいです。絢華とか特に好きなタイプなんですよね。こういうヒロインはデレたら最高です。

>設定部分にもう一ひねり主人公達の行動に繋がるような、ワクワクできるもの(何でもいいんです。何なら『はつゆきさくら』みたいに「復讐」するのでも)があれば化けたかもなー、という印象です。
ここも同感です。
ただ、プレイヤーの代役としての役割もはたしていなかったように思うんですね。
主人公は、結構節操のない人間だと思いましたし、共感はしづらかったです。

なんかあまり実のないコメントですが、以上です。
では。
2018年01月04日23時33分49秒
 こんばんは。お久しぶりです。
 魔女こいにっきで「お久しぶりです」と言い合っていたのも今は昔、dacadannさんの感想をまた久々に拝見したと思ったら、フローラル・フローラブ以来実に約1年半ぶりだったのですね。

>ほぼ一緒のこと言ってるやん(笑)
 今回は見事にそうでしたね(笑)
 お互い構造的なことを言い出さなければ、『魔女こいにっき』でも『恋×シンアイ彼女』でも、毎回キャラクターやシナリオそのものに対する感想はほぼ一緒のような気がします。
 今作は物語の構造はシンプルだったことと、ライターが新島氏じゃなかったから感想が一致したに違いない(笑)

 実は今回のdacadannさんの感想で一番「あっ」てなったのは
>指輪が、だんだんとついでのような存在に成り下がっている
 でした。
 この指輪もそうですし、野球もそうでしたし……あるいは金髪やラブリッチェもそうでしたけど。この作品って妙にモチーフの扱いが軽かったですよね。
 逆に拘りすぎないせいでストーリーのテンポを維持できたって面もあるのでしょうが。

>カツラの設定は非常によく映えていたと思います
 これも強く同感です。
 理亜=マリアは割と即気づくことができたんですが(そもそも隠されてなかったですし)、その時最初に思ったことが「マリアの方がカツラだとして、金髪の地毛を隠せるのかな」でした。どっちもカツラだったというオチに「やられたっ!」って気分になりました。

>主人公は、結構節操のない人間だと思いました
 3Pやっちゃいますしねぇ(笑)
 シルヴィが気になってたくせにルート分岐で割と即掌返しますし。
 そういう意味では央路もまた作者の操り人形っぽかったかもしれません。

 さて、次回お目にかかる予定ですが……
 私『サクラノ刻』はあまりプレイする気がないのですよね。前作の『サクラノ詩』すらプレイしてませんし……と思ったらdacadannさんもプレイしてなかった(笑)
 だったらたぶん、次のサガプラ作品でお会いできるかもしれません。
 ユースティアも一昨年プレイして感動してるんで、上手く感想書ければいいんですけどねー。
2018年01月05日23時12分31秒
【感想追記~物語の舞台について~】
 さて、この物語の舞台(のモチーフ)は浜松だったワケですが、浜松といえばウナギ、そしてウナギについて昨年末からこんな記事が相次いでいます。

 ウナギ稚魚が記録的不漁、前期の1%
 http://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/unagi/446007.html
 このままでは絶滅? 「うなぎ」の危機に私たち日本人ができること
 http://www.huffingtonpost.jp/2018/01/18/unagi-kiki_a_23336580/
 「浜名湖うなぎ」を商標登録 浜松ブランド強化
 http://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/452300.html

 もはや少なからぬ人達が「天然のウナギがこのままだと絶滅する」ではなく「もうほぼ絶滅した」と考えているようです(その当否は私には判断できませんが、事実として既に"絶滅危惧種"ではあります)。私が本作をプレイしていたお正月頃、この話題でネット界隈がずいぶん盛り上がっていました。
 偶然か狙ったものなのかは分かりませんが(狙った可能性はあると思っています)、社会的にホットなテーマをタイムリーに忍ばせてきた『金色ラブリッチェ』。1プレイヤーとして脱帽です。
2018年02月25日20時48分15秒
格好付けたい
格好付ける事がダサい

大半のオタクが抱えているだろうこの二律背反な感情にもうちょっとフィーチャーした感じにすればもっと面白いゲームになった気がします。
結局主人公が周りのキャラの庇護に甘えてしまったような感じが個人的に残念でした。
2018年03月18日20時06分38秒
>xiboさん
 強く同意します。
 主人公があまりにも動かないことが、この作品最大の欠点になっていると感じました。
2018年03月18日20時48分36秒

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