G-hunterさんの「Steins;Gate」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

何かととんでもない評判になっているこの作品の魅力は主に3点です。1つ目は、秘密基地のようなラボを中心とした前代未聞の探究心が男の子回路を刺激する点。2つ目は、タイムトリップなどの考察をきちんと科学的側面からアプローチしている点。3つ目は、膨大な伏線のほとんどを回収することができた点です。そして私が何より驚いたのは、Steins;Gateの本文中の世界観説明が、私がsense offの感想で述べた世界観とほとんど同じだったところ。作品の緻密さと精巧さがプレイヤーによく伝わる、魂が込められた作品であるのは間違いないです
      シュタインズゲート
すべては運命石の扉の選択である!















・ストーリー
「ニュージェネレーションの狂気」による渋谷崩壊から1年後
秋葉原はラジオ会館屋上に人工衛星らしきものが墜落したニュースで沸き上がっていた

秋葉原を拠点とする総勢3人の小さな発明サークル「未来ガジェット研究所」のリーダー・岡部倫太郎
厨二病から抜け出せない大学生の岡部はサークル仲間と日々ヘンテコな発明を繰り返していた
2010年7月28日、岡部は友人の橋田至と共に向かった講義会場で、18歳の天才少女、牧瀬紅莉栖と出会う
しかし、彼はその数時間前にラジオ会館の8階奥で大量の血溜まりの中に倒れる彼女を見ていた
そしてそれを橋田へ報告した携帯メールは、何故かその1週間前の日付で受信されていた

検証の結果、発明品である電話レンジ(仮)が偶然にも携帯メールを過去へと送るタイムマシン機能を備えていた
そしてその偶然が全世界の未来を左右する出来事になると、「この時の」岡部自身は知る由もなかった――





攻略時間は60時間。攻略順序は鈴羽→フェイリス→るか→まゆり→紅莉栖→True。この順番でのプレイが推奨です
ネット界隈で物凄い口コミ&評価だったので、ソフトを片手にXboxを持っている友達の家で泊り込みプレイ
CHAOS;HEADの続編にあたる世界ですが、前作を知らなくても全然問題ありません
実際にあるCERNのブラックホール事件を題材に、実にうまく物語を構築したなぁと舌を巻く出来栄えです
タイムトラベルは過去にも数多く書かれていますが、他の作品よりも一歩上に突き出ていると思います
プレイしてみた実感としては、あの空の向こう側・夢見師・sense offの概念がよく組み込まれていると感じました
Steins;Gateは、尺が長くて説明が十分なあの空の向こう側、オチがしっかりしている夢見師、わかりやすいsense offのよう……あれ?もしかして最強?
さて、とりあえず上記にあげた魅力3点についてまずは考えてみましょう


①人類の未知に挑むラボの雰囲気が良い
この雰囲気とは、環境と人材の両方の側面を指します
狂気の(?)サイエンティストが如く、秘密基地でみんなで何かを一緒にやるという行為が子供の頃を思い出させます
特に男の子は、主人公たちのラボというフレーズに憧れを抱くこと間違いなし

また、その環境を支えるラボラトリーメンバーの魅力も忘れてはなりません
サブキャラはいるものの、特に主人公・ダル・紅莉栖・まゆりのラボメン4人が絶妙なバランスを醸し出します
強引で厨二病ながら仲間を大切にするリーダーの主人公、鳳凰院凶……岡部倫太郎
親友で主人公のよき理解者でもある腕利きのハッカーの橋田至、通称ダル
天才少女で好奇心旺盛だが、どことなくオッチョコチョイでツンデレ気味である紅莉栖
ラボの空気緩和剤で、物語を理解できないプレイヤーを助けるポジションにもある椎名まゆり(まゆしぃ☆)
この4人が噛み合わなければ、Steins;Gateはここまでの評判はされなかったでしょう


②科学的側面からきっちりとアプローチしている
主人公らの過去に送るDメールや、タイムリープにはきちんとした理論の上で成り立っています
電話レンジの中で素粒子が運動を活発化させて光速のスピード運動までに至る
そして、42型ブラウン管テレビがリフターとして電子を注入することで少量のバイト数を過去に遡らせることが可能である
人間については、クラッキングしたSERNのハドロンコライダーで生じたカー・ブラックホールで記憶の情報を圧縮することで過去に飛ばすことができる
言わば生身ではなくて、記憶だけを過去に遡らせることでタイムリープすることができるのです

これはSteins;Gate中にあったセリフの要約ですが、実にしっかりと詳しく述べられています
ノベル作品においては、タイムスリップなどは「そうなるものである」という位置づけであって深く語られていないのが普通です
しかしSteins;Gateは、あえて長文を割いて設定を説明しています。ここから、この作品の力の入れようというものが良くわかります
ですが……気をつけてほしいのは、同時にこれは欠点ともなりうる点です
いわば理詰めで説明されているため、同じように設定に対する欠落というのも理詰め(=ファンタジーに頼らない常識)に捉われがちになります
耳から携帯電話を使って、未来に関する情報の粒子を送ることは無理があるでしょう
このように、科学的根拠でガッチガチに作品を固めてしまう行為は、足元をすくわれかねない諸刃の剣になりかねないです
しかしながら、これほどの科学的側面からアプローチをすれば、他とは一線を画している作品としてプレイヤーから認識されます
その時点でもう、Steins;Gateはあらゆる意味で他より勝っているのです


③伏線の回収率の凄さ
特にTrueにかけての伏線回収はお見事でした
体験版にあたるオープニングの部分の謎はかなりの量があったと思います。しかし、納得のいく解答を提示できました
この怒涛の伏線回収率と、自分と世界を騙すという点において、EVER17と比較されるのかなと個人的には感じました
FBと綯ちゃんとの伏線はちょっとどうかと思いましたが、ああいう世界線なら十分あり得るかな?と納得できます
ライター3人(批評空間には2人しか登録されていませんが)でよくここまで矛盾無しに作れたなと感嘆しました
複数ライターも連携次第では物凄い作品を作れるということを証明しました。Ever17も複数ライターですけど

逆に残った謎もいくつかあります
(1)SERNへの直通回線がなぜラボにつながれていたのか
(2)α世界で主人公に送られてきた「お前を見ているぞ」などの警告メールは誰が送ったのか?
(3)『シュタインズゲート』である世界線はどうして「1.000000」ではなくて1より少しだけ多いのか
いくつか仮説を立てることもできますが……ここら辺はワザと回収しなかったのでしょうか?
さて、個別√も検証していきます



・鈴羽√
本編第6章から分岐する鈴羽√です
この世界では、8/9までに鈴羽が帰らないことにより、ラジオ会館にあるタイムマシンが故障している世界
鈴羽が未来からきたタイムスリーパーであることは、割と早い段階から気づいたのではないでしょうか
私は体験版で出てきた際の「この時代ではこういうのが流行っているのか」という言葉と、彼女の服装で目星をつけてました
結果としてはその予想は当たるわけですが、彼女=ジョンタイターであるのはビックリでした
彼女の父親がダルなのは、タイムマシンオフ会あたりでピンとくるかと思います。ピンバッチは名探偵まゆしぃ任せでした
特に印象的だったのは、タイムリープに様々な科学的弊害はあれど、人の心の問題点まで触れていた点です
まゆしぃの死と鈴羽の死を両方避けるために、永遠の2日間をループし続けた主人公は次第に心が壊れていきます
「これじゃあ緩慢な自殺をしているのと同じだよ!」と戒める鈴羽の言葉は重かったです
科学だけに頼るのではなく、人の心の構造の大切さという点を疎かにしなかった姿勢は、非常に好感が沸きます
ENDは結構アッサリしており、これから先が非常に気になる終わり方でした
どうやら鈴羽√は、殆どの人が最初に到達する√らしいですよ!
この√で、冒頭オープニングの世界がダイバージェンス(世界線変動率)が1を超えている、β界であることがわかります


・フェイリス√
本編第7章から分岐するフェイリス√です
この世界ではフェイリスが過去に送ったDメールで、フェイリス父が10年前の事故で死なない世界
フェイリスの父が死ななかったことにより、まゆしぃを救う鍵となるIBN5100が柳林神社に奉納されていません
それはつまり、主人公がIBN5100を手に入れられずにまゆしぃが死ぬ世界です
フェイリス√は鈴羽√よりも分かりやすく、フェイリスが誘拐されたことでIBN5100を売り、その金を身代金として払ったことは容易です
むしろ大切なのは、タイムリープしている人だけでなく、タイムリープしてきた世界の人間も思い出がなくなっている点です
主人公とフェイリスが付き合っている世界においては、主人公はまゆしぃやダル、紅莉栖とのフラグはたっていません
その事について哀愁を感じる主人公にフェイリスの言う言葉が実に的を射ていると感じました
「彼氏が記憶をなくしていると、私は今までの積み重ねた記憶なんて虚しいだけだニャ」
タイムリープした人物だけでなく、その世界線の人物までも思い出を無くす
思い出を保持・堅強にするために、思い出を無くすとはパラドックスな行為であると言えます

さて、フェイリス√のダイバージェンスは少々他とは異なっています。1桁の数字が何も書かれていません
0がまゆりが死んでしまうα世界線、1が紅莉栖が死んでしまうβ世界線です。この√では、まゆしぃも紅莉栖も死にません
このことからフェイリス√のみ、1桁が2~9の間にある新たなγ世界線である可能性が非常に高いです
ではなぜ、1桁の数字が表示されないのか。それは、ダイバージェンスのメーターを作ったのがα世界線の主人公だからです
α世界線の主人公は、αとβのみの世界を行き来しているため、γ世界線を補足していません
ダイバージェンスメーターは、主人公の持つリーディングシュタイナーの能力を道具化したものです
というわけで、主人公が認知していない世界をダイバージェンスメーターは捉えることができません
ですから、フェイリス√では1桁の数字が何も書かれていないのです。αでもβでもない世界なのですから


・ルカ子√
本編第8章から分岐するルカ子√です
この世界ではルカ子が送ったDメールにより、ルカ子が男ではなく女である世界です
男として秘めていて、決して表に出さなかった主人公を好きという感情。これを伝えるためにルカ子は女を望みました
そして主人公も今までの鈴羽、フェイリスの思いを踏みにじってきたこの道に疑問を抱き、疲れてしまいます
その結果、主人公はまゆしぃが死ぬことが分かっていながら、ルカ子の思いだけは消させないために見殺しにすることになります
最後のコミマでの3人の笑顔の写真。死ぬと分かっている主人公・ルカ子はどんな気持ちでまゆしぃと写真を撮ったのか?
そして最後にでてくる、主人公とルカ子と、その子供の写真がプレイヤーに追い討ちします
友人は「まゆしぃを諦めてルカ子にくっつき、あまつさえ偽善ぶったことをするなんて、この√はとんだ鬱ゲーだな!」と憤慨していました
主人公の何度もループして体験してきた行為は肉体的・精神的にも追い詰められ、このような√になってしまったのではないでしょうか


さて、ここまでは全てまゆしぃを殺させないための布石でした。夢見師のように世界を変えなければなりません
ダイバージェンスが1を超えているβ世界に行かなければ、時間に差異はあれどもまゆしぃは必ず殺されてしまう
今までに鈴羽・フェイリス・ルカ子の大切な思い出を殺すことで、α界も0.22から0.52まで引き上げられたわけです
ここからIBN5100を取り戻す最後の要である、萌耶のDメールを消す作業が始まります


・まゆり√
本編第10章から分岐するまゆり√です
いわば、このゲームにおける究極の選択である√です。『選択』がいかに重いものなのかを説いた、あの空の向こう側を彷彿とさせます
主人公は現在のα世界を脱出してβ世界に移行しなければ、まゆりは死んでしまう
しかし、β世界に移行してしまえば、今度は紅莉栖が死んでしまう
どちらも大切なラボメンであり、仲間であり……いったいどちらを選択すればいいのか?
この√では、紅莉栖を見殺しにしてまゆりを助けます
全てを語った上で自分が死ぬ世界を勧めた紅莉栖。紅莉栖の死への恐怖と覚悟を背負ってまゆりを助けることを決めた主人公
そして意を決して主人公はβ世界線を飛び越えるわけです

そして着いたβ世界線。主人公の白衣には、不器用な紅莉栖が縫ったピンク色の裁縫跡はもう無い
愕然とする主人公は、まゆりにラボメン004(紅莉栖)のことを聞くが、ラボメンは3人だけであり004などいないと答えるまゆり
「そうだよな……ラボメンには……004はいなかったんだよな……」
涙ながらにそう呟く主人公。紅莉栖は既に殺されていて、ラボメンになることのないβ世界でまゆりを大切にすることを誓います
……正直、この√は胸が痛かったです。バッドエンド好きの私が、涙と鼻水出しながらプレイしてました。……実にお淑やかではありませんね
世界線を飛び越えたとしても、人々の心の底にはその人の残滓というものが漠然としつつも残っていました
リーディングシュタイナーは主人公だけの能力ではなく、微弱ながらも他の人たちにも備わっていることが判明します
物語としても、設定としても、いよいよ最終√が近づいてきています


・紅莉栖√
本編第10章から分岐する紅莉栖√です
展開はまゆり√と同じような感じであり、一番ギャルゲーらしかった√でした
はっきりいって感想はそれだけなんですが……紅莉栖も救われておらず死んでますし
いきなりまゆり√からガクッと出来が下がったように感じましたが、全てはこの後のTrueのための布石だったとは……


・True√
紅莉栖√から分岐する本編第11章です
プロローグの謎を一気に解いていくといった意味で爽快な√ですが、内容はかなりブラック
ドクター中鉢と紅莉栖が親子関係であるとわかり、話している間に険悪になり、そしてその後に起きたのは……
まさに自分の手で愛する人を不幸に陥れてしまったという絶望と、未来から提示された希望
自分と世界を騙すという手法で、見事に紅莉栖もまゆしぃも救うことができたというHAPPY ENDなTrue√でした
息を呑む展開の連続でありますが、「まさかこんなことだったとは!」という驚愕さまではいきません
逆にいえば、ある意味で予想しうる範囲内で上手く纏めており、決して超展開ではありません
隙のほとんどない完璧に近い完成度を誇る、近年では稀に見る名作とプレイ後は思うことでしょう
ラボメンバッチが無事に全員の手に渡る世界になりますように



・Sense offとの世界観
以前に私はSense offで、過去現在未来までの長いヒロインの数の道が束になっていると考えました
過去が共通している一本道からヒロインとの未来へ続く5本の道に分かれるのではないのです
Steins;Gateも過去を改変して、その上で各々の√が成り立っています
鈴羽√での世界線の説明が、ほぼ同じように語られていることがわかるでしょう
世界線は毛糸の「より糸」のようなものであるという例えは実にわかりやすかったです
毛糸はより糸が何本も合わさって構成されています。このより糸1本1本がα世界・β世界……となります
そしてそのより糸も、繊維が合わさって出来ています。この繊維が、例えばα世界の0.22界や0.52界などになるわけです
繊維が異なれど、収束する結末は変わりません。作られるより糸の大まかな道筋は同じなのですから
αより糸には鈴羽やルカ子や紅莉栖√という繊維の塊があり、βより糸にはまゆしぃ√、γより糸にはフェイリス√があると考えれば馴染みやすいかも
ただ、Sense offと違うのは、Sense offはヒロインの分だけより糸があるところです。αより糸のように、同一√が存在していません
またSense offでの主人公が三次元(=√俯瞰者)として生きているのは、Steins;Gateのリーディングシュタイナー概念と同じです。世界線を跨いでも認識できることが共通点です

ここまで考えれば、Sense offとかなり相似なSteins;Gate作品であると言えるでしょう
ですから、Ever17とこの作品を比較するのは的外れではないでしょうか。Ever17は同一時間軸に2つの物語が進行しているのですから、厳密に比較対象とすることはできません
同様に、蒼色輪廻と同様に考えるのも当てはまりません。複数の物語が同じ舞台で交わらければならないからです
さらに、YU-NOや何処へ行くの、あの日などの並行世界と比べることもできないのです。過去が世界の同一上に存在しているからです
結論からいえば、Sense offくらいしか正確にSteins;Gateと比較することは難しいと私は思います
もちろん広意義での並行世界や多世界論やSFモノと比較対象するのならば可能ですし、伏線回収率や驚きのトリックという意味では十分に比較できます




・総評
09年を代表すると言われる作品になってもおかしくないと思います。あちこちで評判になるのも納得です
精巧に作られ、密度の濃さは一級品。内容、キャラクター(特に主人公とまゆしぃ)面でグーンと他に差をつけました
私自身も90点以上の点数をつけるのは実に1年半ぶり。この作品をプレイして良かったです
もがき苦しんだ主人公、運命に翻弄された鈴羽や綯ちゃん……Steins;Gateでタイムスリップに対する印象はガラッと変わりますね



・一言感想の羅列
①この作品のオタク用語の量は山のようにあります。隠れねらーの紅莉栖も混ざって凄いことに。欠点となりうる可能性も
②前半と後半で主人公に対する印象はこうも変わるものなのか……
③正直言って、攻略サイト無しに全ロックを解除するのって難しい気がします
④OPが良かったのも作品購入の決め手の1つ。歌詞がまんまネタバレで、たくさんの意味が込められてます
⑤トゥットゥルー♪のまゆしぃ死にすぎやで!銃殺・礫殺・刺殺・ゲル化・心臓発作……どんだけ殺したいんだ
⑥今思えば、立ち絵のあるキャラクターはみんな重要すぎるポジションにいたなぁ
⑦やはり最後はこの台詞で締めるしかないのか。エル・プサイ・コングルゥ

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