amaginoboruさんの「究極魔法少女 絶対☆姉貴」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

「魔法少女」といいつつ周囲の人間にしか魔法を使わないため、内容は非常にミクロでこぢんまり。しかし一作品として綺麗にまとまった、埋もれた良作の1つです。シナリオ運びも十分良質ですが、特に完璧超人なツン姉のデレに弱い人へオススメ。
万能で魔法少女な姉貴が突然校内の部活潰しを宣言。ボランティア部の主人公と
ヒロイン達は部活を守るため、魔法と肉体を駆使して戦うのだー的なオープニング。
魔族や魑魅魍魎と戦うわけでもなく、校内でスポーツ的なノリで姉貴と戦うエロゲです。
選択肢でヒロインを選んでエッチして恋人の王道ですが、姉のひかりシナリオはロックが
かかっています。

本作はいわゆる後半追い上げ型の構成で、序盤~中盤ほとんどの要素が終盤を盛り上げる
準備。退屈・・・とはいわないまでもやや冗長です。ゆえにそういうエロゲと把握してプレイ
しないと積みゲー化する可能性大。ネタバレしない程度に前半3ルートの特徴を記しました
ので、宜しければ参考に。

加えてルールやら魔法の説明がとにかく冗長で、これが一番やる気を削がれます。
幸い既読説明はTIPにてまとめられ、またそちらのが判りやすいため説明文はCtrl推奨。
判らなかったらタイトルに戻りTIPを見ればOKです。まぁ細かい説明は対して重要でも
ないし、いっそ全飛ばしでもいいかも。


後半は打って変わりそれまでの伏線がジャンジャン回収され、加えて今まで頭が
上がらなかった姉貴がラブラブへ傾いてくれるため、一気に面白くなります。
ツン→デレの流れにも十分説得力があり、昨今のエロゲが疎かにしがちな背徳感にも
十分な気配りの行き届いた見事な作り。私はどちらかといえば妹キャラ好みですが、
この姉貴にはやられました。可愛すぎてノックアウトです。

またシナリオ方面もしっかり練りこまれており非常に驚かされました。
イチャコラするために適当な設定をバラ撒いているのではなく、姉キャラとシナリオが
相互作用するよう組まれた見事な構成。主人公描写の上手さも加わり、シナリオゲーと
してもしっかり作りこまれています。これはホント想定外。
長編エロゲを不得手とする私が休憩も取らず一気に読み進められたのは久しぶりで、
その事実に改めて面白いエロゲだったんだなぁと感心した次第です。


と、非常によく出来てはいるのですが、面白さ以外の部分を中心に欠点も多く、
それがマイナーたる所以なのでしょう。

まず各種グラフィックス。立ち絵もHCG差分もボリュームに対して少なすぎ。
テキストの良さを殺してしまっています。かおるこの立ち絵とか、1枚だけならせめて
普通にして欲しかった。背景もフラシャ系列作品の使いまわしですし。

ミクロすぎるシナリオもマイナーな理由のひとつかと。魔法少女のわりに規模が小さく、
肩透かしを食らったプレイヤーも少なくないでしょう。結果話の軟着陸に成功している
ため、欠点よりむしろ長所なのですが、口コミを期待するにはあまりにも地味です。
前述の通りスロースターターなのも辛いですね。途中で切られてしまう可能性が高い。
これらに前作の悪名が乗っかった結果、埋もれてしまったのかなと。


以上、欠点からプレイヤーは多少選びますがシナリオ・キャラのバランスがいい作品で、
特に姉モノが好きな方にオススメ。無名ですが間違いなく良作です。

なおTS要素はかほるこルートが該当。弟ゲージが高いと見られます。が、声こそつく
ものの面白みは全くなく、エッチシーンの構図も女性を想起させない体位で微妙。
女体化目的での購入はオススメしません。オマケで言ってた紫宝ルートを何故やらなかった。

以下前半の見所を軽く紹介。後半はネタバレ感想です。


◆共通
バトルのやり取りは面白いとまではいいませんが、テンポは悪くなかったかなと。
特に選択肢で勝ち負けが決まる場合、彼我状況を考えれば答えがわかったのも好感。
運ゲーじゃないのは良かったです。そういう意味では選択肢の上手いエロゲかも。


◆美野里
3ヒロイン中最も姉のひかりが絡まないシナリオ。ゆえに主人公・朗のカッコよさが
最も目立っています。
再三「永遠の2番手」的な扱いを受け、普段はいいとこなしの朗ですが、姉を抜きに
すれば万能である描写がさりげなく上手い。後のシナリオで八面六臂の活躍を見せる
様に見事な説得力をもたらしています。作品同様えっらい地味~な伏線ですが、
こういう小さな根回しをしっかり生かしているのが本作ライターさんの上手さですね。
なお美野里シナリオ自体はイマイチ。朗の男っぷりを見るルートと割り切るのが良いかと。


◆綾女
シナリオ本線の伏線を書いた個別。朗がひかりを家族としてどれだけ好いているかの
判るシナリオでもあります。一方でひかりの心にも注目、といったところでしょうか。
逆に複線が多すぎて、綾女自身の魅力がイマイチだったのは残念なところ。


◆かほるこ
力を持つものと持たざるものがお題。割とよく見かけるシナリオ回しですが少々
ひねりが加えられていて、なかなか独特なお話になっています。
伏線としてはまんま作中で述べられる「本気」や「覚悟」などがキーワード。
やはりボランティア部サイドよりもひかりが見所。彼女の言う「本気」「覚悟」を
覚えておくと、以後のシナリオがより面白くなるかと。



以下ネタバレ兼感想。










◆かほるこシナリオ所感
朗がコンプレックスを抱くシナリオを予想していたら、まさか抱く側がかほることは。
確かに綾女・美野里のような特徴はないし、バトルも器用貧乏+タイムラグで扱いづらいと
他3人より平々凡々かつ役に立てていない。
僕っ娘+クールとキャラが立っているようで、その実普通すぎるヒロインとは実に斬新。
特徴ばかりが目立つエロゲヒロインの真逆をついた、上手い発想でした。

それがシナリオに生きているのもまた秀逸。全てにおいてひかりに負ける朗、の足元に
すら及ばない。綾女・美野里みたいな長所もない。クールを装っていても感情的になると
歯止めが利かない。普通である事の劣等感や空回りっぷりが見事に表現されていました。
道具を使うにしても応用力が全くないのですが、それも計算の内なのかと邪推してみたり。

逆の視点で見てみると、能力があるからと常にヒーロー・正義の味方であることを
強いられたひかり、そして安倍さんの苦々しい感情が見え隠れしています。
「正義のヒーローになっちゃダメ。魔王になりなさい」という安倍さんの言葉は、単純に
自分の思うがまま生きろという額面どおりの意味だけでなく、頼られる側だった自分の
ようになるな、とも聞こえます。ひかりの発言もまた同様です。

そして「本気」と「覚悟」については、これはもうひかりシナリオを見れば一目瞭然
ですね。自らを押さえ込み朗に接しているひかりが、彼といい仲に「なることができる」
かほるこに劣等感を抱かれるとか、ある種の最悪な嫌味ですし。かほるこの本気や覚悟の
程度を知れば、そりゃまあブチ切れて発砲するってなもんです。

他にも漫研部バトルはひかりシナリオを見ないと理解できない怒りや行動が多く、
前半の3シナリオでは最も面白かった。「隣の芝生は青く見える」を変則構成で見せた
良個別でした。


◆ひかり
始まりのお話・欠けた世界を見せ、苗場姉弟へ更に感情移入をさせた上で踏み込む
最終ルート。規模が小さくインパクトこそ小さいものの、細かいところにまで伏線の
行き届いた見事な展開でした。

そのインパクトを補うかのように投入されるのがデレひかりなわけですが、あーもう
これ超可愛いですね。インターミッション2つの衝撃も手伝って、ひかりが更に愛しく
思える。凶悪一辺倒な前半や鬱々しい中盤からは想像もつかないほど甘々です。ことに
初エッチシーンの尺の取り方と可愛さの表現といったらもう・・・!
妹キャラ重視な自分に、よくここまで姉で転がらせてくれたものです。


とはいえ、ツン→デレだけではここまで入れ込めなかったでしょう。再三になりますが、
序盤の凶悪さに明確な理由を付け、中盤で姉への想いを読み手へ投げつけたシナリオが
キャラ個性に程よくブレンドされたからこそ、ひかりにここまでの魅力を感じることが
できたのだと思います。

加えて主人公のパーソナルもまた十分に魅力的です。前半3シナリオと欠けた世界での
朗を見ているからこそ、二人は一緒じゃないとダメだと思わされる。
長編エロゲのアドバンテージである長尺を使って2人を十分掘り下げ、更にシナリオと
絶妙に絡めたからこその良さ。エロゲの基本を抑えた、素晴らしいイチャイチャでした。


トドメに姉弟モノ鉄板の「背徳感」がトッピングされます。最近の近親相姦ものでは
良くて軽視、酷ければ無視される禁忌の念。これが特にひかり側で丁寧に描写されて
います。

朗が幸せになるために、自分がぶち壊すわけには行かない。感情と理屈のせめぎ合いが
これでもかとばかりに表現されていて、それはエンディング直前の、最後の最後まで表現
されています。朗もまた同様で、だから自らの不安を隠してひかりを励ますし、度重なる
ある種の裏切りも予想しています。

ほんとクドいまでにインモラルを突きつけてきますが、私的には正解だったかなと。
このぐらい徹底しないとやっぱ伝わってきませんしね。
とはいえ「吐き気がするほどロマンチックだね!」とか言っちゃうのもお話的に
アレですし、程よい盛り込み方だったかと思います。

姉の個性、弟の個性、その経緯と説得力、今までの反動を利用したバカップルぶり、
そして背徳感と、そのおおよそ全てをひかりシナリオはクリアしています。加えて
物語としてもミクロながら綺麗にまとまっていて、キャラゲ要素と絶妙にマッチして
いる。グラ以外の指摘が難しい、見事な姉弟モノでした。



蛇足
魔術と「魔法」の解釈といい、最後もおおよそ納得いく終わり方でしたが、
ひかり(弟)ルートの安倍さんだけは納得できない。二人を殺す云々が嘘なのはまぁ
いいとして、その結果ひかりが暴走して取り返しつかない事になっちゃいました、
ってのは流石にお粗末すぎる。まぁnot正史という事で納得はしましたけど。
これで数年後「村上初花」が苗場朗と再会~な一幕があれば嬉しかったんですけどねー。
それはそれで一種のハッピーエンドですし。
新品/中古アダルトPCゲーム販売 通販ショップの駿河屋

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