思ったよりも序盤の主人公に感情移入できないことに驚いた。その時点で絡め取られていたんだろうな。
悪女(かげりのあるビッチ)ゲーを期待してDL版を購入。
ネタバレは気にせず事前に他の人のレビューなども読んでいた。
屈折した登場人物は男女共に大好きなのですが、
どうもこの主人公(壮太君)には序盤の時点で「なんだコイツ」という不満を抱いてしまったんです。
というのも、思った以上に美弥が可愛い子だったからですね。
可愛くて、優しくておしゃべりで、でも言動がどこか危うくて、陳腐なたとえですが繋渡りしてるピエロみたいな、
頑張りが空回りしているのを自分でもわかっていて、それでもなお頑張る健気な子。
サバサバした印象のボイスの魅力も手伝って、透という「後からの闖入者」より、すっかり美弥に肩入れしてしまった。
だからそんな美弥を「苦手」「うっとうしい」扱いする主人公になんとも言えないムズがゆさを感じたし、
誘惑してくる透の魅力にもはまりきれなかったというのが本音なんですが・・・。
改めて思えばその痒いところにイマイチ手が届かないはがゆさこそこの作品の味なのかもしれません。
主人公に感情移入すれば、美弥という健気な子がありながら透と秘密を共有する甘美さというか、
一番情けないところを見せてしまったというある種あきらめみたいな安心と共に堕落していく浮気の楽しさを味わえるだろうし、
美弥に肩入れすれば、「みんな不器用だな」という哀しい傍観と、
ナナメの方向に突っ走っていってしまう美弥に対しての「やめろ君はもう休め頑張った」みたいなあわれみが地味に後を引くし。
どっちに転んでも楽しめるというか、一粒で二度おいしい(正統派な味かはさておき)。
派手なカタルシスはないにしろ、テキスト、キャラの表情、BGM、あちこちにツンツンとフックがあって、
「何か言いたくなる」「誰かと感想を共有したくなる」
不思議な作品でした。
音数が少ないBGMや、無味乾燥なシステム画面やタイトル、
そういうものも、なんだかこの作品の不思議な魅力を助長してる気がします。
妙な透明感というか・・・変にドラマチックに作り込みすぎないラフさというか・・・。
このサークルの他の作品もやってみたいなという気持ちになれました。