OPが魅力的な作品
今や老舗エロゲブランドでお馴染み、ランプオブシュガーの作品。
本作は政治的に分断された日本において、中立地帯である特別地区にある学園へエージェントである主人公が「東武カイト」と名を偽り潜入する物語。
ここまで聞くと学園生活を送りながらスパイとしても活動する物語と思われがちだが、主人公には細かい命令は下されていないので特に諜報活動をする訳でもなく、正体がバレない様平穏な学園生活を送るのが殆ど。だがそれも伏線となっているのが本作の面白い所。
全体的なシナリオを見ると前述の通り日常シーンが大半を占めていて、主人公もエージェントではあるがまだ年齢も若くプロとして甘い面も多々ある。その為ガチガチのスパイものとして本作に期待していると肩透かしに遭うと思われる。
今まで普通の暮らしを送る事の無かった主人公が、初めて友人と他愛もない日常を送る事で「平和」の有り難さを噛み締めるのが見どころの一つだと個人的には思う。
シリアスパートでは様々な伏線が序盤から張られてる。
プロローグに現れたヒロインの一人が共通及び他ヒロインの√では一切姿を現さなかったり、偽りの身分である筈なのにヒロインの一人が主人公と知り合いだったと言い、初対面の筈なのに主人公を兄と呼ぶヒロインが居たり。果てには主人公の髪色さえ伏線だったりと、それらが回収された時のピースがはまる様な感覚は気持ちが良い。
主人公は不安定ながら予知能力を使えて√によってはそれを戦闘の為に使うが、最終シナリオでは予知能力を使い誰も傷付けず傷付かせず事件を収束させる。そのハッピーエンドは主人公が愛を知り平和を経験したからこそ迎えられたのだと思う。
それまでの√だと主人公は誰かを殺めたり、誰かが殺されるのを防げなかったり、テロに遭遇したり…様々な形で争いが発生してしまう。
あるヒロインの√ではクライマックスで隣人愛が説かれていた。本作のテーマが「平和」や「愛」だと考えると、争いを描き同時に平和の尊さも描く見事なシナリオだと思う。
ただ全ての謎が明らかになる最終シナリオでは主人公が任務の事を殆ど意識してなく、他シナリオとキャラが微妙に違う様に感じたりラストで若干のご都合主義によって一切の憂いがないハッピーエンドになってたりするのが気になった。
システムを見るとやや古い作品なのもあって甘い点がちらほら見える。
選択肢が出た際メニューが開けなくなるのでセーブ&ロードが出来なかったり、周回プレイ時にあると助かる次の選択肢までのスキップが無かったり。そもそも選択肢自体が少なく使用頻度が皆無なのに一つ前の選択肢に戻るボタンはあったり…
4人目のヒロインは3ヒロイン攻略後に、プロローグ後今まで無かった場面に追加されている選択肢を選ぶ事で攻略出来る様になるのだが…
慣れてるエロゲユーザーなら各選択肢前にセーブを残しておくが、それ故に最終ヒロインの√への選択肢を見逃しやすくなっているのも難点。
面白い固有のシステムとして褒章と言う物がある。これは据え置きゲーム機等にある「実績」や「トロフィー」と同じ物でゲーム中で特定の条件を満たすと得られる。
各ヒロインのシナリオをクリアすると言う分かりやすい物から用意されているセーブデータのスロットを全て埋めた状態で遊ぶ等、こんなの攻略見ないと分からないだろと言う物まで用意してあって多彩。
ただ残念な事に全ての褒章を集めても特に何もない。おまけのCGでも解放されたら良かったものだが…
声優に関して見ると、あまり他の作品で見かけない声優が出演していて中々新鮮。
特に竜胆棗役のこゆきさんはエロゲにあまり出ない割には演技が上手く可愛らしかったので関心した。
逆に雪代メイ役のAIRIさんは濡れ場の演技がそんなに上手くなくて技術の差を感じてしまった。
とは言え中々このエロゲ業界では聴く事の少ない声優さん達の演技が楽しめるので、新鮮な一面を味わう為に遊んでみるのも一興。
CGについて見ると萌木原ふみたけ先生の可愛らしい絵がいつも通り楽しめてグッド。
だが一部CGのデッサンが若干崩れていて、ネットで突っ込まれていたのを見た事がある。
とは言えおかしいのはその1枚くらいなので基本的には全く気にならない。
本作を語る上で忘れちゃいけないのがOP。
センスのある演出と気合の入ったアニメーション、奥井雅美さんの歌う「Good-bye crisis」はとても格好良い。
メーカーも演出強化版のOPをわざわざ用意すると言う力の入れっぷり。私はこのOPで興味を持ってプレイしたのでやはりOPには一定の販促効果があると思います。
以下良い所
様々な伏線とそれをしっかり回収する点
平和と争い、その相反する二つを意識させるシナリオ
非常に格好良いOP
以下悪い所
若干のご都合主義展開が見られる
システム周りがまだ甘い
まとめると、魅力的なOPをしたシナリオにも力が入っているエロゲ。
正直角砂糖の作品にはそこまでシナリオは期待していないタイプだったんですが、本作は想像以上に伏線回収が見事だったので良い意味で予想を裏切られました。
でも今遊ぼうとするとシリアルコードの認証サイトが機能していなく、認証回避のアプリケーションを自分で入れる羽目になるのでPCに疎い人は要注意。
私は最近新調したパソコンだったからか権限云々で公式の指示通りに操作しても上手くいかず、だいぶ四苦八苦して何故か起動出来たので今から遊ぶ人はDL版買った方が無難だと思います。