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walnutさんの蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2の長文感想

ユーザー
walnut
ゲーム
蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2
ブランド
sprite
得点
79
参照数
242

一言コメント

「あおかな」に求めるFCの面白さをとにかく突き詰めてくれたのが良かった。イチャイチャは「あおかな」の大事な要素の一つなので、好きな人が求めているのだろう。FCという現実味のないスポーツを題材にしながらも、普通のアツいスポーツものを読んでいるようで、スッと入り込めた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作はあくまで「あおかな」本編のみさき√の続篇である。みさき√は乾によって変革の時を迎えたFCを、その乾の土俵に乗る形で迎えた話だ。なので、とにかく「乾の戦略」というワードが出てくる。FCにとってそれほどまでに大きな変化だったのだと突き付けられるのだ。
本編においてみさきは、仰向けに飛行するスモーという戦略で、上のポジションで戦う乾に立ち向かった。しかし戦略はそれだけではない。もっと他にやり方があるのではないかと模索する形で物語の多くは語られていく。
話題になるのはポジショニングだ。1対1で向き合ったときのみを考えるのではなく、水平面で、上下で考えていく。FCの試合にダイナミックさが生まれる。
そういった試合は本編を読んだあとに、こういった試合を見たいと思ったものが提供される。特に最後の真藤 VS. みさき。本気で真藤先輩がみさきと戦う。本編のリベンジである。本当に見たかった、続きがあったからこそできる話だった。さらに、乾とみさきの再戦や、明日香とみさきの再戦も見たいなぁ。もうEXTRA2の続きだけを膨らませてシリーズを作って欲しいとすら思った。

さて、本作で特に目を引かれたのはCGのショットの打ち方と使い方である。
普通のエロゲのCGは頭から膝のあたりまで体を収める。しかし「あおかなEX2」では極端に近かったり、全身が映るほど引いたショットを打つ。CGの打ち方ではなくむしろアニメのカットに近い。
ここで、本作がフィルミックノベルの第一弾として売り出されたのを思い出す。映像的な演出を多く取り入れているのがよくわかる部分だ。
そして、近いショットと遠いショットを交互に入れ替えながら演出する。紙芝居と揶揄されがちなエロゲーの固定概念を打ち砕くように画面をとにかく動かしていく。カメラの向け方も、足元から真上を見るようなキツいパースをかけたCGも目立つ。なかなかエロゲでは見られない。
これは、普通のゲームでやられたら何を見せたいのかまったくわからなくなるようなものだろう。「あおかな」がスポーツを題材にし、更に舞台が空という縦横前後ろを自由に動く、空間で見るものだからとも言える。

しかし、ちょっと残念なところもあった。引いて、キャラの頭の部分を真ん中に持ってくる構図が目立つ。この構図が使われている部分を取り出して比較するのも楽しいだろうが、普通に読んでいる分にはまた同じ構図か……とちょっと退屈に思ったりした。

以上が主な感想である。ちょっと思ったことと言えば、「あおかなEX1」よりも本作の真白の方が好きってことだ。騒音ロリが本当に騒音っぽムーブをしている本作の方が、目立って良かった。