アミーゴさんの「恋×シンアイ彼女」の感想

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精華「星奏ちゃんクソビッチなんで私にしませんか」
 なんて展開期待してたんですがなんで精華ルート無いんですかね、この作品。あそこまで行って何も手を出さずに居るとかただの精神的EDですよこいつ。エロゲ主人公としてあるまじき覇気の無さ。今からでも遅くないんで精華の告白を受け入れる分岐を作って欲しいところです。


閑話休題


 毀誉褒貶が入り乱れる本作のメインヒロイン姫野星奏に私が覚えた感情は哀れみでした。
 彼女の不幸は本当に信じるべき人とそうでない人の見分けがつかなかった事にあります。そしてその見分けがつかなかった故に誤った選択を繰り返し自分の人生の大きく損なう事になりました。
 彼女が主人公國見洸太郎の元を離れる原因になったバンド『グロリアスデイズ』。彼女達に出会ってしまった事が姫野星奏の不幸の始まりにして最大の原因だったと言えるでしょう。
 星奏が心ならずも黙って洸太郎の元を去っていった原因は全てグロリアスデイズに起因しており、その事は他ならぬグロリアスデイズのメンバー自身の口から語られています。
一度目は星奏に洸太郎からの手紙の返事を出す事を辞めさせ結果的に。二度目は自分たちと洸太郎とどちらを取るのかと迫り。三度目は所属事務所の借金の保証人になってしまい窮していたグロリアスデイズを救うために自分の意志で。
 どれも仕方ないとまでは言えないものの、一見情状酌量の余地があるように思えます。実際作中ではそのような書かれ方をしています。彼女たちもまた被害者である、と。

 ですが、実際にはグロリアスデイズという存在は星奏と洸太郎にとってもっと禍々しい何かであるように思えて仕方ありません。

 違和感を覚えた方も居るのではないでしょうか。何故、年端もいかないバンドメンバーが所属事務所の借金の保証人にならなければいけないのか、と。

 事務所と借金についてはいくつかの視点から語られています。

 まずは友人である涼介の口から

>>「あのバンド解散したんだ」
>>「事務所が多額の負債を抱えたあげく」

しょっぱなから意味がわかりませんが続いて出版社勤務である奈津子の台詞

>>「グロリアスデイズが所属していたのは今はそうでもないけど、業界にはばをきかせている老舗の事務所や」
>>「広告代理店から、それこそうちらの業界にまで、あらゆるパイプを持っている」

 洸太郎本人も触れています

>>俺が書いたグロリアスデイズの記事は、彼女達のデビューからの軌跡とともに、その凋落まで描かれていた。
>>事務所の倒産と、それによるメンバー達の苦難、そこに暗躍していた芸能界の暗い事情まで書かれていた。

>>彼女はあの後、再び音楽業界に復帰している。
>>そこにはメンバー達が抱えた負債や、複雑な賠償問題に対する保証が存在したらしい。


当事者であるグロリアスデイズのメンバー吉村の口からも事務所と自分たちが背負った借金について語られています。

>>「私たち、事務所の負債の保証人になっていて……」
>>「だけど、あんなたくさんのお金、誰にも払えなくて、途方にくれてた」
>>「幸い星奏は違ったけど、彼女、ずっと気にしてた」
>>「そのうちに、メンバーの一人が身体をこわして入院して」
>>「自殺未遂をしたの」


 ……なんなんですかね、これ。
 言ってる事がバラバラで事務所が倒産したのかしてないのかすら良くわかりません。事務所の倒産と言っているわりにはグロリアスデイズの事務所からのクレームで洸太郎は会社を辞めさせられていますし。
 また、吉村の言っている事も大分おかしいです。そもそもなんで保証人になってるんだって話はさておき、事務所の保証人になったからと言っていきなり彼女達がその借金を代わりに払う必要が出てくるわけがありません。保証人なら催告の抗弁権がありますから、債務者である事務所に支払い能力がないと判断された場合でないと支払い義務が生じません。
 では事務所が破産して借金の支払い能力が無いのかというと奈津子の台詞から現在でもそれなりの規模で経営を続けている事が伺えます。


 誰かが嘘を吐いているか間違った情報を口にしていると考えて良さそうです。
 ではどの情報が正しくてどの情報が間違っているのかという事ですが、一番はっきりしているのは実際に事務所からの圧力で洸太郎が会社を辞めさせられたという事です。この事から事務所は倒産はしておらず現在でも奈津子の言うようにそれなりの力を持った会社として存在していると見て良いと思います。
 そう考えると吉村の台詞は限りなく胡散臭くなってしまいます。
 事務所が存続している以上借金の支払い義務が彼女達に発生したとは考えにくく、そこから派生する入院だの自殺未遂だのの話も俄然怪しくなってきます。というかはっきり言って、これらも全て星奏をグロリアスデイズに縛り付ける為の狂言だったと考えた方がしっくり来るのではないでしょうか。

 先にも述べましたが所属ミュージシャン、それも下手をすれば未成年者を事務所が借金の保証人にするという時点でかなり違和感があります。グロリアスデイズ側にデメリットが大きすぎますし事務所側にしてもこんな事やってもしバラされでもしたらそれだけで醜聞になります。経営にも悪影響が出てくるでしょう。
 まあ、保証人の話自体が嘘でないなら、もしかしたら星奏以外のグロリアスデイズのメンバーは事務所経営者の娘達なのかもしれません。これならまだ話はわかります。「私たち、事務所の負債の保証人になっていて……」という台詞も「私たち(の親が)、事務所の負債の保証人になっていて……」という事なのかもしれません。


 グロリアスデイズのメンバーは星奏と同様の被害者、搾取される側として語られていましたが実際には星奏を事務所と共に搾取する側に回っていたのだと思います。
 幼い頃から作曲担当に過ぎない星奏を常に身近におき、転校続きでなかなか友人の出来なかった星奏の心に漬け込みその才能を食い物にしてきたのでしょう。星奏に曲を作り続けさせる為に恫喝し、泣き落とし、同情を買い、と様々な手を尽くしてきたのでしょう。彼女達の語る不審点だらけの説明はそういう考えに至るに十分な説得力を持っています。
 最後には星奏がグロリアスデイズが背負った筈の借金を返済したかのような描写があります。作曲担当という事で他のグロリアスデイズのメンバーより遥かに高額な報酬を得ている筈の星奏から事務所とグロリアスデイズがグルになってその金をむしり取る事に成功したのかもしれません。

 恐らくは、そんな本当にあるかどうかも定かではないグロリアスデイズの借金の為に星奏は三度黙って洸太郎の元から去って行きました。
 洸太郎に迷惑をかけない為と言えば聞こえは良いですが結局は洸太郎を信頼し切れなかったに過ぎなかったのでしょう。もし勇気を持って洸太郎に事情を話していればと思わずにはいられません。しかしそれは彼女の境遇を思えば無理な話だったのでしょう。
 一緒に過ごしてきた時間故か洸太郎ではなくグロリアスデイズのメンバーを信頼し選んでしまった事は星奏の不幸ではありましたが責められる事ではありません。「音楽に寝取られる」と形容される本作ですが、洸太郎から星奏を寝とったのは音楽ではなくグロリアスデイズであり、愛情より友情を選んだに過ぎないのではないでしょうか。哀れにも偽りだらけの友情を。



 とまあ、色々語ってきましたがこの辺単に設定がガバガバなだけなんでしょうけどね。
 ライターが突然結末を思いつきで変えたなんて言っていたらしいですし、途中で方向転換したから至るところに齟齬が出てしまったという単純な話なんだと思います。正直星奏がビッチだとかビッチじゃないとかそれ以前の問題としてクオリティ自体が低すぎるんですよ。

 星奏シナリオの結末にのみ注目が集まり、「音楽に寝取られる」という言葉だけが一人歩きした状況はシナリオライターからすればむしろ行幸だったのかもしれません。お陰でガバガバ設定のガバガバシナリオだという事が注目されずに済みましたから。

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