ドM向けの名作
「WHITE ALBUM2」は「WHITE ALBUM」の続編なのでこれをやってないと2のほうできなくね?っていうのを知人に言われたのですがそうではありません。確かに初代ホワイトアルバムをリスペクトしてる箇所もいくつか見られますがホワイトアルバム2からプレイしても十分楽しめます。なのでほとんど1と2には相関関係がないと言ってもよろしいかと。「WHITE ALBUM2 -introductory chapter-」をICと、「WHITE ALBUM2 ~closing chapter~」をCCと略称で表記しますので読む際はご注意ください。
■丸戸作品のWHITEALBUM2
丸戸作品の根底には主人公の一番好きな人と二番目に好きな人との順位争いと周りのキャラの協力を得て問題を解決することの2つがあります。私の中では前者を『過去の女』と呼び、後者を『優しい世界』と呼んでいます。以前の丸戸作品の「パルフェ」や「ショコラ」では『過去の女』の描写があっさりとしていました。一方WHITEALBUM2ではICという独立した話を作り、プレイヤーに『過去の女』を経験させることで感情移入させやすくしました。以前の丸戸作品の形式をとるとおそらくICは作られず、CCだけで『過去の女』の描写がされていたと思います。ICになぜ選択肢がないのかは以上の理由かなと個人的に考えています。ICを初めてプレイした時面白いけどこれって選択肢ないしエロゲじゃなくね?って知人との間に話題になりました。CCをフルコンプしてようやく理由がわかりました。ICは絶対に変えることができない過去を示しているからです。つまり丸戸作品の『過去の女』の描写に終始しているのです。だから選択肢がないのです。こう考えることで自分の中での疑問が氷解しました。悪い言い方をすれば「ショコラ」や「パルフェ」の『過去の女』の描写を分割して作ったのが「WHITEALBUM2」です。プレイヤーに感情移入させやすくするために『過去の女』のエピソードを独立させ、分割で売ったのではないかと思います。これ分割されていなければ意図がわかりにくかったです。もちろん制作費の資金回収の意味合いもあると思いますけどね(笑)話をまとめると、「ショコラ」や「パルフェ」ではあっさりしてた『過去の女』の描写を「WHITEALBUM2」では独立した話として作り、それをプレイヤーに体験させることで感情移入をさせやすくしたということです。
■「WHITEALBUM」としてのWHITEALBUM2
前述で1と2はほとんど相関関係がないと書きましたが初代ホワイトアルバムのリスペクト部分は多少あるのでそれについて書きたいと思います。初代ホワイトアルバムがどんな作品だったというと、ランダムイベントでめんどくさかったという印象が強いです。ホワイトアルバムのコンセプトとして「浮気」があげられます。他のヒロインと結ばれるためには現彼女と別れなければなりません。WHITEALBUM2ではそのコンセプトをしっかり取り入れて作っています。ICは前述の通り『過去の女』の話です。CCは千晶や小春や麻理といった他のヒロインと結ばれるためには現彼女である雪菜と別れなければなりません。codaではかずさと結ばれるためには雪菜と別れなければなりません。また、codaでは雪菜がPOWDER SNOWを歌うシーンがあるのですがそのシーンは丸戸さんなりの初代ホワイトアルバムに対するリスペクトじゃないのかなあと思います。話をまとめると、ホワイトアルバムのコンセプトである「浮気」をWHITEALBUM2はしっかり取り入れて作っているよということです。
さて、シナリオの細かい内容について言及していきたいと思います。
■「WHITE ALBUM2 -introductory chapter-」について
ICは雪菜とかずさと春希の3人が主要な登場人物です。この三人がいろいろこじれて微妙な関係になってしまいます。なぜ三人がこじれてしまったのかは登場人物の性格によるところが大きいです。雪菜は中学時代のトラウマにより仲間はずれが怖くてずっと三人で仲良しの関係を望んています。春希はかずさが初恋で優先順位的にはかずさが1位で雪菜が2位です。責任感が強く、その部分を雪菜につけこまれてかずさの思いを捨てられないまま雪菜と付き合ってしまいました。かずさは春希が大好きですが母親に捨てられたので臆病になっておりそれを表に出すまいとかっこつけています。雪菜が春希と付き合っているのに、三人でいたいとふざけたことを抜かし、かずさと春希がそれに耐えられなくなって春希とかずさが雪菜を裏切り一夜限りのセクロスして、かずさが海外に逃亡してしまいました。以上がICのおおまかな内容です。ドラマCDやデジタルノベルを読むと三人の性格や思いがよくわかると思います。初回プレイのときはそこそこ面白いなあと思っていましたがフルコンプした後再プレイすると切なくて涙が出てしまいました。いやー、よくできてますよこれ。フルコンプした方もドラマCD聞いて再プレイをオススメします!
■「WHITE ALBUM2 ~closing chapter~」について
CCはICから三年後で雪菜と春希が微妙な関係になっているところからスタートします。そこからいろいろあって小春や千晶や麻理に逃げるか雪菜と向き合うかが内容となっています。ICからCCの空白の三年間はデジタルノベルに書いてあります。そこで友近くんが格の違いが大事であることを身をもって教えてくれました。各ルートについての感想を述べていきます。
・小春ルート
知人とこのルートについて話したところ、黒髪清楚な女の子がDQNな彼氏作ってだんだんと変わっていき、金髪になり根性焼き跡がある感じに変化する話に似ているよねという結論になりました。そう、かわいいかわいい小春ちゃんが糞ヘタレ主人公の春希に染められていく話です。この糞主人公さえいなければ小春ちゃんはあんなことにならなかった。春希を脳内で100回は殺しましたね。ルート自体のできはそこそこよかったです。雪菜と別れるシーンの小春と春希の対比がとても良かった!小春ちゃんのエロシーンは一番使えました。このゲームでは小春ちゃんでしか抜いてないです!!!!小春ちゃんマジ天使!小春ちゃんがソックス履いてアソコをくぱぁするシーンと引っ掻き傷のついた背中を舐めるシーンが一番興奮しました!!!!まあ、これは僕が貧乳好きですからねー。贔屓目になっちゃうんですよー。フヒヒ
・千晶ルート
このルートはいろいろな仕掛けがあります。具体的にはプレイして下さいとしか言えません。このルートを終えた時、「天使のいない12月」の某ルートに似ているなあと思いました。まあ、演技と本当の感情の境界線はどこかな?っていうお話でした。届かない恋の演劇はとても良かったです。あの舞台上での千晶のラストシーンの姿って雪菜の本質を見事に表しているし、千晶の気持ちも表しているので心うたれるシーンでした。たとえ全部を失うことになったとしても全部を手に入れようとするのってcodaの雪菜と被りますねー。全部手に入れたのが雪菜HAPPYで、ほとんど失ったのがかずさHAPPYなのかな。千晶の声優さんの演技はすごかったです。エロシーンは使えませんでした。でも乳首舐めシーンにはキュンキュンしました!!!
・麻理ルート
麻理さんは萌えキャラでした。春希が雪奈と別れるシーンが印象に残っています。麻理さんはかずさに似ている部分が多いから雪菜はあんだけ泣いたのかなーと思ってしまいます(雪菜が麻理はかずさに似ていることを知っているかどうかわかりませんが武也あたりから聞いているのではないかと推測しました)。Hシーンは黒ストはぁはぁでした。でも使わなかったです。
上記の3つのルートにおいての雪菜の別れでの悲しみ方を比較すると面白いと思います。泣いているのは確かですが悲しみ方が微妙に違っています。
・雪菜ルート
失った歌を雪菜が取り戻すお話です。最後のHシーンは長くて笑いがとまりませんでした。やっと雪菜の思いがかなったもんね。そりゃああんだけセクロスするわ。雪菜エンディング曲の「愛する心」の歌詞をフルコンプした後聞くと涙が出てきますね。Hシーンは使えませんでした!そして丸くおさまると思いますよね。ね!さあ、次はかずさルート行くぞ!コンサート行くぞ!と思っていたらあれですよ。なんですかあれ。開いた口がふさがらない状態ですよ!!!!
■「WHITE ALBUM2 ~coda~」について
まさかの三部作というオチでした!今までの話は前座にすぎなかったんですよ。WHITE ALBUM2ってやはりかずさと雪菜と春希の3人の物語ということを再認識させられました。codaはCCで雪菜と結ばれてから2年後のお話です。このお話はかずさ選ぶか雪菜選ぶかが超おおまかな内容です。雪菜→かずさで進めるかかずさ→雪菜で進めるかで胃の痛みが大きく違ってきますね。僕はかずさ派で美味しいものは最後にとっておくタイプなので雪菜→かずさで進めました。共通部分でかずさを泣かせたシーンは俺のかずさ泣かせるんじゃねえぞ!!この糞主人公!と思いながら主人公を脳内で1000回殺しましたね。
・雪菜NORMAL
お互い知らない振りをして雪菜と春希が結婚するというお話です。いや、内容薄いっすよ。でも雪菜HAPPYと比較すると体のつながりより心のつながりが大事ってことを間接的に示しているのかな。
・雪菜HAPPY
codaでは雪菜とかずさの性格の違いがはっきりとでます。雪菜は家族や友達や親友に支えられた広い世界を持っている人です。周りにいる人達をできるだけ幸せになってほしいと願っています。しかし、自分の幸せ(春希と結ばれる)が第一でありながら、みんな幸せになって!って言っている矛盾した部分があります。そのせいでICでは三人であることが崩壊しました。自分の幸せと他人の幸せは両立するとは限りません。両立させる場合はどこかで折り合いをつけないとなりません。その折り合いが難しい。最終的にはかずさと雪菜と春希の幸せの平均値をとり、雪菜が結ばれました。そして周りの家族や友人も笑顔になり丸く収まりました。大団円ってやつですね。このシナリオはいままでの丸戸作品の『優しい世界』を現していてすごく良いと思います。しかしWHITEALBUMらしくはないし、かずさの感情を考えると辛いです。かずさと春希が妥協した形がこのENDなのではないかと。雪菜は強くて良い子なんですが傲慢なんだと思います。そこが魅力なんですけどね。このシナリオを一言で言うと我らが無敵の軽音楽同好会!って表現がしっくりきますね(笑)ただ、かずさの支えである母親の曜子さんが死んだらどうなるのかなと考えてしまいます。かずさが成長して春希と雪菜との三人でいることを受け入れられたと捉えられるんですが曜子さんが死んだらまた崩壊してしまうのではないかとヒヤヒヤしてしまいます。だから大団円って呼ぶのはおかしいという議論があるのではないかと。個人的には一応丸戸作品らしさを表しているということで大団円エンドと呼びたいと思います。ICのかずさが泣いている雪菜を抱くCGと雪菜HAPPYのラストの結婚式でかずさが泣いている雪菜を抱くCGは対比なんでしょうね。
・かずさNORMAL
このシナリオはかずさとセックスしまくるけど最後はかずさが雪菜と春希のことを考え春希との別れを選ぶ内容です。このシナリオはED曲の『心はいつもあなたのそばに』の歌詞に集約されています。歌詞の内容を簡略していえば、たとえ世界で一番愛する人と別れることとなってもその人を想っていれば強く生きていけるということです。人間は思い出がないと生きていません。前に進むことも大事ですが思い出をポケットに入れて、辛い時や苦しい時にはいつでも引き出せるというのが大切だと思います。その思い出は親友と仲良く過ごした日々でもいいし、愛する人と過ごした日々でもいい。このシナリオでは愛する人と過ごした日々を糧としてかずさが強く生きて自立するところに心打たれボロ泣きしました。一番好きなシナリオですね。ED曲聞くだけで泣けてきます。ラストはあんだけかずさに中出ししたのだからかずさが春希との子供孕んでいるんじゃないかなー。
・かずさHAPPY
このシナリオは他の全てを犠牲にしてかずさと春希が結ばれ、外国に逃げるという内容です。幸せっていうのは誰かの不幸を犠牲にして成り立っていると思います。雪菜ENDは三人の幸せの平均値をとりましたが、かずさHAPPYENDは雪菜の幸せを0にしてもかずさと春希の幸せの絶対値をとります。雪菜には積み重ねてきた5年間がある。春希と家族と友達と積み重ねたものがあります。5年ぶりに会ったかずさが春希といくら愛し合っていても雪奈の積み重ねてきた年月には敵いません。かずさと春希が結ばれるためには雪菜と積み重ねたものを跡形もなくぶち壊すしかない。その積み重ねの崩壊がすごいきつかった。いくら自分がかずさ派だからといっても悲しむ人の顔を見るのは辛かったです。かずさHAPPYのラストは雪菜の幸せが0に近くなったとしても広い世界を持っている人ですから少しずつ周りにある幸せを取り戻していったのかなあと思います。でも、雪菜はまだ春希を愛しているみたいですが(笑)ほんと、雪菜は執念深くて強い女の子ですね。そこが魅力なんですけどね。かずさは雪菜と違って狭い世界しか持っていなくて、母親と春希が大切です。とくに、春希がなによりも大切です。雪菜HAPPYのかずさは世界を広げて友達や母親を大切にします。春希も愛していますが妥協して感情を抑えています。妥協した代わりに世界を広げたのではないでしょうか。かずさNORMALのかずさは前述の通り愛しあった日々を思い出に生き、春希から離れました。かずさHAPPYのかずさは春希と自分だけの世界にし、お互いに依存しあって生きていきます。かずさHAPPYで一番好きなシーンはコンサート会場に春希がいなくても演奏を大成功させることです。かずさと春希の心のつながりが表していてこの二人の愛ってほんと深いんだなあと思いました。かずさと春希はお互いにないものを補完し合ってるお似合いのカップルだと思います。ラストシーンの雪菜がPOWDER SNOWを歌うところはいろいろ解釈が分かれているところですが自分は雪菜はまだ三人でいることを諦めてないし、かずさと春希が好きだよってことを示しているのではないかと。
さて、かずさの追加公演はどのエンドでも成功を収めましたがどの演奏がよかったのでしょうか。雪菜HAPPYでは母親の曜子さんが年に1、2回あるかくらいの演奏をしました。かずさNORMALではあまり言及されていませんでしたが欧州でお呼びがかかるようになったので素晴らしい演奏をしたのでしょう。かずさHAPPYでは客席の反応が曜子さんの凱旋公演クラスって言っていました。かずさの演奏は春希との心のつながりの強さによって異なるのではないかと思いました。雪菜HAPPYの演奏は春希というよりは雪菜と春希の心のつながりの強さを表現しました。かずさNORMALの演奏では春希の想いの深さを表現しました。かずさHAPPYの演奏では春希との心のつながりの強さを表現しました。自分の中では演奏の良かった順はかずさHAPPY>かずさNORMAL>雪菜HAPPYって感じではないかと思います。もしくは3つとも同じ順位で音色の表す感情が異なるって場合もあるかもしれません。雪菜HAPPYの演奏は人と人とのつながりを表現した。かずさNORMALは別れの感情と想いの深さを表現した。かずさHAPPYは裏切りの悲壮感と春希と結ばれた色ボケを表現した。こんな感じに違うのではないかと。
■シナリオ以外の評価
・絵全般
概ね不満はありませんが立ち絵の表情が少なかった印象が。CGと立ち絵が別人な気がしたのは何度かありました。あと、かずさと雪菜のCGの差がありましたね。シナリオで被写体の愛情の差が写真写りの差という表現がありましたがかずさと雪菜はそれに当てはまると思います。なかむらたけしさん、かずさ好きすぎだろと(笑)雪菜のCGのほうが違和感感じることが多かったです。かずさのCGはむら様の精一杯のかずさに対する愛情が感じられました。ほんと、むら様は黒髪ロング好きですよね。僕も大好きです!
・システム
アップデートファイル当てたら不満がなくなりました。強いていうならセーブデータ数をもう少し増やして欲しかった。良いシーンがたくさんあるのでセーブデータが足りませんでした。「最果てのイマ」や「コミュ - 黒い竜と優しい王国 -」のようなそれぞれのシーンに飛べるシステムや「コンチェルトノート」のようなフローチャートシステムが良かったですね。ちょっと勿体なかったかな。
・音楽
さすがはleafといったところでしょうか。最高のできだと思います。プレイし終わった人のほとんどがサントラ欲しいと言っているような気がします。自分も音楽モードを多用しています。葉鍵の音楽にハズレなしですね!
・声優
どの声優さんも素晴らしい演技していました。特にかずさの声優さんと雪菜の声優さんがすごかった。かずさの泣くシーンはもらい泣きしてしまいましたし、雪菜の叫び声のシーンは悲痛さが伝わってきて胸が痛かったです。
■総評
「WHITEALBUM2」は過去作のWHITEALBUMらしさと『過去の女』と『優しい世界』の丸戸さんらしさを見事にマッチさせた名作だと思います。でも一つ難点があります。この作品は胃が痛くなります。リア充の萌えゲー好きの知人(S属性持ち)にICをやらせてみたところ主人公がヘタレで面白くなかったと言っていました。そう、この「WHITEALBUM2」はSの人には向かない作品です。ドMにはたまらないエロゲなのです!僕は「いたいけな彼女」のほのかちゃんの手作り弁当をいつもグチャグチャにしてニヤニヤするほどの鬼畜ですが、「WHITEALBUM2」をプレイすることで潜在的にドMであることがわかりました。だってそうでしょ?ドMじゃなきゃ進める度に胃が痛くなるようなエロゲなんてやりませんよ。だから「WHITEALBUM2」は潜在的にドMな人やドMを自負している人にはとっても楽しめるエロゲという結論になりました。合わないな、面白くないなと思った方はあなたはS属性持ちです!安心してSな側面を日常で発揮して下さい!!!そう、ドMなエロゲーマーにとっての最高傑作の一つが「WHITEALBUM2」なのです!!!!!!!