amaginoboruさんの「桜哉」の感想

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70桜哉
「人間とアンドロイドの物語」と聞くと、つい陳腐化された展開を想定しますが、本作のアプローチはなかなかに斬新。お約束展開を予想した方にこそオススメしたい作品です。一方で乙女ゲー特有のエッチシーンも見所。非男性向けゆえの独特なエロスを見ることができます。
本作の主題はいうまでもなく「人間とアンドロイドの関係」です。

従来のアンドロイドを用いた作品の多くは、感情を持ったロボットを人として扱い
対等な立場として愛し合うことで、より深い関係を構築していきます。
対して本作は、アンドロイドとして感情を持ったからこそ、人以外の存在として
認めてほしい、人間と区別してほしい、という求め方をしています。
異種族間の恋愛に近い感じでしょうか。

桜哉は人ではない、人に造られた異種族です。そう考えればロボットとして認めて
欲しいという願いは、至極当然のものといえるでしょう。
しかし人に限りなく近い存在だからこそ、つい人として扱うのが正しいと誤認して
しまう。その穴を付いた上手いアプローチだったと思います。
(ED1,2の分岐は特に秀逸ですね。プレイヤーにとっての「普通」を逆手にとった、
巧妙な選択肢でした。)



そんな桜哉の心情を最も理解していたのが、ライバルキャラである榛でした。

「ED6の末路は、ヒロインと桜哉にとっては悲劇。榛は桜哉を殺した憎き相手。」
と思われた方は桜哉の印象を、ヒロインと同じ「犬」と解釈したのではないでしょうか。

ですが人間と犬の関係は対等ではありません。また犬は人間に必要とされなくとも、
独立独歩で生きようと努力します。種の生存本能を持っていますから。
対して桜哉(≒アンドロイド)は、ヒロイン(≒人)と対等の関係を望みますし、
また彼女の恋人になれないのなら、その命を必要としません。

桜哉の属性は犬ではなく、アンドロイドです。

榛は恋に敗れた桜哉の第2希望、つまりヒロインの財産となる道を幇助しました。
自らの手で親友(恋敵)を消滅させる罪悪感、などというエゴも見せません。
ヒロインの望みを割り込ませたりもしません。

榛の持っている「人間」の部分が、どれだけ痛もうと関係ない。
恋敵でありロボットの友人である桜哉が、一番に願ったことだから。
ロボットの矜持が、人間のそれと相容れないものであると理解していたから。
ゆえに、桜哉を殺したのではなく破壊した。
理解していた榛だからこそ実行できた、桜哉を思いやった行動でした。



以上を踏まえて本作の感想を。
乙女ゲーとしてはED1が大本命。作品のテーマとしてはED6が本筋。
でも一番好みなのはED5。一番の萌えキャラは榛。
といった感じです。

ED1は人とアンドロイドの関係も匂わせてはいるものの、本命はやはりイケメン
桜哉君とのラブラブチュッチュですよね。
二人の思いが通じ合い感動を呼んだままHシーンへ。折角の初めてなのに天然ドSの
桜哉に言葉攻めされるなんて嫌っ、でも感じちゃう…みたいな乙女心(なのか?)が
全開です。なるほどこれが乙女ゲーか。
エクストラシナリオのお風呂エッチもそんな雰囲気ですね。男性として興奮できる
要素はほとんどありませんが、エロいなーとは思わされるから何とも不思議です。


対してED6は本作のテーマ。というか物語としてはED6だけで完結していますね。
榛の精液をヒロインの膣から掻き出す桜哉や、ジャンク化する直前の会話などは
痛々しかったり奥深かったり。
若干ヒロインや春樹の掘り下げが足りない気もしますが、いいたいことはしっかり
伝わりましたし、良質な物語だったと思います。とても楽しめました。

「この技術は世に出していいものではない」と、感情・記憶だけは譲渡しなかった榛。
桜哉の望みを考えれば、もっともお金になる部分なのに、なぜ売却しなかったのか。
理由は色々考えられますが、桜哉のためとか、ましてやヒロインのためではなく、
人としての自分のためだけに、友人を他者に手渡さなかったんじゃないかなと。
アンドロイドには理解できないであろう行為。しかし人として譲れなかったこと。
常に冷静な榛の数少ない、しかし非常に人間味あふれる一場面でした。

あと面白かったのが、ED6ルートでヒロインが浮いて見えたこと。
無理解うぜーとヒロイン見てて思っちゃったのですが、プレイヤー=主人公という
ことに気付いて合点がいきました。
主人公に自己投影できなければ、そりゃウザく見えるよなー、と。


一番好みなのはED5です。アナザールートなのでトゥルーである6EDから見れば
バッドエンドですし、ED1のように好きな男性と感動的に結ばれるわけでもありません。
しかし私には、ヒロインと桜哉がすれ違いに気付き、話し謝りあうことで通じ合えた
ED5が、地に足の着いた感じがして好印象でした。
ラストシーンの墓参りで、お互いの意志が分かり合えているのもいいですね。



以上、テーマはオーソドックスですが、切り口が斬新な良質短編でした。
絵や音楽もクオリティが高く、同人としては水準以上。
乙女ゲーということでエロシーンにクセはありますが、抜き目的でなければ普段とは
異なるエロスが楽しめるかと思われます。
ヒロインや男キャラも可愛いですし、欠点らしい欠点はほとんどありませんね。
これで800円なら十分すぎるのではないでしょうか。
バランスの取れた良作としてオススメです。



蛇足1
本作1番の萌えキャラは桜哉ではなく榛を推したいところ。ED6のエッチシーンで
一瞬赤面するのがやたら可愛いかったです。OHPに「攻略不可」と書いてあったとは
いえ、榛ルートが無いのはやはり残念ですね。割と本気でガッカリしましたw


蛇足2
ヒロインがモテ期なかったとかありえん。

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