ErogameScape -エロゲー批評空間-

yukime430さんのハミダシクリエイティブの長文感想

ユーザー
yukime430
ゲーム
ハミダシクリエイティブ
ブランド
まどそふと
得点
88
参照数
80

一言コメント

【プレイヤーがオタクであればあるほど刺さるキャラゲーのお手本と言える作品】

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

それぞれの理由で学園からはみ出してしまったヒロインたちとの学園恋愛物語

【総合評価】88点
【シナリオ】33/40点【原画】18/20点【音楽】18/20点【キャラ】10/10点【声優】9/10点

★合計プレイ時間
38時間

〇共通ルート
約16時間

〇個別ルート合計
22時間(平均5.5時間)

全体
★良かった点
“キャラゲーの頂点”と賞されるのも納得のクオリティで、隙のない作品。
キャラゲーとして最も重要なヒロインたちの可愛さは余裕でオールクリア。全員魅力的で、グッズを集めたり毎日スクショを投稿するオタクが生まれるのも頷ける。筆者の推しはひよりんで、気づけばお気に入りボイスを何ページも埋め尽くすほど登録していた。筆者は普段複数のルートがあるギャルゲーをプレイする際、「まあまあ好きなキャラ→あんま好きじゃないキャラ→めっちゃ好きなキャラ」の順番で攻略していくことが多いが、誰から攻略するかめっちゃ迷うほど魅力的だった。

肝心のストーリー面では、主人公がいい感じの絶望的なオタクで自分を見てる感があった。(マジで)いちいち表現がキモイのも、人によっては嫌悪感を感じるかもしれないが個人的には推せる。また、意外とみんなの正体がわかるのが早いので、モヤモヤを感じずに進められるのが良かった。
共通ルートは長いが、しっかり山場があるので十分楽しめる。特にヒロインたちがそれぞれの正体を続けざまに打ち明けていくシーンは、展開がわかっていてもやっぱり面白い。ストーリー前半では、主人公がプレイしているソシャゲ『戦デレ』の全国ランキングが高く、「暇人」の象徴のような存在として描かれている。しかし、物語が進むにつれてリアルが充実し、戦デレの順位が下がっていく――その二極構造の対比が巧みに表現されていると感じた。
なんといっても、全ヒロインのおまけシーンが最高。まさに「これを求めていた!!」というストーリーとシチュエーションで、本当に素晴らしい。制作陣、わかりすぎてる。
そして、ヒロインの声優の演技めちゃめちゃうめぇ。
特にベテランの「柳ひとみ」と「秋野花」は、やはり正直別格。声の使い分けや感情を大きく出す演技が上手すぎる。レベチ。新人声優の2人「紬雪乃」と「浜辺実雨」はどちらも及第点と言ったところ。キャラに合っていてよかった。そして、この作品を通してわかったこと、それは筆者は「あじ秋刀魚」の声がめちゃ好きということ。ハミダシクリエイティブMe:Reはよ出して。

★悪かった点
これを言ったらおしまいだが、現実味は一切ない。そして全体的にテンポは悪め。日常パートがクソ長いので話が全然進まない。また、結構時間軸が大事になってくる場面があるのに、日付の提示がないため、今どの程度日付が経ったのか、文化祭やシンポジウムまであと何日なの?となることが多くわかりにくいのは気になった。
シナリオの内容面は十分楽しめたが、やはりシナリオゲーを好んでプレイする筆者にとっては、話の内容が薄め。各ルート決して悪くはないが、どれも目的が明確じゃないというか、話が進んでる感を味わえない。


★各個別ルート感想
◎常磐華乃ルート
評価:B
たこやき馬鹿。かと思ったら性欲モンスターだった。
動揺した時のリアクションが最高に可愛い。特に「どうわよ!」「そうわよ!」が可愛い。冒頭で明かされる不登校の理由が、小学校の頃の自己紹介が黒歴史でそれを知っている主人公が高校に入って隣の席だったからというなかなかに面白い設定だった。シナリオの展開はやや急展開に感じた。特に、最初のえちシーンまでの流れ。キャラゲーにあるまじき展開で、あれはあれで楽しめたが。中盤で明かされる本当の不登校の理由が重めだったり、過去のコミまどでのトラウマ体験がめっちゃリアルだったのは感情移入ができてよかった。結構好きなキャラなので、普通に辛い。あと、可愛いと言われるのに耐性がないのも推せる。

◎鎌倉詩桜ルート
評価:A
主人公が会長に選ばれた理由や詩桜先輩が会長を辞任した理由がわかる大事なルート。
思ったことをストレートに言ってしまう性格で、不器用だけど芯が通っていて誰よりも生徒会のことを考えている先輩。詩桜ルートプレイ前はヒロインや主人公の敵としてだけでなく、プレイヤーにも嫌悪を抱かれる可能性がある立場のキャラだが、実は裏に事情を抱えており内容も筋が通っているので全てがわかったあとだと逆に好きになるという面白いルートだった。
ヒロインの性格上、話の展開が早いのでエロ展開も早めに来ると思っていたらまさかの真逆で結構引っ張ったと思うので、ギャップが凄かった。特に華乃ルートのあとだとより感じられた(笑)。 エピローグは1番印象に残った。正直全く予想もしていなかったまさかの展開。完全に卒業して「1年後大学で待ってるぞ」的な感じで終わると思ったので衝撃だった。一緒に受験勉強してたのはなんだったんだよ。って感じだけど詩桜先輩らしいっちゃ詩桜先輩らしい。

気になったのは、CVの浜辺実雨さん。決して演技力がない訳でもないが、滑舌がやや?と感じるシーンが全体を通してチラホラあった。キャラ的にもサイコパスに近い設定なので、滑舌が良くないのは割と致命的に感じてしまう。ただし、キャラと声は合っていると思うし声自体は好きなので許せる。


◎錦あすみルート
評価:S
最初から最後まで肉まん娘。録者30万人越えのVtuberとして活動しており、自身のYouTubeチャンネルがBANされて生配信ができなくなるというところから始まるという面白い展開。
CV.紬雪乃さんの声の使い分けが中々に上手い。主人公もわからなかったが、自分もほんとに同じ人なの?とは思うくらい違うと思った。あと、ぐるぐる目と「ごめんなさいいいいいい」のコンボが可愛い。
シナリオ面では、不登校の理由が1番しっかりしていて話の筋が通っていた。特に、告白シーンが他のどのルートよりも綺麗で美しい。恥ずかしがり屋な子が勇気を出して告白するシーンは鳥肌が立ったし泣いた()。
筆者は根っからのVTuberオタクなので、どういうシナリオになるか不安要素が多かったが、個人勢の「自由だけどできることに限りがある」という点と企業勢の「お金の力でできることは多いけどそれに伴う制限や葛藤」がリアルに表現されていて、今の自分には特に刺さるシナリオだった。特によかったのは、文化祭当日にライブが被るという問題の起き方も自然で解決する方法もあすみルートらしく説得力があって面白かった。そして、新川かっこええ。惚れた。


◎和泉妃愛ルート
評価:S
最初から好感度完凸の超人気声優の妹との近親愛を描くお話。
事務所で禁止されていた「裏垢」がバレて、熱愛中の彼氏がいるという勘違いをするところから始まる展開。
これでもかと言うほど好き好き連呼してくれる超絶甘々ルート。だが、妃愛の可愛さとちょっとおちゃめな点あってか不思議と胃もたれしない。
2人きりの時だけお兄呼びになるの最高。セリフ1つ1つに癖があって、可愛いのでボイスも最後まで聞きたくなってしまう魅力がある。ただし、その分時間かかるのは贅沢な悩みである。妃愛語録とも言える「新しい日本語」が独特かつユーモアがあって面白い。思わずにやける。「おにんぽ」、「アニルギー」、「ぎゅう魔王」などなど。
シナリオの展開も推し補正は入っていると思うが良かった。
特に、告白から初えちシーンまでの流れが丁寧。恋人になった瞬間ガチ照れするのが可愛い。山場となる、炎上をきっかけに誕生日にファンから卵をぶつけられた後、主人公に本音を隠すシーン。そして、999連敗していたじゃんけんに初めて勝ち、妃愛が本音を吐き出すシーンは、さすがに泣いた。やっぱり、完璧超人がふと見せる弱い部分って、たまらなくいいよなぁと思った。
ラストの朗読劇のシーンは、アニメで先に見ていた分少し感動は薄れてしまったがそれでも無事泣いた。CV.柳ひとみの演技力がバケモン。エロゲ声優No.1なんじゃないか?と思えるほど。エンディング曲の入り方やクレジットが『和泉妃愛』なのもポイントが高い。
本ルートは、他のヒロインたちとは違った意味で、“真っ当な恋愛の道から踏み外す”という形の『ハミダシ』なのが非常によかった。