プレイ時間40時間超え。これは評価が分かれるね。
ネタばれなし感想
まことに申すのですが、40時間超もよく作ったなと感心する。
昨今、エロゲはボリュームの縮小傾向にあるので、ここをchushinguraと同等に作ったのは好印象だった。
実際、昔に比べてボイスやCGの高い質が求められているので、どうしてもクオンティティ(量)は軽視されてしまう。
にもかかわらず壮大なボリュームで勝負してきた意欲は、個人的に高く評価されていいと思った。
ただ、忠臣蔵と違ってこの時代の様子は有名すぎるので、刺激は薄い。
主人公が俺tueeeする作品でもないし、掛け合いのギャグで押す作品でもなく、シナリオで勝負してくるので好みは分かれそう。
で、まことに申すことがまだあるのですが、どうして攻略出来ないオナゴがいるのでしょうか。
井上源さんと申すオナゴを攻略出来ないことは、まこと遺憾だと申す次第。
申すと大島圭というヒロインもぜひ攻略したかったのですが、そこはFDに期待していいのだろうか申す。
「オナゴ」「申す」「まことに」をすごい良く見るが……まぁ、何メガバイトか想像のつかないテキスト量なので、多少同じ言葉が被ることは仕方ないだろう、か。
全体的な芝居がかった言葉遣いだが、そこは違和感なくプレイできた。
何せ40時間も文体が統一されているので、方言だと割り切ってしまえば逆に自然に見えてくる次第。
むしろ普通の文体を読むのが退屈なので、こちらの方が楽しかった。個人差はあるだろう。
あと1,2回の登場数であっても立ち絵を出すので、プレイヤーに飽きさせない工夫を凝らしているなと。
もう一工夫、今何話で残りどれほど続くのか知れる機能があると、プレイ時間が長いので良かったかもしれない。
システム面では既読スキップがなかったので、スキップを押すと全部飛ばされてしまうのが残念。
音楽も良かったけれど、OP音楽はもう一つ欲しい。
ここは予算が尽きたのかもしれない。
ただ全体の出来としては非常に満足。
ケチをつけることは少ないし、2017年最高作品でした。
ネタばれあり感想
勝てば官軍なのか? というテーマを感じた。
それは決して、MIBUROという作品だけに限らないのかもしれない。
新撰組という歴史自体、つまるところ五稜郭で敗北するというゴールが決まっているので、他新撰組の物語でも同じテーマを、決してMIBUROが扱っているかは分からないけれど扱っているかもしれない。
ただ、この物語の登場人物はこの言葉を当たり前のように口にしている。
「勝てば官軍、負ければ賊軍」
会津が京都守護職についたのも新政府から目の敵にされるためではなかったし、新撰組も最初は会津のために戦っているわけでもない。
彼らは徳川幕府を守ろうとしていたし、あるいはその日の生活を生きるために必死だったのかもしれない。
けれど歴史は革命を取り上げてしまう。
「討幕の密勅」「大政奉還」「廃藩置県」これらは日本史で習う常識のようなもの。
当たり前の話だ。
教科書には土方が何をしたか書いていないし、新撰組がなぜ抵抗したのかも書いていない。
ただ五稜郭で負け、そのことが今の日本へと向かうよう示唆しているのだから、少なくとも新撰組は教科書にとって賊軍なのだろう。
勝てば官軍、負ければ賊軍、それまでの待遇も当然変わるし、将来の名誉も形を変える。負けて名前も残せない者も多い。
ただ、それは当たり前だと思うし、だからこそまさに「勝てば官軍、負ければ賊軍」なのだろう。
新撰組にスポットライトを当てるということは、負けた方を取り上げるということ。
物語の主人公にどうしても肩入れしてしまうので、勝てば官軍でいいのかよ…! と胸が熱くなってしまう時もある。
胸を熱くさせるのはその時代時代、教科書では一行で済まされてしまうことがあるのも一つの理由だ。
「旧幕府軍は鳥羽伏見の戦いで負けた」「勝海舟が無血開城の橋渡しをした」
MIBUROはかなり選んで掘り下げてくれるので、人によっては知らないと斬新に見える。
そういう意味で新しい発見は中々刺激的で、そこを面白いと思えるかどうかで評価も変わってくるかもしれない。
個人的には大変面白く感じられたが、歴史には様々な解釈がある通り語られること全てが真実ではない。
新撰組の物語は「ラストキャバリエ」しか読んだことがないのだが、あちらは「芹沢」を斬ったことが大きなターニングポイントになっていたと思う。
向こうの作品では、芹沢は近藤、土方らとそりが合わない水戸学の者。
しかし、新撰組は彼女?を粛清したことによって、お互いの価値観の相違を表に出せなくなってしまう。
芹沢は価値観の違いで斬られた、つまり、自分達の行っていることに疑問を持てば斬られてしまうかもしれない。
その空気が後には引けない空気を作りだし、破滅的な方向へ向かった……と記憶しているが、MIBUROでは会津の老中に嵌められたという事件で、そこまで大きなターニングポイントには感じなかった。
MIBUROではどちらかという見田健に焦点が当てられていて、芹沢の一件では記憶を失ったり仲間が気遣う優しい雰囲気が目に付いた。
というか河合さんや鞘を生かしたり、新八山南左之助の脱退を認めたり全体的に良い奴らすぎる…これは良くも悪くもで、どっちも好き。
資料によっては様々なことが書いてあるので、歴史に正解は無いのだろう。
観測者の視点が大切なのであって、正しい史実かより面白いか面白くないかの方が大切だと思う。
そう考えると、もう少し面白く脱色出来たのでは、と思うことも結構多い。
葉山こよーては「歴史は変更を嫌う」というルールを前作でも作っているので、中々変えてくれない。
実は生きてましたーという史実を変えず脱色を加えることはあっても、大久保西郷に勝ったwみたい大きな脱色はしてくれないので、1√ぐらいは見たかったというのは個人的な我儘か。
せめて、沖田だけでも救っていただけないだろうか……。
ラストキャバリエでも沖田は病弱だったので、やっぱり死ぬかという無念の想いを一体どこにぶつければいいのやら。
ただ脱色の仕方によっては世界観を壊してしまうので、ここが難しいところかもしれない。
フィクションとはいえ歴史物語なので、大きな変更は読者の視点を惑わしてしまう。
特に「光の道」ルートに関しては、申し訳ないがどう読めばいいのか全く分からなかった。
FDを未プレイなので最後はすさまじい蛇足に見える。
あと坂本を大物に見せたかったようだが、地の文ばかりが先行してキャラクターとしての大物感はイマイチ伝わって来なかったかな。
坂本は好きでも嫌いでもない、というか別段新撰組で好きなキャラがいるわけでもないのだが、この人はすごい、ここまで考えているみたいな地の文が目立つ。
一戦土方と交えるけれど、それは坂本のキャラ格を上げるようなもので、茶番な感じがにじみ出ていた。
商人としての才はあるけれど、いかんせん口八丁なイメージが先行していて、土方に凄まれると「やれやれかなわんのぉ」と口を割る小物感があったのかもしれない。
いずれにせよ、この物語では好きになれなかったか。
良いサブキャラクターと言えば源さんと銀髪ロリ。
いや井上さんこそ真のヒロインに違いない! あれを攻略させないとか血迷ったか。
作中で井上さんが笑顔を見せたのは鳥羽伏見での死ぬ間際のCG一回、文章ではあっても立ち絵ではニコリとせず。
そのヒロインが主人公にデレた表情とかヤンデレっぽい笑顔を見せる場面を欲しいと思ったのはわたしだけだろうか!
いや、そんなはずがない。試衛館からの古参でまさか一人だけ攻略√がないとはね。
左之助は……あと大島は欲しかったよなぁ。
メインでは新八がお気に入り、剣八に続いて八に外れはなし。
以下個別ルートごとの感想
沖田√
前述した通り救われない話なのが残念。
見田健を奥州へ向かわせようとわざと嫌う描写があったので、ここを長くしてくれると良かった。
いつの時代も素直になれないヒロインというのは可愛いもの。
沖田を殺した相手に9年かけて復讐するというのは、どうなのかなぁ。
斎藤一の手を取って警察になったら面白かった。
斎藤√
ダイジェストだが人生を終えるまでどうなったか作るとは思わなかった。
メインヒロインの中では沖田と斎藤でずば抜けて絵が良かったと思う。
土方が犠牲になることで警察になるというのも史実なのだろう。
間諜をやったり頭が回るタイプだったので、復讐より打算に回って欲しかった。
佐川がまさかついてくる√だとはね。
近藤√土方√
時間を見つけて書きます。
まぁそんなに面白くはない、というか共通が長いので個別を書くこともね……。
新八√
血の繋がりのない子に愛を注ぐというテーマが地味に良い。
愛を求める印象があり、心が強い人という言葉に若干違和感を抱いた。
全体的に素晴らしい出来だったと思うが、正直ロシア編は要らないと思う。
多分、多くの人は期待して買ったと思うのだけれど、わたしは前作を超えることはありえないと踏んでいたので、だからこそ良い出来に見えた。