李梅九がかっこよすぎる
シナリオはいつものごとく面白いの一言に尽きる。
続きを読ませる、という意味でも最高レベル。
また、キャラクターも一人ひとり個性が立っている。特に李梅九は最初から最後までかっこいい。最後はバトラーの妹を暗殺した疑惑が大だが、その場合はどこかの外道キースと違い、一撃で仕留める手段を用いただろう。
全体的に暗く悲しい流れだったが、特に鬱になった箇所があった。
李梅雪の最期のシーンだ。何の罪もない彼女が指を弾かれ、嬲られるシーンは兄・梅九の気持ちも理解できて助かってほしいと切に願った。だが、結果として外道キースは最後まで卑劣を通し、彼女を含めた無関係な人間を数多殺害し、相棒であるアランまで殺害した。この物語で「悪」といえば「ガブリエル」「ケイレブ」だが、もっとも小物で卑劣で救いがたい人間はキースとリチャードだろう。キースは復讐という名で飾ったただの八つ当たりで殺戮を行い、リチャードはそれを指示し、トップに立つ人間が一番してはいけないことをしたのだから。ローズの名を汚し、大勢の人間を苦しめ、そして何よりそれを「正しい」と思っていることが彼らの罪である。絶対の正義など存在しない。だが、自分の感情だけを優先させた彼らの正義などただ鬱になるだけの最低の我儘である。
「国が戦争をした。自分たちは関係なかった」は豚の証左。
ならば「罪を憎んで人を憎まず」も「環境に原因があった。人は悪くない」と言い換えられ、それは自分が罪を犯したときの免罪符となり、豚の証左となる。過去に何があったとて、無関係な人間を傷つけることが許されるはずがない。それは当人の責である。
物語のラストまで「悪」以下の外道を重ねたスナイパーが「罪」を自覚することを切に願う。