69gogoさんの「眠れぬ羊と孤独な狼 -A Tale of Love, and Cutthroat-」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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徹頭徹尾、一人の男と一人の女の物語
歌舞伎町という街の特異性を背景に、主人公(名無しの俺)とヒロインあざみが出会うことで始まるハードボイルドテイストの物語。
パッケージ、キービジュアルとも、主役の二人のみをフィーチャーしており、実際すべてのルートにおいてもこの二人の身に起こることが中心となって進む。ルートA「眠れぬ羊」は主人公、ルートB「孤独な狼」ではあざみの過去が描かれ、ルートC「眠れぬ羊と孤独な狼」では二人の総決算が描かれる。
これはMaggot baitsが実質的に主人公(角鹿彰護)とヒロインのキャロル二人の関係を重点的にフィーチャーし、その他のキャラの存在感が意図的に抑えめであった作りを踏襲しているのだろう。ただし主役カップル以外のキャラの描写に関しては、今作の方がMaggot baitsよりも濃く描かれているように思う。

個人的には、人間の持つ他者殺害の業を多角的に掘り下げ明確な答えを出したテーマ性、「あの結末」を避けなかったストイックさ、テキストやグラフィックの質など、満足のいく出来だった。
主人公、あざみ、仁礼、恩田とそれぞれタイプの違う殺人者たちの哲学の対比も、作品の深みを出していたように思う。
またMaggot baitsに通じる、綺麗なだけではない歪な宝石めいた愛の形もしっかり描き出されていた。まさに愛と殺人の物語のフレーズに偽りない内容だったと言えるだろう。

終盤の恩田による殺戮については、この作品のテーマの一つである「死は唐突で理不尽なもの」を体現した意図的な処理の仕方であるのは明らか。何の見せ場もなくいかにも雑に片付けられていく、それまでそれなりの背景を持っていたはずの登場人物たちの突然で無機的な死に、そのテーマ性が込められている。

ところで本作では総括的な結論として「好きか嫌いか、人間には結局それしかない」(大意)ということが語られている。
完全に客観的で中立性を保った判断など誰にもできず、結局は自分の好き・嫌いに理屈を付けているだけという意味で、こういった感想の類についてもまた個人の好悪が根底に存在するのは言うまでもないだろう。痘痕も笑窪、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いというように、好きならば瑕疵含めても許せ、嫌いならば何もかも許せないというごくシンプルな真理だ。
自分はこの作品は「好き」なので好意的な批評になる。当たり前のことである。

追記
あざみ役の声優は魅力的な声質で演技力も高いのだが、期待の新人というわけではなく聞き覚えはしっかりとあり、「あじ秋刀魚」の別名義と考えるのが妥当かと思われる。

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