merunoniaさんの「瞬旭のティルヒア ~What a Beautiful Dawn~」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

黒船来航から大政奉還までの激動の時代からの夜明けを描いた作品。原作が同人誌なこともあり、他スチパンシリーズに比較すると異色ではありますが、スチパンシリーズスキーならニヤニヤできるポイントも多くあり、買っていいかと。
Liar-soft スチームパンクシリーズ第7弾企画
『瞬旭のティルヒア』
同人誌が原作の物語をエロゲにした今作品。(私は同人誌は読んでいません)

舞台は、黒船が来航し開国した江戸から大政奉還後までの
江戸の文化と異国の文化が入り混じる激動の時代。
通常であれば、異国の文化が流入し、文明開化するのが私たちの歴史ですが、
今作では、その名のとおり蒸気文明が流入するところが面白いところです。

結論から言えば、スチパンシリーズスキーの人なら買ってもいいと思います。
ただ、この作品からスチパンシリーズとして初めて買うのは、あまりおすすめできないかなぁ
と思います。
同時に、歴史ものであったり、新選組等を期待して買うのも少し違うかと。

というのも、今までのスチパンと違い、同人誌が原作の分、話の構成が特殊だったり
スチパン過去作品ならではの設定が生かされている部分が多かったりするからです。
以下そのような内容に触れながら感想を書いていきます。
※ネタバレ全開なので、ご注意ください。


さて今作ですが、他の感想でも見られるように、プレイ時間は短いです。
というのも、今までのスチパンシリーズとそもそも話の構成が違うのが要因だと思います。
※以下の感想からは、フォロワーのF氏の感想が同意できるものであり
 一部拝借させていただきました。ありがとうございます。

今までの過去のスチパンシリーズを見てみると、
例えばシャルノス、インガノック、ガクトゥーン、それ以外も
1章ごとに話のメインとなるキャラに焦点を当てながら、それぞれのテーマで話が進みました。
1章ではとある男の物語、2章ではとある女の物語、とその1つ1つの中で起承転結があり、
そして主人公たちは時には救い、時には答えをだし、物語が進みました。
こうした章を重ねていく中で、物語の本質が見えてくる、そういったお話だったのが今までのスチパンだったと思います。

「……なるほど、確かに。人は君に何もできないだろう」
「お前の声は届かない 残 念 だ っ た な !」
「輝きを持つ者よ。尊さを失わぬ、若人よ。お前の声を聞いた。ならば、呼べ。私は来よう」
「喝采せよ。喝采せよ」

繰り返される章の中で繰り返されるこれらの名言は、
スチパンの雰囲気も相まって読んでいてどこか心地よいテキストでした。

また、シャルノス、ガクトゥーン等だとわかりやすいのですが、
ガクトゥーンの数式領域、シャルノスの怪異(メタクリッター)、インガノックの奇械の存在等
スチパンならではの蒸気の敵等がわかりやすく描かれていたり
こういうこともあって、起承転結で繰り返される物語が、スチパンならではだったと私は思います。


本作のティルヒアに戻ります。
今作は上記でも述べましたが、同人誌が原作です。
その同人誌を、4章+α(幕間等)によって、1本の起承転結で話が進みます。
その中で、八郎という主人公と、りんというヒロインの二人の視点に焦点を当てながら、
二人が互いのために、かげがえのない存在のために命をかける、某雷電魔人さん風に言うと輝きの物語です。

また、他サブキャラにも、それぞれの信念によって命をかけ、同時並行で語られていきますが、
直接それらの信念が、他のキャラに関わることが少ないため、彼らの中で完結していきます。
ただ、その分、明確な敵という存在はなく、彼らの視点ごとによって世の中の見え方が変わってくるような
面白さはあったと思います。
ライアーの、スチパンシリーズの特徴として、彼らの心の声、心理描写が
客観的な視点から地の声で語られる、という演出がありますが、
彼らの生き様が物語にわたって語れる今作品では、特に活かされていたと思います。

また、スチパンの雰囲気を過去作品と比べると、どうしても薄いかなぁと。
多くの機械(移動砲台等)は出てきますが、今作の場合、まだ機械は浸透しているわけではなく
中途半端なのは仕方がないかと。
ただ、その中でも、私たちが知っている江戸、文明開化の時代の和と洋が入り混じった奇妙さを
スチパンならではの設定で描き出しているのは面白かったですが。

そのため、過去作品に比べるとどうしてもプレイ時間は短く、スチパン感は薄めかなぁと感じました。



ただ、こうしたプレイ時間が短いという中でも、八郎とりんの生き様は鮮明に描かれていました。
かつては、幕府の上意、命令だったから従って守っていたりんとは、彼にとってどのような存在であったか。
りんにとって、多くのことを教えてくれた八郎とは、どのような存在であったか。
詳細は以下の本編感想に書きますが、起承転結で描かれた彼らの物語は、見ていて面白かったです。
読後感も、ほっこりして、素直に楽しめました。

また、過去のスチパン作品の設定を知っていればこそのニヤニヤできるポイントも多く存在してたりして
うへへって変なニヤニヤ顔でプレイした私でした。
特にガクトゥーンがめっちゃくちゃ大好きなので、そんな私にあの存在はもうね(以下略

以上より、最初に述べましたが、スチパンシリーズが好きな人なら買ってもいいのかなぁと。
ただし、過去作品のようなスチパンを求めるのも違うかなぁと。(矛盾してるかもですが)
あくまで、同人誌が作品となった今作だと思うと、私は買ってもいいと思います。




※以下本編感想(ネタバレさらに全開)

覚えているプレイした時の感想を備忘録がてらつらつらと書いていきます。

まずタイトルの『瞬旭のティルヒア』
今までのスチパンシリーズと違って色がねえぞ!?と思った当時。
プレイしてる人なら最後のシーンでなるほどと思ったと思いますが、
タイトルの由来は
『過去に瞬いた旭日の如き、ティルヒア(鋼の女王)の眩しさを──』

黒船の来航から、大政奉還のその後までの、激動の時代の中で、
八郎とりんが駆け抜けた、一瞬のように思える時間の中で。
その時間は人ではないりん、鋼の彼女の心に、眩しさを与える物語でありました。
1章の頃の後ろをちょこちょこついてくるりんちゃんは可愛くて、
心をなくした八郎のそばによりそう姿は痛々しくもあり、八郎を求める姿や最後の笑顔は素敵でした。

彼女は、最初心には何もなかったが、八郎と過ごすことにより多くのことを教えてもらうことで
心を宿すことができた。
そして最後に雷電兵装によって心をなくしてしまった八郎を、かつて自分に心を教えてもらったものを
返す(与える)ことで、八郎を救うという、この二人の関係性が見ていてとても好きです。


次にサブタイトルの『~What a Beautiful Dawn~』
dawnの言葉で一番出てきたのは、坂本龍馬のセリフの『crack of dawn』
夜明けを意味した単語でしたよね。
それはかつての坂本龍馬の名言(本人が言ったいってないはさておいて)の
「日本の夜明け」、未来への夜明けがもう一つのテーマだったと思います。

作中の坂本龍馬は、私たちが知る歴史を記した『史実の書』によって未来を知ることになり
偽りの夜明けとして絶望し、それならばいっそ歴史改変により本当の夜明けを目指そうとしました。
(といっても、史実の書、すでに歴史がけっこう改変されているのもあり、すでに役立たずでは
と思わないでもない)
また、新選組は幕府のために誠を背負い、未来のために命を投げ出し、それ以外にも
勝海舟、岩倉具視、藤子、桂小五郎、小栗上野介、吉田稔麿……etc等どの登場人物も、己が信念の通ずる夜明けのために
生き抜いた物語だったと思います。(全部が誠実な信念とは言いませんが)

こうした彼らの思惑が絡み合う中で見せた、大樹の「旭光の輝き」
作中のセリフで大樹を見た土方の「旭光に、未来を照らせ──」
とあります。
まさしく最後の大樹の光は、この彼らの生き様によってもたらした時代の夜明けを表していたのではないかと思うのです。
彼らによる夜明けはなんと美しいものか。こうした物語だったと思います。


そして最後に八郎。
彼は、ニコラ・テスラの言葉を借りるなら、まさしく「輝きを持つ若人の物語」だったと思います。
八郎にとってのりんは、「幕府の上意」としてりんを京まで運ぶ、任務としての護衛対象でしかありませんでした。

そのような存在であった彼女が、一緒に旅をするにつれて八郎のなかで大きく変わっていくのが、
一緒に1章から読んできた自分にとっても印象的です。
その変化がより顕著になった伝わったのが、ニコラ・テスラに問いかけられる下記場面。
(一部省略)

【テスラ】「ならば異国のニコラ・テスラが伊庭八郎秀穎に問う。
      役目と言ったな。では、それは誰が誰のために成すものか」
【八郎】赤心を晒せよ、伊庭八郎。まごころは、丹心は何処に。
    「俺は───俺が俺として、彼女を取り戻したいのだ」
    「俺は───りんを扶けたい」
    「俺が俺の為にりんを扶ける!それが俺の役目だ!」
    「上意も、幕府も、知ったことではない。
     俺がりんを求めるが故──俺はりんを扶けたいのだ!」
【テスラ】「このニコラ・テスラ。貴様の輝き、闇を切り裂く雷へと変えよう」

おじいちゃんは、なんだかんだ助けを求める若人が大好きな世話焼きおじいちゃんらしいシーン。
ではなくて、このシーンで描かれる八郎は、まさしく自分の心をさらけ出し、素直になるシーンで大好きなシーンです。
彼にとってりんとはどのような存在であったか、自問自答し、答えを見つけ出すシーン。
ここからの八郎の歩みと覚悟は、かっこよく、まさしく若人の輝き出会ったと思います。


自分が守れなかったからと嘆く八郎と。
自分のせいでこれだけ傷ついてしまったのだと嘆くりんと。

かけがえのない存在に出会い、守るべき自分の役目を見出した八郎と。
心を持たない少女がかけがいのない存在に出会い、心を教えてもらったりんと。

互いが互いを想う関係が何よりも好きで。
特に最後のエピローグの、八郎、りんがお互いに「自分のせいで」「私のせいで」と
相手を想うからこその遠慮試合のやり取りが何よりも彼ららしくて好きです。

だからこそ最後の最後の二人の姿に何よりもほっこりしました。
彼らの二人の歩む先が、幸せな夜明けであることを願います。


【その他】
ニコラ・テスラ、雷電魔人、おじいちゃん。
SNの映画で、なんか雷電兵装自慢してたけど、事実だったんですね!感満載だった。
またこんなところで若人を救ったりして、世話焼きおじいちゃん。ほんと好き。
また、エピローグで学園都市の服装になってるところがめっちゃ良かった。
このあとに、ガクトゥーンの物語が始まるんですね。
ニコラテスラの武器もガクトゥーンと同じで登場して、興奮したりして。
ガクトゥーンスキーには歓喜でした。
古河さん祭りでしたね。

河上彦斎さん。
まさかの呼んではいけない存在を呼んでしまわれたよ……。
見た瞬間ひぃってなってしまいました。
クトゥルー神話も題材になるスチパンシリーズでしたが、ティルヒアで出てくるとは思わなかった。
出てきた瞬間、M呼ばなきゃ……って思いました。あの黒目とかもまさにシャルノスを思い出させるデザインでしたね。
助けてニャルラトホテプ。
ちなみに、ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん
っての、言葉は知っていましたが、発音を聞いたのは初めてなので、桜川未央さんが言っているの
思わず何度も聞いてしまいました。
SAN値チェックしないと……ダイス振らないと……。

結社の存在。
恒例の黒幕の存在。
今回、今回もか、極東完全に結社の手のひらで踊らされていた状態でしたね。
実験場状態。蒸気文明が浸透していない国では、ボロの機械ですら高値で商売がされる格好の国であり
まさにあの時代の日本を象徴してるがごとくでした。
この先、極東がどのような時代を歩むのか少し気になるところ。
ローゼンクロイツ、チクタクマンの存在、史実書……。
ニコラテスラさん頑張れ。

以上! もし間違っている部分等があったらごめんなさい。
ありがとうございました。


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