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xianxianさんの断罪のマリア Complete Editionの長文感想

ユーザー
xianxian
ゲーム
断罪のマリア Complete Edition
ブランド
花梨エンターテイメント
得点
79
参照数
824

一言コメント

良作。悪魔と契約したエクソシスト・マリアが、学生エクソシストの仲間達とともに悪魔を巡る戦いに巻き込まれていく中で、心の交流を深めていく話。キリスト教ぽさがあって、雰囲気も悪くないです。PSPへの移植をまた移植した完全版です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

システム面では、スキップやジャンプ機能がちゃんとついており、ジャンプを使用しても、未読部分できちんと止まる優れものです。
ディスクレス可ですが、何回か起動すると、たまにディスクを要求する認証タイプなので、ディスクをドライブにいれっぱなしプレイが楽に遊びやすいです。

音楽が抜群によく、主題歌なども豊富で、とてもいいです。
絵に関しては、独特の雰囲気だと思います。私は嫌いじゃないです。ライターと原画が兼用している時期のもののせいか、絵が安定していない部分もありますが、それほどは問題ないという気はします。
ただ、色気というよりは、どこか童話めいた雰囲気があると思います。
攻略キャラは12人で、かなり多いです。メインとなる話は大きく変わらず、実質1本道に近いですが。おまけ要素の方で、パラレルやらのお遊びシナリオもあります。

シナリオ自体はよくできていると思います。罪や天使という道具をうまく使っています。
基本的に、天使側は、厳しい「遵法」、人間のエクソシストが「倫理/人間の優しさ」、悪魔崇拝側が「情欲/人間の弱さ」めいたものを体現している感じでしょうか。
それほど、理屈めいているわけではありませんが、登場キャラたちが一生懸命生きている姿をみせるので、心がしめつけられます。
90年代にはけっこうあった世紀末をモチーフにしているところがあるので、人によっては珍しくないかもしれません。
作中では、指摘されていませんが、天使側は「厳しい天使」が登場のほとんどで、「神の厳しい面」が強調されています。
ガブリエルやラファエルといった、「神の許しや優しさ」を伝える逸話をもつ天使が登場しませんし。
そのへんは、創作上仕方ないとはいえ、一方的になんか人間の理解できない正義を押し付けるみたいな描き方をされていて、個人的にはもやっとしました。
似たような話としては、天使と悪魔の転生が戦うライトノベル「大神伝」や、元法王庁のエリートエクソシストを描いたコミック「悪魔と踊れ」、神と魔の代理戦争を行う日本の魔術師高校生のコミック「タロットウォーズ」あたりで、興味がある人は読んでみると参考になるかもしれません。

どちらかというと、単純に幸せなENDというよりは、どこか物悲しかったかり、未来に問題や苦難が待ち受ける暗示があるエンドとなっています。
マリアたちはまだ10代半ばですから(宗像さんとか絶対にみえませんが。別に高校生くらいの設定でもいいでしょうに)、冷静に考えると、
運命のような恋といっても、この後の人生の方が長く、心変わりや変化は大きいでしょう。
童話のように「王子様と結ばれました。めでたし、めでたし」ではなく、「結ばれた後に、どう生きるか?」が重要といえるでしょう。
だから、単純なハッピーエンドではないのかな、という気がしますし、そこが味があっていいと思います。

最初の攻略は、適当にやった結果、つきあいやすかった水鏡さんに。
とはいえ、中盤で、善意とはいえ、裏切るような真似したので、個人的には許せなくて、終盤、少し冷めた目で見てしまいました。
アレを許せるマリアちゃん、まじ、マリア様という感想です。私的には、裏切った人間には、心開くことはないですし。
まあ、小さいころから、特殊環境で育っているので、マリアの常識感覚がずれているだけかもしれませんが。
エクソシストメンバーとのエンドだと、その「特殊な」マリアが、「普通に戻って」どう生きていくのか?が課題のような終わり方が多い気がしました。
攻略でいえば、ジョーカーの後に日和攻略がおすすめです。ジョーカーの「甘い」ところを日和が指摘する展開があるためです。基本的に、エクソシストチームとヘルファイア組は「対」になっています。

個人的な好感度は、1位:宗像さん。2位:日和。3位:ジード。4位、クラウスとジョーカー。
上位3人は、第一印象が「最悪」に近かったのですが、一緒に暮らすと、まっすぐで優しい部分が見えてきて惹かれます。
クラウスとジョーカーは優しいし、魅力的ですが、大人なところがあり、そのために色々諦めているところもあって、そこが少し好みから外れているというところでしょうか。
ウリエルは、お兄さんという感じなので、恋愛対象として見ることには、個人的には、ちょっと駄目でした。
ファーザーとかは途中まで、それなりに面白いと思っていましたが、ルートはいると、14歳少女と肉体関係を結ぶ、ガチ・ロリコンぷりを発揮するので、引いてしまい駄目でした。
悪魔崇拝者で、生贄や犯罪犯すのに比べれば、ロリコンなんてたいしたことはない!と思うのですが、気分としてちょっと駄目。
おまけにファーザールートは、宗像さんを「裏切る」話なので、そこも余計に駄目でした。
私は、裏切り嫌いですし、第一、裏切りの罪は、一番重い罪で、氷結地獄におとされるとされるのに。
ダークネスあたりもそうでしたが、なんでもかんでも「恋愛」みたいな展開は自分的には、ちょっと好みじゃないです。
隣人愛や師弟愛、父兄との愛みたいな関係もあるでしょうから。とはいえ、恋愛関係にしてほしいという別のユーザーの希望もあるのでしょうし、そこは好みの差かもしれません。

(限定版特典)
・ドラマCD「ある悪魔召還実験」(コメディ・ヘルファイアが悪魔召還する話)
・おまけペーパー
・特典小冊子(雑誌描き下ろしイラスト/「戦国マリア」立ち絵/ArtWorks(ゲーム内使用イラスト)/スタッフコメント(イラスト&SS付き/SS「夏とアイスと学園生活」「ある正午のお話」「思いをこめて花束を!」「貴方のために」「幹部達の憂鬱」))


(EXTRA)
○ITEM(48個/作中入手アイテムリスト)
○VOICE(ボイスコレクション)
○EXTRA STORY(「グランドエンド」、「パラレルエンド/桜の咲く頃」(普通の(?)学園生活をおくるマリア達)、「戦国マリア」(戦国大名となったキャラ立ちと、マリア))

○GRAPHIC(CGモード)
(バルビナ)
「ウリエル(22枠/41枚)」「宗像さん(24枠/41枚)」「日和(20枠/47枚)」「キリト(22枠/52枚)」「水鏡(21枠/42枚)」「クラウス(20枠/48枚)」
(ヘルファイア)
「ファーザー(9枠/23枚)」「ジード(13枠/34枚)」「ヴェガ(10枠/23枚)」「ジョーカー(11枠/27枚)」「イルミナ(13枠/25枚)」
(Other)
「ダークネス(15枠/30枚)」、「グランドエンド(2枠/4枚)」「その他(40枠/79枚)」「背景(64枠/64枚)」、「動画(10枠/41枚)『マリア召還』2、『宗像召還』『水鏡召還』『日和召還』(音声無し)、『OP』2、『ED』3」

○SCENE(146)
「共通ルートシーン/22」,「宗像さん(13/ED2種)」「水鏡(12/ED2種)」「日和(13/ED2種)」「キリト(13/ED2種)」「クラウス(13/ED2種)」「ウリエル(12/ED1種」「ダーク(11/ED1種」「結社ルート/13」「BADED/3」「ジードED/2」「ヴェガED/2」「ジョーカーED/2」「イルミナED/2」「ファーザーED/2」「結社ルート/6」「GRANDED/1」「SADED/1」「GOODED(パラレル)/1」「BADED/1」

(その他:クリエイター)
サブ原画:三村ナツ
サブシナリオ:柊蒼、白來、雪薄
(その他声優)
有瀬雛奈、神野彩実、一階勇輝、野本早紀、大石真弓、山本恭平、赤尾大介、山田慧、五十嵐裕樹、吉岡麻耶、山口正秀、原英士



(各話タイトル/混乱している部分もあるので、ミスがあるかもしれません)
(一学期編)
1「プロローグ」
2「ひとりぼっちのマリア」
3「信頼の価値」
4「スピリタス隊」
5「罰と罰 前編」
6「罰と罰 後編」
7「マリアの幼き日々」

8「謎の依頼人」(基本)or「落ちこぼれは誰だ」(クラウスルート)

(夏休み編)
9「夏期休暇始まる」
10(好感度で変化):「孤児院の宗像」(宗像)/「兄の手がかり」(水鏡)/「九条院家」(日和)/「御柱一家心中事件」(キリト)
11「臨海学校」
12「学園に仕掛けられた罠」
13「死が二人を別つまで」(好感度次第で発生せず。攻略キャラで微妙な変化)
14(ルートで発生・変化):「孤児院チャリティーバザー」(日和)/「晴れた日の選択」(キリト)/「法王庁のクラウス」(クラウス))

(二学期編)
15「聖バルビナ祭に向けて」
16「聖バルビナ祭開催!練習編」
17「聖バルビナ祭開催!当日編」
18「終末のはじまり」
19(「ジョーカーとの接触」/選択行動次第で発生せず))
20「人に従う悪魔」(クラウスルート時)
21「孤立するマリア」

(分岐A:基本)
22「水鏡の懺悔」
23「隊長交代と宗像の復帰」
24「閉鎖病棟へ」
25「閉鎖病棟のマリア」

26(「別れと誓い」(宗像/水鏡)/「覚悟と誓い」(日和/キリト))

(結社編)
27「結社入団」
28(「マリアのいない日々」(スピリタス隊基本)/「囚人と天使」(キリト)
29「少女に闇の祝福を」(ヘルファイア組)
30「地獄への水門」
31(「地獄を渡るマリア」(基本)/「愚者の行方」(ジョーカーED1)
32「消えたウリエル」

(イルミナ)
33「いつか青い鳥のように」
34「ふたりの安息日」

(ジード)
33「ジードの誤算」
34「光をこの手に」

(基本ルート)
33「希望を灯して」
(34「愚者の行方」B(ジョーカーED2))

34「召還実験開始」
35「召還実験を阻止せよ」

(宗像)
36「神父になれなかった男」
37「あたたかな背中」

(キリト)
36「持たざる者の最期」
37「新しい朝へ」(ED2)

(日和)
36「審判」
37(「輝ける庭で」ED1/「不自由な祝福の窓辺」ED2)

(水鏡)
36「エデンの果ての兄弟」
37「貴方を赦す手」

(ヴェガ)
36「エデンの果ての兄弟」
37(「静寂の巣箱」ED1/「祝福の午後」ED2)

(ファーザー)
36「破滅の箱舟」
37「常闇の宴」

(分岐A:2)
(クラウスルート)
22「私達の愚行」
23「天使の繭が孵ると時」
24「7本のメギドの剣」
25「召還実験を阻止せよ」
26「契約の代償」
27「未来への長い航路」

(ウリエルルート)
22「私達の愚行」
23「もういちどひとつに」
24「天使の繭が孵ると時」
25「ウリエルと決別
26「地獄への水門」
27「アンナとカタリナの家」
28「幻の結婚生活」
29「本当の地獄」
30「ウリエルの断罪」
31「翼を癒す場所」

(ダークネスルート)
22「ダークネス登場」
23「スラムでの暮らし」
24「奪われたウリエル」
25「捕虜ダークネス」
26「希望を灯して」
27「未来へと残すもの」
28「学園の守護者」

(「サイキックレイン」)
登録するまでもない作品なので、こちらに補足で追加記載。
エイプリルフールに花梨が作ったフリーゲーム。選択肢2箇所、ルート2人の20分ほどで終わる話。
超能力がある世界で、強い力をもつヒロインと接する二人の男の子の話。
設定は色々考えていそうですが、物語の序盤の序盤(と序盤END)みたいな話なので、点数化やゲーム登録するまでの出来ではありません。
ただし、設定などは面白そうなので、そのうち一本のゲームにまとめて欲しいという期待はもてそう