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yknk_moiさんの墜落人生 ~清楚お嬢様のヤクキメタコ部屋売春ライフ~の長文感想

ユーザー
yknk_moi
ゲーム
墜落人生 ~清楚お嬢様のヤクキメタコ部屋売春ライフ~
ブランド
pin-point
得点
79
参照数
3080

一言コメント

「エロゲ版ウシジマ君」とはよく言ったもの。だがこれはドキュメンタリーではなくヌキゲーなのだ・・・・。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

DL版を購入。
タイトル、プレイするまでずっと「堕落」だと勘違いしていました。「墜落(ついらく)」ですね。
うん、堕落していく(進行形)というよりは、墜落した(過去形)って感じですな。

原画のメメ50氏が、発売日当日の宣伝で「エロゲー版ウシジマ君」と言っていて、
公式サイトで公開されていた企画書にも「ウシジマくんみたいな」という走り書きがあった。
その言い方は確かに、実に的を得ているって感じ。
最近のピンポイント作品の中では一番いいデキだと思います。
プリズムレイカーシャイン、個人的にシナリオ面ではハズレだったケダモノには大きく差をつけてます。
熟母夏子とだったら・・・うーん悩むんですが、作品のテーマ的にはこちらが好み。

ただ、好みだったからこそ、プレイしていていろんな悩みが頭をよぎりました。
作品は大体三人称、第三者視点で進行(どちらかというと真由美の生活の方が描写が多い)して、
まさしくウシジマ君みたいに淡々と進んでいく。
ドキュメンタリーAVG、というのもまさしくこの作品の性質をいいあらわしています。

清楚で世間知らず、男のコのタイプは?と問われると「ヘラクレスみたいなたくましい人・・・」なんて答えちゃう、世間しらずにプラスして若干お花畑入っているお嬢様、真由美と、
庶民的な美少女だけど処女、耳年増でイケメン好きなJK藍子。
序盤のつかみはばっちりで、ナンパされてついて行ってしまう二人も、
藍子は「超好みのイケメン、ちょっと遊ぶくらいなら・・・!」と興味津々、
真由美はそもそもナンパを理解しておらず「こわいけど藍子ちゃんが行くって言っているし・・・」と流され、
あれよあれよとカラオケボックスという名のヤリ部屋に連れ込まれ、
「その場のノリ」で酒を盛られ、グデグデになったところで身体を触られてされるがまま処女喪失。
この流れはとっても自然で(というのも変ですね)、流されちゃうお嬢様、イケメンだからってついていく今時のJK、という価値観をうまく使えていると思います。
そもそもこのゲームを買う層は「なにナンパなんかにやられてるんだビッチが!!」と思ったりは、まず、しないでしょうけど・・・。

肝心の初のヤクキメシーンはどんなものかなぁと思っていたのですが、
処女喪失の痛みにもがき苦しんでいたところ、男に「痛くなくなるお薬をやろうか?」と言われ、
「そ、そんなものがあるんですか?お、お願いします!」と懇願し、
何の薬だかもわからないうちに錠剤のを飲まされててしまいます。
その後は二人とも、飲んだり注射されたりしている薬が覚せい剤だという自覚がないまま・・・
というより、セックスの際は薬を用いるもの、みたいな変な勘違いをしたまま転落を突っ走る。
(丁寧なことにヤクキメシーンは錠剤、注射、炙って吸うなどやたらバリエーション豊富、それぞれCGもある)

他、特筆すべきはゲロシーンの多さでしょうか。
特に変態風俗でサドな客相手にイラマチオさせられ、一度吐いたと思ったら吐き切らないうちにもう一度喉を突かれゲロの上から重ねゲロ(ちなみにゲロにモザイクはない)
声優さんの演技もなかなかよくて、気合入ってんな~なんて思っちゃいました。

思っちゃいました。

・・・・そう、そこなんですよ!!!!!!!!!!!

これが本当にジレンマだった!!
自分の求めているものとのギャップを思い知るたんびに、己の欲と業の深さが悲しく、また同時に恥ずかしくなった。

そして、その欲望はもうきっと、エロゲー、ヌキゲーというものでは叶えられないんだろうなと思い寂しさと切なさにさいなまれた。

・・・墜落人生と言うタイトル、各所サンプル、ストーリー説明。
もうその時点で、真由美にしろ藍子にしろ、どちらも楽しかった日常から転落してしょうもない淫売になるということは確定、出オチで、
その破滅への道も生半可に終わるものでない。
「もぉこうなったらとことん堕ちるよね」というのが、フェラしながらプスーッと注射器で覚せい剤を打たれた時点でわかってしまうのです。

それがピンポイントというブランドと、
宣伝文句の数々によって、さらに裏付けされる。

・・・ドキュメンタリーのおもしろさ・・・と言ったら対象には失礼かもしれないですが、おもしろさ。
それは、だいぶ悲惨な生活を映して、「こうはなりたくないよね~」と、ある意味安心する、
そういう反面教師的なものだと思うんですよ。
で、その「こうはなりたくない」現実が悲惨な物であればあるほど、
現実の自分の置かれた身分との違い、そして始まりはあんなに平和だったのになーという懐古、
そういうものと照らし合わせてギャップを楽しむというか。
あれ?ようはツンデレとか淑女なのに淫乱とか、そういうギャップ萌えの範疇なのか。


ともかくです、さておきもう、こうなってしまっては・・・真由美も藍子も、たとえ妊娠してしまおうが、売春だと言う認識もないうちにどんどん客を取らされて日常化しようが、パツキンに乳見せボディコンがデフォルトになろうが、ついに互いに憎みあって頬が腫れるほど殴り合おうが、ついに日本人の客は取れなくなり外人相手の便所になりさがろうが、そのまま便器に出産しちゃおうが・・・・・・・、

全部、
「まあ、こうなるわなぁw」
という、言葉で、片付けられてしまうんですよね。

上で書いた「ギャップ」がない。
多少の理不尽はあれど、真由美も藍子も自分から望んで堕ちていった。
当然の結果にしかならないから、純真だったあの子が・・嗚呼、みたいには思えないんですよ。
他人事。
悲しみもくやしさもない。
んで、ちゃんとピンポイントのゲームらしくエロシーンは1つ1つ丁寧に描写してくれるものだから、
ただでさえ他人事な堕落した日常が、丁寧(長い)エロシーンによってぶちぶち切られ、
さらに他人事感を加速させるんですね。


でも、そんな風になってしまうのは低価格ヌキゲーでは当たり前のことで、
結末やたどる道を完全にシャットアウトして「ダークなんちゃら」というそれっぽいタイトルをつけたとしたら、
まずターゲット層がわからず見向きされないでしょう。
僕だって手に取るかわからない。

フルプライスの、きちんと世界観やキャラクターが作りこまれたゲームのヒロインに、
隠しルートとしてこんなシーンやシナリオがあったら。
・・・大多数のユーザーは怒り狂うでしょう。ネトラレはやめろ、凌辱はやめろ、非処女はやめろ、こんなビッチはいらない・・・などと。
それにまず販売に至れないと思う。スポンサーがそんなバッシングされそうな展開を許さないだろう。

・・・だから、魅力たっぷりなヒロインや何にも代えがたい生活が、
ふとしたきっかけで次第に壊れていき、
気が付いたら取り返しのつかないことになっていた、
という展開を味わいたいっ!!
ついでに悪趣味なHシーンも入れてくれると二重丸だ!!
という欲求は、もうきっと、現状のエロゲ市場ではかなえられることはないんでしょう。
あれはいやだこれはいやだとメーカーやクリエイターにケチをつけてきた「ツケ」が、今頃になって回ってきているのですかね。


そんな愚痴はあるけれど、でも、この作品は墜落ドキュメンタリーとして、
とてもよくできているとは思う。
手軽に少女たちの堕落してゆく様とそれに関しての修羅場、また同時にハードでマニアックなエロシーンが見たいという人のニーズにはとても応えている。そういうわけで79点です。

でも・・・面白いかって言われると・・・うーーーーん・・・。

・・・難しいですね。