ほげもんさんの「彼女と彼女と私の七日 -Seven days with the Ghost-」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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百合ゲー入門書として、これ以上の逸材はない
総プレイ時間:約6時間


まず他の人も仰られている通り、フリーとは到底思えないクオリティでした。
かつ、1500円ほどの価値はあると思うので、どんなに安くても商業で出すべきだったと思います。3年も費やしたんですし。
百合エロゲー、しかも指のみで器具貝合わせ一切無しの上品な色気を保っている作品って一定の需要はあるでしょうに。
(CD販売で元はとれたらしいですが)


評価点

演出……並み居る他ゲーを押し上げて圧倒している要素。
朝の日差しや紅茶の湯気など、何気ない部分にも挟まれていて飽きさせない要因に一役買っている。
正直ここまで作り込まれていなければ、積みゲー確定だったかもしれない。


音関連……フリゲでフルボイス、ボーカル入り、BGMや効果音も全て手作りというサービス精神に惜しみない拍手を送りたい。
声は杏奈の人が圧巻で、主人公と雅はやや固いものの及第点、万理乃はちょっと擁護できないレベルの鼻声&棒読み……彼女とのシーンが良いだけに余計。
杏奈のHシーンでの色気はちょっとやばかった。こっちまでMの気質を開花させかねません。声優さんGJです。


シナリオ……正直言って、百合を説得付けるためにオカルトを下敷きにしているのか、オカルトを表現したいがために百合が付加要素になっているのか、
どっちも主張しようとして急ぎ足になってしまった印象。
オカルトと魔法の存在意義を立証できてるかと聞かれるとやや説得力に欠けますし、
雅を説得付けるために閨を覗き見て、いつか自分もレズビアンに目覚める……ってのはあまりにも予定調和すぎて。
主人公が部活存続をダシに覗きを提案する犯罪スレスレの電波女にしか最初は見えず、実際ここで投げ出しそうになった。
単純に偶然クラスメイトの秘密を知ってしまった主人公と出会ったお茶目な幽霊、
表面では友好的に接しつつも、実はこっそりと親友のHを見ている――って感じで変に深い背景設定とか入れないほうがよかったんじゃ。
淫魔でふたなりという美味しい設定を持つファティエットも活用できてたかと聞くと微妙ですし。
魔法とか抜いてもこの物語、成立しましたよね?


テキスト……全体的に情報量が多く、一度に4行表示はちと疲れる。
心理描写は秀逸なんですが一つの物事を進めるのにいちいち説明やコントが入って回りくどいと言うか。
"コックがつまみ食いしてはいけない、主人に料理を出す前に冷めてしまってはいけないのだ"など、たまに上手いなーと思う表現はありました。
あと、後半になると手慣れた感じが出てくるのですが、
最初は男主人公の性別をそのまますげ替えたような、絢子の芝居掛かった口調がどうにも不自然で苦手でした。
下手にコントに持って行こうとするからだと思いますが、それにしても最初のシーンは長すぎ。

ただ、テキストの癖の強さゆえか、キャラはみんな立ちまくってて楽しめました。
特に杏奈の描写はとても精密に掘り下げられており、万理乃との会話だけで彼女がどれほど凄い人間か、こちらにも伝わってきましたし。
後半になればなるほどテンプレくさいキャラ造形は抜けてくるので、返す返すも読みづらかったなーと。


百合描写について……わずか7日で成就するため、やや駆け足かなーと思う部分はありましたが、最後のシーンは非常に綺麗にまとまっていて良かったです。
個人的には雅ENDがお気に入り。『彼女と彼女と私のこれから』が合いすぎて合いすぎて。
ヘテロだった主人公がレズビアンの友人と情事に当てられ、戸惑いつつも徐々に見方が変わっていく――という流れもさほど不自然さがなく、
百合モノにありがちな青春の過ちーだの尖った男性嫌悪感ーだの同性愛に対する偏見だの、そういった点が省かれてて単に
『否定する気はないけど周囲の視線が怖く、価値観を変える勇気がない』
だったので特にストレスを感じず、百合入門書としては最適だと思いました。
エロゲにしては絵も萌え萌えって感じじゃないし、Hシーンも精神的な攻めが多いので女性にも勧められるんじゃないかと。

あと、汁スキー(キスとかクンニ)なのでちょい物足りない所もあるんですが、逆転が苦手なのでタチネコ固定だったのはありがたい。


グラフィック……特に崩れもなく、塗りも非常に丁寧です。
ちゃんと等身がとれてて服も不自然ではなく、万人向けの絵です。フツーに商業でも違和感がないと思われます。
が、個人的な趣向を申せば絵柄がのっぺりとしていて表情が固く、あまり好みじゃなかったですね(笑)
上手いんだけど萌えないと言うか、抜けないと言うか。tony絵に通じるものがあります。


環境周り……文句なしです。フリーでここまでやってくれたら感無量。
インターフェースも美麗だし、エフェクト入ってるし、ご丁寧におみくじやツイッター機能なんてのもあるし、
ホイールやショートカットキーに対応してるし、セーブ画面にコメント付けられるし……スクリプターさん素晴らしいです。
惜しくはせっかくシステムボタンがポップアップするので、画面に表示するか否か選べるともっと良かったんじゃないかなと。
スタッフコメントも良かった。作品に対する愛がひしひしと伝わってきます。


キャラ感想……独断と偏見にまみれています。


絢子(主人公)……馬鹿な子ほど愛おしいって感じなんでしょうか。
暴力キャラに走らないかと内心ヒヤヒヤしてたんですが、単純明快に前向きな子で主人公としては良かったと思います。
あと、ドMって作中でも明記されてるんですから、緊縛くらいあったって……(ソフトSMスキーとして)

杏奈……今作で最も好感を持てたキャラ。ドSで一途で真面目で全員の好意を平等に受け止める男前。そりゃモテるわと。
最初から最後までタチ一直線なのが素晴らしい。レズビアンでも必要以上に男性を嫌悪してる描写がない部分も好印象。

雅……存在は結局最後まで不明瞭でしたが、
人を喰ったような性格でありながらも不快にさせない、絶妙な掴みどころのなさを保っているキャラだと思いました。幽霊だけに。
不意打ちに弱い杏奈とは対照的に雅は全く隙のないキャラなので、逆転スキーな人には不満だったかもしれません。
あと、非科学的に人間に触れられる……という設定(異種姦?)を出したいがためにオカルト要素を取り入れたのかと色々勘ぐってしまう。
個人的には杏奈の次にお気に入り。

ファティエット……結局杏奈に手篭めにされてしまうのね……見た目とか設定とかいろいろパーフェクトだっただけに惜しい。
あそこは絢子と同じ心境で、絢子を陥落する別分岐が欲しかったと切に願う。
ただ杏奈の心境の変化のためだけにふたなりが踏み台にされるのは勿体無さ過ぎますよ。
そうでなければなんで出したのかと。

小牧……早々に退場してしまったので、羞恥プレイが好きな杏奈のペット1……という印象が最後まで拭えず。
絢子が覗きせざるを得ない状況に置くためには彼女を退場させるのが得策なのでしょうが、
オカルトとの咬み合ってなさを考えるに、本当に現実路線で行ったほうが小牧も活かし切れたんじゃないかなと。
ファティエット以上に不憫な子だとしか。

万理乃……声の残念さを除けば、杏奈と絢子の関係に背中を押す橋渡しとしていいポジションだったと思います。
一歩引いた視点や求められれば受け入れるという姿勢にも好感が持てましたし。

皐(絢子母)……幽霊なんてハナから信じておらず、怒りの対象を非現実的なモノに上書きすることによって自己を保たせる……と
なかなか現実的な理由で説得力はあったと思います。新概念だのオカルトの力を利用してるだの云々は蛇足でしたが。
もう少し舞台背景を明瞭にするために、雅との過去話は少し欲しかったかなーと。


いろいろ書き散らしましたが、適度な短さ、百合描写、素材全てが商業並みでフリーでよくここまでやってくれたと言いたいです。
百合ゲーに手を出してみたいという方は是非。やって損はない佳作です。

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