比翼れんりさんの「千の刃濤、桃花染の皇姫」の感想

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あはれ、ゆかしき日ノ環よ 沈むこと無く 古えの御伽のように 添い続け 眠れ
大図書館の羊飼いシリーズから3年、Augustの最新作は穢翼のユースティアを彷彿とさせるダークな世界観までも漂う作品となりました。

設定はとてもシンプルで、敵を討つために、その一言で片付けられるほど心情はシンプルではないにしても、そういうストーリーで話は進みます。ユースティアよろしく、話は基本一本道で階段を上りながら核心に近付いていくスタイル。途中、朱璃以外のヒロインを枝分かれして各個別ルートといった、またこれもシンプルな構成ですね。


順番にヒロインを見ていくと、まずは滸。主人公とは近しい間柄ながらも、記憶喪失の一件や朱璃の登場、奉刀会の舵取りという重責に堪えながら、国を取り戻す目的のために先陣を切っていく、そんな立場ですね。資金集めのために、という歌手活動も度々語られていますが、本編に大きく影響してるとも思えないし、正直いらない設定。波奈束風景さんは大図書館でもそうでしたが、冷静(なんだけどほっこりする心がある)お姉さん系が上手いなとは思ってましたが、かわいい系もこなしていたのは面白かったですが、蛇足だったのかなと感じます。
個別ルートは、これはどのルートでもお飾り程度ですが、1シーンのみであとは余談に割かれる、そしてたった数クリックでエンディングとその後の展開が語られる。ひとりのヒロインがというより、すべてのヒロインでラストにたどり着くのが狙いでしょうから、仕方ないのでしょうが、これはとても残念な尺の割き方ですね。滸個別分岐では、槇が実は生きていた、というオチが付きましたが、サブの死をもって主人公(ヒロイン含め)が成長していくというのが、ユースティアでもありましたが、実は生きていた。これはとてもお粗末。滸の過去を惨憺たる描写で語ったわりには、これでは生と死を軽んじて書かれているように見えてもおかしくない。ただそこで、生きていたというのが後々伏線として回収されていくならまだしも、前述のとおり、個別ルートの体を辛うじて為す程度の尺ならそれではひどく無意味。分岐一発目の滸ルートで、共通まで持っていたワクワク感が速くも大きく折られるとは思いませんでした。あくまでもこのあたりも次への布石ということなのでしょうが。


翡翠帝こと奏海は兄に一途な妹らしいキャラですね。ある意味で一番芯のあるヒロインかもしれません。傀儡として作られた存在ながら、その心に秘める想いは大きなものがありました。その小さな身体に込められた力は奏海ルート分岐で爆発的に解放されるわけで、主人公が奏海を救うために侵入した際逆に追いつめられるシーンで魅せた"想い"はゾクゾクするものがありました。ただ小此木や総督の死がわりと何もなかったように扱われたのはマイナスポイント。あれほど大きな壁として立っていたはずなのにね。また奏海というキャラクター、実にストレートだからこそ、わりと受け止めきれない人もいそうです。僕は兄の存在を確認した学園での涙で、すべてを持っていかれてしまいましたけれども。担当されてる声優さんは猫村ゆきさん。お初にお目(耳?)にかかりますね。妹としての子供っぽさ、はたまた翡翠帝としての凛々しさ、それでいて年相応の健気さ。奏海の持つ良さを十二分に引き出す、素晴らしいアシストだったように思います。


エルザは主人公サイドとは敵対する立場のヒロイン。接触を通して自分の"忠義"を見つけていく、ヒロインたちの中では一番変化のあるキャラクターですね。エルザ分岐は父との対立を経て、という所にありますが、やっぱり個別になるとウォーレンや小此木は消えてなくなり、数年後、民主主義が実現されました、というダイジェスト仕様。世界観も余韻も何もありません。また、力を持つ国には相応の力を持って対するという考え方で個別エンディングが迎えられますが、現代社会をそのまま写したようで、こういう結末を入れてしまったのはひどく残念。キャラクターとしての"変化"が好きだっただけに、エルザエンディングはかなり受け入れ難いものでした。声は奏雨さんで、ビジュアル通りのふわふわした印象を感じさせつつも、軍人たる力強さも併せ持った演技をされていたように思います。


エルザ分岐で本流に入ると、一気に話が進みます。小此木の真の目的と想いが明らかになり、共和国とのぶつかり合いによって、それぞれの道へ。古杜音と朱璃ともに主人公は敗走に近い状態で天京を離れるわけですが、ここで一転、皇国の過去へ。


色々なキーピースが散りばめられているのが印象な過去編、そして奥伊瀬野での日々の中で朱璃や主人公の秘密が語られます。新しい登場人物も増え、ストーリーとは違いにぎやかになりました。古杜音分岐あたりでは、呪術中心に話が進み、共和国軍や刻庵、雪花との戦いが主になります。この中で呪術や怪しげな雰囲気のある雪花、ロシェルの腹の内も垣間見えますね。古杜音の元気なキャラクターが終始暗くなりそうな雰囲気を明るく照らしていたのが印象的です。小鳥居夕花さんの起用は正解でしたね。古杜音エンディングは他のエンディングをベースにしながら、明るい未来へ踏み出す心地よいもの。それまでの経過が早足なのは言わずもがなですが、古杜音らしく最後の笑顔ですべてを救われる終わりには満足です。


そして終演。禍魄が元凶であった戦いに全員で立ち向かいます。今までのすべての伏線が回収されるゴールなわけですが。ヒロインたちが的に向かっていく様には胸に熱く去来するものがありましたが、主人公サイドの闘いは終わりのない結末になるかと思いきや復活エンド。ユースティアの引きから考えると、こういう奇跡に着地してほしくはなかった。ハッピーエンドだけが何も正解の終わりではないような気がします。朱璃は年相応の無邪気さと想いの強さ、そんなのが光るセンターヒロイン。遥そらさんのコロコロ変わる表情の演技がバシッとハマっていました。


Augustの強みはやっぱり演出。光と影、立ち絵を上手く使い画面の中で多様に変化させる術、これはどのメーカーからも群を抜いたクオリティです。それと音楽は今回少し挑戦的なところもありましたが、レベルは相変わらず高いですね。

シナリオは明らかにユースティアを意識させていますが、何が正解かは読み手次第でしょうが、個人的には面白いのに嘘はつけないけど、わりと中身はないように思います。ただ格子がありきたりでもそれを肉付けする所にAugustの強さがあったように思いました。

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