oku_bswaさんの「グリザイアの楽園 -LE EDEN DE LA GRISAIA-」の感想

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「グリザイア」シリーズ完結編となる三作目。個人的に大満足とまではいかなかったものの、最後は綺麗に締めくくられており良い作品だったと思う。物足りなさが残るのはメインである「ブランエールの種」の終盤。「カプリスの繭」での勢いそのままに、緊迫感があり丁寧に描かれた前半部分に比べると、どうしても後半の展開は駆け足気味といった印象を抱いてしまって…。とは言えメインシナリオを担当した藤崎竜太氏のテキストは光り、恒例のクセの強いキャラクターが繰り広げる掛け合いも存分に楽しめた。それでも、我儘な話かもしれないが、もっと良い作品になれたのではと思ってしまう。
誤解のないよう先に言っておくと、本作は文句無しに面白かったし楽しめました。人気シリーズの完結作ということで、多くのユーザーが高い期待を抱いていたでしょうし、そのプレッシャーやシリーズ物の難しさを考えると、物語を綺麗に締めただけで成功と評しても良いのかもしれません。ただ、そこに至る肝心の終盤が駆け足気味だったので首を捻るというか物足りないというか…、何ともモヤモヤした気持ちを抱いてしまいました。前半部分は丁寧に進んでいたので余計に。

以下「ブランエールの種」と「楽園アフター」の二つの感想を書いていきます。デイブ教授と果実プロローグは特別長々と書くことはないかなと。


◆ブランエールの種
『グリザイアの迷宮』で描かれた雄二過去編「カプリスの繭」の続編。ヒース・オスロの帰還とその目的、風見雄二の襲撃の謎と拘束された目的、明かされるタナトス・システム、そして雄二に救われたヒロイン5人の雄二奪還への決意と、絶妙だった前作の引きの勢いそのままに物語が進んでいく。一姫視点でエンジェリック・ハウルの顛末が語られるのも良かった。

「グリザイア」シリーズの大きな魅力は一癖も二癖もあるキャラクターが繰り広げるテンポの良い掛け合いだが、それは事件ベースで進む本作でも健在。これはメインシナリオを担当した藤崎竜太氏の持ち味が存分に発揮されている。シリアス調の場面から一転してコメディへと転じる展開の急転を初め、パロディやメタなネタに頼るのではなく、「キャラクター」そのもので面白さを生み出してくる辺り、やはりテキストの質、特にキャラクター設定のスキルは相当高いと思う。多用される下品なネタも単純に下品という印象だけでなくキレの良さが感じられる。

雄二に救われたことでヒロインにも精神的な成長が見られ、特に由美子の変化は果実と比較しての見所の一つかと。(単純にライターの違いもあるでしょうが。)
また、タナトスが会話に参加するようになってからは、ヒロイン5人をタナトスがウィットに富んだ発言で諌めたり振り回すといった新たな構図で楽しませてくれる。この掛け合いは果実をプレイして以来ずっと見たかった構図でもあったので満足の行くものだった。後はみちるはかなり使い勝手が良い(失礼)というか有能なヒロインですね。ギャグパートでは殆どと言っていいほどおいしい役を担っていますし、雄二との再開時でのキスや最後のアフターでの展開といい、製作者に愛されている様子がビシバシと伝わって来ます。


次は肝心のシナリオの中身に関して。
雄二を奪還するまではかなり丁寧に描かれていたと思う。各ヒロインが目的の為に奔走する様子が詳細に描かれそれぞれにちゃんとした見せ場もある。
奪還してからの逃走劇も緊張感十分。あとはコインロッカーなど些細な場面にも一枚絵が用意されており、演出面でも細部まで作り込まれていると感じた。
ただその反面、雄二がタナトス(一姫)と再開して以降は少し駆け足気味に進んでしまったと思う。雄二のコピーであるユウジとの対決、そして因縁の元であるオスロとの対決も思いの外あっさりと終わってしまった。最後は“楽園”に到達し、大団円で綺麗に終わっているが…、やはり物足りなさは残る。

タナトス(一姫)の言葉を借りるなら、果実より始まったこの「グリザイア」シリーズの根幹にあるのは、たった一人の弟の為に世界を作り変えようとした姉の壮大な野望であり、雄二にとっての楽園が無ければ作ってしまえば良いという、一姫の愚直なまでの真摯な想いが始まりだった。

だから完結編となる「ブランエールの種」は一姫が物語の軸にいなければいけないし、雄二が本当に楽園に辿り着くためには雄二自身が救われることと、過去との決別、つまりはオスロとの決着が描かれなければならない。実際前半部では一姫がかつて雄二に救われたヒロインを導きながら、今度は雄二を救う場面が描かれ、後半は雄二が独力で過去と決別する様が中心に描かれている。
一姫が美浜学園入学という種を撒き、雄二が各ヒロインの問題を解決して果実を育み、最後は雄二自身がそれに救われ、過去に区切りをつけて“楽園”に辿り着き安息を得る…、細かい所で不満や疑問が無かったとは言わないが、大筋の展開としては綺麗に纏まっているし、実際自分もプレイして展開そのものに特別不満を抱かなかった。

展開自体は納得の行くものであるのに、後半部分の描写が不足気味なのは本当に勿体ない。解決策としてはオスロやユウジといった、敵側の背景を深く描くべきだったと思う。オスロの雄二への執着も言葉の印象が先行しすぎている嫌いがあるし、オスロ視点での過去の回想を盛り込むなどしても良かったのではないか。何よりユウジは今作初登場で、雄二との対決という大舞台も用意されているのにあまりにキャラクターとして薄い。迷宮で雄二自身の過去を深く描いたのだから、ユウジに対しても少なくともそれなりの背景を明らかにしていなければ、対となる者として条件を満たさないと思うのだが…。

実際終盤の戦闘は、力だけでなく両者がこれまで培ってきた価値観の対立でもあったが、今ひとつ盛り上がりに欠けていた。ここまで果実・迷宮でヒロインが抱える問題、雄二自身の過去を丁寧に描いてきただけに、最後の最後に描写不足が露呈して駆け足気味といった印象を抱いてしまったのは非常に残念だった。
最後で明らかになるオスロの正体も、オスロ自身の背景が深く語られてないのでどうしても急に湧いて出た設定以上の印象にはならなかった。
総じて見れば良く出来ていたと思うし楽しめたのだが、自分の中では勿体無い、もっと良く出来たのではという印象が先に来てしまう。


◆楽園アフター
何と言ってもみちるが妊娠して正妻的ポジションで物語が締めくくられたことが意外だった。ここまで各ヒロインの問題を掘り下げてきたのだから誰か一人と結ばれて終わるというのは難しいと思っていたがまさかこう来るとは…。それでも妙にしっくりくるのはみちるというキャラクターが持つ人徳故か。今作でも終始ゲロ吐いていた、今ひとつパッとしない場面がまず思い起こされるのだが、一姫とのやり取りを初め、各ヒロインとの対話が一番多かったのがみちるだったと思う。緊迫状況の中でも普段通りの言動を発揮して、周りを安心させてきた彼女だから、普段からよく馬鹿やってしまうし恐れや不安といった弱さを明確に見せる彼女だからこそ、最後は後腐れなくどのヒロインにも愛され祝福されたのではないか。それにしても一応メインヒロインのはずなのに完全にみちるに食われた由美子は…。

余談だが、キャラクター(ヒロイン)を個性的かつ魅力的に描くことに長けている藤崎氏のシナリオはハーレムエンドが一番しっくり来ると思う。強みである個性的なキャラクターが繰り広げる軽妙な掛け合い、ドタバタ劇を最後まで保てるからだ。同ライターの過去作である『ドラクリウス』『ひめしょ!』でもハーレムエンドがあったと記憶している。もっとも本作と同じく、どちらも終盤は駆け足気味という嫌なところまで共通しているのだが…。


◆総評
藤崎氏の持ち味である個性的なキャラクターが繰り広げる軽妙な掛け合いが存分に発揮された作品である一方、終盤に失速・駆け足気味といった欠点も見られる作品になっていると思います。ただ、最初にも述べましたがシリーズ物の難しさを考えれば綺麗に纏めただけで称賛に値すると思いますし、それが人気シリーズともなれば尚更です。「グリザイア」シリーズが好きな人は迷わず手に取っても楽しめると思います。
Front Wing10周年記念作である『グリザイアの果実』から始まった本シリーズですが、一先ず完結したことに製作者の方々に感謝したいです。良い作品を有難うございました。アニメ化の予定もありますしまだまだ楽しめそうですね。(自分はアニメは見ない人間なんですが。)
次にFront Wing、藤崎氏がどういう作品で勝負してくるのか非常に楽しみですし期待しています。
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