比翼れんりさんの「銀色、遥か」の感想

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空からこぼれ迷うように また雪が巡る
tone work'sの2年ぶりの新作は前作、星織ユメミライの流れを汲みつつ、中学編、学園編、アフター編と中身のさらに濃いものになりました。


共通ルートは中学編の途中までで、中学編後半からルート分岐という、ほとんどの尺が個別に割かれているので、よくある描写不足や個別ルートの短さ、アフターストーリーの欠如なんてものが皆無といっていいほどないのが特長ですね。前作から変わったいいところは、やっぱり中学編という、メインストーリーの学園編の前段階の描写をきちんとして、出会いを最初から描いている点。サクサク進みますが、ベースをしっかりとさせたため後半に活きてくるというのが大きいですね。


カナダからやってきた女の子ベスリーは、ヒロインたちの交流の中心になっていくセンターヒロインですね。中学編ではとくにそれが顕著で、大人しそうに思えて、実は行動にも移せる、とくに後半になって想いを確かめてカナダに帰っていく、という辺りで本当のベスリーが見え始めた感じですね。
学園編はベスリーがもう一度日本にやってくる1年を切り取ったもので、メインは雪まつりへの参加での壁とこれからのきっかけでしょうか。上手くいかないことや諦めること、ただそこでやっぱり何かを残したい、そんな青春の1ページという具合です。ここでの話が次のステージやエンディングまで活きてきますね。
アフター編トロントは大学生活。新たなキャラクターを通して自分の進む道を探していく、それが主題ですが、学園編の雪まつりをベースにしたようなコンテストなども描かれ中々楽しいです。
アフター編幌路は社会人になって、ずっとベスリールートの軸になっていたイラストで紡がれるエンディングへのお話。その中で出てくる「物事には120%で取り組むべきだが、どんなにがんばっても自分では100%が限界。あとの20%は仲間だ」というところが、まさにこのルート、いやこの作品そのものを体現しているようで、総括するにふさわしいシナリオだったように思います。


瑞羽は唯一の年上ヒロイン、かつ幼なじみ的な扱いですね。フィギアスケートというあまり題材とすると無いようなところを突いてきました。中学編からわりと尺は多めに取られており、この頃から付き合い始める早い展開。残念ながらシーンはないですけどね!
学園編からアフター編にかけては、アリサとの交流や怪我を乗り越えた先の試行錯誤が中心に描かれていきます。ベスリールートの後にやったので、ベスリーがちゃっかり帰って来てるのが、このルートだけで見ると描写不足甚だしく感じましたがそれは置いといて(このルートに限ったことではないか)。主人公はこのルートでは、リハビリについて調べたり、瑞羽を支えるためにもと栄養分野に進んでいきます。選択肢を経て、ルート毎に進路が異なるのは面白いですよね。
このルートのメインはラストのオリンピックにある、、、はずなんですが果たして。アリサに対抗するために、新しい試みや伏線になっていたトライカップの演技をさらにパワーアップさせて、そしてチームミズハで成し遂げる!というエンディングに向かう加速は楽しかったです。ただ金メダル取りました、めでたし~の終わり方がどうも納得できない。アリサはどこ行ったの?? 後日談も数年後と一気に開きすぎて、どうもハイライトを見てるようで、ただでさえあまり好きではないキャラクターだったので、ストーリーまで好きになれないのは辛いですね…


「あたしが出来ることを、先輩にはできないこともある。先輩が出来ることを、あたしにはできないこともある。でも、それでいいじゃん。お互いが補い合って、支え合うことができるから、一緒に居て楽しいんだ。二人で出来ることは、楽しみながらやればいい。二人とも出来ないことは、二人で頭抱えよう。そしたらそれが楽しいに変わるかもしんない」
これは中学編後半で、雛多が告白の際に言った台詞ですね。雛多というヒロインは、他のヒロインと違う雰囲気ながら、その内に秘める想いは人一倍。キャラクターとしてみると、合わないかなとも思いましたが、学園編の飼育部での絡みやアフター編での夢の話など、まさに冒頭の告白シーンでの台詞が随所に活きます。ルートで見ると、アフター編だけかなり話が飛んでいたり、動物とアクセサリーの関係の結び付けが少々強引に感じたりしましたが、まさにDreamy Dreamy、夢とそれに向かって一緒に歩を進めていく構成は個別ルートの中では一番好きかもしれません。そこに雛多の強さを見出だせれば、これほど真っ直ぐな青春モノは無いかもしれませんね。


椛と主人公の距離感は最初から最後まで絶妙だったなと思います。椛は舞台に憧れを持つ女の子として中学生からのお付き合いとなります。学園編での演劇部での榊との絡みや青春モノとしての側面は、ほっこりする場面や時に涙する場面を散りばめた王道ではあるけれど、きちんと次に繋がるお話だったように感じます。アフター編への橋渡しとして、脚本をメインにしていく方向性、東京への大学進学と続きますが、わりとポンポンと進んだ印象はあります。幌路に帰ってきても仕事はしながら舞台への夢は…というのがアフターの流れですね。青春の再来ともいう感じでワクワクする心中があります。トラブルなんかも少しはありますが、ラストのエンディングに向けてハッピーエンドというこれまた王道ではありますが、椛の明るさとかわいさは唯一無二であり、不快さはまったく感じられません。ストーリーや椛というヒロインを取っても、各個別ルートの中では1番好きかもしれません。台本をイメージしたエンドロールはかなり好きです。


義妹の恋人こと雪月は、最初からテーマがお菓子ということで、こちらも料理部でのスイーツ作りが軸になっていきます。雪月のがんばり屋さんの所が出ておりほっこりする感じですね。アフターへの繋ぎもスムーズですが、そのアフター編が社会人になってからという少し間が空いてるのが心残り。その間の描写が少しあると良かったような気がします。またそのアフターもローマに舞台が移ったものの、べスリールートとは違い特に掘り下げもなく、もったいないなと思います。ただこのルートの肝は雪月自身にあるわけで、それを主人公が支えていくのは印象的でした。ルートを通して、義妹というエロゲ王道設定を重すぎず軽すぎず扱っていたさじ加減は好感が持てます。キャラクターも良かっただけにルートでの各話題への肉付けがもっとなされていると、さらに世界観へ入り込めたかなと思いました。


全体通して見ると、前作以上にひとりひとりのストーリーが長い尺で取られており、その中できちんと必要な描写が適度になされているので、プレイ時間の長い作品にありがちな"だれる"ということがなく、想像以上にサクサクできました。シリアスもなく、どのルートも楽しくできたエロゲらしいエロゲだと感じました。

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