ubuさんの「ここより、はるか -Surrounded sea in the world-」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

これはたぶん、ほとんどの人にとってまったく面白味の無い作品だと思うんですけど、でも個人的には大好き。なんつーかこう、俺の作りたかったエロゲ感(?)がすごい作品。いやゲームは作ったこと無いけど。でもすっごいそう思う。伝われこの感じ。
やっぱりエロゲなんてものは、学校に居場所がないタイプの人間の味方であって欲しくて。
ていうかサブカルってもともとそういうものだったはずで。
エロゲなんてその極地。
オタクになりきれないというか。
自分の趣味はすごく恥ずかしいもので、リアルではひた隠しにする。
そもそも趣味を共有なんかしたくねーよっていう。どうしたって温度差はあるし。
匿名の場でなら全然いいんですけどね。
でもリアルだとちょっときつい。

そういう人間は、最近はサブカルからも排除されつつあるんですけど。
でもそういうタイプにはきっと、このゲームのヒロインたち、
特にうららちゃんの、必死に対外的な自分を作り上げてる感じなんかは、結構刺さるんじゃないかなと。
だからある意味すごくエロゲらしいシナリオだと思うんですよね。
他の媒体でやってもしょうがないし。
サブカルにはまちゃって、エロゲに手を出すほどのめり込んで、その中でもごくごく一部の人間。
どのくらい居るのかわかんないけど。
でもほんと、刺さる人にはもうどうしようもないくらい刺さるタイプ。
だからしょぼいとかコピペシナリオとか言われると「うーん……」って。
他の媒体ならともかく、エロゲでは受け入れられて欲しいなーって。


母親と自身の死っていう特殊性がある主人公と、そもそも人間ですらないうみは除くとして。
あの世界に逃げ込んできた人間のヒロインは、三人とも精神的にめちゃくちゃ弱い。
だから強い人はもちろん、普通レベルの自己肯定感を持ってる人からすれば「別に逃げるほどのことでもなくない?」って感じになるんだろうけど。

でもそうじゃない。弱くて自分嫌いで卑屈で醜い人間からするとさ。
彼女たちの弱さは、たまらなく愛おしく思える。
思い込みとか、被害妄想とか、まあいろいろ言われるんですけど。
でも、傍から見たら劇的でも何でもなくとも、本人にとっては間違いなく悲劇。
そういうことって、結構あると思うんですよね。


自分の容姿が嫌い、頭が悪いのが嫌、運動音痴なのが恥ずかしい、不器用なのを隠し通したい、好かれるよりも嫌われたくない、純粋な人間が羨ましい、他人といると生き苦しい、世界は自分には優しくない……

思春期ならさ、考えるでしょこれくらい。
美少女ゲームにはまっちゃう、はまらざるを得ない人間になんて特に。


そんなどーしようも人間としては、彼女たちの逃げたくなる気持ちは、すごいわかる。
ゲームのキャラみたいな経験なんて普通しないし、理解できるだなんてのは思い上がりでしかないけど。
それでも彼女たちについては「その気持ち、すっげぇわかるよ」って言いたい。


自分自信が他人より不幸だなんて自惚れるつもりはないけど、でも現実から逃げたいとは思うよね。弱いから。
ほんのちょっとのことですぐ死にたいとか言うし、誰も気にしてないようなことでうじうじと悩み続けるし、誰からも見られてないのに常に周りの視線ばっかり気にしてる。
ある程度はしょうがないと思うんすよ。
そういう人間が社会と折り合いを付けてくためにも、こういう作品は必要。

そんなクズでもなんとかがんばってみようかなって思えるのは、やっぱり人から必要だと言ってもらえたとき。
もちろん最初は疑うだろうけど。性格歪んでるから。
でもそれでも必要だと思ってくれるなら、全力で答えようとはする。みっともなくても。
誰も自分に関心なんてないし、他の奴のことを気にしてもしょうがないって。
そこまで追い込まれて、やっと本気でそう思える。

このゲームのヒロインたちも、そんな感じなんじゃないかなーと。


相手のことを信じきるために行為に及ぶってのも、生々しくて良いじゃないですか。
堕落から抜け出すには愛がないと。
恋に落ちた瞬間未来が明るく開けるなんて、錯覚かもしれないけどさ。
未来はクソッタレだって思ってるけどさ。
わかっていながら人恋しくなっちゃうのも、また弱い人間だからこそ。

そういう弱い部分が、ヒロインたちから感じられるのが良かった。
特にうららは、他二人以上に生々しさがある。
自分なんて誰からも必要とされないと斜に構えて。好かれるよりも嫌われないことに必死になって。それでいて「いい人」だと思われることに罪悪感を抱く。
このこじらせ具合がいい。

彼女のシナリオでは、主人公が「約束を交わした相手はうららだった」って断言しちゃうのも良い。
他ルートでは主人公の中だけで自己完結してる感じだったけど。
あのシナリオでは、はっきりと言葉にして伝えてる。
実際には間違っててもさ、信じ切った者のとっては真実。
そういう嘘みたいな理由付けがあってやっと、行動を起こしてみようかって気になれる。

それでいて、最後の最後で一人逃げようとするのがまたね。
愛し合ったはずの純希との約束すら破ろうとする。
最低な行為だけど、でもわかる。
誰も見てないところでならすぐに逃げ出したくなる。精神的な負担を少しでも減らしたくなる。
そもそも「やらなきゃ」って意識だけで体調崩すレベルの負荷がかかるのに、それ以上なんて無理。

綺麗に終わったと思わせて、最期に生々しさを見せ付けてくる。
現実に帰らなきゃとか言いながら、どこかでそれは奇麗事だとも感じてる。
醜いけどさ、でもやっぱり、弱い人間てこういうもの。


それにしても、ラストまでいっても後姿しか見れないヒロインって他にいるんだろうか。
これで実際には美人だったりしたら台無しだし、かといってブスに書けば良いってもんでもない。
低いのは自己評価であって。他人からどう見えるかはあんまり関係ないから。
もちろんその他人にはプレイヤーも含まれてる。
後姿だけっていうのは、ある意味英断だったんじゃないかなーとも思う。
まあ単純に描きづらかっただけかもしれないけど。


あとこれは彼女自身のキャラではないけども、主人公がうららを鬱陶しいと感じてる部分。
親切で声を掛けてくれてるはわかるけど。
だからこそ逆にいらつくというか。いい人すぎて癇に障る。
自分自身とはかけ離れた純粋さが気持ち悪い。
……とか考えながら、人に当たってる自分自身にますます腹が立つ。
あの感覚は、うらら自身の妹(本当のうらら)へ対する感情そのまんまなんじゃないかとも思った。


他二人ももちろん好きで。
うららの場合は憧れの人そのものになるって形だったけど、こなつの場合は理想の自分像が別人格として現れる、このはちゃんは親友が裏のない存在として常にそばに居てくれる。
こう書くと幼稚に見えるけど、寂しい人間の思春期の妄想としては全然有り得そう。


んで先生たち。
現実逃避を選んじゃった大人(?)って意味では、一番プレイヤーに近い立場なのかもしれない。
単純な可愛さで言えば杏奈先生が最強。


そんな感じで、どっちかというとヒロイン側の視点で共感できる部分が多くて、そんな彼女たちが現実に帰って行く姿には胸を打たれた。
主人公は出来過ぎてる気もするけど、そもそも怯えるべき未来がないんだから、最期くらいは他人のために尽くすっていうのであれば理解できなくもないか。
そういう意味じゃ、この設定はうまい抜け道かもしれない。
うみに関しては設定が特殊すぎて軽々しいことは言えないけども、
ただ自分の役割よりも純希といることを優先する選択は、ある意味人間らしい不完全さにも思える。
-Surrounded sea in the world-ってサブタイも鳥肌モノ。

あと各ルートで彼女が純希に呼びかける台詞。
「彼女は……
 貴方を恨んでなどいないのだから……
 もう、自分を許してあげて……」
結局のところ、これが全てなんじゃないかって気もする。

純希だけじゃなくてうみ自身も、うららもこなつもこのみちゃんも、たぶん梢も先生達も。
あの世界にいる人はみんな、自分自身に厳し過ぎた。
いや普通はそれくらい厳しくなくちゃいけないのかもしれないけど。
でも、自分の心のキャパシティを超えて背負い込もうとしすぎた。
弱い自分を認められなかった。弱い人間には弱いなりの生き方があるって、割り切れなかった。

そういう人間に対して、もうちょっと気楽に生きてみてもいいんだよって。
もうちょっと自分に優しくしてあげてもいいんだよって。
そういうことを伝えてくれるシナリオなんじゃないかって思った。


……とか言いつつ、あの世界に残るちゃんとしたバットエンドも、一つくらい欲しかったなと思ってる。
先生たちと一緒に逃避し続けるエンディング。
現実から逃げ続けて、気楽に毎日を過ごして、それでも不安に押しつぶされそうになったらお互いに慰めあって、
そんな感じの。
てか杏奈先生とHしたい。日付変わるシーンの銀髪は先生かと思ってめっちゃ期待してたのに。
それだとただ現実逃避してるだけになっちゃうのかもしれないけどさ。
エロゲだからこそ、そういう部分もあっていいと思うんだよな。

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