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yknk_moiさんの朝からずっしりミルクポット2リットル ~ふたなり姉妹のドスケベ露出センズリ@秋葉原~の長文感想

ユーザー
yknk_moi
ゲーム
朝からずっしりミルクポット2リットル ~ふたなり姉妹のドスケベ露出センズリ@秋葉原~
ブランド
みさくらなんこつハースニール
得点
75
参照数
1257

一言コメント

「幸せとは?」(ノベライズ版を読んでようやく色々合点がいった)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「ヒキコモリ健康法」が自分が初めて手に取ったみさくら作品だった。
そのときは、なんというか、愉しげに歪んだ世界に奇妙な安堵を覚えた記憶がある。
ミルクポットはその流れを正統的に引き継いでいる作品…だと思うのだが、
伊織が一人でオナニってるだけの1と比べると、
伊織、香織、そしてオタ澤こと岡澤君の三人の思惑が交差する世界は、
多分…みさくらなんこつ先生一人では描写が難しかったのだと思う。

ゲーム本編だけプレイしたときは、
やりたいことはなんとなくわかったものの、
どうしてもエロシーンありき…というより、エロを完成させるために他の流れをオミットしたようなブツ切り感があり。
邪推にすぎないけれど、一度冬コミでゲームが発売できなかった(延期した)こと、
またそのときに出たミルクポット2の同人誌を読んで考えると、
実際発売に間に合わせるために大分いい加減に書いた部分があると思う。
邪推の邪推だけれど、
みさくら先生はしっかりしたプロットは立てないまま、勢い任せに書いている。
やりたいことがはっきりしていて、ふたなり美少女の孤独という大きなコンセプトがあるため、
なんとか話として成り立っているだけで。

後にぷちぱら文庫から出たミルクポット2のノベライズが、非常に優秀だった。
みさくら作品のトチ狂った世界を壊すことなくストーリーを大幅に補完していた。

伊織は「ありのままの自分を受け入れてほしい」と願う。
そのありのままというのは、いったいどんな姿なのか。
・美少女フェイスの下に不釣り合いなチンポがついていて
・そしてとっても臆病者で
・とっても、性欲が強い女の子。

……という、甘い幻想を、ユーザーは持たされたはずだ。1の時点では。
それこそ作中の岡澤君のように、
美少女にチンポがついてるなんて最高!という変態にとっては、
オドオドしていて性欲が強いというのは、決して欠点ではないはず。
むしろ自分の変態性欲を受け入れあうギブアンドテイクが成り立つような、ないような、
そんな都合の良い想像ができたはずで。

伊織はそれを許さない。許してくれない。
伊織にとって、

・人の顔色をうかがう
・その人の体調や機嫌などを考えて性欲(肉棒)を抑える
・その人のために、少しでも自分に損が出ることをする

…という行為は、「自分をデコレーションする浅ましい誤魔化し行為」なのだ。
そしてそんな虚飾の自分を「伊織ちゃんは天使だ」なんて一度でも言われようものなら、
この人もほんとうの私を見てくれないんだ、と心を閉ざしてしまう。

努力が嫌いで、自分が大好きで、自分の快楽のためにしか行動したくない。
そして常に自分の性欲を受け入れてくれる。
……そんな「都合のいい人」を求めて、伊織は彷徨う。
そして言い放つ。
「私に相応しい人が、現れてくれますように」と。

なんというんだろうか。強烈だった。

……ただ、発売当時に(じっくり仕様を読めばわかるんですが)
DL版の説明文やらに多少誇大広告というか、
ミスリードのようなものを感じた。
その売り方と、この作品が持つ根暗さがどうにもかみ合っていないと思った。