amaginoboruさんの「ナツユメナギサ」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

グラフィックが美麗な考察ゲー。配色が好みの方であれば、CG買いしても損はないレベルのクオリティです。一方考察部分にはあえて穴が多数設けられているので、自分なりの解釈をして楽しむ事ができます。
現実世界で大河内先生がサナトリウムに向かった場面に、こんな地の文があります。


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傍らでは、一匹のペンギンが寄り添うように眠りこけている。

歩君がここに入院するようになった後に現れたらしいが・・・
この子も、昏睡しているということになるのかな。

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このペンギン、一体何者なんでしょう?現実世界では街や人前に妖精ペンギンが
姿を現すことはないとの事。大樹付近には存在が確認されていますが、森の奥深く
にあるサナトリウムで、野良のペンギンが眠っているだけという状況はあまりに
不自然。仮に野良だったとしても、そんなどうでもいい描写を何故わざわざ説明して
いるのか?やはり不自然です。

彼は歩に縁故のあるペンギン、つまりペンペンなのではないでしょうか。
では何故彼は眠り続けているのか?(描写がない以上昼寝しているだけの可能性も
ありますが、状況から「歩の力にあてられ寝続けている」と仮定して話を進めます。)

眠り続けるには、被対象者がロビンソン(現実と願望が一致しない)状態である、
音々のように姿を変えられてでも夢に飛び込む、あるいは大河内先生のように
観測者として存在する、のいずれかが条件となります。
このうち観測者はペンペンの状態からして考えにくい。残り2パターンのいずれか
と考えるのが自然でしょう。


ここでオープニングに視点を向けてみます。歩がペンペンを自然に帰すところから
物語は始まりますが、ここでペンペンの心情が次のように語られています。


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確かに、私は海の物とも陸の物ともしれぬペンギン風情ですが。

あなたを知ったその日から、もはや、私の居場所はその胸の中にしかあり得ないのです。


私こそ、あなたにどれだけの礼を言いたいか。

もどかしい・・・・・・っ。ぺーぺーとしか言えぬ、このくちばしがもどかしい。

せめて一言伝えられたらいいのに。

あなたのことが好きでした。

あなたといた夏を忘れません。

だから。

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歩に助けてもらい、どれだけの恩義と愛情を感じているかが分かるシーンです。
期間こそ短いとはいえ、死にかけていたところを助けられ、泳げるようになるまで
良くしてくれた歩への愛情は、渚のそれに勝るとも劣りません。
そんな最愛の彼女が危機に瀕しているとわかれば、ペンペンが彼女の
力になろうとしたとしても、なんら不思議ではありません。

またオープニングでペンペンは、愛情を言葉で伝えられないことにもどかしさを
覚えています。

音々は歩と正樹を助けようと、姿を変えられても夢に飛び込みました。
正樹は夢に引き込まれた際、現実と願望が一致しないことから老樹真樹へと
姿と記憶を変えました。

ペンペンは歩を助けたい。しかし助けることは、渚のいる夢を壊すことになるため、
その正体を知る歩が音々や正樹と同様に姿を変えた。
またペンペンの「言葉を伝えたい」という願望と現実が一致しなかったことから
正樹が真樹へと変わったように、彼(彼女?)も在りたい姿へと変わった。

そう考えることも、できるのではないでしょうか。


ではペンペンは、夢の中で誰になっていたのか。
願いを叶える、つまり歩を救ってかつ愛情を伝えることのできる、ペンペンが
知りうる人間といえば彼しかいません。郡山渚です。

元々夢の中でにおける渚の存在は、歩の記憶と残留思念のみという非常に不確かで
あやふやなものです。それだけで本当に彼女の心へ「生きてくれ」「愛している」
という渚の想いが届いたのか、甚だ疑問です。

ですが飛び込んできたペンペンという存在と、人間に(≒渚に)なりたいという彼の
願望に、歩の記憶と渚の残留思念が混ざりこみ、夢の中の渚という人間が出来上がった、
と考えれば、歩を現実へ引き戻そうとする、教会のシーンにも俄然説得力が生まれます。
ペンペンは歩を助けたくて、歩に好きだと伝えたかった。それは郡山渚の欲するところと
完全に一致しているわけですから。

オープニングで、渚は自分がペンギンになった夢を見た、と大河内先生にいいます。
しかしそれは夢ではなく現実。人間になりたかった彼が愛する人と一緒にいた、最後の
記憶だったのです。





というトンデモ考察が成り立っても不思議ではないほど想像に余地のある作品。
それが「ナツユメナギサ」です。

まぁさすがに夢の渚=ペンペン説は無理繰りすぎますが。
ペンギン頭良すぎとか、人間世界の生活に順応できるのかとか、ツッコミどころ
満載ですし。

とはいえ、こういう遊び方をするのが本作の楽しみ方と認識しています。
はるかやノンポリ、つかさや祐実の存在、アリアと有田とはるかの娘の関わり、
羊エンドの意味など、あまりにもあやふやな点が多すぎる物語です。
更にちゃぶ台返し上等の夢オチに加え、現実世界までがファンタジー満載とあれば、
いくらでも読み手の妄想を広げることができます。作中に散らばったパーツを好きな
ように組み立て、自分だけの結末を考えるのが本作の楽しみ方かなぁ、と。

他ヒロインが歩の踏み台に見えて不満な方もいらっしゃるでしょうが、そこは他者の
解釈なんてブン投げ自分なりの説を立て、お気に入りのヒロインをハッピーエンドに
してあげるのがよろしいかと。ナツユメエンドでさえ、最後は渚生存フラグと取れそうな
セリフと行動を取りますしね。

逆に他の方の解釈を見て「あーなるほどなー」とうなるのもまた一興。こういう場
ですから、様々な方のいろんな考察を読むことができますし、色々見て回るのも
面白いとかと。

正直なところシナリオ自体は決して名作級ではありません。しかし夢らしくボカした
部分を多様に残し、遊び手に十二分な想像の余地を残している点は評価できます。
物語に完全な回答を求める方には不向きですが、想像を働かせ自分なりの解釈を見出し、
かつ他者の考えに触れるのが好きな方には、十分に名作と呼べるになりうると思います。





このように考察ゲーとして十分面白いのですが、本作で最も評価されるべきは、十分
良質な物語のクオリティすら補って余りあるグラフィックでしょう。万人受けしそうな
女の子の表情もさることながら、緻密に配慮・計算されつくした配色と構図には
シャッポを脱ぎました。

まず構図について。本作の配色ベースは白+三原色+緑なのですが、そのそれぞれが
華美になりすぎず、余計な主張もせず、あたかもその配色が当然であるかのような
構図なんです。


例を挙げると、遠野はるかとベッドの上で語らうCG。髪とカーテンで桃色を演出し、
海と空の色、そしてワンピースで淡い空色・水色を作り出しています。タオルケットを
黄色にすることで三原色の支配率をバランスよく調整し、ワンポイントとして左上に
草の緑、右下にペンギン人形の濃い青を配置しています。
なんでもないCGに見えて、画面上の各色の支配率やシナリオの空気、パッと目を惹く
小物の配置場所など、あらゆる面に気配りがなされています。

配色も同様です。例えば渚の家のシーツですが、ヤっているキャラや構図次第で配色が
変わります。逆周りに会わせた色を使うことで、CG単品のクオリティを向上させて
いるんです。変に整合性を考え色を忠実に再現するよりよほど上手い見せ方で、やはり
丁寧な心配りが感じられます。
それでも理想的な色が出ない時は、画面を引いて色を増やすなどの工夫も見られます。
はるかとのHシーンにおいて、箪笥の取っ手を使い黄色を演出しているのが好例ですね。

ヒロインの服装や立ち絵にも同様の配慮が感じられます。彼女たちの服装は基本
三原色+緑から、いずれかが抜かれています。そして普段着・制服・水着で抜く色を
変えているのがわかります。
同時ヘアバンドやベルト、ヘアピンやウォームアームなど、小物で特定色をワンポイント
として使うことで、彼女らのメイン色をより明確にしているんです。


上記のような構図や配色は、当然ながら他作でも考えて構成されているのでしょうが、
本作の心配りは他作のそれを圧倒しています。絵を売りにしたエロゲと比べれば
そこまでベタ褒めするレベルではないのかもしれませんが、考察やシナリオに力を
入れたエロゲで、ここまでのクオリティを持った作品は滅多に出会えないレベルかと。

何より絵に関してはド素人の私にすら、構図と配色への緻密さと配慮を感じさせる
時点で、本作がいかにグラフィックワークに対し真摯であるかが理解できます。
考察・シナリオが評価されている本作ですが、グラフィックの美麗さと手の込み様は
もっと評価されるべきではないでしょうか。





蛇足1
シナリオやキャラ個性、シチュで物語を評価することは多々あれど、グラフィックで
感嘆したのは、現時点では本作と「パティシエなにゃんこ」のみです。
求めているものとは違いますが、こういった感動に出会えるのもまた嬉しいものです。


蛇足2
月島まさきの仮初めの姿である老樹真樹。彼女の専用絵には最初の着ぐるみとラストの
夕焼けを除き、黄色が存在しません。また美浜羊の魔法が解けた後のCGには、赤を
想像させる色がまったく使われていません。

一方、月島まさきの制服姿はクリーム色(≒黄色)のベストです。
また羊に魔法がかかっている際のCGには赤系統が良く使われ、全てが解決した
羊エンドの配色には、ふんだんに赤系統が使われていて、目が痛くなるぐらいです。

願望が具現化した世界で現実を想起したくないから、月島まさきを思わせる黄色がない。
赤は羊が輝いている時のイメージカラーだから、サナトリウムでの羊には赤を想起
させる色が使われていない。解決した後のEDでは逆に、過剰なまでに使われている。

・・・とか計算して作られていたら凄いなーとか。まぁ妄想です(笑
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