kenken1231さんの「主に交われば朱くなる」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

×あまりの酷さに失笑する他ない。
 「信用」と「信頼」は違う。

信用から信頼に格上げされるには、主人と執事の当事者同士に「絆」があるかどうかが決め手となる。それはそれでライターの主張として面白味があって良かった。
エロゲーにおいてエロは正義だから、エロゲーらしく「絆」=恋愛・Hと結びつけた事も悪くはない。しかし、学園の禁忌との矛盾や軋轢の描写があまりにも弱すぎる。
それゆえ、学園長頼みの都合の良い展開に終始してしまい、作品のテーマである「主人公が自分で選択し行動する」というのが全くの描写不足で伝わってこなかった。
他のレビュアーに追随するわけではないけど、これは駄目駄目でしょう。正直言って最初から設定・シナリオが破綻してしまっている。
足場がグラグラなので違和感バリバリ、テキストの無骨さ、抑揚の無い展開、それに加えてミニエピソードを瞬間接着剤でくっつけたかのような構成、演出不足・・等々、
本当に残念な作品でした。

【感想】

●(絵・背景・キャラクターデザイン)
 キャラデザインは今時で良いと思う。イベント絵も綺麗だし、表情の差分も多くて好感が持てる。しかし、HシーンのCGが少し変。
無理してエロい構図を書こうとしたんじゃないでしょうか。背景は綺麗なんですけど、すごい使い回しが多い。ビックリです。
イベント絵も少ないし、まるでデモ映像の素材を最低限揃えたかのような少なさ。立ち絵の動きが変。何で1回消えて横からスライドさせるの。
動くのは嬉しいけど無闇やたらと動かすのはどうだろう。ちょっと酔います。うざったい。
 後述しますけど、橙音のフェラシーンがテキストで表示されてるのに、HCGは依然としておっぱい揉んでる絵のまま。
そのくせ、テキストとキャラの表情はしっかり連動しているので、これはどう考えてもフェラシーンの絵を誤魔化しましたね。確信犯ですか。
これでGOサインを出した製作責任者はいっぺん頭から水かぶって目を覚ましたらどうですか。付属の原画集は嬉しいです。無いより有ったほうが断然良い。
環境周りも雰囲気よくまとまっているし、快適ですし、音声付だし、おまけ音声もありなかなか凝っていると思います。ここら辺は丁寧に作られています。

●(シナリオ・テキスト)
序盤で、赤音と主人公との間に、こんなやり取りがある。赤音様の、執事の心得伝授。

赤音『自分が仕える対象に降りかかる問題や、障害をすべて排除する執事になれ』
主人公『それで障害というと・・?』
赤音『うむ・・(中略)。私の場合、暴漢・事故・災害・陰謀・姉妹ゲンカ・親子ゲンカだな』

えーと・・・執事って、こんな職業だったっけ。
そもそも自分の事は自分で考え行動するみたいな学園の理念に相反してませんか。
・暴漢→盾となり戦えと?。ボディガードみたいなことを職業訓練校で求められても。
・事故→身代わりになれと?。
・災害→無茶言うな。
・陰謀→なにそれこわい。
・姉妹ゲンカ→第三者がどうしろと。
・親子ゲンカ→一介の執事がおこがましい。

今思えば、この文章を見てから少し違和感を感じ始めましたね。なかなか面白い赤音様からの執事としての心構えでした。
まぁ、学園長の必殺技の話は良かったですよ。自分の絶対の自信となるモノを何か持つ、というのは一理あると思います。
自分に不信感を持つ者が、他者を支えることなどできようかってことですよね。こういうのは、学校らしい雰囲気が出てたと思います。
こういうのを詰めてほしかったですね。学園長の常套文句『どうですか?』は自分の考えを持つという前提の話がよく伝わってきて
試験用紙まるまる白紙で試験をする大学の教授みたいだなと思いました。エロゲーで何かと上から考えを押しつけるキャラが多い中、
こういう学園長みたいなのは少ないと思う。
駄目な所としては、修羅場が全然成ってない。焦燥感を感じさせるBGMを流してますけど、ヒロインの言動が意味不明なので、
感情移入が全く不可能。結果としてヒロインの魅力も下がり、大きく作品の質まで下げる結果となってしまった。

~・橙音シナリオについて~・
 このシナリオは、この作品においてテーマを全く活かしきれていないシナリオです。何故、そう言えるのか。
それは「絆」を得るに際して主人公が「変わらない」ことが大前提だからです。橙音は主人公が昔と変わらない事を望んでいるし、
また主人公もそんな橙音に甘えて「自分から行動する」ことを放棄してるとさえ言える。カズマも最初からそれを黙示的に誘導しているので
全てが緩緩とした結末ありきのどうでもいいシナリオになってしまいました。学園の禁忌である主人との恋愛を学園長が特例として認める理由もさっぱり分かりません。
そもそも恋愛禁止なわけです。そして、執事としての素養に「絆」を得ることがある。その「絆」を2人の恋愛に置き換えて特例として認めたら、本末転倒でしょう。
もう特例どころの話じゃなくて原則を覆したようなもんですよ。「絆」という字は、糸と半でできています。お互いの赤い糸を半分づつ結び合ったのが絆・・とかもうね、
そんな、誰が上手いこと言えと。
橙音が生徒会長に立候補するかどうかの話もちゃんちゃらおかしい。女子学生Aが、『私たちにできない事(執事とH→家を離れる)を平然とやってのける!、
そこにシビれるあこがれる!』ってここは笑うところですかね。全く面白くない。そもそも、そんな好意的な意見ばかりじゃないでしょ。作為的すぎて乗れない。

あとコレだけは言わせて。主人公と赤音が橙音へのプレゼントを買いに行く展開で赤音が腕組みしてくるシーン。これどうなんですか。
私は最初、わざと腕組みして橙音に見せつけて嫌われ役を買いながらも、橙音の主人公への独占欲を煽り、修羅場があって、雨降って地固まるみたいな展開になるのか?
と思いきや・・・

 赤音『すまない。はしゃぎすぎたようだ・・』

・・・。何なの!、素かよ!!。好きなのは分かるけど妹と主人公の関係が、妹と自分との確執のせいでギクシャクしてることを赤音は承知の上で
仲直りのプレゼントを買いにいくって展開だというのに、腕組みしちゃいかんだろ・・。まぁ、2人だけで気が緩んだと言えばそれまでなんですけど
赤音様も普通の女の子だということを示すシーンなのかもしれません。ただ、それまで毅然として接してきただけに赤音の「格」は下がりました。

~・赤音シナリオについて~・
 あかねぇ・・か。なんか「つよきす」っぽい臭いのするプロローグは置いといて。
ちょっと待て大吾、お前が『あかねぇ』というのはおかしいだろ5回生。赤音が好きだから留年してまで学園に居続けていたというのは分かるけれど、
赤音側が何故こいつを執事として置いていたのか理由がさっぱり分からない。『あかねぇ』と大吾が呼ぶ事に目くじら立てなかったのは、単に諦めてただけだったのか。
何か2人との間に面白いことがあると勘ぐっていた私は拍子抜けでした。大吾というキャラは色々と問題起こして引っ掻き回す自由さがあっただけに、
ライターの力不足でこの魅力的なキャラクターは殺されましたね。
 さておき、まさかこのメインヒロインのシナリオでも主人公が「自ら行動する」というテーマが活かされてないとは正直言って、ふざけんな!と言いたい。
さんざんテキストで家柄の問題を筆頭に種々の難題が待ち構えている!、覚悟しろよハジメ!と構えさせて結局は学園長が婿となる道を強力にナビゲート。
おいおい、これは笑うところですか。『明日は城攻め!、一番槍のハジメよ、期待しておるぞ!』と言われて覚悟を決めた翌日、いざ突撃しようとしたら
本丸までの門が全て開かれてしまった、みたいな腑抜けた展開。どんだけ学園長は顔が利くんですか。一番甘いのは学園長ですよね。どうなってんの?このシナリオ。
主人公がそこまで期待されるほど学園生活で何かしたか?。主人公補正にも程があると思いませんか。これがメインヒロインのシナリオだっていうんだから本当に残念。
あ、でも「足コキ」がバレて一騒ぎ起きるシーンは面白かったですよ。面白いと感じたシーンはここだけでした。

~・菜織シナリオについて~・
 このルートは普通に良い。メインヒロインより意味のある良い出来だと思う。「信用」と「信頼」は違う。
体を重ねただけでは契約関係止まりの「信用」までいけたとしても、「信頼」のステージまで進むことはできない。
信頼されるためには主人の不可侵領域にまで足を踏み入れなくてはならない。おおっ、「絆」の意味が恋愛以外で語られるシナリオなのか、
これは作品に深みが出て良いじゃないか・・と思ってたんですが、途中からはやっぱり恋愛→信頼とほぼ同義でした。どないやねん。
 奈織と主人公が一歩歩み寄る切っ掛けとなった運動場での喧嘩シーン。主人公が自分を殴り出して奈織がその姿に自分を投影して悟らせる・・・、
それはいいんですけどね。余りにも唐突すぎだし、駆け足すぎだし、当事者同士でさっさと分かり合って次のステップへ。見てるプレイヤーは置いてけぼりですよ。
また、ラスト近くの春樹と対峙するシーン。菜織が春樹に主人公の浮気疑惑を相談すると春樹がどういう行動に出るか、菜織が分からないわけがないでしょう。
後から都合良く出てきて、『こうなるとは思わなかったの!』とかありえねぇ。そんなこんなで春樹からは『お前を執事とは認めない。だが恋人として絆を深めてくれ』
ってそりゃ執事失格宣言ですよね。一件落着みたいな雰囲気出してますけどいいんですかコレ。
ただ、主人公と奈織が新しい主従関係のモデルを作り出そうと行動する決意を固めるラストは、なかなか面白かったです。
また、あっさり認める学園長も懐が深いですねハハハ。ノーマルEDと真EDの2種類があって、恋愛せずに「絆」を得て信頼を得るシナリオがあれば良かったのかな、
というのは無い物ねだりですかね・・・。しかし、ヒロイン数=ED数では無いらしいから、探せばそういうのもあるのかも。

そうそう、先述した学園長の必殺技についてですが、自分に自信を持つための要因として・・・って、学園長ーーーーーーっ!?。必殺技って、ホントに必殺の技かよ。
「真剣で私に恋しなさい」みたいな展開に吹いた。頭切り替えて楽しんだのでまぁギリギリ面白かったです。かと言って評価する以前の話ですがね。
こんな2番煎じもいいところの超展開を採用した時点でライターさんは自爆ですよ。猛省してください。

~・主人公と親父について~・
 転勤暮らしだからって、そんな負い目感じなくても。何だか凄い闇があるかのように物語で描かれてますけど普通じゃないですか。仰々しすぎると思う。

●(声優・BGM・歌)
 OP曲は良い。BGMも不快ではないし、悪くはない。女性キャラの声優さんは、普通に演技が上手いんですよ。
でも・・・男性キャラの声優で一部、素人さんがいらっしゃる。ワザと声を汚して演技するジャイアンとか有名ですけど、
この大吾役の蘭丸って声優さんは力不足もいいところです。

・・・・・。

・・・・・・・・?。

ていうか、岩国大吾、五十嵐カズマ、五十嵐創玄・・・全部、蘭丸さんが声を担当してらっしゃるじゃないですか。
何なの、分不相応でしょ。無茶すんなよ・・これも作品の質としては下がらざるを得ないでしょうね。

●(ゲーム性・やり込み度)
 無し。主人公が「自分で行動する」時に選択肢すら出ないのは不満です。
紙芝居ゲーにおいて、選択肢はプレイヤーに主人公を通して何かを伝える鍵となりうるシステムだと言うのに、
盛り上がりに欠ける展開、そして淡々と流れるテキスト、そんなのでどう「自分で行動した」というのを感じろと言うんでしょうね。

●(H・エロシーンの魅力)
 いやいや、あっさり風味にも程があるでしょう。
エピソードとしてブツ切りにするのは勘弁して下さい。ぶった切られて次の日へ移行する展開はホントにビックリしました。
あと面白かったのは、ウォータースライダーでの橙音と主人公とのH。流れ落ちながらメイクラブとかスゲェよ。
お前らクロックアップでも使ってんのかと面白く読ませていただきました。赤音のぶっかけや橙音のフェラ等々、テキストとHCGが全く合ってない。
エロゲーではエロが正義ですからね、こんな不義は評価低くなっても止むを得ないでしょう。

●(総括)
 普段は低得点の作品に総括など書かないんですけど、少しだけ。グミソフトさんは、この第一弾作品で、買ってくれたユーザーと信用すら築けなかった。
劇中でも言っているでしょう。

「築き上げた信頼でも、一瞬にして崩れ去ることがある」と。

この台詞は、きゃんでぃそふと系列のブランドにそのまま跳ね返ってくる台詞ですよ。そこのところ分かってないんでしょうか。
今回の作品も満足いく出来とは到底言えず信用回復どころか、ますます亀裂が深まってしまいました。全く皮肉にもならない。
これがゲームなら、解除→退学でしょうね。現実には学園長みたいなご都合主義を体現したようなキャラはいませんから、どうにもならない。
今作品は、グミソフトの最悪なBADエンドです。製作者さん達は、いっぺん滝にでも打たれて脳みそ冷やして出直して来てください。

・・・次も買いますから。

新品/中古アダルトPCゲーム販売 通販ショップの駿河屋

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