4Dさんの「アマツキツネは夜空をかける(18禁版)」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

正統派というか、良くも悪くも「あの頃」の伝奇。という訳で回りくどい物言いやどこかで見た展開も多く、イライラさせられることもしばしば。絵もはっきり言って上手ではないし、CGモードも音量調整もないという全くやる気のないシステム。ついでに誤字脱字も多い…とまあ悪いとこばかりに思えるけど、しかしそれでも個人的に準良作な75点を付けた。その理由は文章に情熱が感じられたから。長い時間をかけて練り上げた空想を、魂込めて書いたんだってのが判ったから。そして単純に面白かったから。これだけの内容で合計DL数19(配布三年経過)とか埋もれてるなあと思った。ネタバレは後半から
いきなりなんだけど、この作品を心から楽しむにはある程度プロレス的な姿勢で臨む必要がある気がする。
「判っちゃいるけどそこをあえてノってやる」みたいな感じの。
極端すぎる例かもしれないけど、ひぐらしとかそんなところがあったよね。
恥ずかしいバトルとか恥ずかしいキメ台詞(?)とか出てくる度に
「あ~あwまーたやっちゃったかww」みたいな気持ちにさせられる訳。
でもそういう時ってさ、なんだかんだで俺はニコニコしてたんだよね。
「しょうがねえなあーwもうなんかすっげ楽しそうに書いてるし、俺もノってやるよ!!」みたいなさ。

冷めた言い方すりゃ「同人だししょうがない」とかそういう言い方になっちゃうんだろうけど。
でも俺を含め今時わざわざ同人ノベルを選んで楽しんでるような人達は
皆そういう寛容さというか、一緒になって楽しんであげる姿勢みたいなもんを
ある程度持ってるんじゃないかな、という気がするんだよ。もちろん好き嫌いや限度ってのがあるにせよ、ね。
勝手な思い込みかもしれないけどさ。

何が言いたいかというと、この作品、商業と同じ目線で見るとまず大した評価はされないと思う。
一言で述べている通り、文章以外はホント駄目。っていうかその文章も結構稚拙な部分がある。
手垢のついたような古いコメディシーンも多いし、バトルが多い作品な割りに
その肝心のバトル描写がかなり微妙というね。

こんなこと書いてると自分でも「なんで俺この作品評価してるんだっけ…」という気になってくるけど
いやでも俺はこの作品、大好きなんだよなあ。
俺の中の冷静な部分が邪魔するせいで「これ最高に面白いよ!」と胸張って言えないんだけど
気持ち的には80点↑つけてもいいくらい好き。



まず背景設定が興味深かった。
陰陽五行や占星術といった東洋の世界観を元として神様や人外、あと妖術とかも出てくるんだけど
ぶっちゃけかなりこじらせてたね。長い年月をかけて頭ん中でこねくり回したんだってのが判る。
何が起こっても不思議ではない街、という部分についても上手く考えてあった。
よくある「なんでこんだけ騒いでるのに警察こねーの」みたいな常識的な突っ込みを入れずに済むという。
ルートによってはスケールが大きすぎる話になるんだけど、この踏み込んではいけない領域というか
世界に飲まれてしまいそうな感覚には高揚させられるものがあったよ。

個性的すぎるキャラクターも魅力的。
間違いなく主人公より人気出るだろうなという男友達をはじめ、どいつもこいつも俺様気質でクセだらけ。
自身の行動目的のためにご都合主義的展開を平気で握りつぶしてくるようなやつらで
例え友人としても、よしんば恋人となったしても全く信用できない感がある。
でもだからこそ魅力的に思えた。何もかも自分の思い通りに動くような友達なんてつまらないもんね。
意思を持った一人の人間として、たぶん最も人気出ないであろう姉さんも含めて皆好きになれたよ。

ストーリー。
言ってしまえばありがちな主人公の過去探しタイプなんだけど、このしっかりとした背景設定と
どう動くのか全く読めない友人達のおかげで常に興味を惹き続けてくれた。
15時間オーバーのテキスト量があるんだけど、ルートごとに物語の方向性も大きく変わるし
読んでて飽きを感じることはなかったなあ。
いや、実は正直に言うとプレイ開始後1時間くらいは「うわ外したなこれ」って思っていたんだよ。
でもまさかカモフラだとは、狙ってやってるつまらなさだとは思わなかった。やられたね。

そしてこれが一番大きかった点。
情熱。

まあ自分も15年以上商業同人一般18禁問わず色々読んできたし
その経験の上で言うんだけど、本当に楽しんで物語を書いてるんだってのが判る。
気になったのでHP見に行って調べてみたけど、制作に5年前後かけてるみたい。
なるほどこのテキスト量にも納得できる。
あ、でも別に物量が凄いから情熱的だ、なんて言ってる訳じゃなくて、
なんかねえ…読んでて、本気が伝わってくるんだよ。稚拙な部分すらも含めてね。

持論なんだけど、人の気持ちってのは割かし簡単に伝染するものだと思ってる。
イライラしてる人の話は聞いててイライラしてくるだろうし、楽しそうに話すやつの話は聞いてて楽しくなる。
そしてそういう感情ってのは、例え文字を介してでも伝わるもんだと俺は思うんだよ。
冒頭に挙げたひぐらしは本当に判りやすい例でさ。
ありゃあどんな形であれ本気の本気で楽しんでやってたのが嫌でも判るからねw
だからなんだかんだでひぐらしは愛される作品になったんだと思うよ。
そしてそう考えればうみねこが愛されなかった理由も判る。

で、この作品。
「売れるとか売れないとかどうでもいい、面白い話考えたからとにかく俺の話を聞いてくれェー!!!!」と
言わんばかりの真っ正直さがある。
商業はもちろん、同人でもそんな作品には中々出会えないものだと思うんだよ。
こんなのもう、読む側としても自然と真正面を向いてしまうというかさ。

これだけ前置き並べてやっと言える。
上手とか下手とかそういうのとは別の次元で「この物語が好きになっちゃった」んだよね俺は。
そして好きなやつが面白いこと喋ってるんだから、そりゃもう楽しくて楽しくてしょうがなかったよ。

だからこそ一歩引いて冷静に見ようとする俺もいるんだけども。
でもまあシナリオ面は間違いなく平均を大きく超えると思う。
しかし駄目なところはホントに駄目なので差っ引いて大体こんなもんだろうという点数にした。俺はすぐに日和る。



とまあ、興味持ってくれる人がいるかどうかは判らないけど、もし気になったら
この作品のスピンオフなフリー短編「神生行路」を試しにやってみるのも良いかと思う。
全三話でその内一話は既にエロスケへ登録されてるみたいだけど、急にトーンが変わるというか
真骨頂は二話、三話からなので一通り読んでみることをお勧めしたいな。
自分もこれ読んで「お、おいなんだよこれ…ハッタリにしても収拾付かないだろ…」というところに惹かれたのが
本作品に手を付けたキッカケだったりする。
ついでに書いとくとフリー界隈だと割りとメジャーな鴉の断音符も結構面白いよ。
でもイミテーションオウガは痕臭が強すぎて個人的にはダメだったな。



ここからはガチガチのネタバレがある、どうでもいい感じの感想。
見たくない人は戻ってね。




















































いやホント最初はマジで「これツマラネーww」って思ってました。
まさか全員人外なのを隠すためのカモフラだったとは。
この作品、ググってもレビュー他前情報の類が一切ないからカンペキに不意を突かれた。
あっ今更だけど一言のDL数ってのはDLsiteの18禁版と全年齢版の合算ね。
とらでのパッケ売りが初売りだったみたいだから実際はもっと売れてるのかも。
それとエロシーン全く使えなかったから別に18禁版選ばなくても良かったような気はした。



自分の心に整理をつけるため、とりあえず各ルートごとの感想を残していこうという所存。

・よぞらルート

最初に迎えることになる、本筋にあたるルート。
主人公とよぞら、あと天狗の来歴や目的が判明する感じ。
プレイ最中は数々の謎が明かされるおかげで結構楽しかったんだけど
他のルートまで全部やってから振り返ってみると、それ以外には特徴がないルート。
というかぶっちゃけ他のドグサレどもと比べてよぞらのキャラが薄すぎるんだよね。
物語の核が如く扱われてたクロスブレッドについても特に掘り下げられていた訳ではないし、
ネコマタも意味ありげな登場しといてその後は全く出番ないし…

強いて言うならたくさんセックスしまくった恋人が自分の死後他の男とくっついて
その男との子孫を残していた辺りがほんのちょっと興奮したかな。
しかも現世では彼女と瓜二つなその子孫と恋に落ちるとかエロくてよろしい。
好きだったあの人の子供に恋をするって、確かなんたらコンプレックスって名称があった気がするけど忘れた。
何にしろ倒錯的で良いですね。興奮しますね。
あっ、あとジジイの反応も可愛いかった。ジジババがいい味出してる作品は面白い物が多いね。



・姉さんルート
超理不尽な姉。この理不尽さが実に姉らしくて良い。姉すぎるマジで。
ただ嫌われそうなキャラだよなあと思う。理不尽&暴力&思い込み強すぎの三重苦。
俺自身、例えコメディだとしても暴力ヒロインってのはうっとうしくて大嫌いなんだけど
しかしそれを踏まえても「これこそが女」という感じのキャラクターが強烈で、嫌いになれなかった。
世の女性には大変申し訳ない言い草だけどもw
エロゲーに出てくる女は躾や聞き分けが良すぎるからね。
夜空もそうだけど下手に操守ったりせずパパっと思考を切り替える辺りにリアリティがある。

後述のつかさルートと同じく物語的には神隠し事件(という名の身から出た錆)をメインにしてるので
主人公は断罪される側として描かれている。
他人のルートでもそうなんだけど、この人は基本的に全力で主人公を殺りにくるw
そしてよぞらが主人公好き好きレベルの格の違いを見せ付け美味しいとこ全部持っていくという…
色々割り食ってるヒロインだよなあと思った。
でもこの人がいないと物語が成り立たない、重要な立ち位置でもあるしなあ。
あの女のタマ取ってきたときだけお許しを頂ける、大変に厳しいお姉さまだった。



・つかさルート
自分の右手を擬人化させて恋愛するルート。
あと心の中に住んでるもう一人の自分とも仲良くなれる。実はツンデレとか言われても全然嬉しくねえw
ビターエンド、グッドエンド共に爽やかで読後感が良かった。
殆どの創作において「人を殺したら必ず報いを受けないとダメ」みたいな
倫理/因果応報という名の強迫観念に囚われた作品って多いと思うんだけどさ。
片方のエンディングでは普通に逃げ切るし、もう片方では人類抹殺までやらかしてるのになんかやたらと爽やか。
俺は良いと思うよこういうの。それが許されるからこそ創作なんだと思うしね。

あとロリ体型生徒会長からの詰問シーンはなんか興奮した。
可愛い顔しやがって、このアマっ…!!みたいな。こいつのルート希望。



・さっちゃんルート
「ちしきをよこせ! おれはかみに なるんだ!」ルート。
マッドサイエンティスト(笑)な話なんだけど、中々どうして真に迫ってるところがある。
実はただのコンプレックスでしたという、その行動理念がかえって説得力あったように思うんだよね。
なのでエンディングでどちら側に転ぼうとも納得がいくものだった。
自分だけの真理を見つける、というとベタな感じがするものだけど
この作品の登場人物は全員何かしら、言うなれば真理みたいなものを得ているしね。
判りやすいつかさとタツヤ、葛藤の果てに到達できる姉さんとさっちゃん。
中々面白い構図になっていたと思うよ。



・タツヤルート
真のヒロインルート。
本作品最高の燃えキャラであり萌えキャラ。俺的に親友ポジなキャラの中でも歴代5本の指に入る。
最後に転校生が来たときコイツが転生して女性化してきたんだったらどうしようそれどんなエロゲなんだろうと思って
めっちゃ期待しただろコノヤロー!!
まあそんな感じで本人の魅力は比類ないものがあるんだけど、シナリオ的には正直微妙。
殆どバトルしてるだけだったからなあ。
プライドを捨てても勝利を狙うとか数々の妖術とか、
結局はタツヤの魅力を語るためだけのルートだったようにしか思えない。
まあ、それはそれで良かったりするけども。



こんなところかな。
キャラクター面と舞台設定含めた物語の面。
この二つにおいては過去の商業名作を含めても見劣りしないと思った。個性を感じる。
天帝・地帝すら不完全な存在であるとか、つかさルートのように全部壊して作り直しとか
突き抜けすぎててかなり面白かったしね。
星踏みの儀式なんかも正直ロマン溢れすぎてて濡れるわ。
宿星を踏んで天に預けた真実の肉体を現世に召喚、か。よー考え付くなこんなの。

ただ、なあ…案外笑えるところもあるコメディシーンはまだしも
バトルでずいぶん損してるよなあと思う。テンポ悪いしとにかくダルい。
殆どが主人公単騎なバトルなのでウンザリとすることもあった。
天文部メンバーとの共同戦線とかもっとあれば面白かったと思うんだけどな。

どうせ語る相手もいねーしと好き放題、思いつきまみれの感想になってしまった。
見返してみたら日記かよって思った。まあいいかw
面白かった作品の感想を書くのは本当に面白いもんだ。

今夏予定らしいウルフズエデンも期待してるよ。
俺狐とか鳥とか狼とかそういう畜生大好きなんだよねw



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