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walnutさんのさよならを教えて ~comment te dire adieu~の長文感想

ユーザー
walnut
ゲーム
さよならを教えて ~comment te dire adieu~
ブランド
CRAFTWORK
得点
85
参照数
178

一言コメント

主人公と他のキャラクターから綻びが徐々に見え始め、崩壊は進み、今まで見ていた世界の歪みを知る。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

三大電波ゲーの一角として知られ、またもっとも有名であり、鬱ゲーの金字塔とも言える伝説的な作品。
電波ゲーの印象はわけのわからない発話を繰り返すキャラクターというものだ。その点「ジサツ」は完全に支離滅裂な言動が繰り返されており、まさしく「電波」な作品であった。しかし「さよ教」はその点ある種ととのっており、電波な言動がありつつもそういった作品が暗喩するものは明らかである。ランダムな発言でこちらを混乱させてくるものではなく、含蓄があり、そういったセリフのひとつひとつが本作の完成度を高めているのが特徴だ。

主人公人見広介は教育実習生として働いているが、毎日が憂鬱で、放課後に校内を歩いては学生に話しかけたりしている。その設定で様々な学生と会話をしているのだが、唐突にセックスする描写が挟まったり、会話の内容が不穏だったりと、常に危うい空気が感じられる。
そしてもっとも目をかけていた女子学生が自殺するのを最後に見てしまい、絶望し、生きる意味を見失うところで終わる。エピローグにて人見広介は精神病を患っていることが現実に生きるキャラクターたちとの会話で示され、また別の夢の世界に閉じ込もったところでゲームが終わるというもの。

この作品は狂気を描いたものとして知られている。それだけでなく、すべての背景が夕焼け色に染まっていることや、錯乱気味な会話が詩的な雰囲気や、格言めいており、そういったものがエクスタシーを与えてくるのもまた興味深いところだった。

短いながらも、狂気に同調して気持ちよくなってしまう。絶頂してしまうような怪作であり名作だった。