百合を題材としたゲームの一つの完成系
プレイ前の期待値は正直に言うと、かなり低かったです。
Innocent Greyの作品はカルタグラしかプレイしたことがなく、
また、その作品イメージもきれいな印象からかけ離れていたからです。
加えて、作品形態もハーフプライス作品でしたので、
土日がつぶれればいいかな、程度に考えていました。
しかし、プレイし終えた今、私はこの作品に出会えたことを、
世に送りだしたInnocent Greyに心から感謝しています。
この物語では、心の繋がりを求める少女が同級生と心を通わせ、
同級生は少女にとって友人と言える存在となり、
友人はやがて少女にとってかけがえの無い存在となる、
その過程を見事に書ききっています。
繊細な音楽、ビジュアル、そして画面演出がその物語を更に見事なものに昇華させています。
「FLOWERS」は少女たちの心の繋がりを重視して描写した、
百合を題材としたゲームとして一つの完成系である、と私は思います。
ただ、ある理由から、私は100点をこの作品につけることができませんでした。
それは、マユリルートのラストの展開です。
勘違いしないでもらいたいのですが、私はこのラストに反対ではありません。
むしろ、蘇芳のマユリに対する想いが、最後の独白に極限に凝縮され、
作品としての美しさを引き上げている、とさえ考えています。
また、この作品が4部作のうち1部であるため、今後二人が離れ離れのまま終わるとは思えませんし、
「春」が題材ですので、「出会い」と「別れ」というテーマがあることも分かります。
ただ、やはり、私は蘇芳と、そしてマユリには今すぐにでも幸せになってほしかったです。
そして、自分の苦悩を理解し、心を通わせた恋人から離れ無ければいけない、
彼女の決断がどれほどのものであったのか、想像すると胸が苦しくなります。
逆に言えば、今後の展開で彼女達が幸せになるのならば、
私はこの「FLOWERS」という作品を100点満点のゲームとして認定できます。
あの時の胸の苦しさですら、物語を美しく見せるためのスパイスであったと。
「夏」は今年中に出るとのことですので、プレイする前と違い、
不安ではなく、期待に胸を膨らませて彼女たちの物語を待つこととします。