Planadorさんの「CyberRebeat -The Fifth Domain of Warfare-」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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優れたハッカーほど情報に敏感だからね――ミサのこの言葉が示す通りのスピーディな物語。2016年10月に出た新ブランドRASKによる「Re:LieF」を手掛けるメインライターえある氏によるフリーゲーム。IT関係に全力で疎い自分でも楽しめたのは、「わけわかんないけどめちゃ熱い」という勢いあってのもの。Re:LieFとは毛色は違いますが、同作購入者にもやってもらいたい作品です。長文前半は若干ネタバレありで雑感。
 元々は1000円くらいで出していた同人ゲーム。その後ver.2.00にバージョンアップした際に2ndOPが新たに入るなどと同時にフリー化されています。
 このゲームそのものは、Re:LieF発表前から知ってたんですよ。なんですけど積んじゃってて、Re:LieF発売前にやるかと思ってプレイ。この作品の出来とRe:LieFのOPを見て向こうもほぼ購入確定したというのは置いといて。
 で、C89でこれの設定資料集を未プレイなのに購入するという特攻っぷり。結果論から言えば大正解でした。これがなけりゃこの感想書けない。本編が普通に面白かったというのも込みで。


 バイト先の24時間営業のピザ屋が蒸発した。もう一つのバイト先のネットカフェへと友人を紹介する。
 同時に二年前の個人情報流出事件を追う主人公。しかし担当の警部が倒れ捜査が止まる中、外部嘱託で記事を書く出版社の上司から持ち出し厳禁の内部による参考資料をもらう。
 しかし翌日、その出版社が火事で焼け落ち、上司と編集長が死亡するのであった――。


 ――己のあずかり知らぬことであれ、人はある行為による結果の責任から逃れられない。それを業と呼ぶ。
 この言葉が全てを物語る本作。時系列的には、二年前の第二部→現在の第一部→二年後の第三部となりますが、第一部で展開し、第二部で話を広げ、第三部で一気に収束させるというシナリオはお見事でした。正に「序破急」の見本のような作品。
 場面転換が幾つか配置されてますが、それらの緩急の付け方もうまいんですよね。(色々な意味で)熱が籠る部分はとにかくスピーディー。日常パートはゆったりと。だけどそのつなぎ目は違和感なく。ここら編が出来てるのはほんと見事。
 あ、けど正直に言ってしまうと第一部はわりとおもんないです。というかここでだいぶキブアップしてる人も多いと思うのでかなり勿体ない。細かいことでいいからもう少し動きがあるとよかったんじゃないかなとは思います。

 シュタゲと展開や雰囲気が似ているとは他の方の感想にもありますが、自分はやってないのでそっち方面の言及は出来ず。
 ともあれやってることはとにかくハッキングです。ですが面白いのは、CTFから世界規模の戦争まで、ハッキングの多様性を各々描いていること。ただ、如何せん語ろうと思うとネタバレにしかならず。
 強いて特筆すべきは、割と文体がノベルゲーム的なものではなく、一般的な小説に近いことでしょうか。個人的にはそういうの好きですが、多分得意じゃない人は慣れないかなと。


 まぁそんなハッキングなどIT系の話ですが、正直システム面は微妙です。設定変更できるのがBGMの音量とテキストスピードだけで、セーブは20個。
 そして何よりバックログ画面があまりにも暗い。背景の黒画面と同化してとてもじゃないですが見え辛いです。あと何故かバックログでは誰が発言してるのかが全くわからなくなるので、「誰が」喋ったことかを聞き逃すとロードとかで戻らざるを得なくなります。それとエンターキーがクリック扱いにならない(マウスの左クリックでしか物語を進められない)のもちょっと。
 設定資料集曰く、「ノベルゲーム制作の際自作エンジンは一つの夢だ」とは言ってますが、他の製作者の皆さんどうなんですかね? 使い勝手が悪いということは製作者も認められてる部分ではありますが、やはり物語を快適に読み進められることがコンフィグにとって一番大事だと個人的に思っているので、そっちを優先させてほしかったなと。

 それと別個で不満点を述べるとすると、本名とHNを使い分けるのが当たり前な分野の故仕方ないのだが、如何せん呼称が安定せずに混乱する。初めの内はほんとにメモ取らないとわからなくなります。
 あと個人的にはピザ屋と出版社はもうちょっと本筋に絡めて欲しかった。特に出版社、死んだ人間の内誰か(といっても全員)がハッカーだったとか言ってもいいんじゃないの。出落ち要員だったか、実はピザ屋は国家機関の手先だったんだよななんだってーぐらいの衝撃があったらよかったなと。


 まぁそんな感じで言ってますがそれ以外はほんとよかったです。というより専門的話が疎すぎてそれらの話を組み込みながら喋れないだけともいう。設定に粗があるとか言われても正直自分にはわからない。
 というわけでそれも含めたストーリー解説は他の人に任せた! 浅薄な知識が知ったかぶりするよりはずっとその方がいい。
 ともあれ、「ハッキング」「陰謀説」「俺TUEEEEE」「燃えゲー」等の単語に反応する方には是非ともやってもらいたいところです。



以下ネタバレあり、今回は一言キャラ感想で。あと本文中は基本的に全員本名呼び。




春原舞/ミサ/Prey'r/"Hacker Killer"
 みさきの血の繋がらない妹。第三部では主人公です。

 設定資料集ではメインヒロイン兼準主人公とありますが、メイン主人公こそこの子ですよね。血の繋がらない姉(と後に淡い恋慕を抱く幼馴染も)を探すとかどう考えてもメイン張ってる。

 ただ、個人的にはどこで舞=ミサだと気付かせるようにしてたのかが今一不明瞭だったなと。気持ち第二部に於けるヘッドホンを司からもらった一枚絵でだとは思うんですけど、如何せん文章上では「こうして舞はミサとなった」みたいな記述がなく、且つ第二部から第三部に移った時にまた何事もなかったかのようにミサ視点になるので、そこの明確な何かがほしかったなと。
 あと強いて言うなら第三部では再び眼鏡かけてほしかった。その方が司とみさきを取り戻すみたいな意思表明が表れたように思うの。
 ともあれ、自分で事態を打開していくヒロイン兼主人公の姿は物語の原動力でしたし、第一部、第二部、第三部と各々違っている彼女がどのようにして物語に決着をつけていくか、そのために様々な顔を見せる彼女の活躍は間違いなく物語を盛り上げるために必要不可欠なものだったでしょう。

 とりあえず血の繋がりない妹萌え、わかる。まぁこの作品に置いてはぶっちゃけ司にとってのヒロインはみさきだとは思うんだけど。


和泉香奈
 司のバイト仲間。司の大学の同級生だった小野寺綾の従姉妹。
 第一部と第三部はとにかくシナリオ上に於けるムードメーカー役。特に第一部はヒロの言動がうざったく感じたのを彼女がいたから持ちこたえさせられた人も多かったのではないでしょうか。

 そういう前提に於いて、ある種ギャルゲーみたいな記号的キャラでもあるように感じます。第一部最初から中盤にかけての物語導入部が、ともすればそういったギャルゲー作品としても作れるから余計に。だけどそういう作品だったとしてもメインヒロインは張れないキャラ、それが香奈の印象。
 個人的にはもう少しメイド以外としての彼女の活躍を見てみたかったように思います。エピローグ後の取引交渉とか香奈の親族とかの力が必要なわけで、そういうの。


坂上鏡子
 ネットカフェリトルガーデン店主。しかしその実態は警察庁のサイバー犯罪取締課の刑事なのだよななんだってー。

 なんだかんだ言ってリトルガーデンをこの人が開けていてくれなかったら、物語が始まるどころか因果すら一切解けずに終わっていたという点では最大の功労者でしょう。それが捜査の一環で強引に開けていたというものだから余計すごい。
 そして理由が司と舞を見守るためだったというのがほんと情に溢れた人物です。立場も相まって一番敵に回したくない人だなぁ……その分味方に付くと実に心強い人です。


リリー/Lily/ライラ・L・リンドラー
 LOB所属。GigLig(本名ファインベルク・K・リンドラー)の実妹。

 個人的には、何故か作中あまり印象に残んないキャラでした。勿論重要人物なんですけどね! ただまぁ他の面子が実に濃いからなぁ。
 そういや司やみさき、綾と同い年なんですねこの人。同い年組だけでの何かやるとかいうのがあったら楽しそうだなとは。
 MESのVultureとの交流は、おまけシナリオだか何かの形で見てみたかったところ。


小野寺綾/Aya
 ヒロとみさきの大学級友。

 シナリオ上では特段活躍、という気もしませんでしたが、なんだかんだで彼女がいなければ成し遂げられなかったことって多いですよね。
 勿論鏡子とまひろがいてこその場面も多かったとは思いますが、第二部の最初のきっかけから第三部の舞救出など、彼女がターニングポイントになる場面が多かったなと。
個人的にはエピローグ後同い年のリリーとどんな話をしたのかが気になるところです。

 とりあえず大学生綾はリアルに彼女にしたいやーつ。サバサバしてて交友関係も広くてだけどしっかり芯が通ってるとか最高やん。


中沢まひろ
 ちっこい大学教授。鏡子はかつての級友。

 綾でも同じこと言ってますが、表立った活躍、みたいなのはそんななかったように思うんですよね。とはいえ、バックではかなり強い働きをしてた、そんなキャラだよね②。
 設定資料集では、司のIQがあと100高ければ脈が出てくるサブヒロイン枠、とあるんですけどあんまそうは思わないなぁ。というより司の性格的に年上は似合わなさそうだ。


小白河葵
 第三部で登場。
 彼女のお陰ですよね、第三部が動き出したのは。他に比べれば出演は少ないですが、再び舞を立ち上がらせるという重要な立ち位置は、それまで一切面識もなく、かといって他人とも呼べるような間柄ではなくなっていた彼女だからこそできたことだと思います。
 まぁ香奈同様ギャルゲーみたいな記号的キャラというのは葵にも当てはまるかなぁと。もう少し生かしようがあったようにも思いますが、まぁ構成上第三部だけで勝負するしかなく、且つあれ以上出番も増やしようがなかったからこれはもうしょうがない。

 ところで重病はどうなったんだっけ。自分が読み逃しただけ?


サラ・ウィンチェスター/Phantom/Warlock
 人の不幸に対する無関心さ、又はそれらにたいしての諦めの感情を抱く彼女。生い立ちを考えれば、ああなるのも仕方がなかったかなとは思います。

 ただ、如何せん立ち絵として出てきたのが半端じゃなく少なくてキャラとして印象に残らない。折角立ち絵あって一章のあそこだけしか使わないとか勿体ないですよと。
 それも含めて、最終決戦での相手の様子か、サラの当時の胸中をサラ視点で見たかったなぁと。別にあの後の生死は不明という設定資料集通りでいいんだからさ。


天宮みさき/ミサ/Ness
 司の幼馴染。本来のミサはこっちですね。

 しかしまさかの幼馴染ゲーだとは思わなかった。司もみさきも第三部ラストまで殆ど退場ですが、司が主人公と考えた場合、実質的なヒロインは彼女なんじゃないだろうか。舞が主人公だとしてもみさきがヒロインというのは揺るがないけど。
 彼女は第二部の活躍が目覚ましいですね。InvisibleとNessとPhantomの三人サブマリンは誰が欠けても出来ないことであったわけで、Phantomがあれだからまず叶わないとはいえ、もっと潜水艦の活躍を見てみたかった感があります。

 あとエピローグは絶対司とデキてる。ともすればお腹の中にもデキてる。だってあれだけのことがあった後の幼馴染との再会で、基よりハッキングも他には真似できないほどの阿吽の呼吸と化してるし、みさきは司のこと(親友枠ではあるだろうけど)かなり信頼してて、かつ他の知り合いにはほぼ誰にも会えてないんだし、ねぇ?


真波司/吉野ヒロ/Hero/Invisible/Warlock
 第一部と第二部に於ける主人公。個人的には物語全体で見た時は裏主人公かなとは思います。

 最初のちゃらんぽらんな性格は主人公の○○を隠しておきたいがため……というのは割と常套手段ですが、これがうまく書けてたかどうかと言われると正直微妙かなと。ここが面白くかけてれば離脱する人減ったんじゃないかなぁとは思います。

 よくある展開として、全く主人公が別なヒーローモノの続編として、前作主人公は元気なんだけど別に主人公を立てるって奴。それで基本はそこでの主人公が色々やるんだけど、敗走した敵を前作主人公が「あーあ、かったりぃ」とか言いながら描写はないけど潰してくれるような。
 第三部ではそんな展開です。とはいえ、敗走相手とかではなく普通に因縁の相手に対してガチンコやってますから、第二部ラストといいそういう意味では実においしいところ持ってったよなぁ。

 ともあれ、視点もあったわけだし、もう少し掘り下げが効くキャラだったとは思います。第二部に於いて交通事故で天涯孤独になってからのみさきや舞との交流描くとかさ。視覚的には第一部の舞との一枚絵以外にもどこかで彼の顔が入った絵が見たかった。



総評
 正直、CTFに於ける二年前の因縁、もといLOBとMESに食い込む三つ巴のバトルは何やってるのか門外漢にはほんとわからない。だけど何か巨悪みたいなのに単身乗り込むような、そんな熱さがすごい。
 この作品のすごいとこはそこなのだ。とにかく熱い。だけどなにやってんのかわからない。正に第二部に於ける、掲示板でのオタク用語使いながら実況する聴衆そのものである。
 とはいえ、解説もされているので、それで理解しきれない自分が単純に頭が弱いだけなのだろう……。

 まぁ、別に恋愛が主題どころか一切ない作品ですから、個人的にはもう少し男率高くてもよかったとは思いますけどね。適当に上げるとするならリリー、まひろ、綾辺りなんかか。
 勿論、女キャラ率が高い方が見栄えがいいですし、香奈みたいに必然性があるキャラもいるので一概には言えませんが、本来はハッキングって男の方が多い業界であると思うので一人二人は男でよかったかなぁとは。

 あとなんかあったかな……。ハッキング関係は語るの無理だし、シナリオはハッキング踏まえないと語れないし、その他要素は大体語ったし、もうないね、うん。
 とにかく今月Re:LieF購入予定の人は折角だから事前準備としてやってね! はい散った散った!



追記
 「フリーゲームだからこの点数」という付け方されてる方をちょくちょく見かけますが、元々は有償配布の同人作品ではあったので、この作品に対してはあまりそういう点の付け方は適当ではないと考えます。
 どうせ自分はフリーでも有償でも点の付け方はそれほど変わらず、プレイして単純にこの点数ではありますが、なんとなくフリーだからこの点、という記述が目立ったように思うので追記に。


追記Ⅱ
 シナリオや舞台設定に関しては話さないとは言いましたが、KARMAに関してだけでも。どっちかっつうと倫理観的方面で。

 犯罪犯せば、日本では死刑制度がありますが、全世界的に見れば死刑制度は人権的観点からは減少傾向にありますよね。
 ちなみに死刑制度は自分は中立です、むやみやたらに殺すのはどうかとも思うし被害者心情としてもわかるし。存廃決めるならとにかくがっつり議論した上で決めるならいいんじゃないですか、というのは置いておいて。

 で、問題は、KARMAは開発したNSQによる「私刑」なんですよね。当然これが明るみに出れば全世界を揺るがす大問題になるわけです(Karmaは秘密であることに意味があると本文中にありましたが、実態が知られれば間違いなく即NSQの倫理的問題に直結し、米軍なども責任を問われることになります)。現に当時のLOBリーダーであったファインベルク・K・リンドラー(GigLig)が何らかの手法で“当局に消されて”います。
 その上で、視覚や聴覚に対する非殺傷兵器そのものは既に実用化されているわけで、KARMAみたいなのが出てこないとも限らないよなぁとは。しかも、それを仮に個人で作成したとしても、バレるまでは確かにやりたい放題できますけど、ばれたらもう大変です。

 ひとまず、本編では一切書かれてませんが、『アメリカ政府付属機関による独断的殺人』と世界的に新聞の一面記事飾るくらいには大問題になったと思います。で、今後最低十年くらいは国家的私刑として常々語られることにはなったのかなと。
 個人的に、エピローグでそれを見たかったと思う反面、書いても蛇足になるだけな気もするので、まぁこんなもんかなとは思います。でも一行でいいからどうなったかは書いて欲しかったよね。


追記Ⅲ
 読めばわかると思いますが、ライター一緒なだけで全然Re:LieFには関係ない作品じゃんと。そもそもえある氏のツイッター曰く、Re:LieFそのものが別にえある氏持ち込み企画ではないわけで、じゃぁなんでそんなにRe:LieFとセットで推すのかと。
 単純な話です、話題性が豊富な方がいいからです。特にRe:LieFは、ライター陣が他作品での経験がパッと見ではあまりなく(えある氏はこれのみ、平乃ひら氏は別途一作メイン一作サブ参加、とべあきら氏はRe:LieFが初)、その中でも特にライター陣の中では一番のメインっぽく、且つフリーゲームで手を出しやすい本作はポンと推すのに向いてるかな、と。
 ともかく、フリー配布のゲームの中でも割と埋もれてる感のある本作ですが、Re:LieF発売を機に盛り上がればいいなぁと。面白くてフリー配布のとかみんなやらないのは勿体ないやん……。
 いい作品は別に商業や18禁に限った話ではない、というのはここまで読んでる方だと大体おわかりだと思いますが、せめて商業しかやらない人に同人作品も見てもらいたいと思う、いらない老婆心でした、はい。
新品/中古アダルトPCゲーム販売 通販ショップの駿河屋

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