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xianxianさんのGARNET CRADLEの長文感想

ユーザー
xianxian
ゲーム
GARNET CRADLE
ブランド
SPICA
得点
70
参照数
554

一言コメント

「恋を知らなかった少女が誰よりも激しい恋に目覚めるまでの美しいおとぎ話」ということで、純愛アラベスク・ファンタジーノベルゲームです。夢と現実の世界で恋愛をする良作です。殺し文句も多く、身悶えしながら楽しみました。システムも良好で、絵も綺麗です。非18禁でエロがないのが残念で、この点数ですが、エロは挿入できなくもないシーン(主にレイプ)があるので、追加ディスク欲しいところです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず、私は、CYCの時に、「BOX商法なんて(怒)!」と怒っておきながら、今回(期間限定ですが)BOX商法で買って、恩恵を受けました。先に買ってメーカーを支えていた人たちにはすみませんと謝まらせてもらいます。しかし、「ゲーム本体」に「サントラ」、「特典小冊子」「タンブラー」セットで五千円という安さが、あまりにお得で、その誘惑には勝てませんでした(土下座)。

攻略キャラは5人で6エンド(バッド除く)。5章構成になっています。大体、共通ルートに2時間ほど(スキップを2周目以降使うと30分以下に)。各個別も3,4時間ほどで
女主人公のヒロインの美紅(名前変更は可能)になって、5人の男性キャラと異世界と現実」恋愛を繰り広げる話です。サブキャラも魅力的でした。シナリオ自体は、恋愛ノベルとして、それなりのものですが、オリジナル性があるわけではなく、あくまで「恋愛」のおとぎ話を楽しむ人向けです。雰囲気としては、
砂漠の国ということで、「アナトゥール星伝」「王子スコルピオン」「はるか遠き国の物語」や「これは王国のかぎ」のような感じでしょうか。
ヒロインは、学年投票で「アミ―ラ」としてミスコン一位の恋愛に少し奥手な少女という設定です。ショート気味の髪で、かわいいけどわりと普通で、エロゲテンプレ的なツインテールとかじゃないのがよかったです。このミスコン一位も、単純な可愛さというよりは、生徒会書記やクラス委員、成績のよさや家柄のよさとかをプラスされた投票の結果と思えば、普通にありえそうな範囲です。
キャラ同士のからみがなく、せっかく魅力的なキャラが多く出ているのに、少し勿体無い気がしました。また、後半のラスト展開がほぼ同じなので、せっかく燃える展開も攻略キャラ最後あたりになると、少しマンネリしてしまうのが欠点でしょう。別にバトルを期待していたわけではないので、構わないのですが、そのあたりのパターンはもう一工夫あると、よりよかったです。
 また、個人的な話ですが、攻略キャラが学生に偏っていて、できれば年上社会人キャラも攻略で欲しかったです。チョイ悪系のかがみ先生とか、眼鏡・無精ひげでありながら大人の包容力を見せる栗原先生とか、悲しい純愛のイブリースとかが攻略キャラに欲しかったです。
なかなか魅力的な男性キャラをとりそろえているので、ひとりくらいは気に入るキャラがでるのではないでしょうか。設定の謎具合はあるのですが、わりと予想がつきやすいので特に順番を気にせずに攻略したほうがいいでしょう。特に、後半展開がほぼ同じになるため、気に入ったキャラは早めにクリアしたほうが燃え&萌えます。

(システム)
選択肢を選んで、好感度を稼ぎながら、ルートを勧めていくシステムでしょう。ただし、難易度はたいしたことはないので、実質は一本道のようなシナリオです。好意が足りないとバッドエンド突入。
おまけでは、CGモード(167枠)、BGMモード、クロニクルモードがあります。
 CGは綺麗な絵が多く、そのあたりは、さすがオービットという感じです。濡れて肌にはりついて透ける衣服とかの描き方が色気があってよかったです。ただし、立ち絵は、所々バランスおかしくない?というのがあり、そのあたりは、もう少し慣れが必要かもしれません。
クロニクルモードはクリアした場面にとび、その場面を見ることが出来るというシステムで、攻略終了後に、あのシーン見直したいと思うときに便利です。また、このクロニクルモードはプレイしながらも確認できるために、自分がどれくらいゲームを進めているかを確認できたりもします(個人的には、そういうページ数かた先を予測するようなやりかたは好みではないので勧めません。)

(構成・5幕構成)
序章「ゆりかごの時間」。第一幕「ためらいと情熱の螺旋階段」。第二幕「ためらいと情熱の階段」。第三幕「真実を照らすガーネット」。終幕「君のいる世界の目覚め」。バッド終幕「夢の終わりと恋の消失」

序章と第一幕が共通ルートになっており、ここで選択肢を繰り返すこと二幕の個別ルートに入ります。二幕では、選択肢の好意具合で、三幕に進めるかどうか決まります。この進めるかどうかの難易度はキャラによって異なります。


私の攻略順番は、輝一郎、楓、理人、透矢、サーリヤ悲恋エンド、サーリヤハッピーエンド。サーリヤハッピーエンドは他の5つのエンド見た後でないと見れないロックがあります。個人的にはこれが不満でした。透矢とか好みじゃないのに、攻略しないといけなかったので、不満でした。
透矢ルートは、ツンデレ透矢との恋愛ですが、主人公の美紅とのやりとりも気になるから喧嘩するというベタな「小学生」恋愛みたいでした。また透矢は「無神経」発言もあり、個人的な話ですが、「こんな無神経発言する人間許せるかー!」みたいな気持ちになりました。むしろ、透矢ルートは、担任の栗原先生が大人の包容力をみせるので、こっちを攻略させて欲しいと思いました。萌え先生キャラといえば、ハリーポッターのスネイプ先生とかも人気なので、大人な先生キャラは攻略キャラに1人欲しかったです。

輝一郎ルートは、私が真っ先にクリアしたルートです。私は、この手のまっすぐ系キャラに弱いのですが、それは抜きにしてもよい出来でした。特典小冊子で、平凡なキャラだと普通で終わり、凡庸なシナリオになるために、日常のドラマの積み重ねに気を使ったというライターさんの言葉通りで、丁寧に作られた恋愛話でした。
とくに選択肢において、恋に臆病で踏み出せないヒロインの「好きかもしれないけど、でも・・・」という気持ちがよくでていました。実は、攻略難易度が低く、あきらかに好意度あがらないだろうな、という選択肢をいくつか選んでもハッピーENDにいけます。
ただ、バッドエンドも一回はみてみるのも悪くはないと思います。私は、ひねたプレイするせいか、「こんなすぐに好き好き」なんて踏み出せる選択肢なんて選べない、ということで悪いほうの選択肢を選んでバッドに突入したのですが、自分が恋愛に臆病でふみだせないから、幸福な結末にいけないのかと思うと残念で、少しづつ勇気を出して、好意的な行動をとることが「青春しているなぁ、恋愛しているなぁ」という感じですごくよかったです。しかも、キャラがよく、年上の先輩でスポーツマン。細かいことにこだわらくて、明るくて、それでいて大事なところでは優しくて包容。おまけに、繊細なところもあって、花を育てたり、お菓子を作ったりして、傷つきやすい子どものような面もあるという・・・
素敵なキャラでした。

楓ルートも、いい出来でした。従者と主人という枠組みだった関係から、さらに一歩ふみだしていくというやり取りがよかったです。そして、それまでの関係ではいられないということで、我慢していたものが爆発した瞬間もまたよかったです。それまで「お嬢様」とかいっていたキャラが、「壊れるものなら、いっそ…」とか言い出して、ヒロインに強引にキスをして、スカートをめくってレイプしようとする(未遂)『ブラックナスル』シーンは、たしかに「萌え」のひとつの方向性でした。執事モノもいいかもしれない、と思いました。

理人は、共通ルートでは、気障風を吹かし、他の個別ルートでは嫌味感が出て好きになれない感じなのですが、個別ルートをやると印象が変わるキャラでした。なんというか、駄目な子ねぇ、と生暖かい目でみて可愛くなるキャラでした。とてもヒロインラブラブキャラで、外見とは裏腹に、はっきり言って、ストーカーか変質者、一歩手前とかしています。ヒロインが「なんか怖いです」という台詞を言うのですが、とても同意してしまいました(笑)。
心の狭さと、執念深さから、他のキャラとエンド迎えても、しつこく略奪愛狙って登場してきそうです。他のキャラルートで、美紅が他の男性キャラに好意寄せると、排除しにかかりますからね
「フッ。たしかに一度は彼女の好意を手に入れたかもしれない。だが、最後に彼女を手似れるのは俺だ。」
とかいってお邪魔虫で普通に登場してきそうです。

サーリヤルートは、殺し文句のオンパレードです。エンドは2種理ありますが、ハッピエンドよりは、悲恋エンドのほうが綺麗で好みかもしれません。ルートはいるとしょっぱなから、「お前はおれにとってもっとも大切な存在だ」とか言い出しますし、悲恋エンドの泉の側での台詞とかは、声優さんの演技とあいまってくらりときます。子どもっぽいところもあるけど、大人のように我慢すること知っていて、寂しがりで気品があるという、「王子様」というキャラはこうあるべし、という見本のようなキャラでした。
理人が「気の母上が君を生み出しているのを見た」という発言も作中にあるので、実はヒロインより年下のキャラかもしれません。意地っ張りな年下キャラというのも萌えますね。
どうでもいいという点では、ここでも理人が心の狭さを見せ、「彼女が、お前をかばうのが一番気にくわない」といって剣をとりだして決闘申し込むというシーンがあり、「心せまー」と生暖かい目で見てしまいました。
 あとは、個人的には、イブリースエンドが欲しかったです。サーリヤルートやると、イブリースの熱情や純粋さが伝わるシーンがあり、それだけ一途にサヤラーン想っているなら、イブリースのために、死んでもいいかも、とおもわせるものがありました。厳密には死亡するのではなくて、サヤラーンに吸収されてサヤラーンの一部になるわけで、イブリースが自分をふりむいてくれないままでいるよりは幸せだと考えます。


(音楽)
とてもよかったです。さすがElements Gardenといったところです。まあ、きれいすぎて、本当のアラビア風はもっとゴミゴミした雑踏のような感じという不満を持つ人がいるかもしれませんが、日本人が思い浮かべるアラベスク・ファンタジーという意味では、よく似合っているいい出来です。
特に、主題歌やEDの出来はよく、作詞をライターさんが担当しているために、作品とぴったり合う内容なのがいいです。それを男性の甘い声で歌われるので、男の色気みたいなのが漏れているのが、いい感じです。
OPの「眠る君を連れ出して、銀の鎖で繋ぐよ。もう誰も君に触れられない。永遠に。吐息さえも閉じ込めてしまおう」
という歌詞なども、少しヤンデレぽいですが、独占欲丸出しな所とかが素敵です。
また、EDはサーリヤハッピーエンドでしか流れませんが、作中でも登場キャラが歌うという形で使われており、竪琴の音と一緒流れたりします。

(声優)
実力ある人たちをそろえています。特に女性声優さんは実力ある人たちですね。名前つきキャラだけではなく、女官とか同級生とかのモブキャラまで担当していました。平川大輔さんは、私のこの声優さんに対するイメージから、こんなキャラできるの?と開始前は不安だったのですが、一番のお気に入りキャラを見事に演じていました。また、サーリヤ役の立花さんは、その役上の殺し文句を甘い声で囁き、身悶えする素晴らしい演技でした。

松元恵(野々瀬 実咲、ファラーシャ、サヤラーン)田中涼子(エマ、鞠子)結本ミチル(白土 椿、サクル)立花慎之介(サーリヤ)近藤隆(勅使川原 透矢)
寺島拓篤(白土 楓、ナスル)柿原徹也(西連寺 理人)平川大輔(櫻沢輝一郎)
古澤徹(迦神、イブリース)