gggrrrさんの「リズベルルの魔 1+2」の感想

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綿密に練られた世界観に、多くのキャラクターが織り成す王道ファンタジー。ロボットもあるよ! というシリーズ1弾目。海を断ち、天舞う音色、ヴィルフォーナ!
ほんとうの物語」というシリーズモノになってるだけあり、この物語は登場人物が多く(リズベルルの魔だけでも実に40人以上)、世界設定がしっかりとしています。第一弾目の感想なので、まず大まかな世界設定などについての感想などを。

世界について

まず、この物語の舞台は、架空の世界「エンダージェン」。ここは、ここしばらくのところ粗製濫造されていたライトファンタジーのように「とりあえず異世界」という適当なものではなく、クトルゥフ神話を土台にしてしっかりと構成された異世界です。

21世紀の現代よりいくらか未来、資源問題などで行き詰まった世界が、新たなエネルギーを求めて、この宇宙とは異なる高次元世界よりエネルギーを引き出す技術を生み出したことが発端となっています。この高次元よりエネルギーを引き出す、という発想は他にもあり、RPGゲームの「ゼノギアス」の「事象偏移機関ゾハル」や同じAVGの「シルヴァリオ・ヴェンデッタ」の「大破壊」の原因も次元シフトの失敗でしたね。そうした異なる次元からエネルギーを引き出す際には、物理法則などが全く異なる異次元よりエネルギーをそのまま引き出すのは無理があり、そのエネルギーを地球上で使用できるように「最適化」するある種の「変換器」として作られたのが、このエンダージェンという世界です。このエンダージェンはある種5次元世界に人為的に作られた世界であり、私たちの3次元宇宙には存在していないのです。なので、このエンダージェンには現在過去未来、あらゆる場所から接触可能であり、それを許すとパンクするゆえに「大結界」という三角錐状の防御結界で守護されています。

クトルゥフ神話を題材にしてると言いましたが、この高次元エネルギーを抽出する開発は、途中で頓挫してしまいます。その原因が旧支配者クトゥルフです。エンダージェンは異なる世界の概念を抽出できる世界ですが、それゆえに遥か過去に飛来しており、今は眠りについている異なる世界の神を呼び寄せてしまった。しかし、クトゥルフという神は星辰が大きく関わっているように、この3次元宇宙での神であるゆえ、5次元空間に浮かぶエンダージェンでは、真の目覚めにはならない。そのために「最適化」された姿でしか存在できず、真の力を振るうことなできない状態になりました。

しかし、それでもクトゥルフという神は、本来目覚めた段階で全人類を発狂させる思念波を出す存在。エンダージェンで「最適化」されたといっても、その特性は変わらない。そうして可憐な少女の姿をしたクトゥルフは、地下水が浸透するように人々を狂気に侵していきます。その果にエンダージェン開発は頓挫したわけですが、この結果は悪いものばかりを残したわけではありません


ここからは多分に私の予想も含まれるのですが、クトゥルフの化身によって多くの人が発狂しましたが、それでも主人公たちの時代にエンダージェンが人間の世界として機能していたということは、発狂せずに生き残った人々がいたことを意味しています。つまりは、クトルフの狂気に抵抗できるほどの精神力の持ち主や、その思念を受けても影響されないほど心が綺麗な人物だけが、エンダージェンに残ったということです、その後彼らはそのクトゥルフの力を地脈として張り巡らせることによって世界を維持してる機構なども確立させており、それが物語が始まる時代まで「王のシステム」として機能しています。

また作中のクトゥルフは旧神であるクタニドと同一の存在として描かれているように見られます。この2柱の神格は、神話においては双子の神であり、見た目はそっくりだが立ち位置は善神と邪神という対局にある存在です。ですが神話でも解釈によって存在が変わるように、こうした1つの神の異なる側面という描き方も問題ないと思います。

そしてこの作品におけるクトゥルフは、善なる人間の前には協力者クタニドとして顕れ、悪なる人間には侵略者クトゥルフとして顕れるという印象です。前述のようにエンダージェン開発の混乱で生き残ったのは善良で精神の強い人間ですので、彼らはクタニドである神に協力を願い、神の12の力を都市の起点とし、世界機構を作ったあと「サニド(クタニドの別称)の銀鍵」をクトゥルフの化身として現れたエコーという少女に突き刺すことによって神の「クトゥルフの側面」を封じているのです。こうして、エンダージェンは外には科学で作られた「大結界」とその他数隻の戦艦等で防衛し、大地をクタニドの力で安定させている世界となって年月が過ぎています。


エンダージェンは5次元世界に浮かぶ世界であるがゆえに、そこには3次元世界ではありえない「災害」があります。これが作中で何度も猛威を振るう「黒水」であり、その正体は潰えてしまった可能性というもの。クトルゥフ的に考えると、ヨグ・ソトースが存在する世界に人間の世界があると考えれば神話体系を知る人にはわかりやすいかもしれません。この潰えてしまった可能性事象は、影が光に惹かれるように、「基幹となって存在している世界」に侵入し、成り代わろうとしています(これは私の印象ですが)。

例えば一個人が車に轢かれそうになったとして、右に避けたときはうまく躱せましたが、左に避けた場合は衝突し死んでしまった。そうした潰えた可能性が、黒水となって「潰えなかった世界」に侵食してくるのです。こうした個人規模の可能性ならば黒水の使徒雫となって漏れてくる程度でしょうが、この物語の主題となる禍は、「世界そのものが潰えてしまった」という大きなものであり、それゆえに世界すべてを侵食するほどの規模の災害です。この事態に対して登場キャラクターたちは7章に渡って取り組んでいくわけです。


また、こうした「天災」が四六時中襲いかかる世界であり、また世界自体が時計盤のように都市が配置され、中心部分はシステムの根幹として聖地として存在し、濃霧によって通過できないので、基本移動は陸路であり、その行路は一定です。そのためエンダージェンでは、人間同士の戦争という歴史がなく、その武装も組織も全て、対黒水災害用に進歩していったものとなっています。


魔術などについて


エンダージェンは元々、異なる次元の力を利用するための濾過器として創造された場所だけあり、その機能はここに住む誰にでも使うことができます。これが作中では「魔」と呼ばれる力です。特に大掛かりな儀式や呪文は使わず、日常的なエネルギーとして使われているワケです。車のエンジンの動力となる「魔」もあれば、飛行船の動力になるものもあります。そして武装隊である騎士たちは、弦奏鎧と呼ばれるロボットを、呼び出した「魔」即ちエネルギーで動かして黒水に対抗します。黒水は時間的な概念が多く占めるので、これに触れた無機物は劣化が早くなり、生物は異なる可能性に入れ替わられます。それゆえに劣化しづらい物質で作ったロボット「弦奏鎧」で戦うわけです。

この引き出せる「魔」の力は三角や四角といった「形状」でイメージするのが通常のようで、その中で最強とされるのが「球」の魔です。この世界がクトゥルフ神話を土台そして作られているなら、球と聞いて連想するのは現在過去未来を内包する副王ヨグ・ソトースです。最強なのもうなずけますね。三角はハスターあたりでしょうか? 各都市には水門があり、それを閉じる儀式をする際には「鍵」が必要なあたりも、ヨグ・ソトースの特徴と合致しますね。



随分長くなりましたが、これでも概要程度です。それほど練られた世界設定であるということです。では物語本編についての感想に移ります。このシリーズは1章ごとに主人公が違うので、どの章もそれぞれの楽しみがあります。





第1章 光のヴィルフォーナ


 記念すべき第一章。主人公は地球の青年ジン。話の展開はこれといったひねりもない、異世界召喚モノと呼ばれるジャンルです。ある日突然異世界に飛ばされ、そこで力を得て様々な困難に立ち向かう、という具合の。最近の流行りではありましたが、この手のジャンルの主人公は、おかしなくらいに元の世界への愛着や執着が薄いことが多いですが、主人公ジンもそうした執着は薄いです。しかし、多くのライトノベルと違い、ジンにはそこに理由があります。彼は過去に幼馴染を自分のせいで失っており、その日から世界の全てが空虚になっていたのです。しかしこのままではいけないという想いはあったのでしょう。その想いがヒロインであるリズベルルの呼びかけに応じ、彼はエンダージェンに来ました。この世界の「魔」は呼ぶものと呼ばれるものの、双方の合意がなければ召喚は成立しません。ですので、ジンはリズベルルの呼びかけに確かに応じてこのエンダージェンに来たわけです。

 その後の展開自体は特筆するものではありません。彼が手にした弦奏鎧「天舞う音色 ヴィルフォーナ」を操る力、出会った多くの人との交流、襲い来る災害とその打破、などなど。このあたりは王道であるがゆえに面白い箇所ですね。悪く言えばありきたりですが、しっかりとした下地をもとに描かれれば、王道展開は良いのだという証拠。私が気に入ったところは、幼馴染で親友であったシズマとの再会の件です。ジンが自分を責めるきっかけとなった幼馴染の少女の死は、実はシズマが原因であったことが明らかになり、この親友と真正面から向き合って、そして自らの過去を清算する一連の展開が良かったです。

 ジンは学生時代に幼馴染のコトネに告白しようとシズマに相談しましたが、シズマもコトネが好きだったので、コトネにジンが告白する場所として指定した場所とは違う場所を教えました。しかしその場所に行く途中で彼女は事故に遭い死んでしまいます。そのことをシズマがジンに打ち明けた際に、ジンがシズマを恨まずに、なぜもっと早く言ってくれなかった、独りで抱えてやがったんだと怒るシーンなどが好きです。またその後の珠の魔の力で過去に移動したジンが、その世界には留まらずに元の自分の場所に帰った来たあたりの展開も好きです。過去に飛んだことにより、ジンは「コトネが死ななかった可能性世界」と作りましたが、自分が生きるのはあくまで「コトネが死んだ世界」であることをシズマに語るシーンは印象的。こういう決断をできるキャラは大好きです。


 シリーズのはじめということもあり、物語の構成や盛り上が具合が高い1章。主人公ジンの性格も私にとても合っていたので、実に楽しめる話でした。


 また、実にユニークな点として、通常こうした「異世界ファンタジー」ものは、主人公を異世界に呼んだ存在が少女だった場合、当然主人公にとってのヒロインはその少女になるものですが、ジンとリズベルルは違います。私の所感ではジンの年齢は26~27歳くらい。対してリズベルルは13歳で、ダブルスコアが付く年齢差です。まあそれでも年の差カップルもありだと思うのですが、リズベルルと結ばれるのは、ジンの友人となるノルアードなのです。ジンとリズベルルは同居するのですが、互いに「異性」として意識することは全7章通して一度もなく、ジンはリズベルルを「妹」として扱い、リズベルルもジンを「兄」のように接します。そして物語が進むにつれジンのリズベルルへの扱いが「妹」から「娘」になり、兄から父へと立場がシフトしていってるようなのが面白い。本人たちにもその自覚はあり、周囲からからかわれる事もあります。ちなみにノルアードの年齢は22~23歳位に見えるので、やはりここも年の差があります。ノルアードは1章の段階ではロリコンの謗りは免れない。しかし、「ファタモルガーナの館」のヤコぽポとモルガーナの年齢差もそのくらいだったので、そこまで新鮮ではなかったかも。


第2章 道化師の生き様


 物語の舞台はジンがいるフェラルダンから別の都市のフェアルージュへ移動。主人公は旅芸人一座の頭ボルダナ。このボルダナの正体はフェルージュの剣守(領主的なもの)の息子なのですが、「魔」を扱う能力が弱かったために、自分には剣守は務まらないと実家を家出し、旅芸人一座を作り上げ、エンダージェンで人気のサーカス団へとしていきます。2章も王道的展開で、家出息子が実家である街の危機に駆けつけ、仲間といっしょにそれを退けるというものです。2章でも1章の人物はみな登場しますが、2章全体でみればやはり主人公はボルダナですね。彼は陽気な性格と行動力で、自然と周囲から慕われるある種のカリスマを持っています。しかし剣守には、街を守るために弦奏鎧を駆使して黒水災害を撃退する義務があり、弦奏鎧をまともに動かせない自分では無理であると考え彼は家出を決意。そして次期当主には妹のネムリーがなったわけですが、現当主であった父親が死んだことにより、まだ幼い妹を支えてやるためにも、彼は一度故郷に帰り、そして目下の災害をジンとともに退けて、妹を支えます。最初は放蕩三昧の兄をよく思ってなかったネムリーも、自分のために命をかけて行動する兄ボルダナを見直し、慕うようになります。ボルダナは人間味あるキャラで、笑いあり、悩みあり、友情有り、一見その場の勢いで行動してるようで、色々と彼なりに考えを巡らせてるという味のある男。彼を慕う一座の人に共感を覚えます、リーダーシップにあふれたいい男。ジンもいい主人公でしたが、ボルダナも甲乙つけがたい。

 このボルダナを主軸とする話のほかに、王の使者という立場にあるジズマが色々と独自に動いてる様子が見られ、この段階で様々な伏線も貼られており、先の展開が気になる構成になっています。私は一見すると不気味な印象であるこのシズマが、内面はかなり熱くユーモアあるキャラクターなので好きです。ジンとシズマの会話はそこまで多くないが、どれも楽しい。




この作品の魅力の大きな点を忘れてました、それはヴィルフォーナを代表する3DCGの出来の良さです。商業作品比べてもと一切見劣りしないどころか凌駕してるその完成度は、この作品の売りの一つ。私はヴィルフィーナ召喚のバリエーションのひとつの、ガシャンガシャンと彼が歩いてくるCGが好きです。

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