比翼れんりさんの「彼女は天使で妹で」の感想

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傷つくままに立ち上がった 君はきっとAngel
ハニカム×瀬尾順さんというと、スルーしてしまったものもあるので、サツコイ以来3年ぶりとなります。今までのイメージだと、ハニカム文庫に代表されるような爽やかな学園ものを多く生み出すもので、サツコイで雰囲気が変わったように思っていました。今作はやはり少しダークなイメージを含み、しかしながらALcotらしいポップさを所々に散りばめています。サツコイが黒なら今作は白。ただしそれでいて、死生観がベースにあります。


構成はわりとシンプルで、1年前に天使候補生となった主人公は、各ヒロインとのエピソードをじゅんぐり回収して、イレギュラーとして覚醒するところまでが共通。スタートから、ある程度の時間経過とヒロインたちとの交流が前提としてあり、回想で過去を補完していく感じです。土台を最初から作っておくことで、メインストーリーへの移行を簡単なものにしており、死を扱う作品にしたら驚くほどポップ。らしいといえばらしいのですが、簡潔にさせてわかりやすくしているというわけではなく、シナリオの間に穴がゴソっと出来ているようで主要シーンでも「うーん?」と感じるのがゼロではなくあり、気になる点でした。

個別ルートはほぼ確定で未亜→一海→恵理那→十花となるでしょうか。
未亜は主人公の後輩天使候補生ながら、1年間の間に抜かれ先輩天使になってしまった子。あまり好かないタイプのヒロインですが、個別ルートもあまり好かなかったですね… 有名人らしく、病気の子を元気付ける奉仕の一面はストーリーに馴染んでいましたが、自分も実は病気で生き長らえるために天使になったというのはちょっと強引かも? そもそも一海とのやり取りについての回想もなく、このルート単体ではひどく消化不良ですね。主人公がアイドルっていうのもかなり無理矢理感があるように感じます。ラストについては、お涙頂戴のよくある手のテレビ事情が垣間見えましたが、このモヤモヤを否定的に見ることで、次に繋がるわけで、このあたりのフラグ回収はわりと好きですね。

一海ルートに関しては、サツコイの色がかなり濃く出ていますね。むしろ未プレイだといまいち話がしっくり来ないように思います。話の流れとして、人魚である母・美月(サツコイにも出て来たと思う…)に死を与えられるか、が主題になります。結果は、生きてほしいと一海が強く願うことで幕が閉じられるわけですが、1人のヒロインのエンディングとしては正解なのでしょう。死神は魂を淀みの中から掬い、救い上げることが存在意義であって、一海エンドでは死神の力を消失させられました。ルートとしては綺麗にまとまったように見えます。ただ、読者には人魚の前提が求められ、そういった意味では、設定が詰め込まれすぎた印象で、もう少し一貫性を持たせられなかったのかなと思います。

恵理那は一般人というステータスで、一番大人しいルートになるのかと思っていました。実際は、最も神に踊らされたストーリーとなってしまい、これはちょっと展開が急すぎでしたかね。恵理那の家族問題からの流れを受け、主人公の家族の話に繋がったのは良かったように思いますが、それをひとつにまとめたがためにモヤモヤしたものに見えてしまいます。兄妹ものは嫌いではなく、むしろ好きなのですが、こういう構成になると、あまり入れ込むのが難しいのです。
神の真相について触れられるのもこのルートですね。神無月の人の良さが出たのは好感が持てますし、ミライ・十花の3人の思惑が見え隠れするのは楽しいところです。が、やはり神の正体がチープすぎる。いままでわりと非日常で重厚なテーマを敷いていたはずなのに、ずいぶんと安っぽい日常に変貌してしまいました。ここまではそれなりにプレイ出来ていたのですが、この先十花ルートを前に、ひどくモチベーションの下がる恵理那エンディングとなりました。

十花ルートがTRUEを兼ねているわけですが、オチとしては、世界は変わったようで実は変わっていないようです。ハリボテの神から、十花・ミライ・神無月の3人を振り切った主人公が神を継ぎます。世界は何度も上書きされ、改変され、新しくなっていくのが、神からしたら摂理なのでしょうが、150年前からの問題を収めるべく動いた結果が、主人公が神になり、世界を作り始めることでエンディングとなった格好です。"抹消"が救いなのかは正直わかりません。正解なのかもしれないし、不正解なのかもしれません。ラストのミライの言葉を借りるならば、希望と絶望がコインの裏表のように、釣り合いの中で世界は成り立っているわけでしょう。1つを確立するためには、犠牲は付き物です。新たな世界は主人公の存在を等価交換として始まりました。どのルートを取っても、皆がハッピーエンドとなるエンディングはなく、特に十花ルートに限っては、サツコイを意識したようにも見えます。バランスバランスといっても正直なところ、ストーリーのバランスは存外悪く、十花ルート後半少しの巻き返しはあるも、全体的に伸び悩んだ印象です。エンディングからのタイトル画面はさすが十八番でしたけどね。


久々のハニカムでありますが、数年前ほどのインパクトは今作もなく、ALcot本家を合わせてみても、軽快なトークと妹キャラは健在だとしても、やはり全体的な構成力と、ここぞの爆発力が衰えているのは目に見えます。本家では今月に新作が控えますが、再度羽ばたく"翼"を与える作品を待ちわびるばかりです。

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