shindai_alteenさんの「眠れぬ羊と孤独な狼 -A Tale of Love, and Cutthroat-」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

「フルプライスのエロゲは長い」という固定観念を払拭してくれるようなまとまったストーリーだが、どうしても短くなった分のクオリティの見返りがどこに行ってしまったのかが分からない。表面的な部分で見れば「鬼哭街」や「ブラックラグーン」を彷彿とさせるような雰囲気を兼ね備えながら、任侠を否定するハードボイルドにまとまった一本。
●前置き

参考までにプレイした同ブランドの類似作品
・「euphoria」(80点)
・「フラテルニテ」(75点)→えろすけで感想書いてます。

(他の人の感想を見て、マゴベやらなきゃなと思いました…。)


●フルプライスエロゲにおける「話が短い作品」

エロゲをプレイする上で、フルプライスの作品に対してはどうしてもプレイ前に覚悟が必要になるんですが、自分にとってのそれは「話が長い」からではなくて、フルプライスであるが故に20時間近くのテキストを作るために、どうしてもストーリーに本当に必要なのか?と感じる蛇足的なパートがあまりにも多いことにあるのかなと感じています。逆に言えば、ストーリーが短くてもそれ相応の価値を作品から見出だせるものがあれば満足だし、もっと多くの作品がそうであればいいのにというのが自分のエロゲに対する本意でもあります。確かに情報量が豊富で、伏線もあちこちに散りばめられてワクワクするようなエロゲっていうのはプレイ時間なんか気にもならないし、もっと時間が欲しいぐらいの作品だっていくつもあるんですが、「ラスト必見」とか「最後までやることに価値がある」と銘打つエロゲに限って中だるみがすごくてそこまでたどり着くまでに多くの時間を要することが多く、「またこのパターンか…」と感じたのは一回や二回ではありません。

そんな中で、本作は非常にストーリーが短くまとまっており、キャラクター達も個性豊かだし展開も目まぐるしいので一瞬の隙もなく最後までサクサクと読み進める事ができました。本作の長所はまさにそこで、話を端的にまとめているおかげで蛇足と感じさせるようなパートが一切ないので、集中して読み進められるからこそ、世界観にズイズイと引き込まれていけるのだと感じます。今後もこういう作品が増えていってもいいなあ、と思います。

一方で、自分がフルプライスのエロゲに求めるのは「それ相応の価値を作品から見出だせる事」なんですよね。例えば作品の演出だとか、充実したHシーンの回想数だとか、別のベクトルに要素さえ追加していればより良いのに…という気持ちも抱えてしまいました。その顕著な例として、ラストの恩田との死闘の部分を挙げると、テキストのみで一瞬にして多くのキャラクターがバッサバサ倒れていくので、その部分の一枚絵だとかもう少し具体的なキャラクターの動きの演出を追加するだけで場面の説得力はグッと上がるのになぁと感じてしまいます。テキストを引き伸ばす事で生じる中だるみがない事はとどのつまり展開がやや急になる危険性を孕む為、どうしても総集編のようなダイジェスト感が出てしまうので、その部分を演出でカバーしてはじめてフルプライス相応の価値になるのかな…と個人的に感じたので、この点数にしました。


●キャラクター、シナリオ

クジラックス先生のエロ漫画に「もっとジブンに、素直に生きろや!」という強姦魔の名言がありますが、この作品のキャラクター達はまさにコレに尽きるな、と思います。この作品に登場するキャラクターの大半はおのれでそれぞれの価値観があり、それに伴って行動するので、一見自己中心的にも写ります。逆に言えば、皆が皆、意思を持っているので非常に人間味が溢れるんですよね。

また、ニーチェ哲学で「超人」という言葉が出てきますが、あざみのような殺人という行為に対し自由な思想を持ちえるキャラクターはまさにこれに当てはまります。彼女もまた、殺人を繰り返す中で自分なりの善悪を定義付けていたし、その価値観こそが彼女の原動力となり得ていました。それと同時に、ニーチェが大衆に超人である姿を訴えたように周りのキャラクター達もそれに翻弄され、彼女と何らかの接触をしますし、恩田に限ってはまさに言葉通りに超人を目指した人間の典型として描かれています。

そんな「超人のメタファー」とも言える本作ですが、最終的な黒幕である恩田の存在による行く末がそれを否定しているようにも感じられました。この物語では、恩田のバックについている存在は何なのか明記されずに終わっています。敢えて明かすことなく物語を終わらせたのだと思いますが、自分はこの恩田という存在が非常にメタなものであるように感じられて堪りません。ラストまで散々、「人の命は軽いものだ」と提示していた作品に納得したプレイヤーの心情を恩田に照らし合わせることで、作中に自分の価値を持たないとされていた弱者的立場の人間をあざみのような超人を目指す人間に変貌させます。そして、超人であると思われていたあざみやそれを取り巻く人間全てを超人になろうとした弱者によって相殺させるという展開は、この超人理論を肯定していると断言できるのでしょうか?最終的にこの物語が行き着く先は、登場人物全員の死であり、存在を否定するものであると考え着きますし、自分はこの物語の本質はどちらかといえば「超人は死んだ」と宣言されたように感じました。殺人行為はどこまで行っても悪であり、破滅しか生まないという事項が、本作の本当に伝えたかった内容かなというのが自分の持論です。

あと、この作品には多くの極道が出てくるわけですが、どのキャラクターも自分の立場の維持に執着し、良くある任侠的な一面を一切見せない点に驚きました。ですが、どんな極道の面々も時には他人を庇って死んだり、自分の信念を貫いたりと人間味溢れるハードボイルドさをしっかり秘めています。任侠映画とかで、このご時世の中で平気で人を殺すのに武士道に通ずるだの任侠だの、しっくり来ねえよなあという自分のモヤモヤも晴れるような潔さで、これもまた見どころの一つです。


●総括

最後にプレイしたCLOCK UP作品が『フラテルニテ』だったんで、あんまり中間の作品をプレイできてないのですが、枚数が少ないとは言えエロのシチュエーションは切断脱糞なんでもありの相変わらずの高クオリティで満足です。女性キャラならダルマ女、男性キャラなら李の老板が好きでした。
フルプライス相応の出来かと言われると微妙ですが、内容としてはかなり満足できる作品でした。今後もこの路線で出る作品はプレイしたいと思います。

おまんこして寝るか~。

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